今の夫(又は妻)との結婚生活がもう限界に達し、離婚を考えている方は多いのではないでしょうか。以前は離婚というと悪いことのように捉えられていましたが、昨今は離婚する夫婦が多く、全く珍しい現象では無くなりました。
しかし、もう我慢の限界だからといって、勢いに任せて離婚するのは、賢いやり方ではありません。離婚の際は、色々準備が必要です。また、離婚時に貰えるお金は沢山ありますので、しっかりと貰いましょう。
この記事では、上手な離婚の仕方を紹介していますので、実際に離婚する時の参考にどうぞ!
まず離婚の種類を押さえましょう
上手な離婚をするために、まずは離婚についての知識を押さえておくことが重要です。
離婚には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの種類があります。
まず、協議離婚ですが、これは話し合いによる離婚です。離婚がしたくなったら、まず話し合いによって離婚すべきかどうか、慰謝料や子どもの親権のことなどを協議します。夫婦で話し合って離婚に合意したら、市役所に離婚届けを提出します。離婚届けが受理されれば、協議離婚は成立です。夫婦間で話し合いをしても離婚の合意に至らなかった場合、家庭裁判所に、調停離婚の申し立てを行います。調停離婚とは、家庭裁判所で調停委員を介して話し合いを行った末の離婚のことです。調停離婚では、調停委員を介して話し合いをするので、夫婦が対面で話し合いする必要がなく、感情的になることを抑えられます。
離婚調停の進め方について詳しく知りたい方は、「離婚調停の進め方 手順から費用まで」を参照してください。
この調停でも話し合いがまとまらず、それでも離婚したければ、裁判を起こす必要があります。この裁判による離婚を裁判離婚と言いますが、裁判離婚では話し合いをするのではなく、裁判官による判決によって、離婚の可否や離婚の条件が決まります。裁判離婚の場合、裁判官が離婚を認めるためには、法律上の離婚原因が必要です。民法が定める離婚原因は、次の5種類です。「不貞行為」「悪意の遺棄」「3年間の生死不明」「強度の精神病となり回復の見込みがない」「婚姻を継続しがたい重大な事由」の5つです。
この5つに該当しない場合、ほぼ間違いなく裁判離婚は認められません。離婚の可否にあたって、特に問題になるのは、最後の「婚姻を継続しがたい重大な事由」です。他の4つの原因は具体的ですが、この原因だけは抽象的です。裁判官の心象によるところもありますが、客観的な基準を挙げるとしたら、別居が長期にわたっているかが離婚の可否を判断する上で重要視されるでしょう。ちなみに、協議離婚と調停離婚の場合は、話し合いで決するため、離婚の原因に制限はありません。
離婚に向けての準備
離婚にあたっては、沢山すべきことがあります。
まず、一番重要なことかもしれませんが、本当に離婚すべきなのか、よく考えましょう。離婚には様々なリスクが伴います。専業主婦であれば、離婚してしまうと生活の肝であった夫の収入が絶たれてしまいます。
また、子どもがいる場合は、子どもの親権をどうするのかといった問題や、親の離婚は子どもの精神的にもダメージを与えるでしょう。
さらに、離婚の当事者にとっても精神的負担は大きいでしょう。離婚の話し合いはスムーズに進むとは限らず、もし夫婦の協議でまとまらなければ、上述のとおり、調停や裁判に移行することとなります。裁判まで進むとなったら、手続きもかなり長期化します。場合によっては決着が着くまで、数年単位かかるかもしれません。
これだけ長期化したら離婚するだけでも精神的・肉体的にヘトヘトとなってしまいます。ですので、本当に修復が難しいのかよく考えましょう。
自分の行動を振り返り、相手に歩み寄ることは絶対に不可能なのか、今後の人生のことも考えて、熟考してください。熟考した結果、それでも離婚すると決めたら、もう後戻りは出来ません。離婚の手続きに進みます。
しかし、離婚の手続きに進む前に、準備すべきことは沢山あります。
1人での生活への準備
まずは、離婚後、経済的に自立できるようにしておくことです。
専業主婦だった人なら、働きに出なければならないかもしれません。子どもを引き取ろうとお考えなら、自分だけでなく子どもの生活のことも考えなくてはなりません。このように離婚後の生活のめどを立てておくことが重要です。
