この記事でわかること
- 離婚したくない場合にするべき5つのことがわかる
- 離婚届不受理申出書を出すタイミングや提出方法がわかる
- 離婚したくない場合にやってはいけない5つのことがわかる
法定離婚原因とは
日本の民法は、婚姻関係を家族関係の基礎として、一定の法的保護を与えています。
そのため、もしあなたが離婚したくないのにもかかわらず、相手が性格の不一致や愛情が冷めたという曖昧な理由で離婚を求めてきた場合は、拒絶することができます。
しかし、例外的に相手の同意がなくても離婚できる場合があります。
これを法定離婚原因といい、民法770条1項に列挙されています。
法定離婚事由は、不貞行為、悪意の遺棄、三年間の生死不明、強度の精神病で回復の見込みがない、その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるときの5つです。
つまり、浮気やDV、失踪、強度の精神病がある場合は、裁判で争われると離婚は避けられません。
まずは、配偶者から法定離婚原因を主張されてしまうような行為をしていなかったか、振り返ってみましょう。
日本の婚姻制度は有責主義といって、非が大きくなければ簡単には認められません。
一方、フランスなどヨーロッパでは破綻主義といって、特に有責事由がなくても、事実上夫婦関係が破綻していれば離婚を認めるという、破綻主義をとっています。
日本でも、有責主義を基調にしつつ、一部破綻主義が取り入れられている部分もあります。
そのため、法定離婚原因がなくても、長期間の別居が事実としてあれば、既に婚姻関係は破綻しているという判断となり、法定離婚事由の5つめにあたるとして、結局離婚が認められるケースもあります。
相手に法定離婚事由がないけれど、どうしても離婚したいという場合は、一刻も早く別居するのが、離婚に向けた第一歩であるともいえます。
離婚する理由について詳しく知りたい方は、下記を参照してください。
離婚を切り出されても応じなくて大丈夫
離婚を切り出されたときに「離婚に応じなければいけないの?」と焦ってしまうかもしれません。
夫婦関係とはふたりで作っていくものなので、相手に「離婚したい」と言われてしまうと、「応じるしかないのか」と思うのも分かります。
ただし、相手に離婚を切り出されたからといって、応じる義務はありません。
日本では話し合いによる「協議離婚」の割合が多く、協議離婚が成立するためには、夫婦の合意が必要になります。
つまり、自分が離婚に応じなければ、離婚は成立しません。
相手に離婚を切り出されても「自分は離婚に合意しない」という姿勢で話し合いしましょう。
離婚したくない場合にするべき5つのこと
離婚したくなくても、配偶者から強硬に離婚を迫られたり、父母や義理の両親、友人などの周囲から、もう離婚したほうがよいのではないかと迫られたりして、追い詰められることもあるかもしれません。
しかし、離婚をするもしないも、その後の人生を決めていくのはあなた自身の行動です。
人の心はうつろいやすいものですので、絶対に相手の気持ちをもう一度振り向かせると決めて努力すれば、その後家庭を修復できる可能性も十分にあります。
冷静になって今後を考えてみる
突然離婚を迫られた場合、誰しも動揺してしまいますよね。
しかし、離婚を迫る配偶者も冷静な状態ではないかもしれません。
離婚を切り出さねばと焦って、もう離婚しかないと頭から思い込んでしまっていることもあります。
こういう場合には、離婚を申し出られた相手の方がまずは一息ついて、感情のぶつけ合いにならないように、相手の言い分をじっくり聞いて、どうすればよいか考えてみましょう。
売り言葉に買い言葉で、これまでの不満を感情的にぶつけ合うと、ますますお互いの気持ちがすれ違い、取り返しがつかないほど心が離れてしまうことがあります。
一度愛し合って結婚した2人のすれ違いは、意外に小さなことの積み重ねだったりします。
そのため、冷静になって話し合うと、もつれていた糸が解けるように解決できるかもしれません。
相手がかなりヒートアップしている場合は、離婚届を出す前にまずは別居してみて、お互いにクールダウンし、その後の人生に本当にお互いを必要としているかどうか、自分を見つめ直してもよいかもしれません。
