離婚したいけれど話し合いがまとまらない場合、離婚調停をするという選択肢があります。
離婚調停をするとなると、「離婚成立までに時間がかかるのでは?」「弁護士に頼まなければならないの?」など、不安や疑問が出てくるのではないでしょうか?
離婚問題について詳しく知りたい方は、「離婚問題で弁護士に相談するのがおすすめの相談内容(事例)」を参照してください。
本記事では、離婚調停について説明します。
離婚調停の流れや費用を確認し、何に気を付けておくべきかについても押さえておきましょう。
離婚調停とはどんな手続き?
離婚調停は裁判所で行う話し合い
調停とは、争いになっている当事者の間に第三者が入って仲裁をする手続きで、主に裁判所やその他の公的機関で行われるものです。
離婚調停は、家庭裁判所で行われる家事調停の1つで、離婚に関する夫婦間の紛争を解決する手続きになります。
離婚調停は裁判所で行われますが、裁判のように勝ち負けを決めるものではありません。
あくまで話し合いの延長であり、話し合いがまとまらなければ原則として不成立として終了します。
協議離婚が困難なら離婚調停の申し立てが可能
日本では、夫婦が合意すれば、離婚届を出すだけで協議離婚ができます。
離婚調停をするのは、協議離婚が困難な場合ということです。
協議離婚が困難な場合としては、一方が離婚したいのに、他方が同意しないケースがあります。
また、離婚すること自体には合意しているけれど、離婚の条件で意見が食い違っている場合にも、離婚調停で条件の調整をして離婚することが可能です。
離婚調停では調停委員会が仲裁を行う
離婚調停で夫婦の間に入って意見の調整を行うのは、調停委員会と呼ばれる裁判所の組織です。
調停委員会は、裁判官1名と調停委員2名で構成されます。
調停委員とは民間の有識者で、専門的な知識や経験を持っている人が多いですが、必ずしも法律のスペシャリストとは限りません。
調停委員は通常は男女1名ずつになります。
離婚裁判の前に離婚調停をする必要がある
裁判所における問題解決の手続きには、調停のほかに、訴訟(裁判)もあります。
離婚裁判では裁判官に離婚を決めてもらえますから、話し合っても無駄と思われるなら、裁判を起こしたいでしょう。
しかし、離婚調停をせずに離婚裁判を起こすことはできません。
離婚などの家事事件に関しては、調停前置主義が採用されています。
訴訟の提起が認められるのは、調停で第三者を入れて話し合いをし、それでも解決しなかった場合のみです。
離婚調停をすれば、当事者だけで話し合いをするよりも、離婚の合意ができる可能性は高くなります。
話し合いが困難と思っても、まずは離婚調停を申し立てましょう。
離婚調停は相手の近くの裁判所に申し立てをする
離婚調停は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
この場合の住所地とは、住民票上の住所ではなく、実際に住んでいるところです。
既に別居していれば、自分の最寄りではなく、相手の最寄りの裁判所に申し立てる必要があります。
なお、夫婦間で離婚調停をする家庭裁判所を決めて合意すれば、どこの家庭裁判所でも離婚調停ができます。
この場合には、調停申立書と一緒に「管轄合意書」を提出しなければなりません。
また、小さい子がいて居住地を離れられないなどの事情がある場合には、「自庁処理上申書」という書面を提出し、自分の最寄りの裁判所で調停を行ってもらうよう、裁判所に直接お願いする方法もあります。
離婚調停で準備しておく書類とは?
