離婚とお金VOL34 養育費など離婚給付の話し合いがまとまらない場合に裁判を考えるタイミング3つ! | 離婚弁護士マップ
  • tel-button
  • mail-button
top center bottom

離婚とお金VOL34 養育費など離婚給付の話し合いがまとまらない場合に裁判を考えるタイミング3つ!

離婚をする際に、財産分与や慰謝料、養育費などについて、何ら取り決めをしなかったことをいいことに、離婚後もこれらの支払いを一切してくれないというケースがあります。

その後も、具体的な金額を取り決めようと、話し合いを続けているが、お互いが考えている金額に相応の差があり、金額が決まらないまま時間だけが過ぎてしまう、ということも少なくありません。

このような場合、その後も話し合いを続けることにあまり意味はありません。

どこかで見切りをつけて、他の方法を検討する必要があります。

養育費などの支払いを求める裁判を起こすタイミング

裁判所を利用した裁判手続き

財産分与や慰謝料、養育費などの支払いに関して、別れた夫との話し合いが平行線となっている場合には、話し合いによって解決できる可能性は低くなっているといえます。

そのため、どこかのタイミングで見切りをつけて、裁判手続きを利用することを検討する必要があります。

もっとも、利用すべき裁判手続きは、財産分与や慰謝料、養育費の支払いについて、夫婦間で取り決めをしていたかどうかによって異なります。

夫婦間に取り決めがある場合

財産分与などの支払いについて、夫婦間で具体的な金額を取り決めていたにもかかわらず、別れた夫が支払いをしないというような場合、妻は簡易裁判所に少額訴訟を提起したり、支払督促を申し立てることができます。

「少額訴訟」とは、支払いを求める金額が60万円以下である場合に利用できる裁判手続きであり、原則として1回かぎりの期日で判決をもらえます。

「支払督促」とは、金銭の支払いを求める人(債権者)の申立てにより、裁判所が、金銭の支払義務を負う人(債務者)に金銭を支払うよう命じてくれる手続きです。

この手続きでは、債務者が2週間以内に異議を出さなければ、債権者の請求した内容がそのまま確定します。

このように、少額訴訟や支払督促の手続きは、調停や裁判などにくらべて、早期に判決(=「債務名義」といいます)などをもらうことができますので、さらに続けて夫が支払わない場合には、給料を差し押さえることができます。

夫婦間に取り決めがない場合

財産分与などの支払いについて、夫婦間で具体的な取り決めをしていなかった場合には、家庭裁判所に調停や審判を申し立て、その手続きの中で、具体的な支払額などを取り決めることができます。

調停はあくまで当事者間での話し合いが前提となりますので、いずれか一方が金額などの条件面に納得しなければ、調停は不成立(=「不調」といいます)となり、審判や裁判(人事訴訟)で具体的な金額を決めることになります。

他方で、審判を申し立てた場合には、裁判所が具体的な支払額を決定することになります。

裁判所が下した決定は、不服がない限り、確定することになります。

このようにして、調停や審判、裁判で取り決められた財産分与などの支払いを夫が怠った場合に、調停調書、審判書、判決書などを債務名義として、給料を差し押さえることができるのは、夫婦間に取り決めがある場合と同じです。

裁判手続きを利用するタイミング

裁判手続きを利用すべきタイミングは、一律ではありませんが、以下の場合には、裁判手続きを利用するタイミングにあると考えられます。

夫が話し合いに一切応じない場合

夫が話し合いに一切応じない場合は、夫に財産分与や慰謝料、養育費などを支払う意思がないものと考えられます。

このような場合に、夫が翻意することは期待できませんので、すぐに裁判手続きを利用すべきだと考えられます。

話し合いには応じるものの、夫が一切譲歩しようとしない場合

双方において譲歩できる部分は譲歩していかなければ、話し合いはまとまりません。

夫が一切譲歩しようとしない場合に、やむなく夫の言い分を受け入れてしまうと、不当に低い金額の支払いしか受けられず、妻や子の生活をより厳しいものにしてしまうおそれがあります。

