離婚の手続きVOL33 面会交流権の概要と行使の基準とは?勘違いしがちな親の視点 | 離婚弁護士マップ
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離婚の手続きVOL33 面会交流権の概要と行使の基準とは?勘違いしがちな親の視点

面会交流権とは

離婚をする場合、夫婦の間に子供がいる場合には親権者あるいは監護者を決めることになりますが、その親権者・監護者とならなかった一方の親(非親権者・非監護者)が、別れた子供と会いたいと思うこともあるでしょう。

その際、自分には親権や監護権がないからといって、一生子供と会えないわけではありません。

しかし、子供の親権者・監護者が、非親権者・非監護者と子供をスムーズ会わせてくれたら良いですが、現実にはなかなかスムーズにはいかない場合が多いです。

そこで、非親権者・非監護者が、親権者・監護者の自宅やファミレスやカフェ等のしかるべき外の場所で子供と面会したり、電話や手紙等を用いて子供とやり取りをしたりする行為を「面会交流」といい、さらに面会交流を行使する権利として「面会交流権」が規定されています(民法766条)。

ちなみに、以前は「面会交流」ではなく「面接交渉」という用語が使用されていましたが、本来の親子が、親子の関係としての愛情を深めるためのこの行為を面接交渉という言葉を用いて表現するのは不適切であるとして、面会交流という用語が使用されるようになりました。

親権者・監護者からみてどの程度面会交流権の行使を認めるべきか

非親権者・非監護者が離婚後においても自分の子供に会いたいという希望は保障されるべきものです。

しかし、非親権者・非監護者と子供の親権者・監護者との関係が良いものではない場合等には、どこまで面会交流権を認めてよいのかという問題があります。

さらに、非親権者・非監護者は子供に会うことを希望していても、その面会交流によって子供へ良くない影響を及ぼすおそれが生じた場合には、面会交流を制限する必要があるのではないかという問題等もあり、親権者・監護者としては面会交流権について単純に決めることができる問題ではありません。

特にわが国においては、どの離婚方法をとっても、友好的に離婚するというケースが少なく、さらに子供の親権や養育費等をめぐった愛憎の葛藤が強く起こる傾向があります。

そのため、相手に親権を譲るためや養育費負担の交換条件として面会交流権を要求したり、相手への単なる嫌がらせとして面会交流権を得たりといった、子供のためではなく自分のエゴに基づいた権利の主張が多数みられます。

また、親権者・監護者においても、相手の非親権者・非監護者は子供と交流しようとせずに外から見守るに止まるべきであるとか、別れた相手と会いたくない、子供に会わせたくない等というように、感情的に相手の面会交流を拒否するケースも多くあります。

面会交流の権利性

面会交流の権利性は、親が子に対して持つ自然権、つまり親権や監護権の一部やそれに関する権利としての「親の権利」と考える立場や「子供の権利」と考える立場、または「親の権利と義務であると同時に子供の権利」と考える立場等があります。

また、面会交流によって子供の精神を不安定にしてしまう場合を考え、面会交流が任意に行われる場合以外には、面会交流権を強制的に行使できる権利として認めるべきではないと、権利性自体を否定する考えの立場もあります。

面会交流はどのように認めてもらうか

面会交流を認めるかどうかについては、家事法別表第2の3号に記載されており、「子の監護に関する処分」のうちの1つです。

面会交流を希望している非親権者・非監護者が、審判および調停において申立てることができます。

また、離婚前においても面会交流は問題とすることができます。

例えば、離婚前に話がまとまらず、妻が子供を連れて実家へ帰ってしまい別居状態となった場合に、妻が夫に子供を会わせないようにするというケースがあります。

このようなケースでは、離婚前なので夫にもまだ子供の親権がありますので、夫は当然の権利として子供に会わせるよう、面会交流の調停もしくは審判を申立てることになります。

離婚の成立の有無に関わらず、面会交流権は請求できるものであり、離婚前の別居期間において別居している子供に会いたいが、現に監護している相手と話し合いができない場合等には、面会交流の申立てを家庭裁判所にすることで、裁判所の後見的機能を期待することになります。

しかし、前述している通り、夫婦間の状況が状況なだけに、審判や調停で面会交流権を訴えたとしても、円満に面会交流が認められるかどうかについては、判断しがたいものです。