離婚後もらえる可能性があるお金について、どのような種類があるのか、どれだけの金額を貰えるのか、把握しておくことも大切です。例えば、母子手当が例として挙げられます。
こうした公的な扶助について、自分が離婚したら支給されるのか、事前に役所で確認しておきましょう。また、離婚相手からもらうことが出来るお金もあります。例えば、慰謝料や財産分与の請求がありますが、これらを請求するには証拠資料が必要です。
相手が不倫していたと主張したいのであれば、不倫の証拠となる写真などですね。こうした証拠を集めておけば、請求の際に有利に働きます。
経済面のほかには、住まいや仕事の確保も必要です。離婚すれば、当然別居になります。相手が出ていくならいいですが、自分が出ていくなら次の住まいを確保してから離婚を切り出しましょう。
あとは、離婚後は1人で生活していくことになるので、精神的な自立が必要です。結婚していた頃は、自覚がなくとも配偶者を頼っていた面があることは否定できないでしょう。
離婚後は、配偶者の後ろ盾はありません。配偶者からの自由も得ますが、自由には責任が伴います。その点を自覚し、精神的に自立した人間になりましょう。
離婚の上手な切り出し方
離婚の準備が整ったら、いよいよ離婚を相手に切り出す段階です。しかし、離婚を切り出すのにも適切なタイミングというのがあります。このタイミングのいかんによっては、離婚協議の成否に関わることにもなりかねないので、適切なタイミングで離婚を切り出すことが必要です。離婚を切り出す適切なタイミングとされる時期をいくつか挙げてみます。まずは、夫が退職するときです。これは多くの男性が定年で退職するので、熟年離婚の場合の話です。退職したら退職金が振り込まれますから、自身の慰謝料や財産分与の額が増えることにもなります。お金目当てでやらしいと感じるかもしれませんが、夫の退職時に合わせて、離婚するケースは最近多くなってきています。「定年したら離婚したい」と、事前に伝えておくやり方もあります。
二つ目のタイミングは、結婚して時間がそんなに経っていない時です。結婚1年目や2年目であれば、まだ子どももおらず、年齢的にも人生をやり直すことへのハードルがかなり下がります。しかし、離婚は裁判にまで発展しない限り、当事者の合意により離婚が認められますから、相手の意見も尊重せねばなりません。結婚してまだ年数が浅ければ、相手の自分に対する愛情は全く冷めておらず、離婚を断固拒否するケースがあります。この場合は、話し合いの長期化も覚悟にいれ、自分の主張を補強するために、結婚生活において相手に落ち度があったことを証明する証拠を集めましょう。
三つ目のタイミングは、相手を説得できると確信した時です。具体的にこの時だ!とは言えませんが、長期間一緒に暮らしていれば、色々な瞬間が、夫婦間には訪れます。ふと間が空いた瞬間、重要な出来事があった後など、あなたが相手を説得できると確信したタイミングを見計らって、切り出すしかありません。離婚したいと伝える際は、感情的にならずに、自分の気持ちを明確にわかりやすく伝えましょう。いくつか、離婚のタイミングを紹介してきましたが、それでもいつ切り出せばいいか分からないという人は、一度別居してみるのがいいと思います。別居して生活が変われば、2人の意識にも変化が生じて、過去の言動を振り返ったりこれからの生活を考えたりと、夫婦の時間について向き合う時間を持てることでしょう。この時間が、そのあとの話し合いに活きてくる可能性も高いです。
男女別切り出す際の注意点
男女によって性質の違いがありますから、それぞれ切り出す際の注意点も変わります。
まず、妻の方から離婚を切り出す際に心がけることですが、感情的にならないことです。一般的には、女性のほうが男性より感情的になりやすいと言われています。
話し合いをする際は、感情的になってしまうと、その場の勢いのみで話を進めていると思われてしまい、話し合いが芳しくない結果に終わりがちです。また、男性は女性と比べると理屈っぽいところがありますので、理詰めで責められるといらだってしまい、口論に発展することがあります。
場合によっては、自分か相手の堪忍袋が切れて、暴力事件が起きてしまうという事態になりかねません。穏やかに理論的に議論を進めるためにも、冷静になることが大切です。
