両親が離婚をすると、当然どちらかの配偶者(妻であることが多い)が、戸籍から抜けます。
しかし、子どもがいた場合、たとえ戸籍から抜ける側の親が、子どもを手元に置き育てることとなっても、子どもの戸籍は結婚中の戸籍に残ったままであり、また、苗字も変わることはありません。
遠方に引っ越した場合など、子どもの戸籍がすぐに取り寄せられないのは不便ですし(※自治体によっては、事前登録をすることにより、全国のコンビニで取得することが可能な場合もあります)、苗字も別れた配偶者と同じというのはあまり気持ちのよいものでもなく、何より手元に子どもを起き育てている親と子どもの苗字が異なるというのは、子どもが傷つく恐れもあります。
では、なにか手段はないのでしょうか?
同じ戸籍に入れるためには裁判手続きが必要
結婚をし、苗字を配偶者の苗字に変更した場合、離婚をすると配偶者の戸籍から抜け、また苗字も元の苗字になります。
しかし、子ども自身は、たとえ子どもの親権者となる・子どもを手元に置き育てる場合でも、先程述べた通り、戸籍は移らず、苗字も変わることはありません。
自分の戸籍に子どもを入れたい場合は、まず子どもの苗字を変える裁判上の手続き(「子の氏の変更許可申立」)が必要です。
苗字が異なる人は、たとえ親子であっても、同じ戸籍に入ることが出来ないからです。
裁判手続きといっても、調停離婚などのように相手方がいる訳ではなく、裁判所とのやり取りのみで(場合によっては郵送のみで可能)すみますのでご安心ください。
なお、この手続きは、離婚をしたが苗字は旧姓に戻らず、結婚時の苗字を名乗っている場合も必要です。
氏の変更許可の申立手続き①子どもが15歳以上の場合
子ども自身が手続きを行うことができます。
場所は、子どもの住所地を管理(法律用語で「管轄」)する家庭裁判所になります。
詳しくは、裁判所にお問い合わせいただくか、ホームページでも確認することができます。
概ね、必要とされる書類は下記の通りです。
用紙については、裁判所でも用意されておりますし、裁判所のホームページ(「裁判所 子の氏の変更許可の申立」で調べてみてください)で記入例も含めダウンロードすることができます。
- ・申立用紙(郵送で行う場合は、右上の余白に捨印を押しておくと、簡単な記入ミスなどは裁判所で訂正してくれることもあります)
- ・収入印紙800円(別途、切手が必要です。内訳は裁判所によって異なります)
- ・子どもの現在の戸籍
- ・子どもが入る予定の親の戸籍
※なお、子ども自身が裁判所に直接行く場合は、印鑑と身分証明書をお持ちください。
氏の変更許可の申立手続き②子どもが15歳未満の場合
申立者が親権者となります(例えば父親が親権者である場合は、母親の戸籍に移ったり・母親の苗字に変更したい場合でも父親にやってもらう必要があります)。
記載例が少し異なるだけで、必要書類は、①と同じです。
申立後の流れ~裁判所にて
東京家庭裁判所を例に挙げると、子ども自身が裁判所に行けば、原則、その日に許可が出されます。
弁護士や親権者が書類を提出した、あるいは郵送で書類を提出した場合は、時間がかかる場合もあります。
申立後の流れ~役所にて
裁判所の許可で自動的に苗字や戸籍が変わる訳ではなく、役所への届け出(入籍届)が必要です。
届出期間に期限はありません。
提出場所は、子の本籍地あるいは親権者か子どもの住民票所在地になります、必要書類としては、上記手続きで家庭裁判所が発行した「氏の変更許可の審判書」が必要となります。
※子の本籍地以外の場所で、入籍届を行う場合は、戸籍が必要になる場合もあるので、事前に役所に問い合わせておくとよいでしょう
他に手続きが必要な場合もある~親権者の許可が得られない場合
