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離婚の手続きVOL2 離婚夫婦の9割が選ぶ「協議離婚」の概要と注意点

協議離婚とは

日本において離婚する夫婦の90%以上が協議離婚により離婚をします。

協議離婚とは、夫婦同士で話し合い、双方が離婚について合意した後、離婚届を市町村役場へ提出することで離婚が成立する方法です。

協議離婚は裁判所が関与することはなく、審判離婚や裁判離婚のように、離婚するのに法的な理由が必要ではありません。

また、協議離婚をする際の費用はかからないので、離婚方法の中でも最も手軽に最短で離婚が可能となります。

しかし、協議離婚によって一時の感情で離婚をしてしまうと、その後にさまざまな問題が出てくる可能性があります。

協議離婚をする際には、離婚届を提出する前に、財産分与や子の親権者選定等といった離婚条件を決定する必要があります。

ここでは、協議離婚の概要と協議離婚をする際の注意点についてご説明いたします。

協議離婚の流れ

下準備

夫もしくは妻と離婚したいと考えた時、何も準備せずにいきなり離婚の話を進めようとするのは危険です。

離婚を切り出す前に、次のような準備をしましょう。

⑴逃げ場所の確保
協議離婚が滞ってうまくいかなくなった場合に、家とは別に実家や友人の家等の自分が逃げられる場所を作ります。

また、逃げることを想定したうえで銀行通帳や印鑑等の貴重品や数日分の衣服等軽く荷造りしておくと安心です。

⑵子供を預ける
特に小さな子供がいる場合、子供の前で離婚話をすることは避けましょう。

話がヒートアップすると周りが見えなくなりますし、その様子を子供に見せることは子供にとっても気分の良くないことですので、協議離婚の際には可能な限り、事前に子供を別の場所へ預けましょう。

⑶話し合いをする部屋の片付け
基本的に家の中で離婚話をすると思いますが、部屋の中に物がごちゃごちゃしていると、話し合いがこじれた際に近くにある物に当たるかもしれないし、物を投げつけられて怪我をするかもしれません。

すべての物を片付けたり捨てたりする必要はありませんが、壊れやすい物や当たったら怪我しそうな物は目に見えないところへ移動させるとよいでしょう。

⑷離婚条件をまとめる
離婚後の生活を思い描き、子供の将来や金銭的な問題等の離婚条件ついて、予めまとめておきましょう。

この時に、離婚することで生活が改善できるかどうか、検討することも必要です。

相手に離婚を切り出す

上記のような事前準備をしっかりと行ったら、相手に離婚を切り出しましょう。

離婚は自分たちの人生を左右する大きな決断となります。

一時の感情に任せるのではなく、お互いの気持ちを冷静に確認し合うことが重要です。

離婚条件の決定

相手に離婚を切り出したら、次は離婚条件を決める必要があります。

事前準備で予めまとめてきた離婚条件をもとに、さらに夫婦同士で話し合い、最終的にお互いが納得できる離婚条件を決定します。

離婚条件としては、金銭的な問題である財産分与・年金分割・慰謝料、そして子供がいる場合には親権者・養育費・面会交流が挙げられます。

離婚条件決定の際の注意点

ただし法的には、子供の親権以外の離婚条件は、婚姻届を出して離婚が成立した後に決めてもよいことになっています。

しかし、いったん離婚をしてしまった者同士で、後日改めて集まって話し合うことは容易なことではありません。

特に、お金に関する問題については協議離婚の際にしっかりと夫婦間で決めておかなければ、曖昧なままで進展がなくなる場合が多いです。

お金に関する離婚条件は、離婚前の話し合いの段階で夫婦双方が納得のいくように話し合うことが重要です。

また、お金に関することでなくとも、離婚条件を決める際にはお互い妥協せず、譲りたくないと主張するかもしれません。

このように冷静に話し合えず離婚条件がまとまらなさそうなら、早い段階で弁護士等の専門家に相談するとよいでしょう。

協議離婚は最初から裁判所が関与しませんので、双方の主張がぶつかり合い、話が平行線となってしまってはずっと解決しません。

離婚後のお互いの未来のために、一方的な主張を通すのではなく、2人が納得いくまでとことん話し合いましょう。

協議離婚書の作成

お互いが納得できるまで話し合い、離婚条件を決めて離婚に合意したら、「離婚協議書」の作成をおすすめします。

離婚条件を決定したにもかかわらず、離婚後に言った言わないの水掛け論で揉めてしまっては、離婚条件を決めた意味がなくなります。

そんな万が一の場合に備えて、離婚協議書を作成することで、夫婦で決定した離婚条件を書面として残せるのです。

離婚協議書は誰が作成する?