そのため、正当な金額の支払いを受けられるように、裁判手続きを利用すべきだと考えられます。

時効や除斥期間の完成が近い場合

時効や除斥期間が完成してしまうと、妻は夫に対して、財産分与や慰謝料、養育費の支払いを請求することができなくなります。

「時効」や「除斥期間」は、一定の時間が経過することにより、権利を失わせる制度です。

具体的には、財産分与は離婚成立から2年、慰謝料は離婚成立から3年を経過すると、請求する権利を失います。

そのため、時効や除斥期間の完成が近い場合には、一刻も早く裁判手続きを利用すべきでしょう。

このほかにも、別れた夫から暴力や脅しを受けるおそれがあるような場合には、直接顔を合わせて話し合いをすること自体危険です。

このような場合には、当事者だけで解決を図ろうとするのでなく、裁判手続きを利用し、第三者である裁判所を中に入れた方がよいでしょう。

裁判手続きを利用する場合には弁護士などの専門家に相談した方がいい

離婚や離婚に伴う財産分与、親子関係に関わる面会交流などのような家庭内の紛争を「家事事件」といいます。

家事事件は、その性質上、第三者である裁判所が判断を下すよりも、当事者間での話し合いにより解決を図ることを優先すべきだと考えられます。

そのため、家事事件は、裁判を起こす前に必ず調停を申し立てなければなりません(=「調停前置主義」といいます)。

たとえば、財産分与や養育費などの支払いに関する紛争についても、まずは調停から始めることが原則になっています。

調停手続きでは、夫婦のそれぞれが顔を合わせることなく、裁判官と有識者2名で構成される調停委員会で自分の意見を述べます。

必要に応じて、調停委員のアドバイスなどを受けながら、最終的にお互いが納得できれば、調停が成立することになります。

調停が成立するまでに複数の期日を要するケースもあれば、比較的短期間で成立するケースもあります。

調停が成立すれば、調停調書という確定判決と同じ効力をもつ調書が作られ、夫が支払いを怠った場合には、調停調書を債務名義として夫の給料を差し押さえることができます。

反対に、調停が不成立となった場合(不調といいます)は、審判もしくは裁判により、裁判所が判断することになります。

たとえば、財産分与や養育費の支払いに関する調停が不調となった場合は、自動的に審判に移行することになりますので、具体的な支払額などは裁判所によって決められることになります。

このように、調停手続きは、あくまで当事者間での話し合いが前提となるため、条件面などに納得ができなければ、調停を不成立とすることができます。

しかし、審判手続きや裁判手続きとなるとそうはいきません。

これらの手続きでは、裁判所が判断を下すことになるため、少しでも納得のいく判断をしてもらうよう、裁判所に働きかけなければなりませんが、どのような働きかけをすべきかを知らない人がほとんどです
そのため、本人で対応できる手続きは、調停までであって、審判や裁判に移行した場合には、弁護士などの専門家に相談すべきだと考えられます。