どうしても話し合いになったら感情的になってしまうと思う人は、離婚したい理由や離婚の条件などを事前に整理してメモにまとめておくことをおススメいたします。不貞行為など相手に落ち度がある場合は、その証拠を押さえておき、裁判に持ち込む覚悟があることを相手に伝えてみてもいいかもしれません。男性は女性よりもメンツや社会的立場を気にしがちです。不貞行為が会社や身内にばれることを考えると、離婚に応じようとする可能性が高くなります。これは写真などの証拠があって初めて成立する手段ですから、証拠を入手できていない場合は、早めに証拠を準備しましょう。
次に夫から切り出す際の注意点です。夫から離婚を切り出すのは、妻から切り出すのと比べ、難しいと考えられています。男性の方が経済力があることが通常ですので、妻の立場からすると、離婚されてしまうと非常に生活が苦しくなります。
特に、妻が専業主婦の場合、命にかかわる問題といっても大袈裟ではないでしょう。また、女性からしたら捨てられることと同義ですから、女性の自尊心を大きく傷つけます。離婚を切り出したことによって、うつ病などの精神疾患を発症する可能性もあります。
絶対に離婚されないために、女の一番の武器、涙を使って、泣き落としをしてくる場合もあります。こうなると男性は弱いですから、離婚の意思を突き通せなくなってしまいます。
こうした事態に陥らないために、話し合いの際は、相手に有無を言わせないための準備が必要となります。話し合いの時間は出来るだけ短く、考える時間を与えないほどスピーディに行ったほうがいいでしょう。
離婚届けは前もって用意しておいてあとは相手のハンコをもらうのみの状態にしておきましょう。あとは慰謝料などの条件を相手に有利な形で設定しておくことなども離婚を早期成立させるための一つの方法です。
別居前に切り出すか別居後に切り出すか
別居前か別居後かによっても、離婚の切り出し方は変わってきます。別居前の場合なら直接話を切り出す必要がありますが、別居後であればメールや郵便など、直接接しない方法で離婚を切り出すことが可能です。
別居前の対面での話し合いの注意点は、感情的にならないことです。感情的になったところで、相手を言いくるめられるわけではありません。むしろ、相手も感情的になってしまい、話が前に進まなくなる可能性が高いです。感情的になってしまったら負けだと頭の中で唱えておき、絶対に冷静に話を進めることを意識しましょう。
別居後にメールや郵便を使って離婚を切り出す場合は、離婚を切り出した時期が後々問題になることがあります。メールなら送った側にも履歴が残りますが、普通の郵便では相手が「そんなもの届いていない」と言ったら、立証が困難になりますので、内容証明郵便など記録が残る形で離婚したい旨を伝えておきましょう。
どんなお金を相手から請求できる?
離婚の際は、色々なお金を相手から請求できます。例えば、財産分与や慰謝料が挙げられます。慰謝料は日常生活でも、比較的よく使われる言葉ですね。
慰謝料とは、精神的苦痛による損害という意味で、離婚以外の場合でも使用される言葉です。例えば、交通事故で愛する妻が無くなってしまった場合に、加害者に対し、妻を亡くしたことによって生じた精神的苦痛による損害を補てんしろと、慰謝料を請求するケースがあります。
ここでは、離婚の際に相手に請求できるお金の種類を1つずつご紹介しようと思います。
財産分与
離婚にあたっては、夫婦が一緒に築いた財産を分け合う作業を行いますが、これが財産分与と呼ばれます。夫婦で築いた財産であれば、財産の名義は問いませんので、どちらか一方の名義になっている財産でも、財産分与の対象とすることができます。
ですので、仮にあなたが専業主婦の場合でも、結婚期間中に夫が稼いだ給料の分配を求めることができます。夫の稼いでいた金額が多ければ多いほど、財産分与で請求できる額も多くなります、財産分与の趣旨は、婚姻中に夫婦が協力して増やした財産を、それぞれが稼いだ割合に応じて、それぞれの個人財産に分けることです。
つまり、婚姻前と婚姻後で、夫婦の財産が変わらない、または減ってしまったという場合は、財産分与は行われませんので、注意してください。
財産分与の方法ですが、多くの場合、現物分割の方法を取ります。各財産をそのままの形態で分割することです。お金であれば、そのままお金の状態で分割可能ですが、土地や家屋のような、そのまま半分個には出来ない財産もあります。