離婚協議書は、誰が作成するという決まりはありません。

夫婦間で作成しても、弁護士等の専門家に作成してもらっても構いません。

離婚条件の種類や重要性、時間に余裕があるかどうかで離婚協議書を自分達で作成するか、専門家に依頼して作成してもらうかを決めると良いでしょう。

離婚協議書の作成を専門家にお願いすると、離婚条件の記載漏れや自分にとって不利な条件がないかどうかを客観的に確認しながら作成してくれます。

さらに、離婚後に離婚条件に関するトラブルが起きた場合にも、専門家に作成してもらった離婚協議書でしたら、確実に法的な証拠となりますので安心です。

自分で離婚協議書を作成する場合の注意点

自分達で離婚協議書を作成する場合、インターネット上にある離婚協議書の雛形を流用して作成するというパターンが多いでしょう。

インターネット上に出回っている離婚協議書の雛形には、必要最小限な事項しか書いてありません。

しかし、夫婦によって離婚条件は十人十色ですので、適宜項目を増やしたり減らしたりする必要があります。

つまり、自分達の離婚条件をもれなく記載するために注意深く作成しなくてはなりません。

また、離婚協議書に関する情報以外でも、インターネット上で得られる離婚についての情報は、正しい情報量のごく一部ですので、インターネットのみに頼らず複数の離婚に関する書籍を読み比べたり、専門家からの言葉を聞いたりして、自分に必要な情報であるかどうか、その情報が正しいかどうかをしっかりと判断するようにしましょう。

離婚協議書を公正証書にする

万が一、慰謝料や養育費等の金銭的な問題について、未払いといった事態が発生した場合を想定して、離婚協議書を「公正証書」にすることで離婚後の金銭トラブルを防ぐことが可能です。

公正証書は、公証役場で公証人に作成してもらうことになります。

公正証書にすることで、相手から慰謝料や養育費等の金銭の支払いを滞納された場合に、相手の財産や給料を差し押さえるといった強制執行ができます。

公正証書の作成には、時間と費用がかかりますが、協議離婚書をより効力のある信憑性の高い証拠として書面に残すことができます。

離婚届の提出

話し合い、離婚条件を決定し、離婚協議書を作成したら離婚届を記入します。

離婚届には夫婦2人、証人2人の署名押印をする必要があります。

また、未成年の子供がいる場合は、離婚後の親権者を記入が必須となります。

離婚届の提出先は夫婦どちらかの本籍地の市町村役場です。

本籍地とは異なる所在地の市町村役場へ提出する場合には、離婚届は2枚必要となる場合があり、さらに戸籍謄本を一緒に提出する必要があります。

戸籍謄本を提出しないと、新戸籍の作成に時間がかかります。

離婚届を提出する際には、届出人本人の免許証等の身分証明書が必要です(図1)。

協議離婚の全体的な注意点

協議離婚は、いつ・どこで・どのように話し合うか等について、夫婦間やその関係者のみで取り決めることができます。

また、協議離婚は夫婦が口外しない限り他人に知られることなく進めることが可能で、プライバシー面で安心できる離婚方法です。

しかし、前述しているとおり、協議離婚を進めるに際して事前に十分な準備ができずに話がこじれ一方的に不利な離婚条件を押し付けられ合意してしまったり、一時の感情だけで十分な離婚条件を夫婦間で決定せずに離婚届を提出してしまったりといった協議離婚進行上の注意点があります。

非常に手軽な離婚方法ともいえる協議離婚ですがその手軽さ故に、前述した注意点の他にも以下のような注意点があります。

自分の知らないところで離婚届が提出されてしまう

協議離婚の最大の欠点といっても過言ではない点は、自分が把握していないうちに離婚届を提出されてしまう恐れがあるという点です。

これはどういうことかというと、離婚届を市町村役場へ提出する際に、離婚届を受け取った市町村役場の受付や担当者は、その離婚届に記載されている夫婦が両名とも本当に離婚する意思があるのかという確認義務は負いません。

さらに、市町村役場の担当者は離婚届記載の当事者二人に対する離婚意思の事実確認の権限は与えられていません。

これは、離婚意思が本当にあるかどうか尋ねることが他人のプライバシーの侵害になるのではないかと懸念されているからです。

このような事情があるため、一方が勝手に離婚届を提出してしまい、その離婚届が受理されてしまうという恐れがあります。

本来、協議離婚は一方的に虚偽の離婚届を提出してまで協議離婚をするケースは稀であるという善意を前提として存在している離婚方法です。

しかし、勝手に虚偽の離婚届を提出する人がいるということを頭の片隅に入れ、注意しなくてはなりません。

もし、夫もしくは妻が、離婚話がまとまっていないのに勝手に離婚届を提出してしまう可能性があるのなら、本籍地もしくは所在地の市町村役場に「不受理申出」をすると良いでしょう。

立場が弱いことに付け込まれてしまう

協議離婚は、夫婦双方が離婚に合意すれば成り立ち、離婚届を提出するだけで離婚が成立するので離婚調停や離婚裁判と異なり手軽な離婚方法ですが、夫婦どちらか一方の立場が弱く、婚姻期間中も常に相手の言いなりのような状況で過ごしてきたという場合だと、不利な離婚条件を無理やり押し付けられ同意してしまうという可能性もあります。

また、離婚についての生半可な知識だけでは協議離婚は相手の思うつぼです。

例えば、不貞行為等を行った有責配偶者から、「法律的に別居期間が5年であれば必然と離婚せざるを得ない」旨を言われた場合、離婚についての知識がないと混乱してしまうでしょう。

