離婚とお金VOL40 離婚して子どもを夫に会わせたくないときに考えるべきこと | 離婚弁護士マップ
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離婚とお金VOL40 離婚して子どもを夫に会わせたくないときに考えるべきこと

夫の浮気やDVなどが原因で離婚をする場合、その多くは妻が親権者となり、子を引き取り育てていくことになります。

もっとも、妻が親権者となって実際に子を育てていても、子と父親との関係が切れるものではありません。

そのため、別れた夫が子に会いたいと考えるのは自然なことだと考えられます。

しかし、妻としては、夫の浮気やDVなどが離婚原因となった場合などは特に、できるだけ、別れた夫に子を会わせたくないと考えることが多いでしょう。

このような場合でも、夫から申し入れがあれば、妻は夫に子を会わせなければならないのでしょうか。

子との面会交流権

離婚をした際に、子を引き取らなかった親が、直接子に会ったり、電話やメール、手紙などで子に接触できる権利を「面会交流権(面会交渉権)」といいます。

現行法においても、面会交流権を定めた規定が存在します。

具体的には、協議離婚をする際には、子の両親は、子の監護者や養育費に加え、子との面会や交流について定めることとされています。

離婚によっても、親子関係が切れるわけではありませんので、当然のことかもしれませんが、離婚により親権や監護権を持たなくなった親であっても、自分の子と会ったり、電話やメールなどで連絡を取り合う権利までは奪われません。

そのため、たとえ、妻が別れた夫と子を会わせることに強行に反対していても、夫から面会交流の申し入れがあれば、原則として、その申し入れを拒否することはできません。

もっとも、過去に夫が子を虐待していたり、夫と子を会わせることでそのまま子を連れ去られてしまう危険があるなど、子の福祉の観点から、夫に子を会わせることが相当でないと認められる場合には、夫からの面会交流の申し入れを拒否することができます

この点は、現行法にも明記されており、子との面会交流を夫婦間で話し合う場合には、その子の利益を最も考慮しなければならないとされています。

面会交流に関する裁判手続き

別れた夫から妻に対して面会交流を申し入れたにもかかわらず、妻がその申し入れを拒否した場合、夫は妻との話し合いを諦めて、面会交流の調停を家庭裁判所に申し立てることができます。

裁判所では、主に、夫と子を会わせることが子の福祉や利益を害することにならないかという観点から、面会交流を許すかどうかが判断されます。

子の福祉や利益を害するおそれがあれば、夫の面会交流権は認められませんし、反対に、子の利益や福祉を害するおそれがなければ、夫の面会交流権が認められ、裁判所は妻に対して、夫と子を面会させるよう命じることになります。

具体的には、夫婦間での協議により、夫と子を会わせる日時や回数、場所が決められることが一般的です。

面会交流を決める際には子の意思が尊重される

面会交流が問題となるのは、その対象となる子が未成年者の場合に限られます。

成人に達している子は、夫と面会するかどうかを自分で判断することができますので、子の意思に委ねられることになります。

その意味では、子が未成年者であっても、15歳以上である場合には、ある程度自分で判断することができるものと考えられますので、子の意思を尊重すべきでしょう。

そのため、たとえ、妻が夫と子を会わせることに反対していても、子が夫と会うことを希望していれば、その子の意思を尊重すべきであって、妻がその子の意思を無視してまで、夫と子を会わせることを阻止することはできないのです。

面会交流を制限するためには?

子の利益や福祉を害するおそれがある場合には、面会交流を制限することが可能だとされています。

そのため、面会交流に関する審判手続きや裁判手続きでは、このことを積極的に主張立証していく必要があります。

具体的には、子の利益や福祉を害するおそれがあるものとして、子や子の生活環境に与える影響、面会交流の申立人自身に問題があること、現在の両親の関係性などを主張立証することが考えられます。

取り決めた面会交流を拒否すると慰謝料を請求される場合もある

離婚時に、夫婦間で子の面会交流に関する取り決めをしたにもかかわらず、その取り決めに違反して、これを拒否すると、場合によっては、相手から慰謝料を請求されることがあります

面会交流に関する取り決めが、調停や裁判でなされている場合には、裁判所から罰金を課される可能性もあります

面会交流の申し入れを拒否できるケース

別れた夫と子を会わせることが、子に悪影響を与えたり、子の福祉が害されるおそれがあると認められる場合は、妻は夫からの面会交流の申し入れを拒否することができます。

具体的には、過去に夫が子を虐待したことがある場合、夫が酒乱であったり、ギャンブルにはまっているなどして子に悪影響を与えるおそれがある場合、また、夫やその親族が子を連れ去るおそれがある場合、離婚後もDV被害を受ける可能性があるため妻の住所を秘匿している場合などは、面会交流の申し入れを拒否することができます。

もっとも、以上のような事情があることから、妻が面会交流を拒否しているにもかかわらず、強行な手段を使って子に接触しようとしてくる場合があります。

そのような場合には、直ちに近隣の警察に相談し、夫から暴力を受けるなどした場合には、被害届を出すことも考えておくべきでしょう。

まとめ

夫婦が離婚したからといって、子との関係が切れるわけではありません。

そのため、親には、離婚後も子と直接会ったり、電話などで連絡を取ることができる権利が保障されています。

もっとも、親がもつ面会交流権は無制限に認められているものではありません。

大切なのは、子の利益・福祉を害することにならないか、という観点から、子と会わせることの妥当性を判断することなのです。

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