夫婦が離婚をする際、まだ経済的に独り立ちしていない子供がいる場合は、子育てに関する費用(つまりは養育費)、具体的には食費や医療費、学費などを離婚後も共同して負担しなければいけません。
これは夫婦間の問題というより、子供を持つ親として、当然の義務といえます。
親同士が原因で離婚をすることにより、その子供が貧しい立場になってしまうのは許されるべきではありません。
しかし、子育てには何年という長期的に及ぶものであり、離婚の際に養育費の取り決めをきちんと行ったとしても、お子さんが小さかった場合にはいろいろと事情が変わってしまうことも当然ありえます。
では、一度決めた養育費は後から増やしたり、減らしたりするといった変更をすることが可能なのでしょうか?もし可能ならば、どのような手続を経ればよいのでしょうか?
今回はその具体例と手続について見ていきたいと思います。
養育費の決め方
そもそも、養育費とはどのように決められるのでしょうか?
まず、養育費とは経済的に独り立ちしていない子供が独り立ちするまでに必要とされる費用のことをいいます。
一般的に未成年のことを指しますが、「経済的に独り立ちするまで」と定義付けすることができますので、子供が何歳になるまで支払わなければいけない、という法律はなく、ケース・バイ・ケースといえます。
例えば、子供が中学校を卒業してすぐ就職した場合は、中学校卒業時(15歳)までが支払の基準となりそうですし、大学を卒業するまでとなると(22歳)までが養育費の支払義務の基準といえそうです。
次に養育費の負担分については、当事者の話し合いで解決できればよいのですが、具体的には、
- ・双方の年収
- ・子供の年齢や人数、状況(障害を抱えているなど)
などを総合的に考慮して判断されます。
仮に当事者での話し合いで解決できなかった場合、裁判所の調停を申し立てて、解決を図ることになりますが、裁判所は養育費の算定において算定表を作成しておりそれに基づき判断されることが多いです。
こちらの算定表はインターネットで簡単に入手できますので、当事者のみで解決を図る場合でも、おおよその養育費の基準を知ることができます。
養育費の増額・減額変更が認められるケース
先程述べたとおり養育費の負担は、両親や子供の実情を判断して計算されます。
したがって、子供が成長していく過程で何らかの事情の変更があった場合、それに伴い養育費の増額(あるいは低額)変更は認められるとされています。
このことは、離婚の際に、文章などで「養育費の額は変更しない」と合意の文言があったとしても、認められます。
養育費の支払い方法といえば、
- ・子供を育てている側が、相手方に対して請求する
- ・相手方が子供を育てている側に対して支払う
が一般的といえますが、よくある具体的なケースを下記に挙げます。
増額請求をするケース
●子供を手元に置いて育てている側が、相手方に対して請求する
- ・子供が進学し、離婚当時想定していない学費が発生した
- ・子供を手元に置いて育てている親が大きな病気や怪我をして収入がさがった
- ・相手方の収入が離婚当時に比べ、大幅に上がった
- ・子供が(大きな)怪我や病気などをし、離婚当時に合意した養育費では払えないほどの費用が発生した
減額請求をするケース
●養育費を払っている側が、子供を手元に置いて育てている側に対して請求する
- ・自身が怪我や病気をして、収入が下がった
- ・養育費を受け取っている側の収入が大幅に上がり、今まで通りの金額の養育費を支払わなくても子育てが容易になった
- ・離婚当時、想定していなかった事情(親の介護や再婚)が発生し、必要不可欠な出費が発生した
などが比較的ある養育費増額(減額)請求のケースといえるでしょう。
なお、養育費を払いたくないからといって、故意に怪我をしたり退職をした場合には減額請求が認められないこともあります。
また、時々「子供に会わせてくれない」からといって養育費を減額請求するケースも見かけますが、面接(面会)権と養育費は全く別の問題であると考えられているため、仮に子供に会わせてくれないことを理由とする養育費減額請求が認められることはあまりありません。
養育費増額・減額請求の流れ
では、上記ケースなどで述べた状況が発生した場合の、具体的な請求の流れについて見ていきましょう。
といっても、離婚当時に経験した(最初の)養育費の支払い方法と同じ流れです。
当事者同士で話し合い
離婚時と同様、まずは当事者で話し合います。
通常は増額したい(あるいは減額したい)側が相手方に対し、話し合いの申し入れをすることによってはじまります。
当事者同士の話し合いで解決をすれば、面倒な裁判手続をする必要もありませんので、一番迅速な手続といえます。
ただし、口頭のみの話し合いではなく、結果を書面化(できれば公正証書)しておくべきです。
養育費増額(減額)請求調停の申立て
話し合いがまとまらなかった場合、増額(あるいは減額)したい側が、家庭裁判所に対して調停(裁判所を含めた話し合い)を申し立てることによって開始されます。
調停の場では、調停委員と呼ばれる人が、双方の立場の言い分を聞き、解決案を提示するなどして事態の収束を試みます。
なお、調停は原則、月に1回のペースで行われ、平均して3~5回で調停がまとまる場合が多いです。
審判
上記で話し合いがまとまらなかった場合は、自動的に審判手続へと移行します。
ここでは、裁判官が双方の事情を元に、結論を下します。
調停との大きな違いは、調停は双方の合意が必要であることに対し、審判は双方(あるいは片方)が裁判所の出した結論に納得しなくても成立します。
なお、養育費増額(減額)をする際も、調停と審判では、最初に述べた裁判所が作成した養育費の算定表が用いられ、養育費増額(減額)請求時の、双方の収入や子供の状況などを総合的に判断して、具体的な金額を算定することになります。
まとめ
一度話し合いが成立した後でも、その後の当事者あるいは子供の環境に変化が発生した場合、養育費の増額・減額請求は可能です。
ただし、一度結論に達した話し合いを再考するわけですから、相手方あるいは裁判所に認めてもらうために、養育費の増額・減額請求をするに至った原因(例えば、収入が下がった場合は給与明細など)を準備してから、話し合いに挑むべきといえます。
離婚したからといって、その子供が貧しい生活を送ることは本来ならば認められるべきではありません。
離婚した子供も、両親がいる子供と同水準と同じ生活をしていく権利を持ちますので、何らかの事情が発生した場合は、あきらめることなく養育費の増額を請求すべきでしょう。
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