離婚して妻が旧姓に戻った場合、実は親権者が妻であっても、子どもの姓が自動的に妻の旧姓になるわけではありません。
このとき、子どもの姓が夫と同じであるばかりでなく、戸籍も夫の戸籍のままになっているのです。
では、これを妻と同じ姓にし、妻と同じ戸籍に入れる方法や手続きは、どうすればいいのでしょうか。
離婚した場合、子どもの姓はどうなるのか
離婚した場合、妻は旧姓に戻り、新しく戸籍を作るか、または古い戸籍に戻るかという選択をすることになります。
このとき、妻が親権者であっても子どもまで自動的に親権者の戸籍に移るわけではありません。
では、子どもの姓はどうなるのでしょうか。
どのようなルールによって姓が決められるのでしょうか。
離婚すると旧姓に戻る
夫婦は、結婚するときに、夫か妻の氏(姓)を称さなければならないことになっています。
これを夫婦同氏の原則といいます。
この原則がありますので、結婚した場合、夫か妻のどちらかが姓を変えることになります。
現在、姓を変えることが圧倒的に多いのが妻側ですので、このページでも姓を変えた方を妻として説明します。
また、変える前の姓のことを旧姓といいます。
結婚した場合、夫婦同氏の原則により、夫婦は同一の姓を称し、同一の戸籍に入ることになります。
そして、離婚をする場合、結婚の際に姓を変えた妻は、結婚前の旧姓に戻ることになります。
これを復氏といいます。
このとき、戸籍は、婚姻前の戸籍に戻るか、あるいは新しい別の戸籍を作ることになります。
婚姻中の姓をそのまま使う方法
離婚した場合、原則として妻は旧姓に戻ることになるのですが、いろいろな事情により婚姻中の姓を離婚後もそのまま使いたい場合があります。
このようなときはどうすればいいのでしょうか。
この場合は、離婚の日から3ヵ月以内に本籍地かまたは住所地の戸籍課に届け出ることによって、婚姻中に称していた姓を称することができます。
このとき、夫の同意や許可は不要です。
旧姓に戻るのか、それとも婚姻中の姓を使用するのかは、妻が自由に決められます。
ただし、復氏する場合、婚姻前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作ることになるのですが、婚姻中の姓を使用することを選んだ場合は、婚姻前の親の戸籍に戻ることはできません。
この場合は、親とは違う姓を称することになりますので、親の戸籍に戻ることができなくなるのです。
旧姓に戻しても子どもの姓は変わらない
結婚時に夫婦同氏の原則により、夫の氏を称することを決めた場合、夫が戸籍の筆頭者となります。
氏を変えた妻は、戸籍には、配偶者として夫の次に記載されることになります。
そして、離婚するときには、筆頭者でない方が戸籍から抜けることになります。
この戸籍から抜けることを除籍といいます。
妻が夫の氏を称することにした場合、離婚時に夫婦の戸籍から除籍されるのは妻となるのです。
除籍された妻は、旧戸籍に戻るか、新戸籍を作るかを選択することになります。
このとき、子どもはそのまま戸籍に残ります。
子どもは親権者の戸籍に入るわけではなく、筆頭者の戸籍に残ったままになります。
戸籍からは妻のみが除籍されることになるのです。
このルールは、婚姻中の氏をそのまま使用する婚氏続称の届をしていたとしても同じです。
婚氏続称の届をしていれば、妻は子どもと同じ姓を称することができますが、それは呼び方の問題なだけで、子どもが妻の戸籍に入ったというわけではないのです。
婚氏続称の届をしていても、あるいは旧姓に戻った場合でも、結婚時に夫の氏を称することにした妻は、夫婦の戸籍から除籍され、子どもは筆頭者である夫の戸籍に残ったままとなるのです。
このルールはどちらが親権者になるかは関係がないのです。
子どもを妻の戸籍に入れ、妻の姓にする方法
では、親権者である妻が子どもを自分の戸籍に入れ、妻の姓を名乗らせる方法にはどのような手続きが必要なのでしょうか。
妻の戸籍に入れる方法
子どもの姓の変更は、家庭裁判所に子の氏の変更を申し立てる必要があります。
この子の氏の変更の申し立てが許可されると、その審判書を添付して子どもの入籍届を出す必要があります。
届け出が受理されると、子どもは夫の戸籍から除籍され、妻の戸籍に入籍することになります。
これにより妻の戸籍に入ることはもちろん、姓についても同一になり、妻の姓を名乗ることができるのです。
また、子どもが入籍する場合は、妻が筆頭者になっている新戸籍である必要があります。
たとえば、妻は離婚時に古い戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るか選択できますが、古い戸籍が親の戸籍だった場合、戻った戸籍では妻は筆頭者になれません。
子どもの入籍を希望するのであれば、もし古い戸籍では妻が筆頭者でないのならば、妻は筆頭者になる新しい戸籍を選択する必要があります。
どのような場合に姓の変更が認められるのか
子の氏の変更の申し立ては認められてはじめて許可が出るものになります。
では、どのようなときに姓の変更が認められるのでしょうか。
