子供がいる夫婦が離婚を考えたときに真っ先に問題になるのが養育費の額ではないでしょうか?
養育費の計算は16年ぶりに令和元年12月23日に養育費算定表の改定がありました。改定内容としては養育費の額が改定前よりも増額しているケースが多くなっています。
本記事では養育費の改定後の算定方法、改定後の養育費算定表並びに改定内容を反映した【2021年版】養育費計算ツールを搭載しています。 家族構成と年収を入力するだけで養育費を計算できますので是非ご活用ください。
養育費計算の基本的な考え方
離婚後も子に対する扶養義務はある
離婚により子供と離れることになった親には、子供の養育費を支払う義務があります。夫婦が離婚しても、親と子との関係は変わりません。親には未成年の子を扶養する義務がありますから、養育費として金銭を支払うことにより義務を履行することになります。
子供が何歳まで養育費を払うのか
原則は、子どもが成人として20歳になる月まで支払われることになります。
養育費は別段の取り決めがない限りは、毎月支払われるので、20歳の誕生月までもらえるということになります。
民法改正により2022年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられますが、裁判所は養育費の支払義務について原則的には20歳とする方針であることを表明しています。詳しくは下記リンクの「研究報告の概要(PDF:592KB)」)をご参照ください。
公開元:平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
では、20歳まで養育費を支払えばよいのかというと、これには例外があります。
高校卒業後に大学に進学しないことが、両親のバックグラウンドからも自然であり子供も同意しているような場合は、高校卒業と同時に経済的に自立しますので、養育費支払いが終わることもありますし、両親が高学歴高収入の場合で、この家庭の子供であれば、大学院に進学することが自然だろうという家庭の場合、大学院卒業までとしている場合もあります。
その他、大学受験時の浪人や海外留学など特殊事情が加味されて決められていることもあります。
あらかじめ、何歳まで養育費を払うのかを決めておく必要があります。
養育費の算定方法
もらえる養育費の額は、計算式で算出します。
養育費の計算の流れは次の通りです。
- 1. 親の基礎収入を計算する
- 2. 子供の生活費指数を割り出す
- 3. 子供の生活費を計算する
- 4. 養育費の額を決める
以上が、養育費を計算するときの基本的な流れになります。
それぞれのプロセスを詳細に説明します。
(1)親の基礎収入を計算する
養育費の計算で最初に行うのは、親の基礎収入の計算です。
総収入と基礎収入は違います。
総収入から、養育費の計算式に使える基礎収入を割り出さなければいけません。
基礎収入とは、総収入から税金(公租公課)や仕事をするために必要な費用(職業費)、住居費などの特別経費を引いた収入のことです。
仕事で収入を得ても、その収入をすべて自由に使うことはできません。
生活をするうえでは、税金の支払いや、居住費などが必要になります。
基礎収入を求めずに総収入を使ってしまうと、税金などを含めた収入による計算になってしまい、「税金や養育費を引いたら生活できなかった」などの結果を招く恐れがあるのです。
そのため、あらかじめ税金や仕事のために支払わなければならない費用を、総収入から引いておく必要があります。
具体的な計算式としては、総収入に一定の%をかけて基礎収入を算出します。
総収入×〇%=基礎収入
「〇%」に入る数字は、収入額や職業によって異なります。
給与所得者の場合 | 事業所得者の場合 | ||
---|---|---|---|
給与収入(万円) | % | 事業収入(万円) | % |
0~75 | 54 | 0~66 | 61 |
~100 | 50 | ~82 | 60 |
~1125 | 50 | ~98 | 59 |
~175 | 44 | ~256 | 58 |
~275 | 43 | ~349 | 57 |
~525 | 42 | ~392 | 56 |
~725 | 41 | ~496 | 55 |
~1,325 | 40 | ~563 | 54 |
~1,475 | 39 | ~784 | 53 |
~2,000 | 38 | ~942 | 52 |
~1,046 | 51 | ||
~1,179 | 50 | ||
~1,482 | 49 | ||
~1,567 | 48 |
たとえば525万円の総収入の会社員の場合は42%をかけて計算しますが、同じく525万円の総収入の自営業の場合は54%をかけて基礎収入を計算します。
同じ総収入でも、会社員と自営業では基礎収入が違ってくるのです。
自営業と会社員では基礎収入の計算結果が違うため、最終的に養育費の額も違っています。
(2)子供の生活費指数を割り出す
親の基礎収入を計算したら、次に子供の生活費指数を計算します。
生活費指数は以下のように定められています。
親:100
子(0歳~14歳):62
子(15歳以上):85
大人の生活費指数は100です。
子供の生活費指数は年齢によって異なり、0~14歳は62で、15歳以上は85になります。
(3)子供の生活費を計算する
子供の生活費指数をもとに、子供の生活費を計算します。
子供の生活費の計算式は以下の通りです。
