この記事を読んでくださっている方の中には、配偶者の不倫をはじめ様々な夫婦問題に悩んだ末に離婚を考えている方や、離婚しないけれどお子様が小さかったり、経済的な自立への不安たったりの理由からなかなか離婚に踏み切れず悩んで方もいらっしゃると思います。
離婚問題は、理屈のみでは割り切れない男女関係の延長線にある問題ですので、双方が感情的になってしまう等、当事者だけの話し合いではなかなか解決しないことがあります。
また、いざ離婚するとなった場合、子供の親権をどうするのか、お金や住居の問題はどうするのかなどの問題が山積みですよね。
この記事では、離婚問題のなかで、弁護士に相談したほうが解決につながりやすいという事例について、ご説明します。
皆様の問題解決の一助になれば、このうえなく幸いです。
離婚問題で法的な争いになってしまう理由
日本でも増加しつつある離婚率
人々の価値観が多様化し、女性の社会進支出が進んだ現代社会では、日本の夫婦の3組に1組は離婚しているといわれています。
夫婦のどちらかが離婚を考えた場合、相手も同じ気持ちであれば協議離婚といって、離婚することは自由です。
また離婚の条件も、公序良俗に反するようなものではない常識的な条件であれば、基本的には自由に合意で決めることが出来ます。
法的な問題には弁護士への相談がおすすめ
一方で、どちらかが離婚を望んでいなかったり、離婚自体には同意していても、親権や経済的条件で合意できなかったりすると、争いやいざこざに発展してしまいます。
男女や親子関係という人間の愛憎とは切り離せない問題と、戸籍や財産等の法的・専門的な問題が複雑に絡むため、一度争いになると解決まで時間がかかってしまうことがよくあります。
法的な問題については、離婚案件や実務に精通した弁護士の力を借りて解決することがおすすめです。
相手の同意がなくても離婚できる場合・できない場合
上述のように、片方だけが離婚を望んだとしても、民法上では簡単に離婚することはできません。
婚姻制度は日本の家族制度の根幹として法律上保護されていますし、片方からのみの恣意的な離婚要求から、配偶者や未成年の子供を守る必要があるからです。
例外的に、相手の合意がなくても離婚できる原因は、民法上5つの理由に限られています。
法定離婚原因といい、1,配偶者による悪意の遺棄、2,配偶者に不貞な行為があったとき、3,配偶者の生死が三年以上明らかでないとき、4,回復の見込みがない強度の精神病、5,その他婚姻を継続しがたい理由という、離婚を認めないとむしろ請求者側に酷な場合に限られています。
そのため、単に愛情が冷めた、価値観があわないという理由では、相手の合意なく勝手に離婚はできません。
それでもどうしても離婚したい場合は離婚条件を譲歩するなどして相手の説得をこころみるのか、本当に夫婦関係を修復する努力が自分にはできないのか、もう一度よく考えてみる必要があります。
逆に離婚を切り出された側も、不必要に感情的になったり慌てたりせず、ご自身の正直な気持ちとしてはこれから配偶者とどうしていきたいのかを冷静に考えてみましょう。
弁護士相談がおすすめ事例~不倫問題~
離婚の大きな原因のひとつとして、不倫があります。
ただでさえ、価値観も生まれ育った環境も違う二人が家庭を築くということはお互いの忍耐や努力が必要であるところ、第三者である異性問題が絡むと、非常に問題がこじれやすくなるためです。
不倫の法律上の評価
昔「不倫は文化」という発言をして大バッシングを受けたタレントがいますが、不倫はモラル上も許されない行為ですし、法的にも不法行為に該当します。
民法709条は、故意または過失により他人の生命・身体・財産に損害を与えた者は、その損害を賠償する責任を負うと規定しています。
また、民法710条は、709条の損害は、財産上の損害に限られないと定めています。
不倫についてあてはめてみるとどういうことでしょうか。
日本の家族法では、結婚した男女は、相手以外と肉体関係を持たないという貞操義務を互いに負います。
不倫はこの貞操義務を破ることとなり、被害を受けた配偶者は、裏切られた悲しみから、通常大きな精神的損害を被ります。
また、不倫によって家庭不和や離婚に至った場合、家庭の平穏という重大な法律上の利益を侵害されたことになります。
被害者は、こういった精神的損害や法律上の利益の侵害に対して、不倫をした配偶者(有責配偶者といいます)にもその不倫相手にも、損害を金銭的に補填するために不倫慰謝料を請求できるのです。
また、上述のように、不倫は法定離婚原因のひとつですので、有責配偶者が離婚に同意しなくても、被害者が望めば離婚をすることができます。
不倫について詳しく知りたい方は、「不倫は違法?法律に触れる境界線について確認しよう」を参照してください。
不倫問題はいつ弁護士に相談するべき?
