
年金受給者が亡くなった後に発生する「未支給年金」は、条件を満たせば親族が受け取ることができます。
一方で、未支給年金の税務上の取扱いは、通常の相続財産とは異なるため、相続税の申告書を作成する際は注意が必要です。
本記事では、未支給年金の受給要件と課税関係、請求時の注意点について解説します。
この記事の監修/取材協力

古尾谷 裕昭 税理士
相続専門の税理士法人(VSG相続税理士法人)の代表税理士。同事務所では、年間3,033件の相続税申告を行っており「99%税務調査が入ってこない」「税金を可能な限り安く」「親身に寄りそった対応」という品質で、元国税調査官を招き入れた体制のもとサービスを提供している。

三ツ本 純 税理士
相続専門の税理士(VSG相続税理士法人)。税理士業界に就職した後、10年以上相続税の専門税理士として活動、これまで600件以上の相続税申告に関わっている。横浜出身。書籍「令和3年度版 プロが教える! 失敗しない相続・贈与のすべて (COSMIC MOOK)」など
未支給年金とは?
未支給年金は、年金受給者に対して本来支払われるはずだった年金をいいます。
相続発生時点で受給する権利がある年金ですので、請求手続きを行えば、未支給の年金を受け取ることができます。
年金の種類
年金制度には、国が運営する公的年金と、企業や個人が加入する私的年金があります。
公的年金制度は、20歳以上60歳未満の全員が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員・公務員が加入する厚生年金の2階建て構造です。
国民年金には、職業などによって3つの被保険者種別があり、それぞれ保険料の納付方法が異なります。
厚生年金は、厚生年金保険に加入している会社や官公庁などの適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方を対象とした制度です。
一定の条件に該当する場合、国籍・性別・年金の受給有無にかかわらず、厚生年金保険の被保険者となります。
国民年金と厚生年金以外に、公務員や私立学校の教職員が加入していた「共済年金」も存在していましたが、「被用者年金一元化法」の施行により、現在は厚生年金に統一されています。
私的年金は、公的年金に上乗せして給付を保障する制度です。
企業年金や個人年金などが含まれ、老後の生活資金を補完する役割を担っています。
確定給付型と確定拠出型があり、加入は任意のため、個々の加入状況は異なります。
公的年金は相続税がかからない
未支給年金は、受給者本人の死亡日までに支給権が発生していた分に限り、遺族が請求できます。
相続税は、被相続人(亡くなった方)の財産を対象にした制度であり、相続開始時点で有していた不動産や預金などだけでなく、債権も相続税の課税対象です。
年金自体は被相続人(亡くなった方)が受け取るものですが、未支給年金請求権については、死亡した受給権者の遺族が自己の固有の権利として請求するものです。
そのため、未支給年金を受け取ったとしても、その年金については死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません。
ただし、権利を行使した遺族の一時所得となるため、金額によっては所得税の確定申告が必要になります。
未支給年金を受け取れる人の範囲・条件
未支給年金は、一定の条件を満たした親族が請求することができます。
しかし、請求できる人には順位があり、相続人でも受給者になれないケースがあるので注意が必要です。
受給者と生計を同じにしていた人
未支給年金は、被相続人と生計を一にしていた親族が請求できる権利です。
「生計を一にする」とは、生活費の援助や同居などを通じて、経済的に密接なつながりがあったことを指します。
生計を一にする親族が複数人いるときは、以下の順番で請求権が認められます。 なお、未支給年金を受け取ることができる先順位者がいる場合、後順位者は請求者にはなれません。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- その他(3親等以内の親族)

3親等内の親族とは?
親等とは、特定の人から見た時の、親族関係における近さを表すものです。
具体的に3親等内の親族とは、曾祖父母、ひ孫とひ孫の配偶者、叔父叔母と叔父叔母の配偶者、甥姪と甥姪の配偶者、前婚のひ孫をさします。
別居・別世帯の場合は?
生計を一にする親族の多くは、被相続人と一緒に生活をしていた人です。
しかし、被相続人と別居していた場合でも、生計を一にしていたと認められるときは、未支給年金を受け取れる可能性があります。
「生計を一にする」とは、必ずしも同じ家屋で生活していることを前提とするものではありません。
たとえば、単身赴任や海外留学、療養などの事情により、日常的に起居を共にしていない場合でも、生活費、学資金、療養費などの送金が継続的に行われている間柄であれば、生計を一にするものとして取り扱われます。
したがって、被相続人と同じ世帯に属していない親族でも、実質的な扶養や経済的支援があることを証明できれば、未支給年金の受給対象者になることが可能です。
なお、別居していた人が請求をする際は、送金履歴や医療費負担など、生計を一にしていたことを客観的に確認できる書類の提出が必要です。
請求者の同順位が2人以上の場合は?
