この記事でわかること
- 弁護士に依頼した場合にかかる費用の相場
- 弁護士費用の種類
- 弁護士費用以外に必要な費用
- 弁護士費用を節約するためのポイント
- 弁護士費用を支払うタイミング
離婚にかかる弁護士費用の相場
弁護士に委託をすると、弁護士費用という弁護士に対する報酬の支払いが発生します。
離婚の際に弁護士に依頼する場合、「具体的にどのくらいの費用がかかるのか」は、依頼者にとって最大の関心事ではないでしょうか。
離婚後の夫婦は、別々の人生を歩みます。
弁護士費用がかさむと、その分だけ離婚後の生活費に影響を及ぼす可能性があるため、「弁護士に依頼したいが、目安がわからないと依頼しづらい」と困ってしまうことでしょう。
ここでは、離婚にかかる弁護士費用の相場と、その費用を支払うことによって弁護士からどのようなことをしてもらえるのかという業務内容、そして離婚成立までの期間についてお話しします。
離婚にかかる費用相場・業務内容・離婚までの期間を3つの区分にわけて解説します。
- ・離婚協議時(成功報酬型)
- ・離婚調停時
- ・離婚裁判時
協議離婚時(成功報酬)
協議離婚の場合、必ずしも弁護士に依頼する必要はありません。
協議離婚とは、夫婦が話し合いのもとで離婚や離婚条件を決めることを指しますので、話し合いのときに離婚への同意がとれ、離婚条件が折り合えば、特に弁護士に依頼する必要はないのです。
そのまま条件にもとづいて離婚して終了になります。
協議離婚を夫婦だけで進めて離婚する場合は、弁護士に依頼する必要がないため、弁護士費用も不要です。
協議離婚で弁護士に依頼するケースとは、「配偶者から離婚の同意が得られない」「離婚条件で揉めている」「慰謝料などの支払いに応じてもらえない可能性が高い」などのケースになります。
夫婦の協議だけで解決しないケースでは、弁護士の助力が必要になるのです。
弁護士に協議離婚での解決を依頼すると、弁護士費用が発生します。
協議離婚による弁護士費用の相場は30万円です。
弁護士に協議離婚による解決を依頼したときの業務内容は、過去の判例からの慰謝料や養育費の相場についてのアドバイス、法的な助言、離婚の和解案の提示などです。
また、配偶者との代理交渉を依頼することも可能です。
配偶者との代理交渉を依頼する場合は、代理交渉の内容によって相場が変わってきます。
慰謝料請求の場合は獲得金額の10~20%で、財産分与の場合も同様です。
養育費は養育費の年額の10%程度、親権獲得の交渉を依頼した場合は10万円~20万円が相場になります。
協議離婚の場合の相場全体としては30万円ほどですが、業務内容によって変わってくるため注意してください。
たとえば、財産分与の額が多くなると、それだけ弁護費用も大きくなります。
協議離婚は話し合いで進める離婚ですので、裁判所での手続きは不要で、話し合いの進展次第では、最も短期間で離婚できる方法といえるでしょう。
協議離婚の公正証書作成
協議離婚を公正証書にまとめる場合、別途費用が必要になります。
公正証書に執行受諾文言を記載しておくことで、強制執行が可能で、未払いなどが発生したときに役立ちます。
また、公正証書は公証役場で作成でき、その作成費用は5,000円~2万円ほどが目安となります。
こういった場合の公正証書作成も弁護士に依頼できます。
弁護士に作成を依頼した場合は、別途弁護士費用が発生する可能性があるため、先に弁護士に確認しておくといいでしょう。
離婚調停時
離婚調停は、裁判所で行う手続きです。
裁判所といわれると裁判官が判決を下す裁判を想像しがちですが、離婚調停は話し合いの性質が強い手続きになります。
離婚調停では、離婚の当事者である夫婦と調停委員などが一堂に会して、離婚問題解決のために話し合い、当事者が申立てることも可能です。
裁判所での手続きについては、必ず弁護士をつけなければいけないわけではなく、申し立てた人が自分で進めることもできます。
弁護士をつけずに離婚調停を進める場合は、特に弁護士費用は必要ありませんが、弁護士をつける場合は弁護士費用が発生します。
離婚調停を弁護士費用に依頼したときの費用相場は20万円~30万円となり、これは成功報酬や着手金の相場になります。
離婚調停の弁護士費用では、この他に離婚についての相談費用や、弁護士が裁判所に足を運ぶときの交通費といった実費が必要になるのです。
その結果、実費や相談費用なども含めた場合の弁護士費用の相場は40万円~70万円になっています。
