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慰謝料請求徹底解剖ガイド 請求できる相手や相場とは?

離婚の際の慰謝料は、財産分与や養育費とちがい、必ずもらえるものではありません。
日本での離婚は、協議離婚といって夫婦の話し合いで離婚がまとまるケースが多いのですが、どちらか一方が悪いというよりも、気持ちのすれ違いや双方に落ち度が少しずつある場合も多いですので、痛み分けという形で慰謝料を請求し合わないことも多いのです。

一方、不倫やドメスティックバイオレンス、悪意の遺棄ように、夫婦の一方が加害者、もう一方が被害者となり、慰謝料が請求できるケースもあります。
それでは、どういう場合に慰謝料が請求でき、また誰にどのくらいの金額を請求できるのでしょうか?

この記事では、離婚に伴う慰謝料について、請求できる相手や相場をご説明します。

慰謝料請求ができる理由

慰謝料を請求する根拠は、民法709条と710条にあります。故意過失により、他人の生命、身体、財産に損害を与えた者はその損害を賠償する義務を負います。賠償の対象となる損害は、財産的損害に限らず、精神的損害についても対象になります。

離婚の多くの原因となる不倫やドメスティックバイオレンス、悪意の遺棄は、配偶者に対して精神的または肉体的なダメージを与えるものです。つまり、民法709条に定める不法行為となります。
不倫やドメスティックバイオレンスは、民法上の法定離婚原因でもあり、相手が同意していなくても離婚することができる原因にもなります。それにあわせて、被害者は受けた損害に対して損害賠償請求もできるのです。
これらの場合は、結論として離婚を選んでも選ばなくても、損害賠償請求はできます。

慰謝料請求ができる場合

不倫の場合

結婚した男女は互いに貞操義務をおい、他の異性と肉体関係をもつことはできません。もしこれを破った場合は、不貞行為となり、被害者となる配偶者に対して慰謝料を支払わなければいけません。信じていたパートナーに裏切られた配偶者は、大きなショックと悲しみに打ちひしがれることになるので、精神的損害が発生します。また、不倫から離婚に発展することは多く、家庭の平穏という法的利益も侵害されることになります。慰謝料はこれに対する金銭的塡補となります。

参照:もし不倫で離婚となったら。知っておくべきポイントがあります。

ドメスティックバイオレンス

夫婦間のドメスティックバイオレンスは深刻な問題になっています。殴る蹴るなどの肉体的虐待と、暴言や無視などの精神的虐待の2種類があります。家庭というクローズドな環境、夫婦間という特殊な人間関係で暴力が生じることによって、被害者は自分が悪いのだと思い込んでしまい、発見が遅れがちであることも問題です。

また、長期間に及ぶドメスティックバイオレンスで、被害者がうつ病などのメンタルヘルス
を患うなどの二次被害も発生しうる可能性があります。

いずれにしても、ドメスティックバイオレンスは、被害者に精神的肉体的にダメージを与える不法行為です。そのため、加害者は被害者に対して損害賠償を支払う必要があるのです。

ドメスティックバイオレンスについて詳しく知りたい方は、「当てはまったら要注意!DV夫の特徴とは?」を参照してください。

悪意の遺棄

夫婦は互いに扶養義務を有するため、収入が多い方の配偶者は少ない方の配偶者を養う義務を負います。それにもかかわらず、収入が多い方の配偶者が少ない方の配偶者を見捨てて、別居等をし、生活費を負担しないことを悪意の遺棄といい、慰謝料請求ができることがあります。

セックスレス

場合によりますが、セックスレスに対しても慰謝料を請求できる可能性があります。デリケートな問題ではありませんが、片方の性交渉の求めに対して理由なく拒否し続けた場合は、慰謝料請求の対象となることがあります。

慰謝料は誰に請求できるの?

加害者が配偶者のみの場合

加害者と被害者が夫婦の一対一の関係となる不法行為であれば、慰謝料を請求できる相手は、もちろん加害者である配偶者のみです。悪意の遺棄、ドメスティックバイオレンスやセックスレスはこれに該当することがほとんどでしょう。

加害者が2人いる場合

不倫は、不倫カップルである配偶者とその浮気相手のどちらも加害者になるので、慰謝料請求できる相手は2人います、正確にいうと、被害者の選択によって配偶者と慰謝料請求は配偶者と不倫相手のどちらにもすることができますし、どちらか一方だけに請求することも可能です。

そうすると、請求パターンとしては、配偶者のみ 不倫相手のみ、配偶者と不倫相手の3が考えられます。配偶者と浮気相手は、法的には共同不法行為者となり、連帯して損害賠償責任を負うことになります。

配偶者と浮気相手は、自分に慰謝料が請求された場合、もう片方に請求してくれとか、半分は片方に請求してくれ、という主張を被害者に対してすることはできません。つまり、被害者はどちらからも全額を回収できます。ただし、両者に慰謝料請求をした場合でも、慰謝料を二重取りすることはできないので、金額が増えるわけではありません。