これは子どもの福祉の観点から総合的に判断されることになります。
子どもの福祉とは子どもにとってどれが最も利益があることなのかということが判断材料になります。
たとえば、親権者が妻で、子どもが離婚後も妻と一緒に暮らしていくような場合、子どもと親の姓が異なることは、社会生活を送るうえで不都合がありますので、こういった場合は、問題なく許可されます。
子どもの姓が変わることは子どもにとって重要な問題となります。
ですので、家庭裁判所は、できる限り子どもの意向が反映されるように、子どもの年齢にかかわらず、子どもの陳述の聴取や調査、その他適切な方法によって、子どもの意思の把握に努めなければならないとされています。
親権者が夫になっている場合
家庭裁判所に対する子の氏の変更の申し立ては、子どもが15歳以上の場合はその子自身が、子どもが15歳未満の場合は、子どもの親権者が行うことになっています。
妻が親権者で妻が監護者として子どもを育てるような場合は問題がないのですが、親権者が夫で、妻が監護者として子どもを育てていくような場合に問題が生じることがあります。
子どもが15歳未満の場合、子の氏の変更の申し立ては親権者である夫が家庭裁判所に対して行う必要があります。
このような場合、夫の反対にあうと子の氏の変更の申し立てを行うことができません。
ちなみに、子どもが15歳以上になっているのであれば、子どもの意思で子の氏の変更の申し立てはできますので、たとえ親権者が夫であったとしても、夫の同意や許可は必要ありません。
もし親権者である夫の反対にあった場合で子どもが15歳未満の場合は、子どもが15歳になるまで待って申し立てを行うか、それとも家庭裁判所に親権者変更の申し立てを行うか、どちらかの方法をとることになります。
親権者変更の申し立ては、家庭裁判所が必要であると認めるときに審判や調停によって、親権者を変更することができる制度です。
一度決まった親権者は父母の協議のみで変更することはできません。
親権者は子どもの福祉にとって重要な問題になりますので、簡単に変更することはできないことになっているのです。
このため、親権者の変更を希望する場合は、家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所が必要と認めたときは、変更が認められます。
もちろん親権者の変更は子どもにとって重要な問題ですので、子どもが現在の親権者のもとで安定して生活を送っているような場合は、子どもの利益にならず、簡単には認められません。
ただし、家庭裁判所は子どもの意思を尊重する必要があります。
子どもの意思、父母の看護能力や生活状況など、さまざまな角度から総合的に判断し、子どもにとって利益があると認められたとき、親権者の変更が認められるのです。
親権者の変更が認められれば、親権者の申し立てによって、子の氏の変更の申し立てを行うことができます。
もちろん、こちらも申し立てですので、必ず認められるわけではなく、姓の変更を行うことが子どもの福祉にとって利益があると認められたときに、子どもの姓の変更も認められるのです。
まとめ
離婚した場合、親権者が妻であっても、子どもの姓が同時に妻の姓になるわけではありません。
夫婦は結婚するときに夫か妻かどちらかの姓を称さなければなりません。
これを夫婦同氏の原則といいます。
離婚をする場合、結婚の際に姓を変えた方が、結婚前の姓に戻ることになります。
ただし、離婚後3ヵ月以内に届出をすることによって婚姻中の姓を使用することもできます。
夫婦が結婚した場合、どちらかの姓を称するのですが、称する方の姓の方が戸籍の筆頭者となります。
戸籍は筆頭者を一番に記載し、次に配偶者、子どもと記載されます。
筆頭者でない配偶者は、離婚した場合、戸籍から除籍され、古い戸籍に戻るか新しい戸籍を作るかを選択します。
このとき、子どもは筆頭者の戸籍に残ったままとなりますので、たとえ除籍される配偶者が親権者であったとしても親権者と子どもが自動的に同じ戸籍になるわけではないのです。
子どもの姓を変更したい場合、家庭裁判所に子の氏の変更の申し立てをする必要があり、許可されれば変更することができます。
このとき審判書を添付し入籍届をすることで同一の戸籍になり、同一の姓を名乗ることができます。
子どもの姓の変更は子どもの福祉の観点から判断され、たとえば、離婚後も生計を同一にしている方からの申し立ての場合、問題なく認められます。
子の氏の変更は子どもが15歳以上の場合はその子自身が、子どもが15歳未満の場合は子どもの親権者が申し立てることになっています。
ですので、15歳未満で親権者が反対するような場合、子どもが15歳になるまで待つか、親権者変更の申し立てを行うかの方法をとることになります。
しかし、親権者変更の申し立ても子どもの福祉の観点から子どもにとって最も利益があるのかどうかを総合して判断されますので、簡単に認められるわけではありません。
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