離婚調停を依頼したときの業務内容には、離婚調停への出席や離婚調停に必要な書類の作成、裁判所での手続きなどがあり、弁護士に依頼すれば、基本的に離婚調停の準備から実際の調停まで、弁護士のサポートを受けることができます。
なお、離婚調停で離婚するまでの期間の目安は、4カ月~半年ほどです。
離婚裁判時
離婚の場合、基本的に最初から離婚訴訟を行うことはありません。
まずは離婚調停を行い、離婚調停で離婚問題が解決しなかった場合に、離婚裁判で判決をもらう流れになります。
離婚裁判を弁護士に依頼する場合、2つのパターンがあります。
ひとつ目のパターンが、離婚調停を依頼した弁護士にそのまま離婚訴訟も依頼するパターン。
もうひとつのパターンが、新規に弁護士へ依頼するパターンです。
どちらのパターンでも、弁護士の業務内容自体は変わりません。
裁判所に提出する書類の作成や裁判所での手続きなど、裁判全般を弁護士に代理してもらえます。
ただ、2つのパターンのどちらに該当するかによって、弁護士費用が変わってくる可能性が高いです。
離婚調停から引き続いて離婚裁判も同じ弁護士に依頼する場合は、着手金が10万円で成功報酬20万円~30万円が相場になります。
ただし、離婚調停から案件を引き継いでいるため、着手金を0円にする弁護士もいます。
もし着手金が無料なら、成功報酬の金額を相場として考えることができます。
ただ、これはあくまでも裁判だけの費用で、前段階として調停費用もかかっていることを忘れてはいけません。
裁判費用と調停費用を合算した場合の相場は70万円~110万円になっています。
裁判から弁護士に依頼する場合の相場は、依頼金や着手金が20万円~30万円となり、さらに成功報酬も同じくらいなので、両方合わせると相場は40万円~60万円ということになります。
なお、これはあくまで離婚のみの裁判です。
財産分与や親権の獲得など、目的が増えると費用が増す傾向にあり、中には弁護士費用が100万円を超えるケースもあります。
離婚裁判の期間としては1~2年程度が目安です。
解決したい離婚問題が多岐に渡る場合は、先に弁護士費用の見積もりを出してもらうといいでしょう。
離婚弁護士の弁護士費用の例
ここでは、離婚について弁護士に依頼した場合の、料金表の一例を紹介します。
1 相談料(電話相談・来所相談共に同額)
原則 | 30分 5000円 (税込:5500円) | 以降30分を超えるごとに 5000円(税込:5500円)ずつ加算 |
---|
【相談方法】 来所相談 又は 電話相談
※1 案件の内容によっては、初めの30分間を無料とする時もあります。
※2 事件処理の受任となった時には、初回相談料として頂いた料金は、着手金から差し引かせていただきます。(初回相談料、実質無料化)
2 離婚及びこれに関連する事項
1 着手金
交渉 | 20万円以上 (税込:22万円以上) (5時間まで。超過分は1時間につき3万円(税込:3.3万円)) | |
---|---|---|
調停、審判 ※1 | 30万円 (税込:33万円) (3期日まで。超過分は1期日につき3万円(税込:3.3万円)) | |
訴訟 ※2 | 離婚、親権、養育費 | 30万円以上 (税込:33万円以上) |
慰謝料請求を加えるとき | 5万円以上 (税込:5.5万円以上) | |
財産分与を加えるとき | 5万円以上 (税込:5.5万円以上) |
※1 交渉から調停,審判に移行したときは,調停・審判の着手金から,交渉の着手金の半額を差し引くことができるものとします。
※2 弁護士の出廷回数は、受領した着手金を4万円(税込:4.4万円)で除した回数(小数点以下は切り捨て)を上限とし、上限回数を超えた時には1期日あたり3万円(税込:3.3万円)の出廷日当が追加で発生します。
2 事務手数料
交渉 | 1万円 (税込:1.1万円) |
---|---|
調停、審判 | 2万円 (税込:2.2万円)(印紙代含まず) |
交渉、調停、審判 (セット) | 2万円 (税込:2.2万円)(印紙代含まず) |
訴訟 | 3万5000円 (税込:3万8500円)(印紙代含まず) |
3 報酬金
基礎報酬 | 事件終了時 | 交渉で終了した時 | 20万円 (税込:22万円) |
---|---|---|---|
調停で終了した時 | 20万円 (税込:22万円) | ||
訴訟で終了した時 | 30万円 (税込:33万円) | ||
離婚 | 達成した時 | 10万円 (税込:11万円) | |
阻止した時 | |||
親権 | 得られた時 | 10万円 (税込:11万円) | |
相手方に獲得されるのを阻止した時 | |||