離婚調停を申し立てるときには、次のような書類が必要になります。
調停申立書
離婚調停(夫婦関係調整調停)の申立書の書式は、裁判所のホームページからダウンロードできます。
裁判所|夫婦関係調整調停(離婚)の申立書
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_23/index.html
戸籍謄本
夫婦は同じ戸籍に入っているはずなので、戸籍謄本1通の提出が必要です。
戸籍謄本は本籍地の役所で取得します。
年金分割のための情報通知書
離婚調停で年金分割の割合についても話し合う場合には、「年金分割のための情報通知書」を提出します。
年金事務所で「年金分割のための情報提供請求」の手続きをすれば、「年金分割のための情報通知書」を郵送してもらえますので、事前に手続きしておきましょう。
その他の資料など
財産分与について話し合う場合には、財産の内容がわかる資料(不動産の登記事項証明書、預金通帳のコピーなど)を提出します。
提出すべき資料については裁判所から指示がありますが、あらかじめ提出しておくとスムーズです。
また、各裁判所において、申立書以外に、事情説明書などの書式が用意されていることもあります。
この場合には、裁判所からの指示に従い、必要事項を記入して提出しましょう。
収入印紙
調停申し立ての際には、手数料1,200円を収入印紙で納めなければなりません。
収入印紙は申立書に貼り付けます。
郵便切手
裁判所からの連絡用に使う切手を提出する必要があります。
切手の金額や組み合わせは裁判所によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
離婚調停の流れとかかる期間
離婚調停の申し立てから、調停終了までの大まかな流れは、次のようになります。
家庭裁判所に申し立て
調停申立書と添付書類を家庭裁判所の家事事件受付窓口に提出します。
直接持参する以外に、郵送による提出も可能です。
事前に家庭裁判所に電話し、提出の要領を確認しておくとよいでしょう。
期日の指定
調停申立書が受付されると、裁判所から連絡がありますので、裁判所と相談して調停期日を決めます。
初回期日については申し立てた側(申立人の都合のみを確認して期日を決めることになりますが、2回目以降の期日は、前回終了時に双方の都合を確認して決めます。
調停期日
調停期日には、双方が裁判所に出頭しますが、待機するのは別室です。
調停室には交代で入り、それぞれが調停委員と話をして、経緯や言い分を説明します。
遠方に住んでいて直接裁判所に出頭するのが困難な場合には、電話会議やテレビ会議も利用されます。
初回期日は、申立人の都合だけを聞いて指定されるため、相手方は出頭できない場合があります。
この場合、期日変更するのではなく、申立人のみが出頭して事情を聴かれるケースもあります。
1回の調停期日にかかる時間は2時間程度です。
30分程度で交代しますから、1人が2回くらい調停室に入ることになります。
調停終了
調停は通常、1回で終わることはありません。
月1回程度期日が入り、5~6回程度、6か月~1年で終了するケースが一般的です。
調停が成立すれば、双方が同席のもと調停調書が作成され、調停離婚が成立します。
話し合いで折り合いがつかなければ、調停は不成立になって終了するのが原則です。
ただし、離婚自体には合意しているけれど条件面で折り合いがつかない場合には、審判に移行することがあります。
審判とは、裁判所が離婚を決定する手続きです。
審判で離婚が決まれば、審判離婚が成立したことになります。
調停不成立になり、審判に移行しない場合には、裁判を起こさなければ離婚はできません。
離婚調停にかかる費用
離婚調停を申し立てるときには、次のような費用がかかります。
申し立ての実費
調停申し立ての際には、裁判所に支払う収入印紙代1,200円と郵便切手代がかかります。
郵便切手代は裁判所によって異なりますが、1,000円程度なので、合計しても2,500円以内におさまることが多くなっています。
必要書類の取り寄せ費用
調停申立書に添付する戸籍謄本を役所で取得するときに、450円の手数料がかかります。
戸籍謄本を郵送で取り寄せる場合には、定額小為替手数料(1枚につき100円)と切手代も必要です。
財産分与等の資料にする不動産の登記事項証明書を取得する場合には、法務局で1通につき600円の手数料が必要になります。
弁護士費用
調停申し立てを弁護士に依頼した場合には、上記の実費のほかに、弁護士費用を払わなければなりません。
弁護士費用は依頼時に支払う「着手金」と、事件終了時に支払う「報酬金」に分かれます。
離婚調停を弁護士に依頼した場合、着手金の相場は20~30万円程度です。
報酬金は獲得額によって変わりますが、20~40万円程度になるケースが多くなっています。
<参考記事> 女性のための離婚
離婚調停を有利に進める方法とは?
離婚調停をするなら、できるだけ自分に有利な結論が出るようにしたいはずです。
離婚調停を有利に進めるためのコツを知っておきましょう。
自分の言い分は陳述書や主張書面で整理する
離婚調停の際には、離婚を考えるに至った経緯や請求の理由について、調停委員に説明する必要があります。
口頭で説明するだけでは言いたいことがきちんと伝わらないことがあるため、書面を作成して提出するのが有効です。
調停を進める過程で、調停委員に「陳述書」や「主張書面」を提出するよう指示されることもあります。
しかし、特に指示されなくても、書面を提出してもかまいません。
むしろ、調停を有利に進めたかったら、主張を整理した書面を積極的に提出すべきです。