こうした現物分割が難しい財産の場合は、換価分割という方法をとります。換価分割では、財産を売却してお金に換えた上で、そのお金を夫婦で分ける方法です。財産分与の相場ですが、原則は2分の1とされています。
夫婦の一方が年収1億を超えている時など収入に格差がある場合は、2分の1ではなく、偏りが出る場合もあります。財産分与の対象となる資産ですが、結婚後に増やした財産のみです。結婚前から保有していた財産は、財産分与の対象となりません。
また、結婚前から保有していた貯金に利息がついたことで資産価値が増えた場合でも、財産分与の対象とはなりません。財産分与の対象となる資産にはどういったものがあるでしょうか?パッと思いつくのは現金や不動産といったところでしょう。
現金は、預金、タンス預金かかわらず、財産分与の対象です。現金や不動産以外にも、株や社債などの有価証券も財産分与の対象です。また、婚姻後に購入したものであれば、家具や家電も、財産分与できます。
他にも、厚生年金や共済年金、退職後に貰う予定だった退職金なども財産分与の対象です。
夫婦で築いた財産といっても、プラスの財産ばかりではなく、長い夫婦生活のなかでマイナス財産(借金)を負ってしまうケースもあります。そうしたマイナス財産の財産分与上の扱いをみていきましょう。
端的にいえば、借金も財産分与の際に考慮されます。とはいっても、全ての借金が財産分与で考慮されるとは限りません。財産分与で考慮される具体的なケースは、夫婦で購入した自宅があるものの、住宅ローンがまだ残っているようなケースです。この場合、財産分与の財産の価値を考える際、自宅の価格からローンの残額が差し引かれます。
このように住宅ローンは財産分与の対象となることもあります。逆に、財産分与の際に考慮されない借金は、ギャンブルのための借金や浪費のための借金です。競馬や競輪の元資金のための借金や、収入や生活レベルと比較して明らかに高い個人的な買い物や浪費のためにした借金(例えば外車購入のための借金)は、考慮されません。
対して、財産分与の対象とならない資産というものもあります。個人的に購入した有価証券や、自分の親から相続した財産、洋服やゲームなどの個人的な持ち物などは、財産分与の対象とはなりません。
慰謝料
次は、慰謝料について詳しく見ていきます。慰謝料とは、前述した通り、精神的苦痛に対する損害賠償の性質を持っていますが、離婚の場合、法律的に損害を相手に与えたという事情が認められなければなりません。
具体的には、不貞行為やドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)などで離婚した場合です。単に性格が合わなくて離婚したというケースでは、慰謝料はもらえません。
次に、離婚時の慰謝料の金額ですが、慰謝料の金額は明確には決まっておりません。慰謝料の金額については、夫婦の話し合いで決定します。話し合いで合意にいたりさえすれば、極端な話、1億円を超える額の慰謝料を設定することも可能です。
ただほとんどの場合、こうした無茶な要求は相手から拒否されてしまいます。こうして話し合いで慰謝料の金額が決まらなければ、最終的には裁判に移行して決めることになります。裁判所が慰謝料の金額を決める際の基準として、過去の裁判例を参考に、慰謝料の相場が決まっています。
慰謝料の相場
慰謝料の相場は、慰謝料請求の原因によって様々です。不倫や浮気を原因とする慰謝料の場合、その相場は、100万円~500万円と言われています。DVやモラハラの場合の慰謝料の相場は、50万~300万円と言われています。ちなみに、DVは身体的暴力、モラハラは言葉や精神的な暴力のことをいいます。
3つ目が悪意の遺棄の場合です。悪意の遺棄とは、夫婦の義務である「同居の義務」「協力義務」「扶助の義務」に対して、違反をした場合の離婚原因です。
具体的な例は、「生活費を渡さない」「理由もなく働かない」などです。悪意の遺棄の場合、慰謝料の相場は50万~300万円と言われています。
4つ目がセックスレスの場合ですが、セックスレスの場合の慰謝料の相場は、100万~300万円と言われています。