養育費 | 得られた時 | 得られた経済的利益の5年分の10% (税込:11%) ※2 | |
請求されていた養育費を減額した時 | |||
慰謝料 | 得られた時 | 得られた額の10% (税込:11%) | |
請求されていた慰謝料を減額した時 | 減額した額の10% (税込:11%) | ||
財産分与 | 得られた時 | 得られた額の10% (税込:11%) | |
請求されていた財産分与を減額した時 | 減額した額の10% (税込:11%) | ||
婚姻費用 | 得られた時 | 得られた経済的利益の2年分の10% (税込:11%) | |
請求されていた養育費を減額した時 | |||
面会交流 | 達成した時 ※3 | 30万円 (税込:33万円) | |
年金分割 | 得られた時 | 10万円 (税込:11万円) | |
請求されていた年金分割を減額した時 |
※2 残存年数が5年に満たない時、残存年数すべてを対象とする。
※3 現状よりも条件が改善した時。
3 子の引渡し・子の監護者指定及びこれに関連する事項
1 着手金
交渉 | 15万円 (税込:16.5万円) (5時間まで。超過分は1時間につき2万円(税込:2.2万円)) |
---|---|
調停、審判 | 30万円 (税込:33万円) (3期日まで。超過分は1期日につき3万円(税込:3.3万円)) |
保全 | 30万円 (税込:33万円) (3期日まで。超過分は1期日につき3万円(税込:3.3万円)) |
2 事務手数料
交渉 | 1万円 (税込:1.1万円) |
---|---|
調停、審判 | 2万円 (税込:2.2万円)(印紙代含まず) |
保全 | 1万5000円 (税込:1万6500円)(印紙代含まず) |
3 報酬金
基礎報酬 | 事件終了時 | 交渉で終了した時 | 20万円 (税込:22万円) |
---|---|---|---|
調停で終了した時 | 20万円 (税込:22万円) | ||
子の引き渡し | 達成した時 | 30万円 (税込:33万円) | |
阻止した時 | |||
子の監護者指定 | 達成した時 ※4 | 30万円 (税込:33万円) | |
阻止した時 ※5 | |||
保全 | 達成した時 ※4 | 30万円 (税込:33万円) | |
阻止した時 ※5 |
※4 現状よりも条件が改善した時。
※5 相手方の要求が一部でも認められなかった時。
弁護士費用の種類
そもそも弁護士費用とひとことで言っても多くの種類があります。
一番金額が大きいのは、弁護士に依頼した時点で支払う着手金と事件解決時に成功報酬として支払う報酬金です。
このほか、法律相談料、日当、実費を請求されることがあります。
弁護士費用の種類
- ・着手金:依頼時に支払う
- ・報酬金:事件解決時に支払う
- ・法律相談料:法律相談の費用
- ・日当:出張費用
- ・実費:交通費や郵送費用など
着手金:依頼時に支払う
着手金とは、弁護士に依頼した時点で一括して支払う費用であり、解決結果のいかんにかかわらず原則として返金されないものです。
弁護士は、着手金の支払いを受けてから依頼された業務を開始することになります。
協議離婚を弁護士に依頼した場合の着手金の相場は、10万円~30万円程度です。
多くの弁護士は、離婚調停や離婚訴訟と比べて協議離婚の場合の着手金を低く設定しています。
なお、最初は協議離婚について弁護士に依頼したものの、後から離婚調停や離婚訴訟に移行するようなケースもよくあります。
協議離婚はあくまでも相手の合意が必要なので、相手が離婚自体をかたくなに拒否していたりして歩み寄りの余地がなければ、裁判所を通した手続である離婚調停や離婚訴訟により解決せざるを得ないためです。
このような場合には、協議離婚について支払った着手金と離婚調停や離婚訴訟にかかる着手金の差額のみを請求する弁護士も多いです。
例えば、協議離婚について20万円の着手金を支払っている場合、離婚調停の着手金が30万円であれば、調停への移行時にその差額である10万円を追加で弁護士に支払うことになります。
このように差額のみの支払いで良いか、それとも調停や訴訟についての着手金を別途全額支払う必要があるかは弁護士によって異なります。
協議離婚だけで絶対に解決できるという保証はないので、離婚調停や離婚訴訟に移行した場合の着手金の扱いについても、弁護士にあらかじめ確認しておきましょう。
報酬金:事件解決時に支払う
報酬金は、成功報酬であり事件解決時に支払うものです。
離婚を弁護士に依頼した場合における報酬金は、一つではありません。