後述のように、別居期間がかなり長くなると、法定離婚原因のその他婚姻を継続しがたい重大な事由にあたるとみなされて、離婚に至ってしまうかもしれないので、リスクはあります。
しかし、少しの期間別居することで、配偶者があなたの大切さを改めて実感してくれるという可能性もあります。
離婚届不受理申出書を出しておく
離婚届は夫婦そろって役所に行かなくても出せますので、配偶者が離婚を焦っている場合、記名押印を捏造して勝手に離婚届けを出すという可能性もなきにしもあらずです。
もちろん、合意なく勝手に出された離婚届は、法的には無効になる可能性が高いですが、役所では合意があるものとして受理せざるを得ないので、一旦は離婚となってしまいます。
事後的に勝手に出されたという主張をするには、ねつ造されたことの証拠を裁判で出す必要があるなど、かなり労力がかかるので、念のため、事前に離婚届の不受理申出書という書類を役所に提出しておきましょう。
この書類を提出しておけば、届出人本人が申請を取り下げない限りは、相手が離婚届をだしても、役所に受理されません。
離婚届不受理の申出をする際は、原則として本人が市区町村役所の窓口へ行き、離婚届の不受理申出書を提出します。
ただし、本人が行けない場合は、郵送での受付や代理の人に提出してもらうことも可能です。
相手が離婚したがっている理由を確認する
婚姻関係はお互いの気持ちがあってこそですので、根本的な問題として、相手が離婚を望む理由はなにかを確認する必要があります。
配偶者が不倫していることを知っていたり、本人が正直に理由を言ったりするケースは別として、具体的な理由が全くわからないこともありえます。
浮気の場合は、修復にしても離婚にしても、まずは不倫の証拠をしっかり集めておきましょう。
不倫関係は、肉体関係をもっていることの立証が必要ですので、証拠収集に苦戦するかも知れません。
場合によっては、お金を払って探偵事務所に依頼するのが近道であることもあります。
証拠を握っておくメリットとして、基本的には、不倫をした配偶者は有責配偶者といい、有責配偶者からの離婚請求は裁判では認められません。
話し合いがこじれて、調停や裁判で争うことになったとき、不倫の証拠があれば離婚を拒むことができます。
また、話し合いの結果、あなたのほうも離婚したい気持ちに徐々に変わっていったとしても、離婚に際して離婚慰謝料を有責配偶者や不倫相手に請求する際の証拠として利用できます。
離婚をのぞんでいる原因がまったくわからないときは、まずはなぜ離婚したがっているのか、本当の理由を確認しましょう。
ただし、離婚したがっている配偶者にストレートに聞いたとしても隠されたり、あなたの欠点や嫌だったところを感情的に罵られたりするかもしれません。
辛いと思いますが、感情的に返さずに、なるべく冷静に受け止めて離婚の原因を分析してみましょう。
もし配偶者が実は不倫中でそれを隠している場合は、自分に不利になる不倫という理由は口にせず違う理由を述べて来る可能性が高いでので、念のため、素行調査などをして確認してみましょう。
いずれにせよ、相手が離婚したい原因がつきとめなければ、正しい方向で努力をすることができないので、夫婦関係を修復することは望めません。
取り乱さず冷静に理由を確認してみましょう。
自分自身の気持ちを整理しよう
離婚を想定していなかった場合は、相手から離婚をしたいと言われたらまずは大きなショックを受けますよね。
そのショックが一段落したら、自分は今後夫婦関係をどうしていきたいのか、本当に離婚したくないのか、なぜ離婚したくないのかを冷静に考えてみましょう。
相手から離婚を申し出られているという状況は、夫婦関係に何かしら問題があるということですし、離婚をのぞんでいる相手を説得してやり直す気持ちにさせるのはかなりの努力が強いられます。
結婚当初とは状況や環境も変わったいま、なぜ離婚をしたくないのかを自分に問いかけてみましょう。
離婚したくない理由が、配偶者への愛情であれば、相手にこれまでの感謝を伝え相手の気持ちを考えながら、やはりこの家庭が居場所だと思ってもらえるような努力をしましょう。
離婚したくない理由が、子供のためや、経済的理由のため、世間体、などの配偶者への愛情以外の理由のみであれば、離婚して他の人生を考えた方が実は幸せを掴む近道かもしれません。
