「父親だけど子供の親権を得たい」「母親が有利と聞いたが父親が有利になるにはどうすればいいだろうか」―そういった悩みはないでしょうか。
特に、母親が親権を得る可能性は8割とも言われています。
逆に言えば、父親が親権を獲得できるのはわずか2割であるとも言い換えられます。
しかし、法律上は父親でも親権を得ることはできるのです。
ですから諦めずに有利に働くように作戦を立てて少しでも可能性を上げましょう。
この記事では親権の意味を捉え直し、父親が親権を獲得するための戦略を考えていきます。
親権は義務も含んでいる
親権というのは親に認められた権利だと思われているかも知れません。
たしかに間違いではないのですが、親権は権利でもあり義務でもあるのです。
この、義務であるということは頭に留めておかなければなりません。
親権を得るとはどういうことか
親権とは、子供を健全な社会人に育てるために監護教育する権利と義務のことをいいます。
その具体的な中身として①身上監護権と②財産管理権という2つの権利・義務を負うことになるということです。
また、離婚する際には必ず夫婦のどちらかがこの親権を負わなければならないのです。
もちろん義務だという観念だけを抱えて子育てをするのは息苦しいので、権利の側面も感じる必要はあるのですが、一定の義務を理解しておくのは子育てという責任を背負っていくうえで大切なのです。
では、身上監護権と財産管理権の具体的な中身をみていきましょう。
身上監護権
まず身上と監護権で分けて意味を説明します。
身上というのは法律用語で子供のことです。
ただの子供ではなく、未成年の扶養が必要な子供ということになります。
監護権というのは簡単に言うと子育ての権利と義務ということになります。
ということで身上監護権を簡単に一言で言ってしまうと「子育てをする権利・義務」ということになります。
その中でも義務としては、ただ育てるというのではなく身体や心の健康、教育というものを果たさなければなりません。
また、子供に対して親権者は代理権を負うことになります。
これを法律用語では「身分行為代理権」といいます。
その他にも、子供が住む場所を指定できる居住指定権、子供にしつけする懲戒権、未成年の子供に労働を許可したり制限したりする職業許可権、なども身上監護権に含まれるのです。
財産管理権
これは(子供の)財産を管理する権利や義務です。
未成年が大きいお金を動かすことは危険ですので、親権者が代理して財産の保存や利用、改良や処分をするのです。
しかし、子供のお金を親が自由居使っていいというわけではなく、子供のために使うお金で債務(借金)が生じる場合には子供の同意が必要となります。
離婚の際、男性は親権を獲得するのが不利な理由
離婚する際に、必ずどちらか一方が親権にならなければ離婚はできません。
しかし、父親が親権を得たいと思っても現実的には困難な場合が多いのです。
冒頭で紹介したように、母親が親権を得る可能性が8割といわれていることからもうかがえます。
では、父親が親権を獲得していく中で不利になってしまう理由は何なのでしょうか。
男性は仕事で忙しいから
まず、男性は働き方が多様な現代であっても、基本的に稼ぎ頭として仕事で忙しい場合が多いというのが理由です。
そうなってくると、保育所に定時に迎えに行けないなどのデメリットがあるのです。
保育所はだいたい17時~18時までですが、働き盛りの男性ですといくら働き方改革が叫ばれているとしても現実的には、定時に帰宅するというのは困難である可能性が高いです。
また、育児の経験が母親よりも乏しいという一般論からも、休日に子供と遊ぶなども想定しづらいというのが現実でしょう。
女性から養育費だけもらうことは想定しにくいから
一般的に収入の少ない母親から収入の多い父親に養育費が渡されるというのは想定しづらいのではないでしょうか。
そもそも父親からも養育費が渡されるケースが少ないという現状で、母親から父親に養育費が渡されるケースはもっとまれになります。
子供は母親を選びがちだから
日中、子供と長く一緒に居るのが母親であり、やはり子供も仕事で帰りが遅い父親よりも母親からの愛情を感じがちです。
