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離婚とお金VOL23 諦めたら損!養育費が決まらない場合に取るべき手段

離婚を決めた夫婦が決めなければならない一番大切なことは、二人の間の子供に関する詳細であるといって良いでしょう。

どちらが引き取るか、親権はどうするか、子供との面会はどうするか、そして養育費用をどう分担するか。

子供を一人育て上げるには多大な費用がかかります。

きれいごとを言っていては始まりません。

離婚届に判を押す前に、養育費負担についてしっかり決めておきましょう。

養育費の支払いは義務!

子供の監護者は9割が母親

民法では、父母が子に対して共同で親権を持つと定め(818条)、その親権に基づき夫婦で子を監護します。

監護とは子の養育に関する事務一般を指します。

しかし父母が離婚する場合、共同での親権の行使は実質的に困難となることから、子は父母どちらかの単独親権となり、親権者が決まらないことには離婚は認められません。

そして親権者となった方が子を監護していくというのが一般的です。

現在の日本では、母親が親権者となる割合がほぼ9割以上と圧倒的に多いです。

これは、戦前はいわゆる「家制度」により、後継ぎたる子は父親が親権を持つことも普通でしたが、核家族が大多数を占める現代社会では、子を実際に育てていくには父親と母親のどちらが適任か、という視点で考えられるようになったからです。

女性は妊娠、出産をきっかけにいったん仕事を辞めてしまうと、子供が小さいうちは一緒にいる時間が父親より圧倒的に多いことから、子供のためにはやはり母親が親権者にふさわしいと周りも、そして当事者も考えてしまうということです。

養育費は堂々と求めてよい

しかし、子供の世話をしようと思うと、離婚後の母親が正社員としてフルタイムで働くのは本当に大変なことです。

子供の急病や行事による欠勤がどうしても発生してしまいますし、そもそも正社員として雇用されること自体のハードルも高いです。

となれば、どうしても比較的休みが取りやすく、残業もないパートタイムで仕事をし、子を育てるためにかかる費用は父である元夫にも負担を求めるという流れになります。

離婚と同時に夫婦は法律上赤の他人となります。

元配偶者が生活に困っていると言ってきても、感情論は別として、助けてあげる義務は一切ないのです。

しかし、親子は違います。

たとえ子の親権が母となったとしても、父親と子の法律的な親子関係はずっと続きます。

そして子が未成年の場合、父親にはなお子に対する監護義務、すなわち養育義務があるのです。

したがって、母親(親権者)が父親に対して養育費を請求できるのは、民法などの法律で認められた権利なのです。

堂々と請求して何の問題もありません。

以下、母親が親権を持ち、父親が養育費を支払うという前提で話を進めます。

養育費の話し合いがまとまらない理由

養育費の目安

離婚の話し合いで、養育費についてまとまらないケースは少なくありません。

月々いくら払うのか、子供がいくつになるまで払うのか、決めるべき内容は簡単に言えば2つだけなのですが、これがなかなか難しいのです。

家庭裁判所は養育費の目安として「養育費算定表」というものを公開しています。

https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf

参考資料にはなりますが、あくまでも目安であり、この金額通りにする必要はありません。

むしろ目安額からずれがあるからこそまとまらないのだといえます。

金額が歩み寄らない場合

額に隔たりのある理由として、特に子が小さければ小さいほど、将来の見通しが立たないというのがあります。

小学校から大学まで私学に通わせるのと全部公立に通うのとで費用は変わりますし、義務教育無償化などの政府方針も今後どうなるか分かりません。

大学院に進むことや、留学することを子が希望した場合にはどうするのかなどという問題が出るかもしれません。

また、支払う側として、今の収入が支払期間ずっと保障されている訳でないとか、あまりに高額だと自身の再婚にも支障が出るのでは、といった不安があるでしょう。

母が再婚して、何不自由ない生活を送るようになっても父は養育費を支払うのかという話が出る可能性もあります。

夫婦それぞれに事情と言い分があるので、二人だけでいくら話しても歩み寄りが難しくなるのです。

話し合いができない場合

話し合ってもまとまらないというのは、まだ養育費の支払い意思があるだけましで、そもそも夫が話し合いにすら応じないことも多いです。

すでに別居をしている場合など、わざわざ機会を作るのがおっくうな場合もありますが、たいていは夫が養育費を支払いたくないというケースでしょう。

中には開き直って「養育費は払わない」と言い切り、後は一切聞く耳を持たない夫もいます。

そうなると妻の方でも、とにかく今の状態を早く終わらせたいし、もう面倒だから養育費は要らない、もしどうしても必要ならば離婚後に落ち着いてからもう一度話し合えばいい、と考えてしまい、何も決めないまま取り敢えずまずは離婚届を、となってしまうかもしれません。