相場は以上ですが、個別の事情によって、高額の慰謝料を請求することもできます。例えば、婚姻期間が長ければ長いほど、相手の行為を受けた場合の精神的苦痛は大きいと一般的には判断されますので、婚姻期間が長いと慰謝料が高額になります。
慰謝料の原因となった行為を行った者の年収が高い場合も、慰謝料が高額になる傾向があります。また、養育が必要な子どもの数が多いほど、慰謝料が高額となる傾向もあります。
高額の慰謝料を獲得するにはどのようにすればよいか
高額の慰謝料を請求するためには、慰謝料の原因となった事実について、客観的な証拠を掴んでおくことが重要です。
話し合いの際に、証拠を提示し、「慰謝料をくれなければこれを世間にばらすぞ」と脅せば、相手も泣く泣く、高額慰謝料の条件をのむことになります。
例えば、相手の不倫や浮気の事実を証明するための客観的な証拠の具体例は、配偶者と不倫相手がラブホテルに入るときや出てくる時の写真や動画です。不倫は通常、誰の目にも見えない密室で行われるので、直接的な証明が困難です。
社会一般常識から判断して、不貞関係があったと証明できるような資料が必要です。上記のような例の場合、ラブホテルではなくビジネスホテルから出てきた場合、「打ち合わせで入った」という言い訳がまかり通ってしまう可能性があるので、必ずしも確実な証拠とはなりません。DVやモラハラがあったことを証明する証拠としては、ケガをして病院に通った場合の診断書があれば、大丈夫でしょう。
あとは、暴力を受けた日時、場所、具体的な様子などをメモしておいてもいいかもしれません。メモだけですとねつ造可能ですので、十分な証拠とはならない可能性が高いです。
悪意の遺棄について事実を証明するための有効な証拠には、相手が婚姻中の夫婦の義務を果たしていないことの証明が必要です。例えば、生活費を支払っていないことを証明したければ、預金通帳などの具体的に金額が支払われていないことが分かる資料が必要です。
セックスレスの場合は、セックスレスであることをつづった日記やメモが証拠となる可能性があります。
年金分割
慰謝料と財産分与について見てきましたが、ほかにも離婚時に相手から請求できるものはあります。三つ目は、年金分割です。年金分割とは、夫婦それぞれが支払った厚生年金保険料を、夫婦それぞれが決められた割合で分割する制度です。以前は、専業主婦が離婚した場合、元夫の分の年金がもらえませんでしたので、離婚した専業主婦の給与水準の低さが問題となっていました。その問題点の解消のため、民法が改正され、離婚後も夫の年金の一部が貰えるようになったのです。旦那さんが働けるのも奥さんが家事などでサポートをしてくれていたおかげです。子どもがいるなら育児もこなせばならず、専業主婦といえどもかなりの負担があります。これだけ負担があるのに、離婚したら年金がもらえないのは不公平だという理由で、制度が改正されました。ただし、分割の対象は厚生年金や共済年金の部分のみです。国民年金部分については、年金分割の対象となりません。ですので、旦那さんが自営業やフリーランスで働いている場合は、通常国民年金しかありませんので、年金分割はできません。
養育費
子どもがいる場合は、養育費を貰うことも出来ます。この場合の子どもは、20歳以下の子どもですので、離婚時に子どもが成人していた場合、養育費は貰うことは出来ません。
養育費がどれくらいもらえるかについては、夫婦の年収と養育する子どもの数によって、機械的に決まります。裁判所が使っている「養育費算定表」という表があり、この表に具体的な夫婦の年収や子どもの数を当てはめることで、養育費は算定されます。もちろん、慰謝料と同様、夫婦の話し合いによって合意に至れば、この算定表どおりの金額にする必要はありません。
養育費算定表で算出される金額は「これくらいが妥当」という金額であり、「この金額を支払わなければならない」という義務の金額ではないためです。
養育費は、養育する子どもの生活や教育に関する費用ですから、子どもと生活していない親から、子どもと生活している親(親権者)へと支払われるお金です。
養育費算定表によると、養育費を支払う義務のあるものが年収500万円、支払いを受けるものがパートで年収100万のケースの場合、養育する子どもが1人であれば、毎月4万円~6万円の支給が相場となっています。
公的扶助でもらえるお金は?