子の戸籍を変更し、苗字を変更するには裁判の手続きが必要であることがわかりました。
そしてこられの手続きは、子どもが15歳以上であるならば、子ども自身が行うことが出来ますが、子どもが15歳未満の場合は、戸籍上の親権者が行わなければなりません(ただ単に子どもを手元に置いて育てている場合ではだめです)。
親権者側の親から子の氏の変更許可の申立を行い、家庭裁判所の許可を得れば、もう一方の親の戸籍・苗字に変更することは可能です(例えば、親権者が父親の場合、父親が申し立てを行い、母親の戸籍・苗字にすることが可能)。
では親権者がこれらの手続きに同意・協力しなかった場合はどのようにしたらよいのでしょうか?その場合は、子の氏の変更許可申立ての前段階として、「親権者変更の許可」を裁判所に申し立てなければなりません(離婚後の親権者の変更には裁判所の許可が必要です)。
親権者変更の裁判手続きは、氏の変更とは異なり、単なる書類のやり取りだけではなく、どちらが親権者として適しているかなど両親双方の現状や生活状況などから判断されますので、相手方からの同意があるならばまだしも、必ずしも認められる訳ではありません。
そもそも、相手方からの同意や協力があるならば、わざわざ親権者変更の許可の申立てを行わず、氏の変更許可の申立のみを行えばいいのですから、親権者変更の許可を行う必要があった場合は、手続自体を専門家にお任せするのがベストといえるでしょう。
まとめ
子の氏や戸籍を変更するには、裁判手続きをすることによって可能になります。
氏の変更の許可の裁判自体は、お子さんが15歳以上である場合にはお子さん自身が行うことが出来、手続きもそこまで難しくはありません。
しかし、取り寄せる書類が本当に合っているかが分からない状態で裁判所に書類を提出するのは不安ですし、訂正や再提出がある場合には、色々と時間的にも精神的にも疲労を伴います。
また、前段階として親権者変更の申立てを行わなければいけないときはなおさらでしょう。
離婚に伴う裁判手続きは、専門家に依頼せず、ご自身のみで遂行している方も少なくありません。
しかし、手続きに長時間、時間を費やすより、お子さんの利益を最優先に考え、専門家に相談するのも一つの方法です。
▼離婚とお金 シリーズ
- 離婚とお金VOL1_あとで慌てない!離婚の前に必ず決めておくべき3つのこと
- 離婚とお金VOL2_要チェック!離婚したら相手から受け取れる4種類のお金と注意点
- 離婚とお金VOL3_どこまで認められる?離婚前の別居期間中の生活費で請求できる項目とは
- 離婚とお金VOL4_離婚の財産分与と慰謝料の要求は時効に注意!約束を守らせる秘訣とは?
- 離婚とお金VOL5_親権者でなくても離婚後に子どもを引き取れる「監護者」とは?
- 離婚とお金VOL6_「離婚後は子どもを会わせたくない」は認められない?まずは面会のルールを決めよう
- 離婚とお金VOL7_離婚時に決めた財産分与や養育費が支払われない場合にとれる差押えなどの解決方法
- 離婚とお金VOL8_内縁など事実婚状態でも財産分与や慰謝料、養育費の要求は可能?
- 離婚とお金VOL9_家事労働分がカギ!専業主婦と共働き2つのケースでの離婚における財産分与はどう違う?
- 離婚とお金VOL10_離婚を急いで請求権を放棄すると取り返しがつかない!あとから請求する方法はある?
- 離婚とお金VOL11_親の遺産は?離婚時の財産分与でもらえるものと、もらえないもの
- 離婚とお金VOL12_財産分与を現物でもらうのはアリ?離婚で不動産をもらうときの注意点
- 離婚とお金VOL13_財産分与と慰謝料を受け取ると税金がかかる?離婚と税金の関係について解説
- 離婚とお金VOL14_マンション頭金や結婚式費用は離婚時の財産分与でどうなる?