原則、有責配偶者からの離婚請求は認められませんが、例外として有責配偶者からも離婚請求が可能となる要件があり、その要件の中に別居期間が長期間(およそ5年以上)であることがあり、判例でも認められています。

しかし、上記のような有責配偶者の言い分は民法改正の内容をこじつけ合わせたものに過ぎません。

このように、離婚についての知識を正しく持っていないと、相手に「法律でそうなっている」と言われただけで怯んでしまい、対等な話し合いができません。

協議離婚を進める際には、正しい離婚の知識を身に付けることが重要です。

必要に応じて専門家に相談する

協議離婚は、単なる話し合いではなく、今後の人生を大きく左右する「交渉」といえます。

協議離婚の経験があるという人は少ないと思います。

協議離婚で自分の離婚話を進めることは、気分は晴れやかなものではなく精神的にも体力的にも大幅にダメージを受けるので、できるだけ友人等の第三者に話を聞いてもらったり、弁護士等の専門家に専門的な観点からアドバイスをもらったりすることが必要です。

離婚というと自分が当事者になる前は難しいものと考えがちですが、離婚について進めるに当たって重要な項目は、自分の気持ちと生活、そして子供の将来についてです。

自分や子供に関することなので、慎重に準備を行うことが大事です。

自分一人で抱える必要はないので、友人や専門家等、離婚について相談できる人を確保しておくとよいでしょう。

まとめ

協議離婚は、離婚方法の中でも裁判所が関与せず、その上費用がかからず、夫婦双方の合意があり離婚届を提出するだけで離婚が成立するといった、手軽で簡易的な離婚方法です。

しかし、だからといって離婚に関する知識がなくてもすぐに離婚ができるというわけではありません。

専門家に代理人になってもらうか否かに関わらず、離婚調停や離婚裁判と同様かもしくはそれ以上に、離婚に関する知識や情報をしっかりと把握し、夫もしくは妻と対等に話し合いができるように準備を行いましょう。

そして、お互いが納得できる離婚条件を決定し、確実に離婚条件を決定したことを証明する離婚協議書を作成し、離婚後の自分や子供の人生を曖昧に考えず、より明確な未来を描きながら協議離婚を進めていくことが大切です。

▼離婚の手続き シリーズ

  1. 離婚の手続きVOL1 「 新しいスタートへ!良い離婚のために大切なポイント講座 」
  2. 離婚の手続きVOL2 「 離婚夫婦の9割が選ぶ「協議離婚」の概要と注意点 」
  3. 離婚の手続きVOL3 「 協議離婚の手続方法と気をつけるべきポイント 」
  4. 離婚の手続きVOL4 「 やっぱり離婚届を取り下げたい!離婚届の不受理申出とは? 」
  5. 離婚の手続きVOL5 「 協議離婚が無効になるケースとは?偽装離婚との関係 」
  6. 離婚の手続きVOL6 「 離婚で揉めたらまずは「調停離婚」を考えよう!手続方法とデメリット 」
  7. 離婚の手続きVOL7 「 調停離婚の実際の流れと注意点 」
  8. 離婚の手続きVOL8 「 調停離婚における調停委員会では何が行われるのか? 」
  9. 離婚の手続きVOL9 「 もっとも珍しい離婚方法「審判離婚」とは? 」
  10. 離婚の手続きVOL10 「 最後の手段「裁判離婚」の内容と費用について 」
  11. 離婚の手続きVOL11 「 離婚につながる5つの事由と具体的なパターン 」
  12. 離婚の手続きVOL12 「 離婚訴訟はどのような終わり方?離婚できないケースとは? 」
  13. 離婚の手続きVOL13 「 有責配偶者から離婚を求めるケースへの実際の判例 」
  14. 離婚の手続きVOL14 「 新しい流れにより時代は「破綻主義」離婚へ 」
  15. 離婚の手続きVOL15 「 必ず発生?請求期限は?離婚慰謝料の概要と注意点 」
  16. 離婚の手続きVOL16 「 意外と複雑!離婚による財産分与の概要と注意点 」
  17. 離婚の手続きVOL17 「 気をつけて!離婚慰謝料と財産分与は別々に考えよう 」
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  25. 離婚の手続きVOL25 「 離婚時における子どもの親権者の決め方と親権の概要 」
  26. 離婚の手続きVOL26 「 離婚時の親権問題で揉める理由は「監護権」 」
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  28. 離婚の手続きVOL28 「 離婚する夫婦がどちらも子どもを引き取りたがらない場合 」
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  30. 離婚の手続きVOL30 「 親権で揉めた!別居中に子を連れ去られた際にとれる行動とは 」
  31. 離婚の手続きVOL31 「 子のいる離婚では必ず発生?養育費の決定方法とは 」
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  33. 離婚の手続きVOL33 「 面会交流権の概要と行使の基準とは?勘違いしがちな親の視点 」
  34. 離婚の手続きVOL34 「 子に悪影響なケースでは面会交流権行使を制限することができる 」
監修弁護士
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