なお、陳述書や主張書面は、事前に調停委員に読んでもらえるよう、期日1週間くらい前までにはFAXなどで裁判所に送っておきましょう。
別居しているなら婚姻費用分担請求調停も同時に行う
結婚している間は、たとえ別居していても、相手に生活費を請求できます。
離婚調停申し立て時に既に別居しており、生活費を払ってもらっていない場合には、婚姻費用分担請求調停も同時に申し立てしましょう。
婚姻費用分担請求調停は、相手に生活費の支払いを求める調停手続きです。
離婚調停が長引けば、その間ずっと生活費がもらえない可能性があります。
離婚調停と婚姻費用分担請求調停を同時に申し立てた場合、婚姻費用を先に決めてもらえるのが通常です。
最初に生活費を確保しておけば、安心して調停に臨むことができます。
慰謝料を請求するなら証拠をとっておく
相手が離婚原因を作った場合には、慰謝料を請求できます。
慰謝料請求するなら、事前に証拠をとっておき、相手が支払いを拒否した場合に証拠を出せるようにしておきましょう。
慰謝料が発生する典型的なケースは、相手の不貞行為(浮気・不倫)による離婚です。
しかし、相手が不貞行為を素直に認めることはあまりありません。
不貞行為の慰謝料を請求したい場合、証拠がなければ払わせるのは難しくなってしまいます。
不貞行為の場合、現場を押さえるというのは困難なので、不貞行為が推測される証拠をたくさん集める必要があります。
相手に警戒されると証拠もとれなくなってしまいますから、早い段階で証拠を集めておくことが大切です。
養育費請求の根拠を用意しておく
養育費を決めるときには、通常、裁判所で用意されている養育費算定表を参考にします。
しかし、養育費算定表の金額が絶対ではありません。
養育費算定表の金額以上の養育費を請求することも可能です。
養育費算定表では、夫婦それぞれの年収や子供の人数から算出された標準的な養育費が示されています。
この金額には、公立小学校・中学校・高校でかかる費用は含まれていますが、私立中学や私立高校で余分にかかる費用や塾費用などは含まれていません。
養育費算定表の金額以上の養育費を請求したい場合、請求の根拠を明らかにする資料を用意しておく必要があります。
私立中学や私立高校に現に通わせている場合や、通わせる予定がある場合には、学費の明細がわかるものを用意しておきましょう。
また、大学や専門学校への進学費用は、毎月の養育費とは別に考えるべきものです。
進学費用として現実にどれくらいかかるのかがわかる資料も用意し、調停委員や相手方の理解を得られるようにしておきましょう。
納得できないことには安易に妥協しない
離婚調停はあくまで話し合いですから、納得ができない要求には応じる必要はありません。
調停の場では、調停委員から「まだお子さんが小さいから離婚しない方がいいのでは?」「養育費は算定表では○万円だからそれ以上は困難」などと提案され、応じなければならない気持ちになることがあります。
しかし、納得いかない理由があるのであれば、簡単に妥協しないようにしましょう。
自分の言い分をもう一度きちんと主張し、調停委員や相手方に理解してもらえば、自分の要求が通る可能性があります。
調停委員から提案されたことに、その場で返事をする必要はありません。
納得がいかなければ保留にし、冷静になってから考えましょう。
離婚調停を弁護士に依頼するとどんなメリットがあるの?
離婚調停を有利に進めたいなら、弁護士に依頼するのがいちばんです。
弁護士に離婚調停を依頼するメリットを知っておきましょう。
裁判所に提出する書面を作成してもらえる
離婚調停で自分の言い分を理解してもらうには、主張をまとめた書面を提出することが重要です。
弁護士に離婚調停を依頼すれば、裁判所に提出する陳述書や主張書面を作成してもらえます。
自分で書面を作成すると、言いたいことが多過ぎて、枚数ばかりが増えてしまいがちです。
しかし、書面が長くなってしまうと、かえって言いたいことが伝わりません。
弁護士が書面を作成する場合には、論点を整理した上で、理解しやすい形にまとめます。
書面できちんとした主張を行えば、離婚調停を有利に進められます。
相手の財産を調査できる
相手が財産を隠していれば、本来請求できる財産分与が請求できなくなってしまいます。
弁護士に依頼すれば、相手の財産を調査することも可能です。
弁護士は、弁護士照会制度(23条照会)を利用し、金融機関に口座の有無・残高の照会が可能です。
財産の調査は裁判所の調査嘱託制度でもできます。
弁護士に調査嘱託の申立てを行ってもらい、相手の財産を調べる方法もあります。
証拠集めを手伝ってもらえる
相手に慰謝料を請求する場合には、証拠が欠かせません。
弁護士に依頼すれば、証拠集めに関するアドバイスをしてもらったり、信頼できる探偵を紹介してもらったりできます。
裁判になった場合にどのような証拠が有効なのかは、自分ではなかなかわかりません。
弁護士に証拠集めを手伝ってもらうことで、慰謝料を確保できる証拠を揃えられます。
相手と交渉してもらえる
離婚調停中であっても、調停外で相手と交渉することは可能です。
弁護士に相手と交渉してもらい、うまく交渉が成立すれば、調停を取り下げて協議離婚ができます。
離婚調停には時間がかかってしまいます。
仕事をしていれば、調停のために何度も裁判所に出向くだけでも大変な手間です。
弁護士に依頼して協議離婚ができれば、スピーディーに問題が解決することになります。
まとめ
離婚調停を自分で進める場合には、費用はほとんどかかりません。
しかし、離婚調停は長引くことも多く、不成立になってしまう可能性もあります。
離婚調停を有利に進め、できるだけ早く離婚を成立させたいなら、弁護士に依頼した方がよいでしょう。