離婚の手続きVOL26 離婚時の親権問題で揉める理由は「監護権」 | 離婚弁護士マップ
  • tel-button
  • mail-button
top center bottom

離婚の手続きVOL26 離婚時の親権問題で揉める理由は「監護権」

離婚の際に揉める理由の一つとして、親権があります。

どちらが子どもを養育する権利を持つかということですが、親権者とは別に、監護権を有する監護者を指定する方法もあります。

そこで今回は、監護権の概要についてご紹介します。

親権と監護権

親権とは、未成年者の子を養育する、身の回りの世話などの監護を行う、子どもの財産を管理する、子どもの代理人として法律行為を行う、などについての権利のことです。

なお、親権は基本的には権利ですが、子どもの利益を考えて権利を行使すべきであることから、義務としての側面も強いのが特徴です。

法律で規定されている親権の内容としては、大きく分けて財産管理権と身上監護権があります。

財産管理権とは、子どもの財産を管理することができる包括的な管理権のことです。

例えば、子ども名義の銀行預金を管理するなどです。

また、子どもの法律行為に対する同意権も含まれます。

同意権の例としては、未成年者が店に物を売る場合に同意するなどです。

次に身上監護権とは、子どもの身の回りのことを決定することできる権利のことです。

身上監護権の内容としては、子どもの身の回りの世話をする、子どもに教育をする、子どもが居住する場所を指定する(居所指定権)、子どもに対して懲戒やしつけを行う(懲戒権)、子どもの職業を許可する、などがあります。

離婚の際の監護権とは、親権の内容である財産管理権と身上監護権のうち、身上監護権を親権者とは別に独立して有する場合を意味するのが一般的です。

監護権を有する者を監護者といいます。

離婚における親権と監護権

未成年の子どもは法律において親の親権に服することが規定されており、親権については子どもの父母が共同で行使することが原則になっています。

父母が離婚する場合は、日本の現行法においては父母が共同で親権を行使すること(共同親権)は認められていないため、離婚の際には父母のいずれかを親権者として定めることが必要になります。

父母が協議をした上で離婚する協議離婚の場合は、その協議の内容として親権を行使する親権者を定めます。

裁判によって離婚する場合は、裁判所が父母の片方を親権者として定めます。

親権者と監護者が異なる場合

監護権はもともと親権の一部であるため、原則として親権者が行使します。

また、親権者と監護者は同一人であるほうが、基本的には子どもの福祉にも資するといえます。

もっとも、何らかの理由で親権者が子どもを監護できない場合や、親権者ではない方の親が監護者としてより適当である場合は、親権者と監護者が別々の人になることもあります。

例としては、父親が親権者であるが海外出張などで忙しく、子どもの世話をする余裕がない、財産管理に面では親権者は父親が適任だが、幼い子どもの世話をするのは母親がふさわしい、などです。

また、協議離婚を成立させるために話合いを進めている夫婦について、それぞれが子どもを引き取ると主張して譲らない場合などに、親権者と監護者に分けることで、それぞれの立場で子どもに対する責任を負うようにすることも考えられます。

例えば、父親を親権者とし、母親を監護者とした場合、子どもの籍は父親の戸籍になります。

一方、子どもを引き取って実際に面倒をみるのは母親になります。

離婚における監護者の注意点

注意点として、離婚届には監護者を記載する欄はありません。

そのため、協議離婚において親権者と監護者を別々に定める場合には、監護者についての取り決めを必ず書面に残しておくことが重要です。

監護者を決めたにもかかわらず書面を作成しなかった場合、後々のトラブルにつながる場合もあります。

協議離婚の場合には、離婚合意書や公正証書を作成しておくと有効です。

離婚の際に監護者について取り決めをしなかった場合でも、子どもの世話は自分がしたほうが子どものためになるというような場合には、離婚後に監護者の指定を求めることができます。

また、子どもの監護について必要な事項については、夫婦の話合いだけで決着がつかない場合は、家庭裁判所に申し立てて介入してもらうことも可能です。

第三者が監護者になる場合もある

監護者になるのは一般的には子どもの父親か母親の場合が多いですが、法律上は監護者になることができるのは子どもの両親に限定されていません。

そのため、両親以外の第三者が監護者になることも可能です。

両親以外が監護者となる例としては、子どもの祖父母、叔父や叔母などの親族が一般的です。

家庭裁判所の審判の結果、第三者に監護を委託する場合もあります。

父母以外の第三者が監護者になるケースとしては、経済力や健康面などの理由などで両親が監護者になっても子どもの世話を十分にできない可能性が高い場合や、両親のどちらも海外出張などで子どもを十分に監護できない場合などが考えられます。

なお、母親は日中の仕事が忙しくて子どもの面倒は祖母がみているような場合でも、祖母はあくまで監護者をサポートする監護補助者であり、監護者は母親になります。

子どもを押し付け合うケースについて

子どものいる両親が離婚する場合、慰謝料などはどうでもいいが、子どもだけは自分が引き取って育てたい、子どもだけは絶対に相手に渡したくないという奪い合いが起こるケースが少なくありません。

逆に、父親と母親の両方が、自分は子どもを育てることができないから相手に引き取ってほしい、と子どもを押し付け合うケースも存在します。

子どもを養育できないと主張する理由はさまざまですが、子どもがいると自分も生活できないのではないかという不安や、再婚する場合に困るという自己中心的なものなどがあります。