義務者の基礎収入×(子供の生活費指数÷(養育費を支払う親の生活費指数+子供の生活費指数))=子供の生活費
ここまでの流れで求めた基礎収入や、子供の生活費指数を計算に使います。
注意したいのが、ここで算出した子供の生活費がそのまま養育費の額になるわけではないという点です。
子供の生活費をさらに養育費の計算式に当てはめて、養育費の額を計算します。
(4)養育費の額を決める
算出した子供の生活費を、以下の計算式に当てはめます。
子の生活費×(養育費を支払う側の基礎収入÷(養育費を受け取る側の基礎収入+支払う側の基礎収入))=1年間の養育費
1年間の養育費÷12=1カ月の養育費
以上の流れで養育費の額を算出可能です。
養育費の計算式として、4つのプロセスを詳細に見てきましたが、個人で養育費の額を算出することには問題点があります。
養育費の計算は複雑なのです。
養育費の計算に慣れている弁護士なら、詳細な計算ができるかもしれません。
しかし、養育費の計算をほぼ経験していない一般の人だと、養育費の計算途中で計算ミスをするなど、養育費の算出で困ることがあります。
計算式の途中でミスしてしまうと、養育費の額が本来の額より小さくなりかねません。
養育費をもらう側にとって、計算ミスは致命的です。
養育費を簡易迅速に計算できる算定表がある
養育費算定表とは
養育費の計算では、基礎収入を算出したり、子供の生活費を算出したりと、複雑な計算を行わなければなりません。この計算を簡易迅速に行うために、裁判所では養育費算定表という早見表が用意されています。
養育費算定表の見方
養育費算定表は、子供の年齢と人数でそれぞれの表に分かれています。該当する表において、義務者の年収(縦軸)と権利者の年収(横軸)の交わったところの金額が、養育費の標準的な額です。
2019年12月23日養育費算定表が新しく改定されました
養育費算定表が2019年12月23日に改定されました。
参考:裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
旧算定表は作成された当時の情勢(2003年)を基に作られたため、「金額が低過ぎる」「実態に合っていない」「母子家庭の貧困化の原因になっている」という意見が多数ありました。
旧算定表が作成された当時と比較して、現在は子育てに必要な食費・光熱費などの費用も上がり、携帯電話を子に持たせる親が増えたなど、社会情勢が大きく変わっています。
新しく改定された養育費算定表はこれらの事情を鑑みて見直されたものになります。
新算定表を基準に計算すると養育費は従来に比べて増額するケースが多くなります。
具体的な算定例
父親(会社員)の税込年収が600万円、母親(パート)の年収が200万円、子供の年齢が5歳、離婚後は母親が監護養育するものと仮定して、算定表を見てみましょう。
図のように算定表に照らし合わせると養育費は4~6万円になることがわかります。
<参考記事> 子供の養育費の相場徹底解説 年収別に比べてみました
算定表に該当しないケースもある
すべてのケースにおいて、養育費算定表が使えるわけではありません。たとえば、養育費算定表では、子供の人数が3人までしかカバーされておらず、4人以上子供がいる場合には算定表は使えないことになります。
また、夫と妻の両方が子供を引き取る場合にも、算定表を使うのではなく、本来の計算方法で計算しなければなりません。
離婚後の養育費の相場について詳しく知りたい方は、「離婚後の養育費 相場から期間まで徹底解剖」を参照してください。
養育費 計算ツール
こちらのツールで養育費の計算が出来ます。計算結果は目安として使用してください。
未払い養育費でお悩みの方へ
未払い養育費が回収しやすくなりました
民事執行法の改正により、元配偶者の銀行口座・勤務先・居住先を調査しやすくなりました。
裁判所に申し立てることで元配偶者の銀⾏⼝座や勤務先を⾦融機関や市町村などから取得可能です。
また、養育費の未払いがある場合、給与の差し押さえなどの強制執行ができるようになりました。
こんな方はぜひご相談ください!
- 養育費が約束通り支払われない
- 養育費を請求したいけれど連絡は取りたくない
- 元配偶者に経済力がないため、養育費を諦めた
- 元配偶者の消息がわからなくなった
養育費は子供のための当然の権利です。
未払い問題について泣き寝入りする必要はありません。
養育費についての公正証書による合意又は調停・審判・裁判等の手続きで決定された調書がある方で、相手方の勤務先がわかる方は養育費としての預金口座差し押さえ等の可能性が高くなります。
離婚弁護士マップでは、離婚に強い弁護士を無料でご案内しております。
まずはご相談の電話をどうぞ!
まとめ
養育費の計算方法は複雑です。養育費の計算を簡易迅速に行うために、養育費算定表が用意されています。
養育費算定表の金額は、子供を育てていく上で、必ずしも十分な金額とは言えません。それぞれの家庭の状況によって、特別の費用がかかるケースもあります。
標準算定方式に従って計算した養育費は、あくまで目安にすぎません。十分な養育費を確保したい場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。
お子様がいる方が離婚前に考えておくべきポイントについて詳しく知りたい方は、「子供を持つ親が離婚をする前に考えておくべき7つのポイント」を参照してください。