そのため、子供も父親よりも母親との生活を選ぶ可能性が高くなってくるのです。
判例も母親有利だから
判例というのは裁判の過去の判決例ということです。
裁判は判例に従って判決を出すことが多く、一度判例が出てしまうとドラマとは違い、覆すのがほぼ不可能と言われているのです。
上記に並べた理由については働き方改革や主夫というものの増加、働き方の多様化によって変わっているのかもしれません。
しかし、現状は父親への固定観念が裁判所に溜まっているということなのです。
もしかしたら時代の変化に合わせてこれからはもっと父親が親権を得る可能性は高まってくるのかもしれません。
離婚前の子育ては主に母親がやってきたから
子供は基本的にいつも母親と過ごしてきました。
日中ですと、母親と一緒にいる時間が多いでしょう。
しかし父親が親権を得た場合、日中に父親がおらず、今まで支えてくれた母親もいないということで、ライフスタイルに大きな影響を及ぼす可能性があると考えられることが、大きなネックとなります。
離婚前に行う親権のための手続き
では、離婚前に親権を得る話になったとして、流れとしてどのようなことが行われるのでしょうか。
話し合い(協議離婚)
まずは話し合いからです。
この話し合いで決まれば協議離婚となります。
その後に役所に離婚届けを提出し、晴れて離婚成立、親権者決定となります。
話し合いと聞くと「仲が悪いから嫌だ」という思いもあるかもしれませんが、ここで決めることができると後々楽です。
注意が必要なのは話し合いの途中で感情的にならないことです。
感情的になると決裂してしまいます。
きちんと冷静に話し合いをすることを心がけてください。
また、ここでの決定は子供を巻き込んでのこの後の生活に大きくかかわる問題ですので、真剣に決定事項を決めて下さい。
男性側の離婚準備について詳しく知りたい方は、「男性の離婚準備 離婚協議を有利に進めるために」を参照してください。
話し合ってダメなら調停
話し合っても話がまとまらなかった場合には家庭裁判所で調停というものを行います。
離婚の調停を正式名称で夫婦関係調整調停と呼ばれています。
その手順はどうするのでしょうか。
まず、場所は家庭裁判所で行うことになります。
必要な書類は①妻の戸籍、②連絡先などの届出書、③自分の戸籍謄本、④事情説明書、⑤進行に関する照会回答書、⑥夫婦関係調整調停申立書の6点です。
また費用は5,000円程度です。
先ほどの話し合いと違って、あなたは2人の調停委員と面談します。
夫婦は互いに顔を合わせること無く、主張を繰り広げていくのです。
最終的には調停委員が話をまとめたうえでどちらが親権者に適しているかを決定します。
また、このままうまく調停ができると戸籍には調停離婚という文字が記載されます。
ここで決まらなければ家事審判が行われますが、この家事審判は今までの調停での証拠を元に行われることになります。
自分が親権者としてふさわしいことを調停でアピールをする
調停で有利に進めるには証拠集めが重要となってきます。
父親が子育てに貢献してきたことや母親が育児放棄をしていた、といった証拠はかなり有利に調停を進めることができます。
たしかに調停は母親有利に進みがちですが、きちんとした証拠を提示できれば調停委員も納得してくれるはずです。
また、父親不利という壁がある以上は弁護士などの法律家にお願いするのもいいでしょう。
調停で注意すべきこと
調停で注意すべきことは、調停委員の評価基準にあります。
調停委員は法律の専門家だけではないという実態があるため、父親自身の印象で判断されてしまう場合もあるのです。
自分が感情的になってしまうと悪い印象を与えてしまい、ますます不利になってしまいます。
相手を説得するにはとにかく証拠です。
できるだけ多くの証拠を集めて客観的事実を伝えることに専念してください。
自信のない場合にはやはり弁護士に頼るのがいいかもしれません。
男性が親権を獲得するためのポイント
父親が親権を取ろうとする場合、いくつかポイントがあります。
それぞれみていきましょう。
ポイント①養育の実績を作る
一つ目のポイントは養育実績を作ることです。
養育実績といっても、どういったものが実績となるのでしょうか。
