離婚による財産分与や慰謝料として金銭や不動産などの財産を取得した場合、それに対して税金が課税されるかどうかは重要な問題です。
財産分与等は離婚後の生活を保障するという意味合いもあるところ、多くの税金を課されるのであれば、そのことも考慮して財産分与等の内容を決める必要があるからです。
そこで今回は、財産分与や慰謝料と税金の関係について解説していきます。
財産分与等をする側に対する課税
離婚によって慰謝料や財産分与を支払う側のことを離婚給付者といいます。
また、離婚給付者によって支払われる慰謝料や財産分与等を離婚給付といいます。
離婚給付については誰に対してどのような課税がされるのかわかりにくい部分もありますが、慰謝料や財産分与として金銭を支払う場合には、原則として課税対象にはなりません。
次に、金銭ではなく不動産を相手に給付する場合には、所得税法の課税要件である資産の譲渡に該当し、原則として課税の対象になります。
離婚給付として不動産が給付された場合、不動産については時期によって価格が変動することから、どの時点の価格を基準として課税の対象にするかが問題になります。
この点、財産分与等として不動産の移転があった場合は、移転時の時価に相当する価格に基づいて所得税の課税対象になります。
離婚給付の課税の例として、離婚に伴って夫が妻に1,000万円の現金と移転時1,500万円の時価の不動産を譲渡したケースで考えてみます。
この場合、1,000万円の現金については課税対象になりませんが、不動産については移転時の時価1,500万円を基準として課税対象になります。
もっとも、居住用の不動産等については基本的に高額な控除の対象になる場合が多いため、相当に高額な居住用物件等でなければ、課税額についてはあまり心配する必要のないケースが少なくありません。
とは言え、手持ちの不動産を譲渡する場合にどのような課税が発生するか、どのような控除が適用されるかについては専門的な部分も多いため、資産が高額な場合は一度税理士等に相談することも有効です。
財産分与等を受けた側に対する課税
離婚によって夫名義の自宅を譲渡された妻など、財産分与等を受けた側については、贈与税、所得税、住民税などは原則として課税の対象にはなりません。
ただし、財産分与等によって不動産などを取得した場合、所有権移転登記の費用、免許税、不動産取得税、固定資産税などは後に課税される可能性があります。
財産分与として利益を受けた側には原則として課税されないという制度は、見方によっては不公平に感じる場合もあるかもしれません。
財産分与等を行う側にしてみれば、財産を失ったうえに課税されるという扱いになるからです。
もっとも、財産分与等として利益を得るのは当面の生活を保障するという意味が強い場合も少なくなく、その場合に課税されるとすると、生活を保障するために財産分与等を行うことの意味が損なわれてしまうことになります。
そのため、財産分与等によって利益を得る側が原則として課税されないとするのは、相手の生活を保障するという意味では有効性のある制度といえます。
受けた側の課税の例外
課税についての注意点として、離婚することとなった夫婦の社会的な地位、資産の額、夫婦の収入、離婚の事情などの事情を考慮した結果、給付された財産分与や慰謝料の金額が不相当に過大であるといえる場合には、過大な部分については贈与税が課されることがあります。
例えば、夫婦の資産や収入などから考えて、離婚後に十分な資産が残らない夫から、離婚してもすでに十分な資産のある妻に対して3,000万円の現金が財産分与されたケースにおいて、本来相当といえる金額は500万円とされた場合、過大な2,500万円の部分については贈与税が課されるなどです。
次に、離婚に伴って行われた離婚給付が、実は離婚を口実として債務を免れるための単なる手段であるといえる場合には、相手が譲り受けた全額について贈与税の課税対象になります。
例えば、夫が債権者からの差し押さえを免れるために、実際の関係においては離婚の事実がないのに手続き上離婚し、妻に財産分与として資産の大部分を形式的に譲渡したような場合には、譲渡した分の全額について課税対象になる場合があります。
おわりに
離婚に伴う慰謝料や財産分与等の離婚給付が実施された場合、離婚給付者と離婚給付を受けた者について分けて考えることになります。
離婚給付を行った側である離婚給付者については、金銭を給付した場合は原則として課税の対象になりませんが、不動産を給付した場合は課税の対象になります。
また、不動産については居住用住宅など控除の要件に該当する場合があります。
離婚給付を受けた側については、取得後の登記手続き費用や固定資産税などを除いて、贈与税や住民税などは原則として課税対象になりません。
例外として、給付された資産が不相当に過大な場合や、離婚を口実とした所得隠しに該当する場合などは、課税の対象になることがあります。
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