もちろん離婚は簡単なことではありませんし、子供の気持ちも尊重する必要がありますが、絶対に配偶者が自分自身にとってかけがえのない相手なのかは、見つめ直してみてもよいでしょう。
相手を無理に変えようとしない
人の気持ちを無理やり変えるということは難しいものです。
離婚したいと考えている配偶者の外出を制限したり、おどすような強硬的な手段にでたりしても、気持ちが戻ってくるどころか、さらに心が離れていってしまうこともあります。
相手を無理に変えるのではなく、自分自身をふりかえってら至らない点を改善していくなどの努力をしていく方がよいでしょう。
配偶者があなたをみていて、これまでとなんか違うな、と少しずつ見方が変わることで、もう合わないと考えていた生活スタイル、価値観、金銭感覚などについて、もう一度やり直せると思ってもらえる可能性もあります。
人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられるといいます。
できることから、コツコツとはじめてみましょう。
離婚したくない場合にやってはいけない5つのこと
離婚したくない場合にやるべきことがある一方、やってはいけない5つのこともあります。
配偶者から離婚したいと切り出されると、動揺して感情的になってしまう人も多いと思いますが、離婚したくない場合は、以下のような行為は避けましょう。
上述のように、あなたに有責事由がなければ簡単に離婚は成立しないので、焦る必要はありません。
冷静に相手の言い分を聞いて、現実的な解決策を相談しましょう。
別居する
お互いの気持ちに冷却期間をおく目的で別居するという方法は、うまくいく場合もありますが、一定のリスクもあります。
かつては有責配偶者からの離婚は一切認められませんでしたが、最近の判例では、別居期間が長くなると、婚姻関係は事実上破綻しているという理由から、結局離婚が認められるケースもでてきました。
どうしても離婚したい有責配偶者は、別居期間をなるべく引き延ばして、離婚を認めさせるという手段が使えます。
年単位での別居期間は必要ですが、時間はあっという間に過ぎてしまうものなので、絶対に離婚したくない場合は、できる限り別居は避けましょう。
一人で思い詰める
離婚を切り出されたことを恥ずかしいことと思い、誰にも話せず一人で抱えこんでしまっていないでしょうか。
こうした時に1人で思い悩んでもあまりよくありません。
夫婦関係という一対一の関係をみつめすぎてしまうと、煮詰まってしまい、相手を責めてしまうなど望ましくない行動に出てしまうかもしれません。
友人に信頼できる人がいれば相談してみてもよいですし、精神的にかなり追い詰められている場合は、心理カウンセラーなど専門家のサポートを仰いでもいいでしょう。
両親に相談すると、両家の感情がからまったり、利害関係が発生したりする可能性があり、問題がややこしくなってしまう可能性があるので、慎重にしましょう。
また、気持ちの面の相談と同時に、法的な事項については法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。
法定離婚事由があって、裁判になれば離婚が認められてしまう可能性があるのか、不倫している場合は相手と別れてもらう示談交渉をどうすすめればいいのか、万一離婚になった場合、親権、養育費、財産分与などはどのように決まっていく可能性があるか、など弁護士に相談することで方向性が見えてくることはたくさんあります。
相手の弱みをついての説得
夫婦がうまくいかなくなる理由は、どちらか一方だけが悪いということは少ないです。
そのため、こちらの欠点だけを責められると、つい反論したくなるでしょう。
しかし、離婚したくない場合は、配偶者の弱みや欠点を指摘すると、より一層怒りを買って、離婚の決意が強くなる可能性があります。
たとえ、その欠点をカバーできるという方向性での話だったとしても、やめておいたほうが無難です。
また、いうまでもないことですが、かっとなって手を挙げるなどの暴力は、夫から妻へ、妻から夫へを問わずDVとして、法定離婚事由になってしまうので、絶対にやめましょう。
妻だから、夫だから、親だからという説得