離婚しないで不倫相手に慰謝料請求するときの注意点

ちなみに、不倫発覚後も離婚しないで、夫婦関係を修復しようと考えている場合は、通常は配偶者には慰謝料請求はせずに、不倫相手にのみ慰謝料請求しようと考えると思います。
これから信頼関係を再構築していこうとしている自分の配偶者に慰謝料請求をするのは、態度として矛盾していますし、経済的にも夫婦の家計は同一なので、自分のお財布から自分に慰謝料を払うのも同じになって、あまり意味がないからです。

そのため、不倫相手に慰謝料請求をしつつ、配偶者と別れてもらうよう交渉するのがベストということになりますが、この場合注意すべきことがあります。
上述のように不倫カップルは被害者に対して、共同不法行為者として損害賠償責任を負うので、決定された慰謝料を満額支払う必要があり、半額のみ支払いますという反論をすることはできません。しかし、不倫カップル同士では、相手の責任部分も損害賠償金を立て替えてあげたという関係になるので、あとから責任分は返してくれという主張をすることができます。これを求償権といいます。

ところが、求償権を行使されると困るのが被害者です。上述のように、婚姻関係を継続する場合、自分の配偶者から慰謝料をもらっても経済的に意味をなさないからです。せっかく苦労して不倫相手から慰謝料を払ってもらっても、これでは困りますね。

これを防止するためには、不倫相手に対して求償権を行使しないという約束をしてもらう必要があります。具体的には、不倫の示談書を作成するときに、求償権を行使しないという特約を入れるということになります。不倫相手としては不利な条件となるので、代わりに慰謝料金額を減額するなどの対応となることが一般的でしょう。

慰謝料の相場

全体的な相場

離婚の際の慰謝料の金額には、決まった算定式があるわけではありません。しかし、過去の判例の蓄積でだいたい相場が決まっており、50万円から300万円程度となっています。相場の中で具体的にどの程度の金額になるかは、個別の事情である不法行為の態様や婚姻期間の長さによって異なります。

離婚慰謝料の相場について詳しく知りたい方は、「事例別:離婚慰謝料の相場とより多くの慰謝料を得る方法」を参照してください。

悪意の遺棄の場合の離婚慰謝料の相場

悪意の遺棄の慰謝料相場は、100万円~200万円程度が多いと言われています。遺棄の期間や事情によっては、100万円以下となる場合もあります。

セックスレス、その他の場合の離婚慰謝料

性交渉の拒絶を含むその他の原因による離婚慰謝料請求は、原因によって金額がまちまちです。ただ、その他の不法行為ほどはっきりと違法性を認定できないことも多く、高くても50万円~100万円程度に収まることが多いようです。ただし、セックスレスの原因として不貞があるような場合は、合わせ技で比較的高額な300万円程度の慰謝料となることもあります。

不貞の場合の離婚慰謝料

不貞の場合の離婚慰謝料は、不貞の結果夫婦が離婚するかどうかによっても金額が変わります。離婚に至る場合のほうが、被害者への被害の程度が大きかったとして、慰謝料が高額に認められる傾向があります。

相場としては、離婚する場合で100万円〜300万円程度、離婚しない場合で50万円〜100万円程度です。

相場の中で具体的にどの程度の金額になるかは、夫婦関係の長さ、夫婦の年齢、経済力、未成年の子供の有無や人数、不貞の経緯、不貞のリーダーシップがどちらにあったのか、不貞相手の年齢、経済力、不貞の期間、頻度、不貞前の夫婦関係の良好さなど、様々な要素が加味されて決定されます。

離婚慰謝料が貰えない場合

相手も不法行為の存在と自分の責任を認めている場合は問題ないのですが、相手が否定していたり、こちらにも責任があると主張している場合は、最終的には、裁判で慰謝料支払義務の有無を争うことになります。

裁判で負けてしまい、離婚慰謝料がもらえない場合とは、どんな場合でしょうか?例えば、不倫についての離婚慰謝料訴訟の場合、不貞関係がはじまるまえから夫婦関係が実質上破綻していた場合、不倫によって家庭が壊されたということにならないので、不貞行為の存在が否定され、慰謝料がもらえないことがあります。
また、お互いに不倫をしていたという場合は、どちらも慰謝料支払義務を負うということになり、相殺されて結局慰謝料がもらえないということもあるでしょう。

また、後述しますが、慰謝料請求の証拠を全く揃えられていない場合も、敗訴の可能性があります。民事裁判では、利益を受けるほうが立証責任を基本的に負うので、不法行為の存在の立証ができないと主張が認められない可能性があるからです。

離婚慰謝料を高くもらうためには

相場より高い慰謝料でも合意すれば問題ない

上述した離婚慰謝料はあくまで相場であり、当事者が合意すれば、相場より高い慰謝料としても全く問題ありません。特に精神的慰謝料については、個人の感受性や夫婦の関係性によっても受けるダメージは違いますので、夫婦がこれは精神的慰謝料として妥当であると納得しなのであれば、その金額が慰謝料の額になります。

