別れた夫には、子どもに会わせたくないと思ったとき、一切会わせないなど、面会を制限してもいいのでしょうか。
また、夫の両親に面会交流権はあるのでしょうか。
そのあたりについて解説します。
面会交流権とは何か
夫婦が離婚した場合、子どもとの面会や交流について、離婚協議の際に決めておく必要があります。
では、この面会や交流についてはどのような制限を加えてもいいのでしょうか。
また、どのような観点から決めるべきなのでしょうか。
面会交流権とは
夫婦が離婚する場合で子どもがいる場合、夫または妻のどちらかが子どもを引き取り育てていくことになります。
このとき、子どもを引き取らなかった親にも子どもに会う権利はあります。
この子どもに会う権利を面会交流権といいます。
面会交流権は、夫婦が離婚をするときに、協議して決めておかなければならないものとなっています。
この面会交流権は、子どもとの面会や、その他の子どもとの交流についての取り決め事項になります。
また、この面会交流権を決める際には、子どもの利益を最も優先して考慮しなければならない、とされています。
なぜなら、面会交流権は、親の権利というだけでなく、子どもが親に会う権利でもありますので、子どもの福祉の観点から判断する必要があるからなのです。
また、離婚時の協議によって、面会交流権が決まらない場合は、家庭裁判所における調停や審判によって決めることもあります。
子どもの意思の尊重
面会交流権は、子どもが親に会う権利でもありますので、子どもの福祉の観点から子どもにとって最も利益になる形で決めていく必要があります。
ですので、子どもの意思も尊重されるべきです。
親の意見だけで決めるのではなく、子ども意見も取り入れる必要があるのです。
家庭裁判所が調停や審判によって、面会交流権を決める場合は、子どもが15歳以上であれば、家庭裁判所は必ず子どもの陳述を聴取しなければならないとされていますし、また15歳未満であっても、できるかぎり子どもの意向を把握するようにしています。
ですので、離婚協議により面会交流権を決める場合でも、子どもが15歳以上であれば、子どもの意思を尊重すべきでしょうし、15歳未満であっても、できる限り子どもの意思を把握したうえで決めるようにしましょう。
協議ではどのような内容を決めるのか
協議離婚する場合、面会交流権についても取り決めをしておく必要があります。
ただし、離婚届自体には、親権者がどちらになるかを決めておく必要があるのですが、この面会交流権を決めていないからといって離婚届が受理されないというようなことはありません。
面会交流権は、あくまでも離婚の話し合いの中で決めていくものとなります。
また、面会交流権はできるだけ具体的に決めておくほうが、後々のトラブルにもなりにくいですので、きちんと決めておき、離婚協議書などの書面として残しておきましょう。
内容としては、会う回数や日時、時間、場所、どちらが送迎するのか、宿泊できるのかどうか、プレゼントは贈っていいのかどうかなどを決めておく必要があります。
また、このほか、臨時の面会を認めるのかどうかといってことも決めておくといいでしょう。
面会だけでなく交流については、電話やメールなども含まれてきますので、こちらも回数や日時などを決めておくようにしましょう。
また、もし約束が守られなかったときはどうするのか、次回の面会を剥奪するなどの罰則も決めておくことで、約束を破られる状況も未然に防げるかもしれません。
これらを口約束だけでは、言った、言わない、の水掛け論になってしまいますので、きちんと書面にして残しておくようにしましょう。
面会交流権はどこまで制限できるのか
では、子どもの面会交流権は、どこまで制限できるのでしょうか。
自由に制限していいものなのでしょうか。
上にも記載しましたように、面会交流権は子どもを育てない方が子どもと会う権利となりますので、子どもと一切会わせないというようなことはできません。
ただ単に、離婚後夫には子どもと会わせたくないというような理由から面会交流させないというようなことはできませんので、協議により面会交流について取り決める場合は、きちんとそのことを考慮した上で、決めるようにしましょう。
また、面会交流について拒否された場合は、家庭裁判所に面会交流についての調停を申し立てることができます。
面会交流について、一切会わせないなどの状態になっている場合は、家庭裁判所に調停の申し立てを行い、面会交流の許可を得るようにしましょう。
家庭裁判所は、子どもの利益や福祉に反しなければ、調停や審判によって面会や交流について具体的内容を定めます。
子どもの利益や福祉に反する場合
面会交流は、子どもの利益を最も優先して決めるべきものになります。
ですので、子どもの利益や福祉を著しく害すると判断される場合には、面会交流を認めるべきではありません。