すべての報酬金が合算された金額になるためわかりにくく、また金額も大きくなる傾向にあります。
そこで、報酬金の種類について以下で説明します。
まず、離婚が成立したこと自体についての報酬金が発生します。
協議離婚の場合、離婚が成立したこと自体についての報酬金の相場は、30万円~50万円程度です。
これに加え、子供がいる場合には親権の獲得や養育費の獲得等について、それぞれ別に報酬金が発生するのが通常です。
また、相手方の不貞行為などにより慰謝料を請求している場合や、財産分与を受けることになった場合には、依頼者が得ることができた金額のうち一定割合を報酬金として支払うことになります。
これらの報酬金の相場は、後でくわしく説明します。
どのような場合に報酬金が発生するかについては、弁護士と交わす委任契約書にも記載されています。
報酬金は特に金額が大きいため、不明な点があれば依頼前に十分に確認しておくようにしましょう。
報酬金は成功報酬なので、離婚が成立しなかったり慰謝料等の請求が全く認められなかったりした場合には、その部分に関する報酬金は発生しないことになります。
法律相談料:法律相談の費用
法律相談料とは、文字通り弁護士に法律相談をした場合に発生する費用です。
ただし、弁護士に協議離婚の解決を依頼した場合、通常は依頼時点以降の法律相談料はかかりません。
法律相談料は、一般的に30分または1時間単位で金額が定められています。
最近では、離婚についての法律相談は無料としている弁護士も多くいますので、依頼するかわからないけれど相談だけはしてみたいという場合には、相談無料の弁護士を探してみるとよいでしょう。
弁護士に一度依頼すると、解決まで数か月にわたる長い付き合いになりますので、相性を確認するためにも、まずは気軽に弁護士に相談してみることをおすすめします。
日当:出張費用
日当とは、弁護士が事件を解決するために遠方へ出張した場合に支払う費用です。
典型的な例は、協議離婚の相手と別居していて、相手が実家など遠方に住んでいるような場合です。
このとき、弁護士が交渉のために相手の住んでいる地方に出向くような場合、日当が発生することがあります。
なお、弁護士が出向くためにかかった交通費や宿泊費は、実費として日当とは別に発生しますので注意が必要です。
日当の相場は、一日あたり3万円~5万円程度です。
宿泊を伴うような場合には、2日分以上の日当が発生します。
これに宿泊費や交通費が加算されることになるため、負担はかなり大きくなります。
どの程度遠方の出張について日当が発生するかは、弁護士によって異なります。
このため、特に相手が遠方に住んでいるような場合には、弁護士にあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
実費:交通費や郵送費用など
実費というのは、弁護士が事件を解決するために要した費用です。
これは弁護士の収入になるものではなく、弁護士に依頼してもしなくても依頼者が支出する必要のある費用といえます。
例えば、相手との交渉場所に出向くためにかかった交通費や書類の郵送費用などがあります。
調停離婚や離婚訴訟の場合は、裁判所に一定の手数料を納める必要があるため実費は多くなりがちです。
これに対して、協議離婚の場合にかかる実費は、それほど多くかからないことが通常です。
ただし、日当のところで説明したように、相手方が遠方で弁護士が交渉のたびに出張するような場合には、交通費や宿泊費が実費として請求されます。
新幹線で行く場合には、往復の交通費だけで数万円となることもありますので、実費の内訳については、グリーン車を利用するのかなども含めて弁護士に確認しておきたいところです。
また、日本国内であれば宿泊を要することはあまりないと思われますが、例えば相手方との交渉が朝早い時間に行われるようなケースでは、弁護士が前日から宿泊するようなことも考えられます。
したがって、あまり費用をかけたくないということであれば、宿泊を必要としないような時間を設定してもらったり、できるだけ電話等で対応してもらったりということができるか、弁護士に相談しておくのもおすすめです。
離婚の際に必要となるその他の費用
離婚の際に考えておかなければならないのは弁護士費用だけではありません。
他にも、準備しておきたい費用があります。
たとえば、お子さんがいる場合、離婚後の養育について考えなければいけません。
養育のための費用には養育費がありますので、離婚する配偶者から養育費を払ってもらえるよう話し合うことになります。
