日本では、夫婦は同じ苗字を名乗る必要がありますので、基本的には夫の苗字を妻も使用しているカップルが多いと思います。離婚した場合は、苗字はどうすればよいのでしょうか?
結論からいうと、元の苗字に戻す人もいますし、戻さない人もいます。
この記事では、子供がいる場合を含め、苗字を戻す場合と戻さない場合のメリット・デメリットなどをご説明します。
女性の離婚準備についてはこちらの記事をご参照ください。「女性の離婚準備 押さえておくべき6つのポイント」
離婚後に名乗る苗字の選択肢は3つある
この記事では、便宜上、結婚した際に夫の戸籍に妻が入り、妻が夫の苗字を名乗っていた場合を例にして以下解説します。
旧姓にもどる場合
離婚すると、妻は結婚前の実家の苗字にもどることが基本となります。子供がいない場合や、実家の苗字を会社でも通称名として使っている場合は、何ら戻すことに不都合が生じないこともあるでしょう。むしろ、元夫とは法的な縁をきって、きれいさっぱり新しい人生を歩みだすためには、旧姓にもどるのがよいと考える人も多いでしょう。
旧姓にもどる場合、親の戸籍にもどるのか、自分を筆頭者として新たな戸籍を作るのかを選ぶことができます。
親の戸籍にもどるための手続きとしては、離婚届に「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄という記載欄がありますので、ここの「妻はもとの戸籍にもどる」にチェックを入れて、妻の親の本籍を指定すれば完了します。
苗字は旧姓にもどすものの、自分自身が筆頭者となる新たな戸籍を作ることも可能です。本籍地は任意の場所を指定することができます。
この場合の手続きとしては、上述の離婚届「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄のうち「妻は新しい戸籍をつくる」にチェックをいれ、自分が選んだ任意の本籍地を記載しましょう。
離婚前の苗字を使い続ける場合
子供がいて苗字を変えると学校で苛められたりすることが心配という場合や、会社でも結婚後の名前を使っているという場合で、苗字を変えたくないというパターンもあります。
苗字を変えると、パスポートや銀行などで変更手続きをしたり、印鑑を変えたりしなければいけないので面倒で変えたくないという方もいらっしゃるでしょう。
そうした場合、離婚時の姓で、自分を筆頭者として新しい戸籍を作ることができます。手続きとしては、離婚のときから3か月以内に「婚氏続称」という届出をすることで可能になります。上述の離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄は空欄のままにしておき、「離婚の際に称していた氏を称する届」という戸籍法77条の2に基づく届出を、妻の本籍地か住民票の所在地に提出すればよいです。
離婚時にすでに続けて使うことを決めている場合は離婚届と同時に出しても良いですし、少し迷っている場合は、離婚から3ヶ月以内であれば提出することができます。ただし、一旦提出してしまうと、3ヶ月以内でも撤回には裁判所の許可が必要なので注意しましょう。
離婚後の子供の戸籍と苗字はどうなる?
離婚によっても親子関係は解消されませんので、基本的には子供の戸籍には変動がありません。つまり、何も手続きをしなければ、父親の戸籍で父親の苗字のままとなります。
離婚後、母親が親権を取得するケースは全体の9割といわれていますが、親権の指定と、戸籍や苗字は連動しないことが原則です。
しかし、母親が苗字を旧姓に戻す場合で母親が子供を引き取る場合は、子供と違う苗字だと何かと不都合がおきます。また、気持ち的にも、わが子は自分の戸籍に入れたいと考える人が多いでしょう。
その場合の手続きとして、家庭裁判所に「子の氏の変更」の手続きを申し立てることで、子供の戸籍も苗字も変更することが出来ます。子供の住所地の家庭裁判所に対して、「子の氏の変更許可申立書」、父親側の戸籍謄本、母親の戸籍謄本(なお、両親の戸籍とも離婚後のものです)、子供1人あたり800円の収入印紙を添えて提出します。母親が親権者で、母親の苗字や戸籍にかえる場合、ほぼ問題なく即日許可の審判がおりるでしょう。
家庭裁判所の審判書に上述の父母の戸籍謄本を添えて、母親の本籍地か住所地の役所に入籍届けを提出すれば手続きが完了します。
子供の氏と戸籍について詳しく知りたい方は、「離婚したらどうなる?子供の氏と戸籍」を参照してください。
苗字を変えないメリット・デメリットについて
下記では、苗字を変えないメリット・デメリットを説明します。
苗字を変えないメリット
苗字を変えないメリットは下記の2つです。
- ・面倒な名義変更が必要ない
- ・周りに離婚のことを知られない
離婚後に手間なのが、名義の変更になります。
結婚をしたタイミングで、苗字を変えていた場合、離婚で旧姓に戻すとなれば手続きが必要です。
銀行口座・クレジットカードなど名義変更の手続きが必要ですが、苗字を変えなければ、そもそも手続きをしてくても問題ありません。
次に苗字を変えなければ、周りの人に離婚したことを知られにくくなります。
苗字が変わっていれば、周りの人が「離婚したんだな」と分かるため、周りに知られたくない人には重要なメリットでしょう。
苗字を変えないデメリット
苗字を変えないデメリットは、下記の3つです。
- ・気持ちの区切りがつきにくい
- ・再婚して離婚した時に旧姓に戻れなくなる
- ・元結婚相手の苗字を名乗るという違和感
生活していれば、自分の苗字は、いろんな場面で使います。
自分の苗字が元結婚相手のものだった場合、思い出してしまったり、気持ちのリセットがつきにくかったりします。
もう自分と関係ない人の苗字を名乗っていることで、違和感を感じるかもしれません。
また離婚後に戻せるのは、ひとつ前の苗字に限ります。
もし離婚後に、再婚して離婚をしてしまうと、自分の旧姓を選べません。
例えば自分の旧姓が田中だとして、1回目の結婚で鈴木になり、2回目の結婚で斉藤になった場合、2回目の離婚後は鈴木・斉藤の2択になります。
「自分の旧姓を名乗れなくなるのは嫌だ」と思うなら、離婚したタイミングで旧姓に戻す方がいいでしょう。
旧姓に戻るメリット・デメリット
下記では旧姓に戻るメリット・デメリットを説明します。
旧姓に戻るメリット
メリットは下記の通りです。
- ・気持ちの区切りがつく
- ・再婚して、離婚した場合も旧姓を選択できる
日常的に利用する「名前」を変えることで、離婚に対して気持ちのリセットができます。
離婚した後の苗字選択は、「そのまま」か「ひとつ前の苗字」のどちらかしか選べません。
今後再婚して離婚した場合に、旧姓に戻しておけば、自分の旧姓を選べるようになります。
旧姓に戻るデメリット
旧姓に戻るデメリットは下記の通りです。
- ・名義変更の手続きが大変
- ・子供と違う苗字になるかもしれない
- ・子供の負担になる可能性もある
名前が変われば、運転免許書・クレジットカードなどの名義変更が必要です。
変更するものが多ければ、手続きも手間になるでしょう。
もし子供がいた場合は、苗字の変更で負担になる可能性もあります。
子供の苗字を変更するためには、親権が必要なので、自分が親権者じゃないと苗字変更はできません。
最後に
いかがでしたでしょうか。離婚後に旧姓にもどるのがよいのか、婚姻時の苗字を使い続けるのがよいのかは、それぞれのライフスタイルによって異なります。よく考えて、自分に合った選択をしましょう。
弁護士の選び方からタイミングまで詳しく知りたい方は、「離婚弁護士の選び方から 無料の相談方法やタイミングまで徹底解説」を参照してください。