それは、養育している所を普段みてくれている人に陳述書を書いてもらうことです。
例えば普段保育園の送り迎えをしているのであれば、保育園の先生にその事実を陳述書に書いてもらうのです。
また、普段子供と遊んでいるという事実を近所の人に書いてもらうというのもいいでしょう。
そういった実績を多く集めることができれば有利になります。
ポイント②子供に気に入られる
2つ目のポイントはとにかく子供に気に入られることが大切です。
ここは偽ることができない事実を証明するかどうかが重要な場面です。
親権は子供の意思が関わってくるので、普段から親しくしているかどうかで決まります。
母親との別居期間が長いのであれば、子供も父親になついているかもしれません。
また、子供の意思が尊重されるのは15歳以上の場合です。
もし、これから離婚を考えているというのであれば、今からでも一緒に遊ぶ時間を増やすなど長く接する時間を作るといいでしょう。
ポイント③ライフスタイルに影響が無いこと
3つ目のポイントは子供のライフスタイルに影響が無いことです。
たとえば引っ越しで子供を転校させなければならない場合、子供に大きな負担となります。
しかし、学校でいじめがあった場合に転校したほうが幸せな場合もあります。
そこのライフスタイルの変化は、いかにすれば子供が幸せかを考えることになるでしょう。
ポイント④暴力がないか
4つ目のポイントは親による暴力(虐待)の有無です。
母親に子供への暴力がある場合には父親の親権が認められやすくなります。
しかし、単に口で言うだけでは認められにくいため、近所の目撃者に陳述書を書いてもらえると認められやすくなります。
ポイント⑤子供のための行動をしているか
5つ目のポイントは、子供のために行動をしていることです。
子供と遊ぶ、タバコをやめる、送り迎えをする、残業せずに子供との時間を多くとるなどの行動を実際に起こす必要があります。
ポイント⑥離婚後もお互いに妻に面会させることを明言する
6つ目のポイントは離婚後もお互いに面会させることを明言する、というものです。
離婚後もお互いに面会させることを明言すると親権を得やすくなります。
特段の理由がない限り、子供は定期的に会えないと心理的ダメージがでかいのです。
ポイント⑦健康アピール
7つ目のポイントは健康アピールをすることです。
例えば身体が弱くて働けなかったり、精神疾患で子供に虐待をしていたりする場合などは、子供を育てるだけの健康度がないとされ、親権として認められにくいです。
ですから、そこを利用して医師の診断書などがあれば証拠として認められます。
子供の幸せはどこにあるのかを考える
親権を認めてもらうための評価基準は「子供の幸せがどこにあるか」です。
夫婦の身勝手で離婚をするのに、子供の親権も身勝手に得ることは出来ないのです。
子供の福祉を重視する
調停員や裁判官は判断基準としては、専門用語で子の福祉というものを重視しています。
子の福祉とは、子供をどちらに預ければ幸せになれるか、ということを重視しているということなのです。
子供は母性を受けて育つ
子供は母親と一緒に過ごす時間が多くなるため、母親の方が親権を得やすいという傾向は確かにあります。
しかし、それでも親権という観点では、子供の幸せはどうかを一番に考えているのです。
離婚の責任は関係ない
離婚の原因でどちらが悪いのか、のようなことは親権とは一切関係ありません。
あくまで子供の幸せがどうかという基準で判断されるのです。
ただし、親からの虐待があった場合には虐待をしたほうがもちろん不利になります。
その虐待はこれからの子供の生活に影響し、子供の幸せを大きく阻害することになるからです。
妻から養育費をとれる
夫は妻から養育費をとれるのでしょうか。
実は、夫も妻からの養育費を受け取ることができるのです。
しかし、夫からの養育費も未払い率が多いのに、妻からの養育費は期待できないかもしれません。
一応は法律の扶養義務ということになり払うべきものですが、現状はグレーなままなのです。
収入が途絶えてしまったときには一度、相談してみるのもいいかもしれません。