協議離婚の際に必要となる、弁護士費用以外のお金について説明します。
別居中の婚姻費用の負担
離婚の協議開始に伴い、別居をする夫婦も多いでしょう。
離婚が成立する前に別居している場合、収入が低いほうの配偶者は相手に対して、婚姻費用という生活にかかる費用の分担を請求することができます。
別居中とはいえ法的には夫婦のままですので、収入が高いほうの配偶者は民法第760条の定めにしたがい、婚姻費用を分担する必要があるからです。
婚姻費用には、配偶者の家賃、光熱費、食費、被服費とともに、収入が低いほうの配偶者が子供を引き取り育てている場合には、子供の養育費も含まれます。
婚姻費用の算定は、夫婦の合意があればその金額になりますが、折り合いがつかない場合は、家庭裁判所の裁判官が相場として定めた「養育費・婚姻費用算定表」を基準として算定することになります。
相手が支払いを拒否した場合は、婚姻費用分担請求調停を申立て、調停または訴訟により解決することとなります。
養育費や婚姻費用の分担は、離婚原因がどちらにあるかということは関係なく、夫婦関係・親子関係により支払義務が生じるものとなります。
したがって、例えば、請求する側の当事者の不貞行為等によって別居に至ったとしても、収入が多いほうの当事者としては支払う法的な義務があるのです。
財産分与
夫婦は相互に協力して生計を営みますので、婚姻期間中に築いた財産は、どちらの収入であったかを問わず、公平に分配する必要があります。
例えば、会社員の夫と専業主婦の妻という組み合わせで、就労による収入は夫のみが得ていたとしても、それは妻による家事と育児の分担があってこそ得ることができたお金であると考えられています。
財産分与の対象は、銀行預金等に限らず、不動産や株式等の有価証券、家財道具、車、保険解約返戻金等にも含まれます。
また、会社員が受給できる厚生年金の報酬比例部分等の年金も分割対象となります。
不動産のうちマイホームをローンで購入している場合は、不動産価格からローン金額を控除した部分が財産部分として、財産分与の対象となります。
なお、財産分与の対象は、夫婦生活により築かれた財産ですので、片方が結婚前から有していた財産や遺産相続により得た財産は対象となりません。
養育費
協議離婚が成立すると、親権を夫婦のどちらか一方が持つこととなります。
子供を引き取り育てるほうの親は、子育てをしないほうの親に、子供が生活するための衣食住にかかわる費用や教育費用についての分担として、養育費の支払いを求めることができます。
養育費は、子供が社会的に自立するまで請求することができ、通常は子供が20歳になるまでですが、両親の状況によっては大学卒業までまたは高校卒業までという場合もあります。
養育費についても、別居中の婚姻費用の分担と同様、合意に至らなかった場合は、家庭裁判所の算定表に基づいて決定されることとなります。
養育費の相場について詳しく知りたい方は、下記の記事を参照してください。
離婚慰謝料
離婚の原因が、ドメスティックバイオレンスや不倫等、相手方の不法行為にあった場合、被害者である方の配偶者は、精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができます。
民法709条は、故意過失により他人の生命・身体・財産に損害を与えた者はその損害を賠償する責任を負うとしており、民法710条は、その損害は財産的な損害に限らないとしているためです。
離婚慰謝料についても、当事者が合意で金額が決まればその金額となりますが、合意に至らない場合は、判例により認められてきた相場に照らして判断されることとなります。
離婚原因や夫婦の状況は千差万別ですが、だいたい50万円~300万円の範囲におさまることが多いようです。
離婚で弁護士費用を節約するためのポイント
離婚のときは、今後の生活のことも考えて、可能な限り費用をおさえたいのではないでしょうか。
弁護士費用はまとまった金額になりがちなので、できれば節約したいですね。
弁護士費用を節約するためのポイントを5つご紹介します。
無料相談を利用する
弁護士事務所の多くは、無料相談を行っています。
初回無料相談などを掲げている弁護士事務所に相談すれば、相談費用をおさえることができます。
無料相談を使ったからといって、必ずその弁護士事務所に依頼しなければならないわけではありません。
弁護士事務所との相性を見る意味でも、無料相談は積極的に利用することをおすすめします。
着手金が安いもしくは無料の法律事務所を利用する