面会交流権行使の基準

面会交流権は非親権者・非監護者に認められる権利であると同時に、子供にも認められる権利です。

子供にとっては、両親が離婚したとしても親子関係が切れることはないので、両親の離婚後も親子関係を良好にするために面会交流が行われます。

しかし、面会交流によって子供の精神が不安定になったり、子供の将来に悪影響が懸念されたりする場合には、面会交流権の行使が制限される場合があります。

このことから、面会交流権行使の基準として、子供の利益や福祉に反しないという「子供の福祉」が最優先となります。

面会交流において子供の福祉が最優先されるべきケースとは

それでは、面会交流において子供の福祉が最優先されるべき事例とはどのようなものがあるでしょうか。

非親権者・非監護者によって面会交流を制限する必要がある場合

そもそも、親権を濫用しようとしたり、著しい不行状があったりした場合等の相応しくない行動ばかりしている非親権者・非監護者であれば、子供の福祉を考えて面会交流を制限されるのはやむを得ないでしょう。

また、離婚において、養育や扶養義務に関する問題についての決定は、夫婦双方が慎重に話し合う必要があり、感情的な判断はするべきではありません。

「養育費を払わせるなら面会交流を認めろ」、逆に「養育費を払わないなら面会交流を認めない」というように、親としての感情に基づいて面会交流の条件が決定される傾向があります。

実際に、養育費を払っていない側は面会交流等に関する主張が控えめであるという報告があります。

養育費を支払う等の義務を果たしている側からの面会交流の要求は、特段の事情がない限り認められるべきといえます。

しかしながら、養育費等を支払わないといった理由だけで、面会交流を認めないのはいかがでしょうか。

例えば、母親が経済的理由で子供を育てられないということから、やむを得ず父親を親権者・監護者とした場合、母親が養育費等を払えないので面会交流を制限するというのはあまりにも酷です。

このような場合、母親に経済力がないというだけで、必ずしも母親が子供に対して愛情がない、精神的に劣っているということを意味するわけではないので、面会交流を認めるべきと考えられます。

一方で養育費等を払うのに十分な経済力があるにもかかわらず、養育費を一切払わなかったり、養育費は払わないのに面会交流権だけはしっかりと主張してきたりといった非親権者・非監護者の場合には、面会交流を制限するべきであるといえます。

子供自身が面会交流を嫌がる場合

子供の年齢にもよりますが、子供の意思を尊重することは、子供の情操を育むことに繋がります。

しかし、子供が面会交流を拒絶したからといって、必ずしも自分の意思のみで判断したものとは確定できません。

現在の親権者・監護者の影響を強く受けている場合もありますので、面会交流に対する子供の気持ちについてはしっかりと調査・確認を行うことが大切です。

ここで、子供が面会交流を嫌がっているからといって安易に判断してしまうと、子供に責任転嫁することになってしまい、親としての権利性の問題となります。

家庭裁判所では、子供が15歳以上の場合には、その子供自身から面会交流に対する意見や心情を聞く義務があるとしています。

また、子供が15歳未満の場合には、調査官調査を通じてその子供の意見や心情を確認し、それらを尊重すべきとなっています。

非親権者・非監護者が婚姻期間等で子供と同居中や面会交流中の、子供に対する言動や、親権者・監護者との関係等から、子供に悪い影響がもたらされる可能性が高い時や、暴力等の実力行使によって親権者・監護者から子供を奪うおそれがある時等のように、子供の情緒を不安定にさせる要因がある場合にも、非親権者・非監護者と子供の面会交流権は制限されます。

面会交流の態様

面会交流の具体的な態様や回数、日時や場所等については、人によってさまざまなケースがあります。

例えば、特定の日の数時間を特定の場所で一緒に過ごしたり、さらに宿泊を伴ったりする場合もあります。

また、子供が小中高生の場合には、長期休暇中に生活を共にしたり、子供の誕生日等の成長の節目となる時期に一緒に過ごしたりというケースもあります。

一方で、子供と直接会うことはせず、手紙や電話等の間接的な交流によって子供の成長を把握するというケースがあります。

面会交流には以上のようなさまざまな態様がありますが、面会交流の間隔が長いと子供の精神上良くない、長期休暇中等に他方の親と共同生活をするのは子供にとって負担が大きい等といった批判もあります。