- 離婚とお金VOL15_相手の事業を手伝っていたが離婚した場合の財産分与について
- 離婚とお金VOL16_借金のある事業や夫の浪費癖により喪失した事業資産がある場合、離婚したら財産分与はどうなる?
- 離婚とお金VOL17_浮気した本人は離婚時に財産分与を受け取れる?慰謝料との関係も解説
- 離婚とお金VOL18_夫の借金の保証人になっていた場合、離婚時にやるべきことと財産分与について
- 離婚とお金VOL19_離婚による財産分与を分割でもらう際に必ずやるべきことと、ローンが残っている不動産のもらい方
- 離婚とお金VOL20_姑からのイジメも?離婚で慰謝料を受け取れるケースとその相場について解説
- 離婚とお金VOL21_慰謝料も財産分与も請求できる期限がある!不払いを防ぐ方法とは?
- 離婚とお金VOL22_事実婚で生まれた子は?養育費をもらえるケースとその期間について解説
- 離婚とお金VOL23_諦めたら損!養育費が決まらない場合にとるべき手段
- 離婚とお金VOL24_養育費の相場はいくら?年収で計算する方法を解説!
- 離婚とお金VOL25_養育費で損しないための対策!毎月払いと一括払いの利点欠点と、不払いを防ぐ方法
- 離婚とお金VOL26_養育費はあとから増額や減額ができる?具体的なケースを解説!
- 離婚とお金VOL27_失業や借金で養育費を払えないと言われた場合、今までどおり要求できるケースと諦めたほうがいいケース
- 離婚とお金VOL28_再婚したら養育費はどうなる?養子縁組との関係について解説
- 離婚とお金VOL29_財産分与や養育費の話し合いがうまくいかない場合に、まずやるべきこと
- 離婚とお金VOL30_DVが離婚原因の場合、直接会わずに慰謝料や養育費などの話し合いを進める方法を解説
- 離婚とお金VOL31_養育費の過剰な取り立ては訴えられるかも?やってはいけない催促とは
- 離婚とお金VOL32_養育費が支払われない場合は祖父母に払ってもらえる?法律上の支払義務とは
- 離婚とお金VOL33_養育費の支払いを内容証明で催促する方法を解説!
- 離婚とお金VOL34_養育費など離婚給付の話し合いがまとまらない場合に裁判を考えるタイミング3つ!
- 離婚とお金VOL35_養育費を要求するための少額訴訟のやり方
- 離婚とお金VOL36_財産分与が支払われない!借金取立てにも利用される「支払督促」について知っておこう
- 離婚とお金VOL37_いきなり裁判はできない!養育費が支払われないときに踏むべき手順について解説
- 離婚とお金VOL38_財産分与や養育費の取り決めを無視された場合に財産を差し押さえる手続き方法
- 離婚とお金VOL39_財産分与や養育費が支払われない場合、いくら差押えができる?
- 離婚とお金VOL40_離婚して子どもを夫に会わせたくないときに考えるべきこと
- 離婚とお金VOL41_夫と子どもとの面会は制限していい?祖父母に面会交流権はある?
- 離婚とお金VOL42_親権でもめて子どもを連れ去られたときに返してもらう方法を解説
- 離婚とお金VOL43_離婚後、子どもに会わせてくれなくなった場合に面会を求める方法とは
- 離婚とお金VOL44_離婚後も結婚中の姓を名乗るための手続き
- 離婚とお金VOL45_離婚して旧姓に戻っても子どもは夫の姓のまま?妻の戸籍に入り妻の姓にする方法
- 離婚とお金VOL46_子どもの姓を親権者ではない方の姓に変える手続き
- 離婚とお金VOL47_戸籍からバツイチを消す裏ワザ!注意点も解説
- 離婚とお金VOL48_子どもの親権者が虐待をしていたときに親権を変更する方法