この記事でわかること
- 離婚の前に考えておくべきポイントがわかる
- 養育費や住居など、離婚後の生活への対策がわかる
- ひとり親への支援制度がわかる
(1)子供の親権
未成年の子供がいる夫婦が離婚する場合、親権者を父か母のどちらか片方に決めなければなりません。
未成年の子供が複数いる場合は、それぞれの子供について親権者を決める必要があります。
また、離婚届を提出する際には親権者の記入が必須となり、親権者は戸籍にも記載されます。
親権者は一度決めると簡単に変更することはできませんので、子供にとってどちらが親権者になるべきであるかは慎重に考える必要があります。
どちらが親権者になるのかで揉めて、離婚に時間がかかってしまうケースは多くみられますが、ここで大切なのは「子供にとって」どちらが親権者としてふさわしいかという視点を持つことです。
自分たちの利己的な思いだけで決めることなく、子供の立場に立って冷静に考えましょう。
(2)養育費
離婚しても、子供の養育費は父親、母親の双方に負担する義務があります。
そのため、親権者となり育児する側の親は、相手に対し養育費を請求するのが一般的です。
養育費は金額だけでなく、支払い方法や子供が何歳になるまで支払うのかまで、できる限り具体的に決めておくのがベストです。
養育費の金額について自分たちで決められない場合は、裁判所が作成している養育費の算定表を目安にするとよいでしょう。
養育費を確保するための対策
離婚時に養育費について合意しても、途中から支払われなくなってしまうケースが多く、きちんと養育費を支払い続ける人は全体の2割程度というのが現実のようです。
これは、子供を育てる親権者にとって大変深刻な問題ですので、養育費の不払いを防ぐために、できる限りの対策を講じておきましょう。
一括払い
不払いを防ぐ最も簡単な方法は、養育費を一括払いしてもらうことです。
たとえば、子供が10歳の時に離婚して20歳まで養育費を支払うことにした場合、10年分の養育費を一括して支払ってもらうのです。
一括払いにする代わりに、月々支払う場合よりも養育費の総額を低めにするという場合もあります。
ただし、これは養育費を一括払いできるだけの財産がある場合にしかできません。
公正証書の作成
養育費の取り決めをしたら、公証役場で離婚協議書を公正証書にしてもらうと安心です。
公証役場は公的な機関であり、原則20年間保管してもらえます。
公正証書は証拠として強い力を持つので、養育費を支払う側にとっては相当なプレッシャーとなります。
また、万一養育費が滞った場合には、公正証書に「執行受諾文言」を付しておくことで、裁判をせずに財産の差押えをすることができます。
公正証書を作成するためには手数料がかかりますが、離婚後に安心して子供と生活していくためのコストだと割り切り、ぜひ作成しておきましょう。
(3)面会交流
離婚して子供と離れて暮らすことになった方の親には、子供と面会する権利があります。
これは、親にとっての権利ですが、子供にとっての権利でもありますので、どのような頻度でどのように面会するのかを、子供の気持ちを配慮して決めておきましょう。
親権者となった側は、離婚した相手と子供が接触することや、面会交流を嫌がることがありますが、面会交流は続けた方がよい場合がほとんどです。
面会交流を続けることで、親権者でない親は子供への愛情を失いにくくなるため、養育費の不払い防止にもなります。
面会交流をやめてしまうと、養育費の支払いもやめてしまう親が多いので、その意味でも面会交流を続ける方がよいでしょう。
(4)財産分与
子供がいてもいなくても、離婚の際には「財産分与」について決める必要があります。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で協力して築きあげた財産を、離婚の際に夫婦で分配することをいいます。
夫婦どちらの名義になっていても財産分与の対象になりますが、結婚前に築いた財産や親からもらった財産など、夫婦で協力して築いた財産以外のものは対象外になります。
学資保険
子供がいる夫婦が忘れがちな「学資保険」についても、契約内容をきちんと確認しておきましょう。
学資保険は子供の財産だから財産分与に含まれないと思っている方もいますが、契約者と受取人が親である以上、財産分与の対象になります。
離婚する際に解約して、解約返戻金を受け取ってそれを分ける場合もありますが、子供のために継続する場合が多いと思います。
この場合は、契約者を変更する必要がある場合があります。
例えば、現在父親が契約者になっており、親権者が母親となる場合には、父親を契約者のままにしておくと、父親が掛け金を支払わなくなったり勝手に解約したりしてしまうリスクがありますので、契約者を母親に変更しておきましょう。
(5)子供の心理的なケア
子供にとって、両親が離婚することは心理的に大きなストレスとなることがほとんどです。
父か母のどちらかと離れ離れになってしまうことで傷つき、寂しい思いをしてしまうかもしれません。
それに加え、場合によっては引っ越しをすることになって学校が変わったり、苗字が変わったり、経済状況が変わったりという目に見える変化に困惑してしまうこともあるでしょう。
子供は健気なので、無理をしてでも元気にふるまっている場合も多くみられます。
子供の様子にいつも以上に注意を払い、子供の心のケアを忘れないようにしましょう。
また、子供には元配偶者の悪口を言わないようにしましょう。
離婚をしても子供にとっては自分の親であることに変わりはないので、深く傷ついてしまったり、自分を責めてしまうことがあります。
自分一人では子供の心理的なケアを十分にできないと思ったら、カウンセリングを受けたり、役所の相談窓口を頼るなどの方法も考えましょう。