不倫問題はいつ弁護士に相談するのがよいでしょうか。
相談にあたっては、相手の不倫が果たして事実なのか、事実だとしたら証拠があるのか、今後揃えられそうかどうかを整理してからがよいでしょう。
不倫の証拠とはどういったものが必要なのでしょうか。
既婚者が配偶者以外の異性と交際することを、感情のうえからどこまで許せるかは、個人の価値観によって大きく異なります。
民法上の不倫慰謝料の請求原因、法定離婚事由となる「不貞行為」とされるためには、不倫による肉体関係までの証拠が必要になります。
ところが、通常不貞行為は密室で不倫当事者のみにしか知りえないように行われるので、被害者側が不貞の証拠をとるということは並大抵なことではありません。
また、不倫を疑ってはいたものの、よくよく確認してみたところ、単なる親しい友人関係だったいう場合に、間違って配偶者や相手に慰謝料請求をしてしまうと大きなトラブルのもとになってしまいます。
配偶者が不倫をしていたことを自ら認めている場合は、その旨の一筆を取得しておく必要がありますし、頑として否定する場合は、気づかれないように素行調査をしたり、場合によってはプロの調査会社に依頼したりするなどの対応が必要になります。
弁護士相談には、不倫がご自身の中でかなり確実であるという心証を得て、なるべく証拠をかためてからというタイミングがよいでしょう。
ただし、どうしても証拠がとれそうもない場合は、弁護士に相談して、スキルがあり個人情報の取扱いについても信頼がおける調査会社を紹介してもらうという方法もありますので、1人で悩みすぎないようにしましょうね。
弁護士相談がおすすめ事例~示談交渉~
不倫問題に限られませんが、離婚を考えたときに、必須となるのが配偶者との示談交渉です。
今後夫婦間の問題を解消して婚姻関係を継続するのかどうか、離婚する場合に子供がいれば、子供の親権や養育費の取り決めや、離れて住む側の親の面会交流権、夫婦の財産はどのように分けるか等、決めなければならない事項はたくさんあります。
一度は愛し合いながら離婚まで検討するに至った男女同士が話し合うと感情のもつれ等からなかなか冷静な話し合いが難しいため、離婚問題に詳しい弁護士に示談交渉を依頼するのがおすすめです。
直接話すと意地もあり譲り合いができなかったとしても、第三者である弁護士が、他の離婚事例の相場など合理的な根拠を示して冷静に話し合いを代行してくれることにより、意外な落としどころが見つかったりするものです。
なお、日本では、離婚問題は調停前置主義といって、離婚訴訟をする前に必ず第三者である調停委員をまじえて当事者間で話し合う調停という手続きが必要です。
通常は、示談交渉でまとまらなければ調停、調停がまとまらなければ裁判と手続きが進んでいくため、最初から弁護士にはいってもらえれば、調停や訴訟になってしまっても経緯を把握してもらえているので安心ですね。
示談交渉で決めるべき事項
弁護士に示談交渉を依頼して決めるべき事項はたくさんありますが、特に以下のような事項は、重要な条件になります。
親権
未成年の子供がいる場合は、子供の親権を父親と母親のどちらがもつのか決める必要があります。
夫婦が婚姻している間は、夫婦が共同親権を行いますが、離婚して他人になると共同で意思を統一して親権行使をすることが難しくなるため、どちらか一方に定める必要があるためです。
親権には、子供の身の回りの世話をする権利と財産上の管理をする権利があり、片方ずつの権利を夫婦のそれぞれが持つことも可能です。
親権はどちらの親が親権をもったほうが子供の福祉のためになるのかという点で決められます。
また、離れて暮らす側の親の子供への面会については頻度、時間、宿泊やプレゼントの有無などの条件を決め、養育費をどのようにいくら支払うべきかも決められます。
大切な子供の幸せを守るために、弁護士に相談しつつ、一時の感情に流されず冷静に決めていきましょう。
なお、養育費については、夫婦のそれぞれの年収に応じて家庭裁判所が定めた算定表がありますので、参考にしつつ妥当な金額を定めましょう。
仮に養育費の不払いの懸念があるような場合は、養育費を取り決めた示談書を公正証書にするなどして、いざというときに強制執行ができるような手段をとるように、弁護士に依頼しておきましょう。
親権について詳しく知りたい方は、「親権=こどもの財産と成長を見守る権利」を参照してください。
慰謝料
不倫慰謝料の相場