事前にまとまったお金を準備することが難しいときは、着手金無料の弁護士事務所を利用する方法もあります。
ただし、着手金がない代わりに報酬が高く設定されていることがあるため、注意が必要です。
着手金なしでも報酬設定が高いと、結果的に費用が高くなったり、ほぼ変わらなかったりする可能性もあります。
費用全体の額についてよく検討して選びましょう。
報酬金が安い法律事務所を利用する
弁護士事務所の報酬はすべての事務所が一律ではなく、事務所によってかなり差があります。
弁護士事務所同士を比較し、報酬金が安い事務所を探してみてください。
ただし、報酬金が安く設定されていても、着手金などを合計すればさほど変わらないという可能性もあります。
最終的には見積もりなどを取得して決断することをおすすめします。
法テラスの立替制度を利用する
法テラスでは資力的に法的な解決が難しい人のために、立替制度を行っています。
弁護士に依頼する際の費用は一定の資力基準以下の場合、立替の対象になるのです。
- ・家族2人 250万円
- ・家族3人 270万円
- ・家族4人 300万円
現金・有価証券・不動産などの制度利用希望者の資力が上記の基準以下の場合は、制度を利用できる可能性があります。
ただし、資力が基準を上回っている場合でも、医療費などの支出がある場合は、立替制度を利用できる可能性があります。
早い段階で弁護士に依頼する
離婚問題が複雑化してからだと、離婚問題解決に時間と費用がかかる傾向にあります。
たとえば、協議離婚で解決する段階で弁護士に相談すれば、協議離婚分の費用だけで済みますが、話し合いで問題がこじれていると、離婚調停や離婚裁判の費用も必要になる可能性があるのです。
早い段階で相談することは、問題解決を早め、結果的に弁護士費用をおさえることにもなります。
弁護士費用を支払うタイミングと注意点
弁護士費用の相場を見ると、まとまった額のお金が必要なことがわかるはずです。
費用を準備するためにも、支払いのタイミングを知っておくことは重要です。
弁護士費用を支払うタイミングや支払いの注意点について説明します。
二段式で支払う場合がある
買い物をすると一括で払うことも少なくありませんが、弁護士費用の場合は二段階方式で支払うことも珍しくありません。
たとえば、離婚調停分の着手金と報酬を支払い、その後に離婚裁判の着手金と報酬を請求される、というように、別々に支払いが発生することがあります。
また、離婚の他に親権や財産分与についても争う場合は、別途着手金や報酬が発生することがあります。
支払いのタイミングと費用の発生については、あらかじめ依頼先の弁護士事務所に確認しておきましょう。
料金を支払うタイミングが違うことがある
協議離婚とその後の離婚調停を続けて依頼した場合などは、弁護士費用を支払うタイミングもずれてくるケースが少なくありません。
たとえば、協議離婚分の着手金や報酬を計算して先に請求し、その後離婚調停分の着手金と報酬を別途請求といった形を取ることがあります。
このように、協議離婚や離婚調停、離婚裁判などを続けて依頼した場合は、それぞれの手続きについて清算する弁護士事務所も少なくないため、料金を支払うタイミングが手続きごとに変わってくることがあります。
つまり、それぞれの請求のタイミングに合わせて、ある程度まとまった弁護士費用を準備しなければならないため、注意してください。
弁護士費用は固有財産から支払わなければならない
弁護士費用は、基本的に依頼者の固有財産から支払う必要がありますが、離婚の際には固有財産や共有財産が問題になることがあります。
共有財産とは、離婚する夫婦の共有になっている財産のことです。
一方、固有財産とは、夫婦片方の財産のことを指します。
たとえば、妻が弁護士に離婚問題について相談し、協議離婚や離婚調停を依頼したケースを想像してみてください。
妻が妻の意思で依頼した弁護士なのに、夫婦の共有財産から弁護士費用を払うと、夫と揉める可能性があります。
また、勝手に共有財産から支払うと、財産分与において減額になる可能性もあるのです。
弁護士に依頼する際は、あらかじめ資金計画を立てておきましょう。
まとめ
離婚問題の解決を弁護士に依頼するとき、依頼者が気にするポイントのひとつが「弁護士費用」ではないでしょうか。
弁護士に依頼してスムーズに解決するためには、どのくらいの費用を目安として準備すればいいのか、支払いのタイミングはいつになるのかは、依頼者にとって重要なポイントです。
この記事では、費用の目安や支払のタイミングなどを解説しました。
弁護士費用の重要ポイントをおさえ、離婚の際の参考にしてください。