請求者が同順位で複数存在する場合は、原則として代表者1名が請求手続きを行います。
代表者が行った未支給年金の請求は、全員のために行ったものとみなされるため、トラブルを避けるためにも、事前に該当者の間で話し合いをしておくことが大切です。
生計を同一としている人がいない場合は?
未支給年金は相続財産ではないため、法定相続人が必ず請求できるものではありません。
受給資格があるのは、生計を一にしていた親族に限られるため、被相続人と生計を別にしていた親族しかいない場合、未支給年金を受け取ることはできません。
相続放棄をしていても請求できる?
相続人が法的な手続きを経て、相続権を放棄した場合、その相続人は相続財産を取得することができなくなります。
しかし、未支給年金は相続財産ではないため、相続放棄をした人でも請求することが可能です。
ただし、被相続人と生計を一にしていることや、先順位者がいないなど、請求者自身が条件を満たしているかどうかは別途確認する必要があります。
未支給年金を請求する際の必要書類
未支給年金を請求する場合、必ず請求書と一緒に関係書類を添付しなければなりません。
提出が求められる書類
未支給年金を請求する場合、受給資格の確認や生計関係を証明するための書類を整える必要があります。
- 受給権者死亡届
- 未支給年金・未支払給付金請求書
- 被相続人の年金証書
- 死亡の事実を明らかにできる書類(下記のいずれか)
・住民票除票
・戸籍抄本
・市区町村長に提出した死亡診断書(死体検案書等)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書 - 被相続人と請求者の続柄が確認できる書類(下記のいずれか)
・戸籍謄本
・法定相続情報一覧図の写しなど - 被相続人と請求者が生計を一にしていたことがわかる書類
・被相続人の住民票の除票
・請求者の世帯全員の住民票の写し - 受け取りを希望する金融機関の通帳
- 生計同一関係に関する申立書(被相続人と請求者が別世帯の場合)
請求者が配偶者または遺族年金を請求する子である場合、マイナンバーを記入することで戸籍謄本の添付は省略できます。
請求者の世帯全員の住民票の写しに被相続人の情報が含まれている場合、被相続人の住民票の除票は不要です。
請求者の世帯全員の住民票の写しについても、マイナンバーを記入することで添付を省略できます。
公金受取口座を利用する場合には、未支給年金・未支払給付金請求書の「金融機関の証明」欄の証明および、受取先金融機関の通帳などのコピーの添付は不要です。
受給権者死亡届の記入例
受給権者死亡届は、定められた様式に従って記入します。
年金証書を添付できない場合には、「事由」の欄のア・イ・ウのいずれかに○をし、ウに○を付けたときは、添付できない具体的な理由を記入してください。
| 記載欄 | 記載事項 |
|---|---|
| 死亡した受給権者 | ・被相続人の基礎年金番号 ・生年月日 ・氏名 ・死亡年月日 |
| 届出者 | ・届出者の氏名 ・続柄 ・未支給有無 ・郵便番号 ・電話番号 ・住所(都道府県の記載は不要) |

出典:年金を受けている方が亡くなったとき(日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/kyotsu/20140421-15.html
未支給年金・未支払給付金請求書の記入例
未支給年金・未支払給付金請求書は、定められた様式に従って記入します。
年金を受け取る金融機関を記載する場合、貯蓄口座は受取不可となっているので注意してください。
また、インターネット専業銀行についても、年金の受け取りができない銀行があるので、事前にインターネット専業銀行へ問い合わせて確認してください。
| 記載欄 | 記載事項 |
|---|---|
| 死亡した受給権者 | ・被相続人の基礎年金番号 ・生年月日 ・氏名 ・死亡年月日 |
| 請求者 | ・請求者の氏名 ・続柄 ・郵便番号 ・電話番号 ・住所(都道府県の記載は不要) ・個人番号 ・年金受取機関 |
| その他 | ・相続開始時点における受給権者と生計を一にする親族の有無 ・共済年金に関する事項 ・法定相続人に関する事項 ・備考 ・別世帯となっていることについての理由書(該当者のみ) |

出典:亡くなった方の未払い年金を受け取れるとき(日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/kyotsu/20140731-02.html
生計同一関係を証明する書類
未支給年金の請求には、亡くなった受給者と生計を共にしていたことを証明する書類の添付が必要です。
添付する書類は、請求者の続柄によって異なります。
| ケース | 生計同一関係証明書類 |
|---|---|
| 健康保険等の被扶養者になっている場合 | 健康保険等の被扶養者になっている場合 |
| 給与計算上、扶養手当等の対象になって いる場合 | 給与簿または賃金台帳等の写し |
| 給与簿または賃金台帳等の写し | 源泉徴収票または課税台帳等の写し |
| 定期的に送金がある場合 | 預金通帳、振込明細書または現金書留封 筒等の写し |
| 上記に準ずる場合 | その事実を証明する書類 |