有責配偶者に対しては慰謝料を請求できる場合があります。
また、不倫の場合は、有責配偶者だけではなく不倫相手に慰謝料を請求することができます。
不倫慰謝料の額は法律上定められた額はなく、基本的には当時者の合意に委ねられます。
納得がいく慰謝料が得られるように、弁護士に相談して交渉してもらいましょう。
判例上認められてきた不倫慰謝料の相場としては、だいたい50万円~300万円程度ですが、婚姻関係の長さ、子供の有無、不倫関係のリーダーシップはカップルのどちらがもっていたか、経済的な状態、年齢など個別の事情によって大きく左右されます。
不倫相手との示談にあたって
不倫発覚後も、未成年の子供がいたり、まだ有責配偶者に愛情が残っていたりする場合は、婚姻関係を継続することを選ぶ場合もあるでしょう。
その場合には、有責配偶者から二度と不倫をしない旨の誓約書を取得しつつ、不倫相手からも同様の誓約書を取得することが通常ですが、不倫相手との示談交渉にあたっては、以下についてよく弁護士と相談しましょう。
不倫という不法行為について、有責配偶者と不倫相手は共同不法行為者ということになるため、被害者としてはどちらにも満額の慰謝料を請求することができ、請求された側はカップルの片方にも非があるのだからそちらにも請求してくれという抗弁をすることはできません。
しかし、結婚を継続する場合は、有責配偶者と被害者の配偶者の家計は今後もひとつですし、今後良好な関係を続けたいと思っているパートナーに慰謝料請求をするのはあまり得策ではありません。
そのため、この場合に慰謝料請求をするとしたら、不倫相手に満額請求することが一般的です。
請求を受けた不倫相手は、被害者に対しては、満額の支払い義務がありますが、有責配偶者に対しては、有責配偶者に非がある帰責部分については立て替えたお金を返すように請求できるという「求償権」を持ちます。
この求償権を行使されると、結局慰謝料をもらっても、夫婦の家計としてはプラスマイナスゼロということもあります。
そのため、不倫相手の対応など個別の事情にもよりますが、示談の条件として求償権を行使しないという条項をいれてもらうことも一案です。
不倫慰謝料の相場について詳しく知りたい方は、「不倫慰謝料の相場は?請求できない場合もあるの?」を参照してください。
財産分与
夫婦が婚姻期間中に築き上げた財産は、夫婦の共有財産として、財産分与の対象となります。
したがって、夫が会社員、妻が専業主婦の場合で、収入があるのは夫だけだったとしても、夫が外部から収入を得ることができたのは、妻が家事や育児を担っていたおかげであるということから、婚姻期間中の貯蓄や購入した家等は公平に分ける必要があります。
また、夫が会社員の場合、厚生年金の報酬比例部分といって、給与に応じて保険料が支払われた年金などについても財産分与の対象となります。
一方、どちらかが結婚前から有していた財産や親の相続等で受け継いだ財産については、夫婦別産制のもと、特有財産として、それぞれ個人の財産であるとされます。
複雑な計算が絡みますので、弁護士に相談し、適切な分配をしてもらうようにしましょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
離婚という人生の大きな岐路にたったときに、弁護士という専門家の助けがあるということは大きなアドバンテージになります。
離婚は結婚の何倍も労力を要するといわれており、1人で戦うにはなかなか辛いものもあります。
法律については専門家の力を借りて、新たなスタートを切るために心身ともに気力を充実させましょう。
弁護士を選ぶにあたっては、離婚問題に強いことを標榜している事務所の中から、何人か候補者に実際に会ってみて、ご自身が心から信頼して任せられるというと感じた弁護士を選びましょう。
弁護士に依頼するとなると費用も気になるところですが、初回無料で相談を実施している事務所もありますし、着手金と比べて慰謝料の支払を受けたときの成功報酬を大目にしてくれたり、示談と訴訟をあわせて依頼することで割引をしてくれたりする弁護士事務所もあります。
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弁護士の選び方からタイミングまで詳しく知りたい方は、「離婚弁護士の選び方から 無料の相談方法やタイミングまで徹底解説」を参照してください。