たとえば、面会交流後に子どもの情緒が不安定になる場合や、面会について精神的な動揺が見られる場合など、子どもの利益の観点から認められない場合もあります。
また、過去に虐待や暴力があった場合や、その恐れがある場合、過去DVが会った場合、ギャンブルや酒乱などの場合は、子どもの福祉が害される恐れがありますので、面会交流を拒絶できます。
このほか、子どもを連れ去る恐れがある場合なども面会交流を拒否できる場合があります。
また、面会交流が認められない場合であるのに、連れ去りや暴力が発生する場合は、警察に相談し、被害届を提出するようにしましょう。
祖父母に面会交流権はあるのか
別れた夫の祖父母が面会を要求してくるようなことがあります。
祖父母にも面会交流権はあるのでしょうか。
この場合、どのような方法をとればいいのでしょうか。
祖父母に面会交流権はない
面会交流権は、別れた夫婦で、子どもを育てない方にある権利です。
これは、子どもへの利益や福祉を著しく害する恐れがない限り、親としての権利となります。
ですが、祖父母には面会交流権はありません。
面会交流権はあくまでもその子どもの親の権利となります。
ですので、もし祖父母から面会交流の要求があったとしても、拒絶することは可能です。
ただし、やはりここは子どもの利益や福祉の観点からも考える必要があります。
たとえ、祖父母に面会交流の権利がなかったとしても、子どもから見れば、おじいちゃん、おばあちゃんになりますので、その点を考慮して約束を取り決めてもいいかもしれません。
また、その場合も、きちんと具体的な形で取り決めをするようにし、書面に残しておくようにしましょう。
約束を守らなかった場合の罰則などもきちんと決めておくことで、よりトラブルを未然に防ぐことができるようになります。
ただし、子どもを連れ去る恐れがあるような場合については、面会交流についてきちんと拒絶するようにしましょう。
この場合は子どもの福祉の観点から見ても、利益が害される恐れがあるからです。
もしも面会交流の約束が守られなかったとき
面会交流について事細かに決めたとしても、そのすべてが守られるわけではありません。
では、面会交流についての約束が破られたときは、どのような対処方法があるでしょうか。
もし、協議離婚で離婚した場合で、協議によって面会交流も決めた場合、面会交流の約束が守られない場合は、家庭裁判所に対して調停を申し立てます。
たとえば、月1回、子どもと会えるというような約束をしていたけれど、相手がそれを守らず、一切会うことができないような場合、家庭裁判所に調停の申し立てを行い、面会交流の具体的な方法を定めていきます。
また、家庭裁判所の調停や審判で決まった面会交流に関する約束が破られた場合は、破った方を債務者として間接強制の申し立てができる可能性もあります。
ただし、この場合でも面会交流が具体的に定まっていない場合はできません。
まず、具体的に面会交流の内容が決まっている場合、家庭裁判所に面会交流の審判や調停条項を守るように履行勧告してもらいます。
この履行勧告に相手が従わない場合、審判書や調停調書を債務名義として間接強制の強制執行の手続きをとっていきます。
ただし、この間接強制の方法が可能かどうかについては、いろいろと意見が分かれています。
可能な場合としては、面会交流についての方法がより具体的に定められている必要があるとされているのです。
まとめ
夫婦が離婚した場合、離婚後は夫婦のどちらかが子どもを引き取り育てていくことになります。
子どもを引き取らなかった方も親であることに変わりはありませんので、子どもに面会交流する権利があり、これを面会交流権といいます。
面会交流について決める場合は、子どもの利益と福祉を最優先して決めなければなりません。
また、面会交流権は親だけの権利ではなく子どもが親に会う権利でもあります。
ですので、子どもの意思も尊重した上で決める必要があります。
面会交流については、具体的に決めることで約束を守らないなどのトラブルを未然に防ぐことができます。
面会交流権は親としての権利ですので、離婚後一切会わせないなどの約束をすることはできません。
ただし、子どもの利益や福祉に著しく害する恐れがある場合は、面会交流を一切拒絶することもできます。
祖父母には基本的に面会交流権はありませんが、子どもの福祉の観点から判断し、書面で約束を取り決めるという方法もあります。
もし面会交流について約束が守られなかったときは、家庭裁判所に調停の申し立てを行い、具体的な方法を定めていきます。
家庭裁判所の調停や審判で決まった面会交流の約束が破られた場合は、破った方を債務者として間接強制の申し立てを行います。
ただし、この方法をとるためには面会交流についてより具体的な方法が決められている必要があります
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