(6)住居をどうするか
離婚すると、今まで住んでいた家から夫婦のどちらかが出ていくことになるのが一般的です。
大人だけであれば、あまり深く考えずに新しい住居を見つけることもできるかもしれませんが、子供がいる場合は、子供の通学の利便性や学習環境、治安の問題なども考えて住む場所を慎重に決める必要があります。
まず、現在の住まいが賃貸なのか、持ち家なのかによっても考えるべきことが変わってきます。
賃貸住宅の場合
賃貸住宅の場合は、賃貸契約をしたときと居住者の家族構成が変わることになるので、大家さんまたは管理会社への連絡が必要です。
契約者が出ていく場合は、契約者の変更手続きも必要で、保証人が必要となったり収入証明書が必要となる場合もあります。
離婚後も無理なく現在の家賃を支払い続けることができるかどうか、事前にきちんと計算しておきましょう。
また、自治体によっては、ひとり親が優先的に公営住宅に住むことができるなどの優遇が受けられる場合もあるので、別のところへ引っ越した方がよいケースもあります。
持ち家の場合
持ち家の場合、財産分与によって家を夫婦のどちらのものにするか決める必要がありますので、家の名義や住宅ローンの有無について確認しましょう。
例えば、現在は夫の名義になっており、財産分与によって妻が家を取得する場合、所有権移転登記という夫から妻への名義変更の手続きが必要となります。
名義変更をするときには、登録免許税や司法書士への手数料がかかり、場合によっては不動産取得税がかかるケースもあります。
また、不動産が自分の名義になれば、翌年から固定資産税を払わなければいけなくなります。
住宅ローンの返済中の場合は、名義変更をするための手続きが複雑になり、借りている金融機関への連絡も必要になります。
特に、住宅ローンを夫婦連名で組んでいる場合は手続きが複雑になるので、弁護士や司法書士といった専門家に相談した方がよいでしょう。
(7)子供の姓をどうするか
離婚すると、結婚により改姓した人は自動的に旧姓に戻りますが、子供の姓は、離婚によって自動的に変わることはありません。
例えば、母が親権者となり、離婚により旧姓に戻った場合でも、子供の姓はそのままなので、母と子の姓が別々になってしまいます。
この場合、子供の姓をそのままにするか、母と同じにするかを決める必要がありますが、子供の年齢等によっても考え方は変わってくるでしょう。
まだ未就学児の子供であれば、姓が変わってもあまり影響はないので、母と同じ姓に変えることが多いでしょう。
これが学童期の子供になると、友達など周囲の反応が気になったり、自分が名乗ってきた姓が変わることへの抵抗があったりする場合もあるでしょう。
このような時は、子供の気持ちを考えて、子供の姓を結婚時の姓のままにしておくことができますが、母と子で姓が違う状態となり、親子であることを理解してもらいにくくなったり、不便なことがあるかもしれません。
その場合は、離婚しても親自身が旧姓に戻さず、結婚時の姓のままにするのも選択肢の一つです。
離婚から3カ月以内に届け出をすることで、結婚していた時の姓のままにすることができます。
ただし、この方法をとると、もう旧姓に戻ることはできなくなってしまうので、ずっと離婚した元配偶者の姓のままでいる覚悟が必要です。
(8)離婚が成立するまでの別居中の生活費
離婚が成立するまでには、意見が対立して揉めることも多く、時間がかかってしまうことがあります。
その間、夫婦で別居せざるを得ない状況もあるでしょう。
その場合は、別居期間中の生活費が問題になりますが、たとえ別居していても、結婚している間は夫婦にはお互いに扶養義務があります。
そのため、夫婦それぞれの収入に応じて、収入の少ない側は相手に対して「婚姻費用」を請求できる場合があります。
婚姻費用については、裁判所で作成している婚姻費用の算定表がありますので、自分たちで決めることが難しい場合には、これを目安にするとよいでしょう。
(9)離婚後の収入確保とひとり親の支援制度の確認
離婚することを決めたら、離婚後の生活をできるだけ具体的にイメージし、生活の基盤を作っていかなければなりません。
具体的に、収入をどうやってどのくらい得て、どこで、どんなスケジュールで、どのように生活していくかをシミュレーションしておくことで不安も少なくなります。
実家等のサポートが受けられるのか、仕事をする間子供を預けられる場所があるか等も考えておく必要があります。
現在専業主婦という場合には、仕事を探しておくことも必要になるでしょう。
一人で仕事を見つけるのが難しい場合は、各自治体で、母子家庭等就業・自立支援センター等の就労支援をしている公的機関がありますので、そういった場所で相談してみるのもよいでしょう。
また、「児童扶養手当」「住宅手当」「医療費助成」等のひとり親が受けられる手当てや助成もありますので、きちんと調べて手続きをしましょう。
不安なことや分からないことは、事前に各自治体の相談窓口や弁護士の相談会等で相談しておくと安心です。
まとめ
未成年の子供がいる夫婦が離婚をするには、決めなければいけないことが多く、成立するまでのハードルが高くなることは事実です。
しかし、子供や自分たちの未来を考えた時、家庭内の状況によっては離婚をすることがベストな選択という場合もあるでしょう。
不安なことは専門家の力を借りたり役所の窓口で相談するなどして、自分や子供の幸せをよく考えたうえで離婚をするべきかどうかを判断しましょう。
その上で離婚を決断した場合には、ひとつずつ問題を整理し、事前に対策を講じておくことで、できるかぎり不安を解消して新しい生活に備えることができるでしょう。