しかし、絶対に焦ってはいけません。

離婚後に改めて養育費について話し合うことに夫婦で決めること自体に問題はありません。

ですが、既に書いたように、夫婦は離婚すれば赤の他人であり、元夫に対して元妻が養育費支払いを求めても、元夫がその請求に答える法律的義務はありません。

支払いどころか
話し合いにも応じないまま夫が転居してしまうとお手上げとなってしまいます。

養育費に関する決め事は必ず離婚前にするべきなのです。

調停手続きの利用

養育費についてなかなか夫婦で話がまとまらない、話し合いができない……、そんな時には家庭裁判所に「養育費を求める調停」を申し立てましょう。

妻一人で申し立てることができます。

裁判なんて、と臆する必要はありません。

調停は家庭裁判所内で行われますが、いわゆる訴訟ではなく、いわば第三者を立てた話し合いをするものです。

方法も難しいものではありません。

以下詳しく説明します。

民法は、夫婦が離婚する際に、家庭裁判所(以下「家裁」)が「子の利益のために」「監護について相当な処分を命ずることができる」と定めています(第766条2項)。

つまり、未成年の子について親権を持たない親も監護(養育)義務があるにもかかわらず、夫婦の間で負担をどうするかの結論が出せなければ、家裁が代わりに決めることができるのです。

家裁はまず調停の機会を作ります。

いきなり裁判手続きに進むことはありません。

家庭の問題に対しては、法律や手続きに則った機械的な流れよりも、まずは当事者の意見を聞いて事情を酌み取り、できる限り双方が納得した結論を出せるようにすることが望ましいとされるからです。

特に離婚の場合、離婚後に経済的弱者となる者への保護という観点もあります(やや脱線しますが、そのために調停では時に「離婚について考え直してはどうか」という意見を出すこともあります)。

調停の申立てに必要な書類は以下の通りです。

  • ①子の監護に関する処分調停申立書
  • ②妻が養育する未成年の子の戸籍謄本
  • ③妻(申立人)の収入を証明する資料
  • ④申立費用(子1人につき1,200円分の収入印紙を申立書に貼付する)
  • ⑤郵送費(裁判所が連絡用に使用する切手を予納する)

①は裁判所のホームページでダウンロードできます。

直接家裁で貰うこともできます。

手続きについていろいろ尋ねたいことがあれば、家裁に出向く方が良いでしょう。

申立書の記入内容は簡単なものです。

文章記入が求められるのは申立ての理由を説明する欄くらいですが、双方の主張する金額の隔たりや、夫が話し合いに応じないなど、自分の事情を素直に書けば大丈夫です。

③は給料明細の写しなどです。

夫側の収入資料もあれば一緒に出しましょう。

⑤の費用は各家裁で少しずつ変わるので確認しましょう。

○円切手何枚、☓円切手何枚……と細かく指定されるのが一般的です。

申立て書類に不備がなければ家裁が日程を調整し、調停が始まります。

調停はいわゆる法廷ではなく、調停室のラウンドテーブルを囲んで、裁判官が1名、一般市民から選ばれた調停委員2名以上が当事者の話を聞き、助言や仲立ちを行うスタイルで行います。

一般市民といっても、調停委員は弁護士や、離婚に関して専門的知識を有する人が務めますので安心できます。

夫婦は調停の場での同席をしたくなければ、家裁に申し出て別々に部屋に入ることもできますし、同席したとしても直接言葉を交わさず、調停委員に仲立ちしてもらうことが可能です。

裁判官と調停委員は養育費について「こうせよ」と夫婦に命ずることはしません。

あくまでも二人の自主性に基づき、第三者として二人で納得した結論に向えるよう手助けをするのです。

話し合いが一回でまとまらないようであれば、日を変えて何度か調停を続けることができます。

最終的に上手く歩み寄れ、養育費に関する夫婦の合意が得られると、家裁は合意内容を記した「調停証書」を作り、夫婦に渡します。

調停証書は、いわば裁判で判決が確定したのと同じで、証書に基づいて強制執行を求めることができるのです。

調停でもダメなら審判で

調停をしても解決できなかったり、そもそも夫が調停の場に現れなかったりした場合は調停は不成立となります。

しかし、子の監護に関する調停は不成立となった場合、自動的に審判手続に移行するのです。

審判といっても調停同様非公開で行われますが、調停のように当事者である夫婦が自由に意見や主張を述べるのではなく、裁判官から求められた質問に対し、説明をするという形で行われます。

それらの説明や資料を吟味し、結論を出すに十分であると裁判官が判断をすれば、審判期日終了となり、裁判官は夫婦に対し、養育費に関してどのようにすべきかの判断を下します。

この審判結果を記した書面もまた、それだけで強制執行力を持つものとなります。

おわりに

養育費の話し合いについて、流れを図にするとこのようになります。

以上のように、養育費に関する話し合いがまとまらない、話し合いすらできない状態であっても、手続きさえしっかり踏んでいけば最終的に強制執行力のある養育費を決定することができるのです。

時間は少しかかるかもしれませんが、決してあきらめる必要はありません。

子供のために利用できる手続きはしっかり利用しましょう。

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