離婚時に、離婚相手からもらえるお金について述べてきましたが、離婚の際は、相手からもらえるお金の他にも、国や自治体から支給される公的扶助のお金も何種類かあります。
ここでは、こうした公的扶助の種類と金額について、述べていきます。
生活保護
まず一つ目が生活保護です。生活保護とは、健康で文化的な最低限度の生活を保障するために支給されるお金のことですね。
憲法で生存権という権利が保障されており、生存権を保障するためのお金でもあります。相談や申請先は全国の自治体に設置されている福祉事務所の生活保護担当ですので、生活保護の支給を受けたい場合は、お住まいの地域の福祉事務所にお問い合わせください。
児童手当
二つ目が児童手当です。児童手当とは、0歳から中学校卒業までの子どもがいる世帯に支給される手当です。支給される金額は、児童の年齢が3歳未満か3歳以上かどうかで変わってきます。
3歳未満の場合、月額1万円の支給です。3歳以上の場合、第一子と第二子は月額5千円ですが、第三子以降は月額1万円と変わります。申請先は各市町村の市役所ですので、申請の際はお問合せ下さい。
児童育成手当
児童育成手当といって、18歳の3月31日までの子どもを1人で養育する、1人親に対して支給されるお金もあります。金額は決まっていて、月額13,500円です。申請先は各市町村の役所です。
児童扶養手当
4つ目は、児童扶養手当です。親が離婚し、父母一方からしか養育を受けることが出来ない子どもに対して支給されるお金です。子どもの数や所得の数によって金額が変わりますが、マックスの支給額は月額41,020円です。これも申請先は各市町村の役所です。
その他
シングルマザーの場合に支給されるお金の種類はもっとあります。母子家庭等の住宅手当では、20歳未満の子どもを養育している母子家庭で、毎月1万円以上の家賃を払っている場合に支給される手当です。
支給条件や支給金額については各市町村で異なりますので、各市町村に問い合わせてみて下さい。また、ひとり親家族医療費助成制度という制度もあります。これは母子家庭が支出した医療費の一部をお政する制度です。
受給条件や受給額は各市町村によって異なりますのでお住まいの市町村に問い合わせてみて下さい。
このように、離婚した場合、利用できる公的扶助はたくさんありますが、多くの場合、子どもを養っている立場の親に対して支払われるお金です。離婚時に親権を得られなかったほうの親はこうしたお金は貰うことができません。1人での生活ですので、当然だともいえます。しかも養育費や財産分与など、別れた家族のために自分がお金を支払わなければなりません。こうした経済的な負担がかなり大きいので、離婚の際は自分がどれだけ経済的負担を負うか、しっかりシミュレーションを行ってから、離婚するかどうか判断するのが賢明です。
母子家庭の支援制度については、「母子手当(児童扶養手当)について。支給金額から計算方法まで解説」を参照してください。
親権を獲得するためには?
未成年の子どもがいて離婚する場合、その子どもの親権者を決めねばなりません。婚姻中は、夫婦の両方が親権者ですが、離婚すると共同して親権を行使することが出来なくなるので、夫婦のどちらか一方を親権者と決めなくてはいけないのです。この親権の争いは、原則は夫婦間の話し合いで決することになりますが、子どもと一緒に住みたいというのが通常の親の感情ですから、親権者を決める話し合いは争いになることも多いです。
こうして、話し合いによっては親権者が決まらない場合、離婚や慰謝料の話し合いの場合と同様、調停や裁判で親権者を決めることになります。裁判所がどのような点を考慮して親権者を決定するのか、いくつかポイントがありますので見ていきましょう。
まずざっくりと分けると、裁判所が考慮する諸般の事情は、「父母の事情」と「子の事情」の二つに分かれます。
父母の事情とは、例えば、監護に対する意欲があるのか、監護していく能力があるのか(年齢、健康状態、年収等)、生活環境(住宅事情、学校関係)はどうかなどの事情があります。子の事情とは、子どもの年齢や性別、兄弟姉妹の関係、両親との情緒的結びつきなどです。15歳以上の子どもの場合は、子ども自身の意思が、親権者を決めるうえで重要な要素となってきます。
15歳ともなると子どもも判断能力が一定の水準を兼ね備えていますから、どちらを親権者とするか、つまりどちらと住むのかを自分で判断するのが適切だと言えるからです。
また、いくら監護への意欲が強くとも、子どもとの情緒的結びつきが弱い、つまり子どもとの信頼関係が出来上がっていなければ、裁判所も親権を認めてくれない方向に話が進む可能性が高いです。
また裁判所が親権者を決定するにあたっては、継続性の原則という基準があります。継続性の原則とは、これまで実際に監護を続けてきたほうを優先して親権者にするというものです。
子どもの生活を考えると今まで過ごしてきた環境を変えないようが、一般的にはいいとされていますので、継続性の原則がもうけられています。