面会交流の態様は、その親子関係や親権者・監護者である親と、非親権者・非監護者であるもう一方の親との関係によっても適切な方法が異なります。

子供の心情や意見を尊重して、それぞれに合った方法を取るようにしましょう。

面会交流の際に親が勘違いしやすい注意すべき視点

面会交流は、親権者・監護者の親と非親権者・非監護者のもう一方の親が協力して、子供が気持ちよく面会交流を行えるようにサポートする必要があります。

面会交流に親が注意すべき点があります。

子供の体調面

子供の精神面はもちろん、身体面も最大限に気にしてあげる必要があります。

非親権者・非監護者の親の方は、普段は子供と一緒に過ごしていないため、可能な限り子供と長い時間一緒にいたい思う気持ちが強い傾向があります。

しかし、子供には普段の親権者・監護者との毎日の生活リズムがあるため、その生活リズムは、面会交流の際にも配慮するべき事項です。

特に、小学生くらいだと普段夜は8時や9時に就寝するという生活を送っている子供もいますので、このような場合に面会交流だからといって、夜遅くまで子供に無理をさせることは厳禁です。

子供と同居している親権者・監護者の親への配慮

非親権者・非監護者から子供へ、子供の誕生日やクリスマス、進級祝いや卒業祝い等のような特別な日以外の何でもない日に、普段なら子供へ買ってあげないようなおもちゃや洋服等を買ってあげたり、お小遣いを多くあげたりすることがあります。

しかし、このように子供へ物やお小遣いをあげることは、親権者・監護者の親からすると、非親権者・非監護者から普段十分に養育費等を受け取っておらず、子供にいい思いをさせてあげられないのに、面会交流でこのようなことをされると反感を持たれることもあります。

もし、面会交流の際に子供へ高価な物を買い与えたり、お小遣いを多めに与えたりしたいといった場合には、予め親権者・監護者の承諾を得てから行うことで、親権者・監護者の親への配慮をする必要があります。

子供と別居している非親権者・非監護者の親への配慮

非親権者・非監護者である側の親は、子供と別居しているため、普段は子供の情報を知る機会はありません。

したがって、子供と同居している親権者・監護者は、非親権者・非監護者へ子供の情報を提供してあげることが大事です。

親同士での情報提供がなければ、面会交流の時に非親権者・非監護者から子供へ聞くことになりますが、子供によってはそのようなことを聞かれるというのが精神的に不安になったり、負担になったりする場合も考えられます。

例えば、子供の作文がコンクールで入賞した時、別居している非親権者・非監護者から褒められれば、子供としては嬉しくなるでしょう。

しかし、非親権者・非監護者がその情報を事前に知らないと、当然子供にそれに関することは言いません。

そうすれば、子供からしたらどうして入賞したことを知らないのだろうと思うでしょう。

子供の負担を減らすために、そして非親権者・非監護者へ確実に子供の情報を提供してあげるという配慮が必要です。

子供に責任を押し付けない

例えば、一方が他方に「子供が旅行をしたいと言っている」と伝えると、他方の親は子供に対してその発言の事実があったかどうかについて確認することになります。

しかし、子供というのは親に対して、自分へ良くない感情を持ってほしくないと考えがちのため、今話している親の顔色を伺いながら話そうとします。

その結果、過去の発言をわざわざ蒸し返そうとすると、子供にとって両親の板挟みのような状態になり居心地が悪くなってしまいます。

子供の精神負担も大きくなってしまいますので、面会交流にあたって生じた問題を子供のせいにしないようにする必要があります。

面会交流の約束を守る

次回の面会交流の約束をしっかりと守ることや、面会交流の際に子供に離婚した理由を話さない等といった、面会交流に際して取り決めた約束事はすべて守るようにしましょう。

また、約束を忘れるといったことがないようにもしましょう。

お互いの悪口を言わない

夫婦は離婚したとしても、子供にとってはずっと両親は両親であり、その子供との親子関係は続きます。

子供は基本的に両親が好きなので、一方の親がもう一方の親の悪口を言うことは聞きたくありませんし、気分も重くなってしまうでしょう。

また、一方の親がもう一方の親の欠点を持ち出して様子を聞こうとしたりすることも、子供にとってはあまり答えたくない場合がありますので、言わないようにしましょう。

相手の悪口を子供に言ったり、相手の様子を子供に聞いたりすることは、子供にとって非常に負担となり、ストレスにもなりますので控えるべきです。

まとめ

このように、面会交流権は子供と非親権者・非監護者が離婚後も良好な親子関係を築くために必要不可欠な権利であるといえます。

しかし、面会交流とは子供の福祉を最優先に考えたうえで行われるべきものであるので、子供の精神的負担にならないように両親が協力して面会交流を実施できるよう対応しなければなりません。

また、面会交流が子供にとって悪影響が生じると考えられる場合には、面会交流の実施を制限することができます。

子供のことを第一に、子供にとって何が必要であるかを常に考え、子供が心地よく面会交流で非親権者・非監護者と過ごしたり情報提供したりできるよう、配慮することが重要です。

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監修弁護士
中野 和馬

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