| 単身赴任による別居の場合 | 辞令の写し、出向命令の写し、単身赴任 手当が分かる証明書の写しなど |
| 就学による別居の場合 | 学生証の写し、在学証明書など |
| 病気療養・介護による別居の場合 | 入院・入所証明、入院・入所に係る領収 書等の写しなど |
| ケース | 生計同一関係証明書類 |
|---|---|
| 健康保険等の被扶養者になっている場合 | 資格確認書または健康保険被保険者証等 の写し※ |
| 給与計算上、扶養手当等の対象になって いる場合 | 給与簿または賃金台帳等の写し |
| 税法上の扶養親族になっている場合 | 源泉徴収票または課税台帳等の写し |
| 定期的に送金がある場合 | 預金通帳、振込明細書または現金書留封 筒等の写し |
| 上記に準ずる場合 | その事実を証明する書類 |
事実婚関係の場合に添付する書類
生計同一関係の認定が必要な方が事実婚関係にある方である場合、事実婚関係および生計同一関係を証明できる書類の提出が必要です。
| ケース | 事実婚関係・生計同一関係証明書類 |
|---|---|
| 健康保険等の被扶養者になっている場合 | 資格確認書または健康保険被保険者証等 の写し※ |
| 給与計算上、扶養手当等の対象になって いる場合 | 給与簿または賃金台帳等の写し |
| 同一人の死亡について、他制度から遺族 給付が行われている場合 | 他制度の遺族年金証書等の写し |
| 事実婚関係にある当事者間の挙式、披露 宴等が1年以内に行われている場合 | 結婚式場等の証明書または、挙式・披露宴 等の実施を証明する書類 |
| 葬儀の喪主になっている場合 | 葬儀を主催したことを証明する書類(会葬 御礼の写し等) |
| 上記のいずれにも該当しない場合 | その他内縁関係の事実を証する書類(複数点) ・連名の郵便物 ・公共料金の領収書 ・生命保険の保険証 ・未納分の税の領収証 ・賃貸借契約書の写しなど |
上記の書類を提出した場合でも、「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」への第三者証明の記入が必要です。
ただし、住民票上で別世帯かつ同一住所の場合については、上記の書類を提出していれば、「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」への第三者証明の記入は不要となります。
第三者証明に代わる書類
被相続人と未支給年金請求者が別居していた場合など、生計同一が客観的に証明しにくいケースでは、「生計同一関係に関する申立書」の提出が必要になることがあります。
申立書を提出する際は、第三者の証明またはそれに代わる書類を添付しなければなりません。
| ケース | 書類 |
|---|---|
| 健康保険等の被扶養者の場合 (国民健康保険以外) | 健康保険被保険者証または組合員証等 |
| 給与計算上、扶養手当等の対象になっている場合 | 給与明細または賃金台帳等 |
| 税法上の扶養家族になっている場合 | 源泉徴収票または課税(非課税)証明書等 |
| 定期的に送金がある場合 | 定期的に送金されていたことのわかる現金書留の封筒または預貯金通帳等 |
未支給年金の請求の流れ・手続き方法
未支給年金を受け取るには、所定の請求手続きが必要です。
ここでは、請求から受け取りまでの流れと必要な手続きについてご紹介します。
受給要件の確認
年金受給者の相続が発生した際は、最初に受給要件を確認してください。
死亡日において、亡くなった方が次のいずれかに該当する場合、遺族は未支給年金を受け取ることができます。
- 年金を受け取る前に亡くなった
- 年金を受け取る権利はあったが、請求しないうちに亡くなった
「年金」に該当するのは、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金、寡婦年金です。
未支給年金を受け取れるのは、死亡日において、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族に限られます。
年金受給権者死亡届(報告書)の提出
未支給年金を受け取るためには、「受給権者死亡届(報告書)」の提出も必要です。
なお、日本年金機構に個人番号(マイナンバー)が収録されている方は、原則として、「年金受給権者死亡届(報告書)」を省略できます。
必要書類の用意
未支給年金を請求する際は、請求者の続柄などに応じた書類を揃えてください。
被相続人と請求者が同居していない場合など、相続開始時点の
状況によっては、「生計同一関係に関する申立書」や第三者の証明書などの提出が必要となるため、早めに必要書類を確認して準備を進めてください。
未支給年金・未支払給付金請求書の提出
必要書類がすべて揃いましたら、「未支給年金・未支払給付金請求書」を提出します。
提出後は内容審査が行われ、受理されると指定口座へ未支給分の年金が振り込まれます。
なお、記載不備や添付書類の不足があると、受給できない可能性があるため、提出前に確認してから提出してください。
未支給年金に関する疑問・確認事項
未支給年金に関するよくある質問にお答えします。
未支給年金の請求期限はいつまで?