やはり、母親は子供のことであれば離婚していたとしても思うところはあるものです。
親権取れなかったら
どうしても親権が取れなかったらもう諦めるしかないでしょう。
実態として8割ほどが母親に親権が渡っているのです。
<参考記事> 獲得するのは難しい?父親の親権
その場合には面会交流という回数を増やせる機会を設けるようにしましょう。
親権者と子供が会うことを設けるための制度です。
月一回程度を目安として行われています。
しかし、そういった公的な制度を意識せずとも話し合いでうまくいけば気軽に会うことも可能かもしれません。
ただし、もちろん節度ある接触を心がけなければなりません。
男性で親権が欲しいなら弁護士に依頼しよう
「男性だけど、絶対に親権を取りたい!」と思うなら、弁護士への依頼がおすすめです。
法的な知識がない状態で自力交渉しても、親権は女性に取られてしまう可能性が高くなります。
下記では弁護士に依頼するメリットを説明します。
親権獲得の交渉を有利に進められる
弁護士は法律と交渉のプロです。
親権の獲得は女性が有利ですが、弁護士が入ることで、男性でも親権が獲得できるように交渉してくれます。
自分だけで交渉するのはでなく、弁護士が立ち会うことで、有利な交渉が進められます。
夫婦での親権獲得は、お互いに感情的になってしまう可能性も高いため、弁護士を介入させることで冷静に交渉を進められます。
親権問題を早期に解決できる
親権について話し合っていると、どんどん感情的になり、お互いにこじれてしまい合意ができない可能性もあります。
そこで初期から弁護士に任せることで、冷静に交渉を進めて、変にこじれる前に決着をつけられます。
離婚時には親権だけでなく、慰謝料・財産分与・養育費などの取り決めも必要になります。
ただでさえ大変で精神的にも辛い作業なので、弁護士に任せるのがおすすめです。
手間と時間がかかる手続きを任せられる
親権獲得や離婚の慰謝料請求・財産分与は、手続きや交渉に時間がかかります。
もし話し合いで解決せずに、離婚調停・裁判まで進んでしまった場合は、かなりの時間がかかります。
例えば離婚裁判だと、半年〜2年以内かかるケースもあります。
普段の生活や仕事をこなしながら、離婚の手続きを進めるのは大変なので、丸ごと弁護士に任せた方が楽でしょう。
弁護士に依頼すれば、面倒な書類の準備や手続きを代行してくれ、自分の手間はなくなります。
親権獲得で必要な証拠を事前に集められる
男性が親権を獲得するには「自分が子供を引き取った方が子供の利益になる」と証明しなければいけません。
具体的には、養育実績や養育環境を証明できる証拠が必要です。
弁護士に相談することで「どんな証拠があれば、親権獲得しやすいか?」といったアドバイスをもらえます。
事前に効果の高い証拠のアドバイスをもらうことで、有利な交渉ができます。
やみくもに自分だけで交渉するよりも、弁護士に相談した方がいいでしょう。
まずは無料相談から利用してみよう
多くの弁護士事務所では、初回の相談を無料で行っています。
まずは無料の相談を利用して、親権についてアドバイスをもらって「この弁護士に依頼したい」と思ったら正式に依頼できます。
「相談をしたら絶対に依頼しないといけない」というルールもないため、安心して相談してください。
「この弁護士は微妙だな」と思ったら、そこで正式な依頼をしなければいいだけです。
「弁護士相談をしたいけど、なにすればいいの?」という人は、無料相談から始めてみましょう。
まとめ
ここまでで、父親が親権を得るのは厳しい現実があるということを説明いたしました。
しかし、何もせずにただただ妻に親権が渡っていくのを見守るというのも父親としては厳しいものがあるでしょう。
その場合には、「子供の幸せがどこにあるのか」を考えてみることです。
調停委員も裁判官も子供の幸せがどこにあるのかを重視しています。
また、たとえ親権が認められなかったとしても、親権という法律上定義されたものにとらわれずに、一定の節度を守った上で面会の機会を作るというのもいいのではないでしょうか。
親権をとるための対策をさらに詳しく知りたい方は、「離婚時の子供の親権をとるにはどうしたらいい?」を参照してください。