もっとも、未成年の子どもの親権者である父親と母親は、子どもの福祉のために監護養育をする義務があります。

親の身勝手な都合や気持ちで義務を放棄することは、子供にとっては非常に不当な被害を受けることになります。

おわりに

親権は子どもの財産を管理する財産管理権と、身の回りの世話をする身上監護権があり、親権者とは別に身上監護権を有する者を監護者といいます。

離婚の際には親権者だけでなく監護者を指定することが可能です。

監護者を指定する例としては、親権者は父親であるが、子どもが幼いので身の回りの世話をするのは母親が適任という場合などです。

監護者は通常は父母のちらかがなりますが、場合によって親族などの第三者が監護権を得るケースもあります。

▼離婚の手続き シリーズ

  1. 離婚の手続きVOL1 「 新しいスタートへ!良い離婚のために大切なポイント講座 」
  2. 離婚の手続きVOL2 「 離婚夫婦の9割が選ぶ「協議離婚」の概要と注意点 」
  3. 離婚の手続きVOL3 「 協議離婚の手続方法と気をつけるべきポイント 」
  4. 離婚の手続きVOL4 「 やっぱり離婚届を取り下げたい!離婚届の不受理申出とは? 」
  5. 離婚の手続きVOL5 「 協議離婚が無効になるケースとは?偽装離婚との関係 」
  6. 離婚の手続きVOL6 「 離婚で揉めたらまずは「調停離婚」を考えよう!手続方法とデメリット 」
  7. 離婚の手続きVOL7 「 調停離婚の実際の流れと注意点 」
  8. 離婚の手続きVOL8 「 調停離婚における調停委員会では何が行われるのか? 」
  9. 離婚の手続きVOL9 「 もっとも珍しい離婚方法「審判離婚」とは? 」
  10. 離婚の手続きVOL10 「 最後の手段「裁判離婚」の内容と費用について 」
  11. 離婚の手続きVOL11 「 離婚につながる5つの事由と具体的なパターン 」
  12. 離婚の手続きVOL12 「 離婚訴訟はどのような終わり方?離婚できないケースとは? 」
  13. 離婚の手続きVOL13 「 有責配偶者から離婚を求めるケースへの実際の判例 」
  14. 離婚の手続きVOL14 「 新しい流れにより時代は「破綻主義」離婚へ 」
  15. 離婚の手続きVOL15 「 必ず発生?請求期限は?離婚慰謝料の概要と注意点 」
  16. 離婚の手続きVOL16 「 意外と複雑!離婚による財産分与の概要と注意点 」
  17. 離婚の手続きVOL17 「 気をつけて!離婚慰謝料と財産分与は別々に考えよう 」
  18. 離婚の手続きVOL18 「 離婚にともなう慰謝料と財産分与の相場は実際どうなっている?算定基準と相場について 」
  19. 離婚の手続きVOL19 「 不倫による慰謝料はケースごとに金額が変わる 」
  20. 離婚の手続きVOL20 「 離婚慰謝料と財産分与の支払い方法と不動産分与について 」
  21. 離婚の手続きVOL21 「 離婚時の慰謝料と財産分与に税金はかかるのか?課税となるもの、ならないもの 」
  22. 離婚の手続きVOL22 「 離婚パターン別!離婚慰謝料と財産分与に関する過去の判例 」
  23. 離婚の手続きVOL23 「 半分もらえるわけではない?離婚による年金分割の仕組みとケース別の注意点 」
  24. 離婚の手続きVOL24 「 離婚にともなう婚姻費用分担の概要と請求方法について 」
  25. 離婚の手続きVOL25 「 離婚時における子どもの親権者の決め方と親権の概要 」
  26. 離婚の手続きVOL26 「 離婚時の親権問題で揉める理由は「監護権」 」
  27. 離婚の手続きVOL27 「 親権者と監護権者を決める基準とは? 」
  28. 離婚の手続きVOL28 「 離婚する夫婦がどちらも子どもを引き取りたがらない場合 」
  29. 離婚の手続きVOL29 「 離婚にともなう親権・監護権者の決定に関する実際の判例 」
  30. 離婚の手続きVOL30 「 親権で揉めた!別居中に子を連れ去られた際にとれる行動とは 」
  31. 離婚の手続きVOL31 「 子のいる離婚では必ず発生?養育費の決定方法とは 」
  32. 離婚の手続きVOL32 「 養育費の算定方式は4つ!日本での平均金額は? 」
  33. 離婚の手続きVOL33 「 面会交流権の概要と行使の基準とは?勘違いしがちな親の視点 」
  34. 離婚の手続きVOL34 「 子に悪影響なケースでは面会交流権行使を制限することができる 」
監修弁護士
中野 和馬

東京弁護士会

中野 和馬
石木 貴治

東京弁護士会

石木 貴治
山谷 千洋

東京弁護士会

山谷 千洋
堀 翔志

第二東京弁護士会

堀 翔志
水流 恭平

東京弁護士会

水流 恭平
福西 信文

東京弁護士会

福西 信文
川﨑 公司

東京弁護士会

川﨑 公司
大橋 正崇

弁護士法人AO

大橋 正崇
鵜飼 大

ウカイ&パートナーズ法律事務所

鵜飼 大
監修弁護士一覧
弊社が選ばれる3つの理由
離婚について知る