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離婚とお金VOL12 財産分与を現物でもらうのはアリ?離婚で不動産をもらうときの注意点

離婚の際に財産分与の取り決めをする場合に、妻の取り分として現金を取るか、不動産などの現物を取るか、は迷うところです。

預金を取得した場合はさまざまな用途にすぐに使用できて利便性が高い一方、不動産であれば持ち家を確保することにつながります。

そこで今回は、財産分与で取得する財産の種類や、不動産を現物で取得する場合の注意点などを解説します。

現金を取るか不動産を取るか

妻が財産分与として自分の分を受け取るときに複数の選択肢がある場合、現金を取るか不動産を取るかは迷うところです。

妻が離婚後もそれなりの蓄えがある、共稼ぎだったので離婚後も安定した収入が見込める、などの場合には、財産分与を現金でもらうという選択も有効です。

財産分与として現金を取得した場合、日々の生活の中で必要なさまざまな出費に対してすぐに活用することができるので、利便性が高いという魅力があります。

一方、離婚前にずっと専業主婦であったので、離婚後に安定して収入を得ることが難しい、時間がかかる、などの場合には、財産分与を現金だけで取得してしまうと、住居を確保することが難しくなる、現金がなくなったら生活が困難になる、などの問題点があります。

そこで、ずっと専業主婦で蓄えが乏しい、離婚後に仕事を見つけることが難しく確実な収入が見込めない、などの場合には、ローンの負担のない不動産を財産分与として取得し、自宅としての住まいを確保することで、安定した生活のための基盤にすることができます。

上記はあくまで一般的な傾向であり、実際にどのように財産分与を行うことが一番良いかはケースによって異なりますが、財産分与の方法について迷った際には目安になります。

不動産を取得する場合は名義に注意

財産分与として不動産を取得する場合には、名義が誰のものであるかに注意する必要があります。

妻が財産分与として一軒家やマンションなどを取得した場合、名義がもともと妻のものであれば問題はありませんが、夫の名義の場合には問題になります。

夫の名義のままの一軒家やマンションを取得したとしても、第三者に対抗することはできません。

夫が後日その不動産を第三者に勝手に売却してしまった場合には、妻はその第三者に対して自分の不動産であると主張することはできません。

その場合、不動産を失ってしまった妻はその損害については夫に請求することになりますが、不動産自体は失ってしまう、夫が素直に支払いに応じてくれるとは限らない、夫に十分な支払能力がない、などの弊害が考えられます。

また、ローンなどの関係で自宅等の不動産が夫婦で2分の1ずつの共有名義になっているケースも少なくありません。

離婚後もそのまま共有名義にしておくと、後のトラブルに発展する場合もあります。

離婚後に不動産を夫婦の共有名義のままにしておくと、不動産を売却する際に双方の同意が必要になってしまいます。

離婚後も互いに連絡がついている場合はあまり問題はありませんが、離婚後に相手と連絡が取れなくなってしまった場合には、共有名義の不動産を売却する手続きが困難になります。

そのため、離婚の際に財産分与として不動産を取得する場合は、不動産の名義を必ず自分のものにしておく(所有権移転登記)ことが重要です。

不動産登記の名義変更は厳密には自分でも可能ですが、さまざまな書類や専門的な知識が必要になってくるため、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。

所有権移転登記の概要

離婚の財産分与による所有権移転登記の方法は、協議離婚の場合と、裁判所による離婚(裁判や調停など)の場合とで異なることがあります。

協議離婚の場合には、夫と妻が共同で登記申請を行うことになります。

所有権移転登記の申請を行うのは離婚届を提出した後になりますが、複数の書類等が必要になってくるため、専門家への相談も含めて離婚成立前にから準備をしておくとトラブルの防止に繋がります。

調停や裁判など裁判所による離婚の場合には、「本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」などの文言がある場合には、単独で手続きを行うことが可能なケースがあります。

一方、「申立人と相手方は協力して所有権移転登記をする」という記載の場合には、協議離婚と同様に共同で申請を行うことになります。

住宅ローンが残っている場合

財産分与の対象である不動産に住宅ローンが残っている場合、財産分与による所有権移転登記が完了しても、住宅ローンの債務者は変更されないので注意が必要です。

例えば、夫が登記上の所有者であり住宅ローンの債務者でもある不動産を妻に財産分与し、夫から妻の名義に所有権移転登記をした場合、不動産の新しい所有者は妻となりますが、住宅ローンの債務者は依然として夫のままになります。

住宅ローンの債務者の変更をしたい場合は、ローンの借入先の銀行等(債権者)の許可を得る必要がありますが、支払い能力の関係から難しい場合も少なくありません。

債権者の許可を得ていない場合でも、ローンが残っている不動産の所有権移転登記をすることは手続きとしては不可能ではありませんが、債権者に無断で名義変更をすることは、住宅ローンの契約に抵触する場合があるので注意が必要です。

おわりに

離婚後に安定した収入を確保することが難しい場合などは、離婚の際の財産分与として妻が自宅などの不動産を取得することが1つの方法です。

財産分与として不動産を現物で得る場合には、不動産を必ず自分の名義にしておくことが重要です。

夫の名義のままの場合や、夫婦の共同名義の場合には、後にトラブルになる可能性があります。

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