離婚とお金VOL13 財産分与と慰謝料を受け取ると税金がかかる?離婚と税金の関係について解説 | 離婚弁護士マップ
  • tel-button
  • mail-button
top center bottom

離婚とお金VOL13 財産分与と慰謝料を受け取ると税金がかかる?離婚と税金の関係について解説

離婚による財産分与や慰謝料として金銭や不動産などの財産を取得した場合、それに対して税金が課税されるかどうかは重要な問題です。

財産分与等は離婚後の生活を保障するという意味合いもあるところ、多くの税金を課されるのであれば、そのことも考慮して財産分与等の内容を決める必要があるからです。

そこで今回は、財産分与や慰謝料と税金の関係について解説していきます。

財産分与等をする側に対する課税

離婚によって慰謝料や財産分与を支払う側のことを離婚給付者といいます。

また、離婚給付者によって支払われる慰謝料や財産分与等を離婚給付といいます。

離婚給付については誰に対してどのような課税がされるのかわかりにくい部分もありますが、慰謝料や財産分与として金銭を支払う場合には、原則として課税対象にはなりません

次に、金銭ではなく不動産を相手に給付する場合には、所得税法の課税要件である資産の譲渡に該当し、原則として課税の対象になります。

離婚給付として不動産が給付された場合、不動産については時期によって価格が変動することから、どの時点の価格を基準として課税の対象にするかが問題になります。

この点、財産分与等として不動産の移転があった場合は、移転時の時価に相当する価格に基づいて所得税の課税対象になります。

離婚給付の課税の例として、離婚に伴って夫が妻に1,000万円の現金と移転時1,500万円の時価の不動産を譲渡したケースで考えてみます。

この場合、1,000万円の現金については課税対象になりませんが、不動産については移転時の時価1,500万円を基準として課税対象になります。

もっとも、居住用の不動産等については基本的に高額な控除の対象になる場合が多いため、相当に高額な居住用物件等でなければ、課税額についてはあまり心配する必要のないケースが少なくありません。

とは言え、手持ちの不動産を譲渡する場合にどのような課税が発生するか、どのような控除が適用されるかについては専門的な部分も多いため、資産が高額な場合は一度税理士等に相談することも有効です。

財産分与等を受けた側に対する課税

離婚によって夫名義の自宅を譲渡された妻など、財産分与等を受けた側については、贈与税、所得税、住民税などは原則として課税の対象にはなりません

ただし、財産分与等によって不動産などを取得した場合、所有権移転登記の費用、免許税、不動産取得税、固定資産税などは後に課税される可能性があります。

財産分与として利益を受けた側には原則として課税されないという制度は、見方によっては不公平に感じる場合もあるかもしれません。

財産分与等を行う側にしてみれば、財産を失ったうえに課税されるという扱いになるからです。

もっとも、財産分与等として利益を得るのは当面の生活を保障するという意味が強い場合も少なくなく、その場合に課税されるとすると、生活を保障するために財産分与等を行うことの意味が損なわれてしまうことになります。

そのため、財産分与等によって利益を得る側が原則として課税されないとするのは、相手の生活を保障するという意味では有効性のある制度といえます。

受けた側の課税の例外

課税についての注意点として、離婚することとなった夫婦の社会的な地位、資産の額、夫婦の収入、離婚の事情などの事情を考慮した結果、給付された財産分与や慰謝料の金額が不相当に過大であるといえる場合には、過大な部分については贈与税が課されることがあります。

例えば、夫婦の資産や収入などから考えて、離婚後に十分な資産が残らない夫から、離婚してもすでに十分な資産のある妻に対して3,000万円の現金が財産分与されたケースにおいて、本来相当といえる金額は500万円とされた場合、過大な2,500万円の部分については贈与税が課されるなどです。

次に、離婚に伴って行われた離婚給付が、実は離婚を口実として債務を免れるための単なる手段であるといえる場合には、相手が譲り受けた全額について贈与税の課税対象になります。

例えば、夫が債権者からの差し押さえを免れるために、実際の関係においては離婚の事実がないのに手続き上離婚し、妻に財産分与として資産の大部分を形式的に譲渡したような場合には、譲渡した分の全額について課税対象になる場合があります。