未支給年金の請求には、「5年以内」という時効が設定されています。
時効が成立すると、受給する権利を持っている人でも未支給年金を請求できなくなります。
時効の起算日は、受給権者の年金の支払日の翌月の初日なので、早めに手続きすることが望ましいです。
未支給年金の請求書の提出先は?
未支給年金の請求手続きをする場合、被相続人が受給していた年金の種類によって提出先が異なります。
- 被相続人が住んでいた場所の市区町村役場
- 全国の年金事務所または街角の年金相談センター
- 全国の年金事務所または街角の年金相談センター
振込日はいつ振り込まれる?
年金請求の手続きが完了すると、通常3〜4か月後に各種通知書が届きます。
その後、通知書が届いてから約50日後に指定した口座に年金が振り込まれるため、請求手続きを始めてから年金が振り込まれるまで、合計で半年程度かかります。
なお、年金の受給要件を満たしていない場合は、「不該当通知書」が送付されます。
未支給年金はいくらもらえる?
未支給年金の金額は、亡くなった方が受給していた年金の種類や金額、死亡した時期などにより異なります。
被相続人が偶数月に死亡した場合は1か月分、奇数月に死亡した場合は2か月分の年金を請求することが可能です。
たとえば、老齢基礎年金の受給権者が7月20日に死亡した場合、最後に受け取った年金は、6月15日に支給された4月分および5月分です。
年金は、受給権者が死亡した月の分まで支給対象となるため、6月分および7月分が未支給年金として請求の対象となります。
繰り下げ受給をしていた場合も受け取れる?
「年金の繰り下げ受給」とは、受給開始年齢を65歳ではなく、66歳から75歳までの間で繰り下げて受給する制度です。
繰り下げた期間に応じて年金額が増額されるため、65歳以降も就労を継続している方などにとって、有効な選択肢となります。
繰り下げ受給を選択している期間中に相続が発生した場合、遺族は未支給年金を請求することが可能です。
ただし、繰り下げ受給を選択していたとしても、未支給年金の額が増額されることはありません。
また、未支給年金には時効(原則5年)があるため、時効成立前に速やかに手続きを行う必要があります。
遺産分割への影響はない?
未支給年金は、請求者の固有の権利です。
遺産分割は、被相続人の財産を分けるための話し合いであり、請求者が受け取る未支給年金は遺産分割協議の対象には含まれません。
ただし、金銭的価値が高額となる場合には、親族間で誤解を招く可能性もあるため、事前に関係者と情報を共有しておくことで、トラブルを避けやすくなります。
未支給年金を受け取る際の注意点
相続が発生した場合、課税対象になる財産とならない財産を判別する必要があります。
一時所得として確定申告が必要になる場合がある
未支給年金を受け取ったとしても、相続税の課税対象にはなりません。
しかし、未支給年金を受け取った人の一時所得として扱われるため、受給額によっては確定申告が必要になる場合があります。
一時所得には50万円の特別控除があり、未支給年金を受け取った年分において、一時所得の金額の合計額が50万円以下であれば、未支給年金に対して所得税は課されません。
満期保険金や競馬・競輪の払戻金などが一時所得に該当しますので、同年中に一時所得を得ているときは、合計額が50万円以内に収まるかを確認してください。
私的年金はみなし相続財産として課税対象となる
被相続人の死亡により取得する年金については、制度や種類によって課税の取扱いが異なります。
未支給年金は相続税の対象外ですが、個人年金保険や企業年金などの私的年金については、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となる可能性があります。
たとえば、被相続人が在職中に死亡し、勤務先から死亡退職金を年金形式で受け取った場合、その退職金は相続税の対象となります。
個人年金保険についても、保険料負担者・被保険者・年金受取人の関係性によって、相続税または贈与税の課税対象になることがあります。
また、年金支払保証期間内に本人が死亡し、遺族などが残りの期間について年金を受け取ることになった場合には、死亡した人から年金受給権を相続または遺贈により取得したものとみなされるため注意が必要です。
未支給年金がもらえるケース・もらえないケース
未支給年金制度には、対象外となる年金も存在するため、すべての年金に対して請求可能というわけではありません。
請求対象となるか否かは、年金の種類や契約形態によって異なるため、事前の確認が重要です。
遺族年金
遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者(または被保険者であった者)が死亡した際に、その者によって生計を維持されていた遺族の所得を保障するための年金です。
遺族年金を受給するには、亡くなった方の公的年金加入状況や、遺族が生計維持関係にあるかなど、一定の要件を満たす必要があります。
被相続人が遺族年金を受給していた場合には、その年金に係る未支給分について、死亡時点で生計を維持されていた配偶者などが所定の手続きを行うことで、未支給年金を受け取ることができます。
遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者等であった者が死亡し、一定の受給要件を満たしている場合に、その者によって生計を維持されていた配偶者(主に子のある配偶者)などが受給できる年金です。
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者等であった者が死亡し、一定の受給要件を満たしている場合に、その者によって生計を維持されていた遺族(配偶者、子、父母等)が受給できる年金です。
亡くなった方の年金加入状況や遺族の属性等により、いずれか一方または両方の年金が支給される場合があります。
なお、いずれの遺族年金も、受給には所定の手続きが必要になる点には注意してください。
寡婦年金
寡婦年金とは、老齢基礎年金の受給資格を満たしていた夫が死亡した場合に、一定の要件を満たす妻に支給される年金です。
この年金は、死亡により支給される制度であり、未支給年金とは異なる枠組みに位置づけられます。
なお、寡婦年金を受給していた者が死亡した場合には、その未支給分について、遺族が請求することで受け取ることが可能です。
老齢厚生年金
厚生年金自体は、未支給年金の対象です。
ただし、死亡によって老齢厚生年金の受給権がなくなり、遺族が遺族厚生年金の受給権を得た場合、それぞれ別の年金として扱われます。
死亡した月の老齢厚生年金は未支給年金として請求できますが、これは遺族が受け取る遺族厚生年金とは別の手続きが必要です。
制度の枠を超えて混同しやすいため、具体的な支給内容と請求対象を制度ごとに整理することが大切です。
死亡一時金
死亡一時金とは、国民年金の保険料納付期間が一定以上あるにもかかわらず、年金を受給しないまま死亡した場合に、遺族に支給される制度です。
未支給年金が、生前に権利が確定した年金を遺族が請求する制度であるのに対し、死亡一時金は、死亡を契機として新たに発生する別制度に位置づけられます。
死亡一時金は、受給者本人の死亡によって初めて支給要件が満たされるものであり、未支給年金とは性質が異なります。
個人年金保険
個人年金保険は、保険契約に基づいて支払われる私的年金であり、未支給年金の対象には含まれません。
受給者が死亡した場合には、契約内容に応じて死亡給付金が支払われることがありますが、請求には保険会社との個別手続きが必要です。
なお、公的年金とは税制上の取扱いも異なるため、契約内容を確認のうえ、課税関係についても十分に確認する必要があります。
企業年金
被相続人が企業年金を受給していた場合、受給者の死亡により原則として支給は終了します。
ただし、年金の受給期間に残余期間がある場合には、契約内容に応じて遺族給付金が支払われることがあります。
遺族給付金の受取方法は、「一時金」または「年金」のいずれかを選択する形式が一般的です。
なお、受給者本人に支払われなかった分については、「未支給給付」として遺族に支払われ相続税が課税されます。
iDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、加入者が積み立てた資産を原則60歳以降に受け取る制度です。
死亡した場合、未支給の積立分が「死亡一時金」として支払われ、相続税が課税されます。
まとめ
未支給年金とは、年金受給者の死亡時点で未払いとなっていた公的年金を、一定の親族が請求できる制度です。
相続税の課税対象には該当せず、相続放棄をした者でも請求することが可能ですが、時効がある点には注意してください。
また、私的年金や企業年金、死亡後に新たに発生する遺族年金は、未支給年金の制度枠外で取り扱われるため、個々に請求手続きを行う必要があります。
受給要件の判断や手続き方法が不明な場合には、税務上の取扱いも含めて、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

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