原則はもうひとつあり、兄弟姉妹不分離の原則というものもあります。これは、子どもが複数いる場合であっても、基本的には、親権者は一緒にするというものです。兄弟が離れ離れになってしまうのは、子どものショックが大きいため、子どもの精神への配慮をしています。
また、子どもが小さい場合、具体的には幼稚園児や新生児の場合などは、母親が優先的に親権者となります。小さい子どもを育てるには、母親の方が適しているためです。
このように色々な基準はありますが、必ずしもこの基準や原則の通りに、親権者が決定するわけではありません。個別のケースの具体的な事情を総合的に考慮して、裁判所は決定を下しますので、基準や原則とは、別の結果になることもあるのでご留意ください。
離婚に悩んだ時の相談先
離婚するかどうか悩んだ時は、第三者の意見を聞くのも有効な手段ではないでしょうか。離婚はデリケートな問題であるので、なかなか親や友人には相談できず、1人で抱え込んでしまうケースもよくあります。ここでは、離婚に悩んだ際の相談先についてご紹介します。
弁護士
まず一つ目の相談先は、弁護士です。近年では,離婚を専門した離婚弁護士の存在がドラマでも取り上げられて注目を集めていますね。
弁護士へ相談するケースとして適しているのは、自身の離婚の悩みについて法的なアドバイスが欲しい場合だったり、離婚の意思はある程度固まっていて今後の手続きの流れについて教えてほしいといったケースです。離婚するかどうかの判断を弁護士に委ねるのはよくありませんね。弁護士は法律の専門家であり、カウンセラーではありませんが、あくまで法的見解についての意見を聞きたい人が相談すべきです。
最近では離婚問題の初回相談料を無料としている法律事務所が増えています。お金がかからず法的なアドバイスが聞けるのが弁護士に相談するメリットです。弁護士も様々な事件を経験する職業ですから、弁護士によって、離婚の知識が豊富な弁護士やそうでない弁護士、離婚事件の経験数が多い弁護士、そうでない弁護士がいます。離婚に強い弁護士を見つけるためには、「弁護士ドットコム」といった弁護士サイトを利用するのがいいかと思います。
離婚カウンセラー
離婚カウンセラーとは、NPO法人日本家族問題相談連盟が認定している離婚カウンセラーが多数います。NPO法人の試験に突破すれば、NPO認定カウンセラーとして称号を掲げて営業活動をするのが認められるのです。専門的な試験を突破していますから、相談相手としては頼れる相手だといえます。
こちらの場合、先ほどの離婚弁護士とは違い、ご自身の夫婦関係は修復不可能なのかといった離婚するかどうかの問題についての相談が適しています。離婚カウンセラーは、過去に何人もの離婚に悩んでいた人の相談を受けています。そのような多くの経験に基づいて、最適なアドバイスをしてくれるかもしれません。離婚カウンセラーに相談したいと思った人は、お住まいの地域名と「離婚弁護士」というワードを合わせて検索しましょう。著名な離婚カウンセラーは書籍を出版しているケースもあるので、書籍の著者に接触できるのであれば、コンタクトを取ってみるのもいいかもしれません。
自治体
三つめは、自治体の相談窓口です。大切な住民のため、その悩みを解決する手助けになってあげたいと考えた自治体が、市民の相談窓口を設置しています。相談自体は無料で行っていますが、予約でいっぱいだったり相談時間が限られていたりするのがデメリットです。
近場で相談できるので、ネットに疎い高齢者の方や足腰が弱く遠出できないという方には向いているでしょう。自治体によって対応の仕方も異なるので、お住まいの自治体のホームページや広報誌を確認するか、または自治体に直接問い合わせてみてください。
探偵
四つ目の相談先は探偵です。探偵ならどんな相談でも秘密は守られますから、自分も不貞行為を働いているなど自分にも落ち度がある場合や、国の要人で公にはしたくないといったケースでは探偵に相談するのが適しています。また、探偵は相手の浮気調査などもしてくれますから、浮気や不倫の証拠が欲しい場合は、探偵に依頼するのが吉でしょう。
離婚の実際の手続き
ここまで読めば、離婚の際に考えておくべきことは大体把握できたでしょう。意外とたくさんのことがあるので驚いた方も多いでしょう。最後に、実際の離婚手続きのことも話しておかねばなりません。
離婚協議書の作り方
離婚の話し合いがまとまったら、離婚届けを提出しますが、その前に離婚協議書を作ったほうがいいとされています。離婚協議書は、慰謝料や親権など離婚の条件について合意したことについての覚書です。
これを作っておけば、後々の紛争の蒸し返しを防ぐことができますし、条件が履行されない場合の証拠となります。離婚協議書の書式は特に定められているわけではありませんが、最低限、当事者双方の署名押印、作成日の欄は設けるようにしましょう。双方の署名押印がないとせっかく作っても内容の証明とならないと判断させてしまいます。また離婚協議書を作る場合、公正証書にしてもらったほうがよいです。