おわりに

離婚に伴う慰謝料や財産分与等の離婚給付が実施された場合、離婚給付者と離婚給付を受けた者について分けて考えることになります。

離婚給付を行った側である離婚給付者については、金銭を給付した場合は原則として課税の対象になりませんが、不動産を給付した場合は課税の対象になります。

また、不動産については居住用住宅など控除の要件に該当する場合があります。

離婚給付を受けた側については、取得後の登記手続き費用や固定資産税などを除いて、贈与税や住民税などは原則として課税対象になりません。

例外として、給付された資産が不相当に過大な場合や、離婚を口実とした所得隠しに該当する場合などは、課税の対象になることがあります。

▼離婚とお金 シリーズ

  1. 離婚とお金VOL1_あとで慌てない!離婚の前に必ず決めておくべき3つのこと
  2. 離婚とお金VOL2_要チェック!離婚したら相手から受け取れる4種類のお金と注意点
  3. 離婚とお金VOL3_どこまで認められる?離婚前の別居期間中の生活費で請求できる項目とは
  4. 離婚とお金VOL4_離婚の財産分与と慰謝料の要求は時効に注意!約束を守らせる秘訣とは?
  5. 離婚とお金VOL5_親権者でなくても離婚後に子どもを引き取れる「監護者」とは?
  6. 離婚とお金VOL6_「離婚後は子どもを会わせたくない」は認められない?まずは面会のルールを決めよう
  7. 離婚とお金VOL7_離婚時に決めた財産分与や養育費が支払われない場合にとれる差押えなどの解決方法
  8. 離婚とお金VOL8_内縁など事実婚状態でも財産分与や慰謝料、養育費の要求は可能?
  9. 離婚とお金VOL9_家事労働分がカギ!専業主婦と共働き2つのケースでの離婚における財産分与はどう違う?
  10. 離婚とお金VOL10_離婚を急いで請求権を放棄すると取り返しがつかない!あとから請求する方法はある?
  11. 離婚とお金VOL11_親の遺産は?離婚時の財産分与でもらえるものと、もらえないもの
  12. 離婚とお金VOL12_財産分与を現物でもらうのはアリ?離婚で不動産をもらうときの注意点
  13. 離婚とお金VOL13_財産分与と慰謝料を受け取ると税金がかかる?離婚と税金の関係について解説
  14. 離婚とお金VOL14_マンション頭金や結婚式費用は離婚時の財産分与でどうなる?
  15. 離婚とお金VOL15_相手の事業を手伝っていたが離婚した場合の財産分与について
  16. 離婚とお金VOL16_借金のある事業や夫の浪費癖により喪失した事業資産がある場合、離婚したら財産分与はどうなる?
  17. 離婚とお金VOL17_浮気した本人は離婚時に財産分与を受け取れる?慰謝料との関係も解説
  18. 離婚とお金VOL18_夫の借金の保証人になっていた場合、離婚時にやるべきことと財産分与について
  19. 離婚とお金VOL19_離婚による財産分与を分割でもらう際に必ずやるべきことと、ローンが残っている不動産のもらい方
  20. 離婚とお金VOL20_姑からのイジメも?離婚で慰謝料を受け取れるケースとその相場について解説
  21. 離婚とお金VOL21_慰謝料も財産分与も請求できる期限がある!不払いを防ぐ方法とは?
  22. 離婚とお金VOL22_事実婚で生まれた子は?養育費をもらえるケースとその期間について解説
  23. 離婚とお金VOL23_諦めたら損!養育費が決まらない場合にとるべき手段
  24. 離婚とお金VOL24_養育費の相場はいくら?年収で計算する方法を解説!
  25. 離婚とお金VOL25_養育費で損しないための対策!毎月払いと一括払いの利点欠点と、不払いを防ぐ方法
  26. 離婚とお金VOL26_養育費はあとから増額や減額ができる?具体的なケースを解説!
  27. 離婚とお金VOL27_失業や借金で養育費を払えないと言われた場合、今までどおり要求できるケースと諦めたほうがいいケース
  28. 離婚とお金VOL28_再婚したら養育費はどうなる?養子縁組との関係について解説
  29. 離婚とお金VOL29_財産分与や養育費の話し合いがうまくいかない場合に、まずやるべきこと
  30. 離婚とお金VOL30_DVが離婚原因の場合、直接会わずに慰謝料や養育費などの話し合いを進める方法を解説
  31. 離婚とお金VOL31_養育費の過剰な取り立ては訴えられるかも?やってはいけない催促とは
  32. 離婚とお金VOL32_養育費が支払われない場合は祖父母に払ってもらえる?法律上の支払義務とは
  33. 離婚とお金VOL33_養育費の支払いを内容証明で催促する方法を解説!
  34. 離婚とお金VOL34_養育費など離婚給付の話し合いがまとまらない場合に裁判を考えるタイミング3つ!
  35. 離婚とお金VOL35_養育費を要求するための少額訴訟のやり方
  36. 離婚とお金VOL36_財産分与が支払われない!借金取立てにも利用される「支払督促」について知っておこう
  37. 離婚とお金VOL37_いきなり裁判はできない!養育費が支払われないときに踏むべき手順について解説
  38. 離婚とお金VOL38_財産分与や養育費の取り決めを無視された場合に財産を差し押さえる手続き方法
  39. 離婚とお金VOL39_財産分与や養育費が支払われない場合、いくら差押えができる?
  40. 離婚とお金VOL40_離婚して子どもを夫に会わせたくないときに考えるべきこと
  41. 離婚とお金VOL41_夫と子どもとの面会は制限していい?祖父母に面会交流権はある?
  42. 離婚とお金VOL42_親権でもめて子どもを連れ去られたときに返してもらう方法を解説
  43. 離婚とお金VOL43_離婚後、子どもに会わせてくれなくなった場合に面会を求める方法とは
  44. 離婚とお金VOL44_離婚後も結婚中の姓を名乗るための手続き
  45. 離婚とお金VOL45_離婚して旧姓に戻っても子どもは夫の姓のまま?妻の戸籍に入り妻の姓にする方法
  46. 離婚とお金VOL46_子どもの姓を親権者ではない方の姓に変える手続き
  47. 離婚とお金VOL47_戸籍からバツイチを消す裏ワザ!注意点も解説
  48. 離婚とお金VOL48_子どもの親権者が虐待をしていたときに親権を変更する方法
監修弁護士
中野 和馬

東京弁護士会

中野 和馬
石木 貴治

東京弁護士会

石木 貴治
山谷 千洋

東京弁護士会

山谷 千洋
堀 翔志

第二東京弁護士会

堀 翔志
水流 恭平

東京弁護士会

水流 恭平
福西 信文

東京弁護士会

福西 信文
川﨑 公司

東京弁護士会

川﨑 公司
大橋 正崇

弁護士法人AO

大橋 正崇
鵜飼 大

ウカイ&パートナーズ法律事務所

鵜飼 大
監修弁護士一覧
弊社が選ばれる3つの理由
離婚について知る