例として、セレブリティや有名人の離婚では、数億円単位の慰謝料の支払で話題になることもありますよね。

相場は当事者がもめて折り合いがつかないときの一つの基準ですので、話し合いによってより高い慰謝料を狙うことができる可能性はもちろんあります。

例えば、慰謝料を支払う側が離婚したがっている場合などは、離婚に応じてあげるかわりに、慰謝料を高めにもらうという交渉もありえるでしょう。

離婚案件に詳しい弁護士に依頼する

慰謝料示談交渉など早めの段階から、離婚何件の取扱い実数が多い弁護士に依頼するという方法もあります。一般的には、弁護士が介入したほうが、もらえる慰謝料の金額が高くなるという傾向があります。

離婚案件の取扱い実数が多い弁護士は、離婚慰謝料の相場やその他離婚条件について、過去の経験から多くの判例や実務に精通しています。また、交渉により依頼人の利益を最大化するプロフェッショナルでもありますので、自分で交渉するよりもよい結果を生むことが多いのです。離婚案件は、男女問題という感情がからみやすい問題ですので、当事者同士が話し合いをすることによって、より一層もめてしまい、離婚慰謝料の支払が遅れてしまうこともあります。弁護士費用は多少かかりますが、慰謝料をもらったあとの成功報酬として清算できる部分も多いですので、慰謝料の金額や条件でもめそうな場合には、検討するのも一つの方法です。

慰謝料を請求するための証拠はきちんと押さえておく

論より証拠という言葉がありますが、慰謝料請求をするためには、裁判官や弁護士といった第三者をきちんと説得できるだけの客観的な証拠を揃えておく必要があります。
言った言わないの議論になると、夫婦間でしかわからない事情が多いですので、泥沼化し、なかなか思う決着に至らない可能性があります。

不貞の証拠

慰謝料請求ができる不貞行為とは、既婚者が他の異性と肉体関係を持つことをいいます。一般人の感覚としては、デートをしたりキスをしたりすることも不倫だと思いがちですが、不法行為となりうるのは、裁判例上は肉体行為以降となっています。

肉体関係の立証としては、ラブホテルに入る前後の時間をビデオ撮影し、一定の時間が経過したことを記録するなどの方法があります。1回だけよりも複数回あったほうが、証拠としては強力になります。
不貞行為は、当事者間でしか知りえないところで行われるのでなかなか決定的な証拠をつかむのが大変かもしれません。場合によっては、探偵事務所をつかって尾行してもらうなど、プロの手を借りたほうが良い場合もあるでしょう。

なお、近年の判例では、肉体行為の立証まではいかなくても、不倫関係を認定したものもありますので、あやしいメールの履歴なども残しておくに越したことはありません。
<参考記事> 不倫慰謝料の相場は?請求できない場合もあるの?

ドメスティックバイオレンスやその他の不法行為の証拠

ドメスティックバイオレンス、悪意の遺棄、セックスレスなどその他の原因での慰謝料を請求する場合は、まずいつどこでどのような態様で被害を受けたかをきちんと記録しておきましょう。具体的には、日記やノートなどに、被害を受けたとき、場所、まわりに誰がいたか、どんな気持ちになったか、などを細かく記録していきます。
ボイスレコーダーやスマホアプリなどで、被害を受けている様を録音録画しておければ、より強力な証拠になるでしょう。

離婚慰謝料が決まったあと

離婚慰謝料の支払が決まったら、離婚協議書に、慰謝料の金額と支払い方法、時期などをきちんと記した上で、公正証書にしておきましょう。
公正証書とは、契約を公証役場に持参し、公証人に離婚協議書の締結が真実であることを証明してもらうものです。作成費用はかかりますが、メリットとして、判決と同様の強制力があります。

特に分割払いで慰謝料を支払う場合など、最初はスムーズに支払われていたけれど、時の経過とともにじょじょに支払が遅延したり、とまってしまったりすることがあります。相手に督促してもなお支払ってもらえないときは、支払い命令をだしてもらうために訴訟を提起する必要がありますが、あらかじめ公証役場で公正証書にしておけば、この訴訟提起の手間を省略することが出来ます。つまり、公正証書があれば、いきなり相手の給与債権や不動産などに強制執行をかけて、慰謝料を回収することができるのです。

注意しておきたいことが、離婚後時間がたって、相手が知らない間に転居していて行き先がわからなくなったり、転職して差し押さえるべき給与債権が不明になったりしてしまうと、なかなか実効性のある回収が難しい場合があります。
できるだけ支払は短期間にしたうえで、支払い期間中に転居や転職をする場合は、必ず通知をするように離婚協議書の中で義務付けをしておきましょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。離婚に際しての慰謝料について、慰謝料請求ができる場合とできない場合、原因別の相場、少しでも高くもらうための方法などについてご参考になれば幸いです。慰謝料問題を含む離婚問題については、離婚問題についての取扱い実績が豊富な弁護士に一度ご相談してみることをおすすめします。

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