公正証書とは公証役場で公証人という人が作成する証書です。費用はかかるのですが、判決と同様の法的拘束力があります。公正証書があれば財産の差し押さえができます。
離婚調停
離婚については基本的に夫婦双方の話し合いで決することになりますが、それでも決まらない場合は、前述した通り、離婚調停を申し立て、家庭裁判所の調停員を仲介人に、話し合いが進められることになります。
調停手続きの段階ではまだ話し合いの要素が強いですが、調停がうまくまとまらない場合は裁判手続きに移行することもありますから、これらの手続きを見越した準備をしておくべきでしょう。準備とはつまり、調停となることが決定した段階で、弁護士に依頼を立てておくのです。調停でも絶対にまとまらない、自分の意見を曲げる気はないと断言できる場合は、このように先手を取ってもいいかもしれません。
さらに、離婚調停を申し立てる際で、既に別居されているという場合、婚姻費用の調停にかかる請求も合わせて申し立てましょう。これを行うと申し立てた月から一定の生活費を相手から受け取ることが出来ます。離婚調停は長期化することもありますので、そうなった時に、生活費を確保する手段として婚姻費用の請求調停は行ったほうがよいでしょう。
婚姻費用とは別居中の夫婦の生活費や養育費などの婚姻生活にかかる費用のことです。具体的には、日常の衣食住に使う費用、医療費、教育費、一般的な水準の娯楽費や交際費などです。この婚姻費用の金額ですが、基本的に仕組みは養育費と一緒です。
第一義的には、婚姻費用は話し合いで自由に決めることが出来ます。法律上この金額にすべきと決まっているわけではありません。このように金額が具体的に決まっていないのが、公的扶助との違いですね。そうはいっても、無制限に婚姻費用が認められるかと言うと、相手が認めないでしょう。
それに、実際には婚姻費用の金額の算定には「婚姻費用算定表」というものが用意されています。養育費のときも「養育費算定表」というものがありましたが、これと同じようなものです。
「婚姻費用算定表」は「養育費算定表」と同じく、子どもの数や年齢、夫婦の年収によって決まります。算定の手順は、まず、子どもの人数と年齢から利用すべき婚姻費用算定表を選びます。そして、支払う側の年収を確認し、さらに貰う側の年収を確認し、両者が一致した箇所が婚姻費用の金額です。
話し合いで適正な婚姻費用が決まればいいのですが、決まらなかった場合、先ほど申し上げたように、婚姻費用の分担請求調停に移行します、婚姻費用の分担請求調停は申し立てが必要であり、この申し立てには申立書や収入印紙の費用などがかかります。
また調停手続きも一回で終わるとは限らず、何回も行われる場合もあります。調停が成立した場合、調停の内容を元に調停調書が作成されます。調停調書があれば、これを根拠に、相手方が婚姻費用の支払いを拒めば、相手の財産への強制執行が可能となります。
そして、調停でも離婚の可否や条件が決まらなかった場合、離婚裁判となります。離婚裁判では、先にも述べたように、不貞行為などの5要件を満たしていなければ、離婚が認められることはありません。
さいごに
ここまで、色々と離婚のことについて述べてきましたがいかがだったでしょうか。上手に離婚するために大切なのは、一言でいえば、準備です。離婚を相手に切り出す前に、準備すべきことは色々あります。
今まで一緒に生活していた配偶者がいなくなることによる生活の違いは思いのほか大きいものです。
まず、相手の収入に頼っていた場合は、今後の生活がしていけるだけの収入を得る手段を確保するのが必要です。子どもを引き取るつもりであれば自分だけでなく子どもの生活も考えなくてはなりません。
お金のことも大切ですが、精神面で自立するのも大切です。少なくとも次の配偶者を見つけるまでは、今後は1人で生きていかねばなりません。特に今まで専業主婦であった場合、精神的にも経済的にも、生活を立て直すのは大変となるでしょう。
離婚することによって生活は一変します。離婚を決めることは結婚を決めるのと同じくらい、人生で大きな決断だと言えるでしょう。
本当に離婚すべきなのか、もう二人の関係を修復するのは本当に不可能なのか、よく考えましょう。その際は、この記事で紹介しているような第三者機関に相談するのがいいと思います。
離婚の意思が固いのであれば、まず、夫婦で離婚の話しあいをすることになります。重い話ですから、離婚を切り出すのをどのタイミングにするか迷うかもしれませんが、切り出さないと前に進みませんから、この記事で紹介しているような時期で、切り出すことにしましょう。離婚の協議では、離婚の可否のほかに、養育費の金額や親権をどうするかなど決めなくてはならないことも多いです。長期化することもありますが、粘り強く冷静に交渉を行いましょう。離婚の際は相手からや、国や地方からもらえるお金もたくさんありますので、もらえるお金にはどんな種類があるか確認しておきましょう。
以上です。離婚は人生の大きな決断のひとつです。この記事を参考にして、上手な離婚ができるよう頑張りましょう!