まとめ

養育費などの離婚給付について、話し合いができていたとしても、相手の対応次第では、話し合いによる解決を諦め、裁判手続きを利用することを検討する必要があります。

相手が話し合いに応じないことはもちろんのこと、話し合いに応じている場合であっても、自分の考えを押し通してくるような場合には、早めに見切りをつけることも大事です。

なぜなら、裁判手続きを利用した方がかえって早期解決につながることもあるからです。

▼離婚とお金 シリーズ

  1. 離婚とお金VOL1_あとで慌てない!離婚の前に必ず決めておくべき3つのこと
  2. 離婚とお金VOL2_要チェック!離婚したら相手から受け取れる4種類のお金と注意点
  3. 離婚とお金VOL3_どこまで認められる?離婚前の別居期間中の生活費で請求できる項目とは
  4. 離婚とお金VOL4_離婚の財産分与と慰謝料の要求は時効に注意!約束を守らせる秘訣とは?
  5. 離婚とお金VOL5_親権者でなくても離婚後に子どもを引き取れる「監護者」とは?
  6. 離婚とお金VOL6_「離婚後は子どもを会わせたくない」は認められない?まずは面会のルールを決めよう
  7. 離婚とお金VOL7_離婚時に決めた財産分与や養育費が支払われない場合にとれる差押えなどの解決方法
  8. 離婚とお金VOL8_内縁など事実婚状態でも財産分与や慰謝料、養育費の要求は可能?
  9. 離婚とお金VOL9_家事労働分がカギ!専業主婦と共働き2つのケースでの離婚における財産分与はどう違う?
  10. 離婚とお金VOL10_離婚を急いで請求権を放棄すると取り返しがつかない!あとから請求する方法はある?
  11. 離婚とお金VOL11_親の遺産は?離婚時の財産分与でもらえるものと、もらえないもの
  12. 離婚とお金VOL12_財産分与を現物でもらうのはアリ?離婚で不動産をもらうときの注意点
  13. 離婚とお金VOL13_財産分与と慰謝料を受け取ると税金がかかる?離婚と税金の関係について解説
  14. 離婚とお金VOL14_マンション頭金や結婚式費用は離婚時の財産分与でどうなる?
  15. 離婚とお金VOL15_相手の事業を手伝っていたが離婚した場合の財産分与について
  16. 離婚とお金VOL16_借金のある事業や夫の浪費癖により喪失した事業資産がある場合、離婚したら財産分与はどうなる?
  17. 離婚とお金VOL17_浮気した本人は離婚時に財産分与を受け取れる?慰謝料との関係も解説
  18. 離婚とお金VOL18_夫の借金の保証人になっていた場合、離婚時にやるべきことと財産分与について
  19. 離婚とお金VOL19_離婚による財産分与を分割でもらう際に必ずやるべきことと、ローンが残っている不動産のもらい方
  20. 離婚とお金VOL20_姑からのイジメも?離婚で慰謝料を受け取れるケースとその相場について解説
  21. 離婚とお金VOL21_慰謝料も財産分与も請求できる期限がある!不払いを防ぐ方法とは?
  22. 離婚とお金VOL22_事実婚で生まれた子は?養育費をもらえるケースとその期間について解説
  23. 離婚とお金VOL23_諦めたら損!養育費が決まらない場合にとるべき手段
  24. 離婚とお金VOL24_養育費の相場はいくら?年収で計算する方法を解説!
  25. 離婚とお金VOL25_養育費で損しないための対策!毎月払いと一括払いの利点欠点と、不払いを防ぐ方法
  26. 離婚とお金VOL26_養育費はあとから増額や減額ができる?具体的なケースを解説!
  27. 離婚とお金VOL27_失業や借金で養育費を払えないと言われた場合、今までどおり要求できるケースと諦めたほうがいいケース
  28. 離婚とお金VOL28_再婚したら養育費はどうなる?養子縁組との関係について解説
  29. 離婚とお金VOL29_財産分与や養育費の話し合いがうまくいかない場合に、まずやるべきこと
  30. 離婚とお金VOL30_DVが離婚原因の場合、直接会わずに慰謝料や養育費などの話し合いを進める方法を解説
  31. 離婚とお金VOL31_養育費の過剰な取り立ては訴えられるかも?やってはいけない催促とは
  32. 離婚とお金VOL32_養育費が支払われない場合は祖父母に払ってもらえる?法律上の支払義務とは
  33. 離婚とお金VOL33_養育費の支払いを内容証明で催促する方法を解説!
  34. 離婚とお金VOL34_養育費など離婚給付の話し合いがまとまらない場合に裁判を考えるタイミング3つ!
  35. 離婚とお金VOL35_養育費を要求するための少額訴訟のやり方
  36. 離婚とお金VOL36_財産分与が支払われない!借金取立てにも利用される「支払督促」について知っておこう
  37. 離婚とお金VOL37_いきなり裁判はできない!養育費が支払われないときに踏むべき手順について解説
  38. 離婚とお金VOL38_財産分与や養育費の取り決めを無視された場合に財産を差し押さえる手続き方法
  39. 離婚とお金VOL39_財産分与や養育費が支払われない場合、いくら差押えができる?
  40. 離婚とお金VOL40_離婚して子どもを夫に会わせたくないときに考えるべきこと
  41. 離婚とお金VOL41_夫と子どもとの面会は制限していい?祖父母に面会交流権はある?
  42. 離婚とお金VOL42_親権でもめて子どもを連れ去られたときに返してもらう方法を解説
  43. 離婚とお金VOL43_離婚後、子どもに会わせてくれなくなった場合に面会を求める方法とは
  44. 離婚とお金VOL44_離婚後も結婚中の姓を名乗るための手続き
  45. 離婚とお金VOL45_離婚して旧姓に戻っても子どもは夫の姓のまま?妻の戸籍に入り妻の姓にする方法
  46. 離婚とお金VOL46_子どもの姓を親権者ではない方の姓に変える手続き
  47. 離婚とお金VOL47_戸籍からバツイチを消す裏ワザ!注意点も解説
  48. 離婚とお金VOL48_子どもの親権者が虐待をしていたときに親権を変更する方法
監修弁護士
中野 和馬

東京弁護士会

中野 和馬
石木 貴治

東京弁護士会

石木 貴治
山谷 千洋

東京弁護士会

山谷 千洋
堀 翔志

第二東京弁護士会

堀 翔志
水流 恭平

東京弁護士会

水流 恭平
福西 信文

東京弁護士会

福西 信文
川﨑 公司

東京弁護士会

川﨑 公司
大橋 正崇

弁護士法人AO

大橋 正崇
鵜飼 大

ウカイ&パートナーズ法律事務所

鵜飼 大
監修弁護士一覧
弊社が選ばれる3つの理由
離婚について知る