離婚を切り出してきた配偶者はいま、あなたのことを生涯のパートナーとは見られなくなっています。
その状態で、法的に妻であることや、夫であることを主張して責任を果たすように迫っても、相手の心には響かないでしょう。
子供のことを持ち出し、親なのだから責任を持てと主張した場合は、子供への愛情が深い配偶者であれば、離婚を一時的には思いとどまるかもしれません。
しかし、立場を主張するだけでは、離婚したいという気持ちがなくなることはないでしょう。
あくまで、あなた自身が配偶者と今後どんな家庭を再構築していきたいかということを話したほうがよいでしょう。
感情にまかせて相手を非難する
突然「離婚したい」と切り出されると、焦って感情的になってしまうかもしれませんが、感情にまかせて相手のことを非難するのは危険です。
なぜなら「暴言を吐かれた」といって、DVやモラハラ扱いされる可能性があるからです。
DVやモラハラは、離婚が成立する理由にもなるので、避けてください。
一旦自分の感情や気持ちを整理して、相手の話を聞くようにしましょう。
夫婦関係は2人で構築していくものなので、自分を優先させず、まずは相手を立ててください。
調停による解決
当事者の話し合いがうまく進まない場合、家庭裁判所の夫婦関係調停という手続きを利用することになります。
夫婦関係調停では、だいたい月に1度の頻度で、家庭裁判所で話し合いができる期日が設定されます。
調停員として、男女それぞれ2名の調停委員が立ち会い、当事者は基本的には顔を合わせないように交互に別室に呼んで、双方の言い分を個別に聞き、話し合いの落としどころがないかどうか調整したり、提案してくれたりします。
夫婦関係調停は、似た手続きとして、別居中での婚姻費用の取り扱いの婚費調停調整や子供との面会の条件を定める面会交流調停などの手続きもあります。
調停は離婚したくない側であるあなたが夫婦関係を取り持ってほしいという趣旨で調停を起こす場合もありますし、離婚を求める側の配偶者がおこすケースもありますが、どちらの場合も手続きとしてはほぼ同じです。
離婚したくないという考えや希望を、きちんと調停委員に伝えるようにしましょう。
調停は裁判とは違い、あくまで当事者の話し合いの延長ですので、調停員が離婚するかしないかの最終決断をすることはできません。
しかし、調停員は弁護士や地元の有識者など良識的な人が多いですので、ぜひあなたの思いをきちんと伝え、味方になってもらいましょう。
調停でも合意に至らなければ、調停不成立ということになり、裁判をすることになります。
裁判も月に一度くらいの期日ですので、解決までに半年から2年くらいの月日を要することもあります。
離婚裁判までに至るのは、離婚する夫婦の1%程度といわれています。
修復を望む場合は、できれば調停までにいかずに、当事者間の話し合いで解決できるように努力してみたほうがよいでしょう。
第三者をまじえた調停まで至るケースでは、お互いに弁護士をつけていることも多く、関係の回復が難しいほどにこじれてしまっていることも多いです。
調停の結果、婚姻継続という結果となった夫婦はおよそ2割弱とそれほどは多くないですので、なるべく早期に修復していくことがおすすめです。
離婚調停について詳しく知りたい方は、下記を参照してください。
離婚裁判まで進むケースは少ない
離婚は、話し合いがまとまらなければ、下記のように進んでいきます。
- (1) 協議離婚:話し合い
- (2) 離婚調停:調停委員が間に入った話し合い
- (3) 離婚裁判:裁判によって離婚するかどうか決める
離婚裁判まで進むと、裁判の判決によって離婚するかどうか決まります。
もし自分が離婚したくないと思っていても、裁判によって強制的に離婚させれるかもしれません。
ただし離婚で、裁判まで進むケースは全体の0.3%程度で、多くは話し合いで解決する協議離婚で、全体の87%を占めています。
よっぽどのケースでなければ、裁判によって強制的に離婚させれることはないので、安心してください。
離婚で悩んだら弁護士に相談しよう
相手に離婚を切り出されて、困っているなら弁護士への相談がおすすめです。
なぜなら、離婚は法的な知識がないと、不利な交渉をしてしまうからです。
もし相手が離婚の理由となるような証拠を集めて、離婚の話をすれば、こちらが確実に負けます。
離婚に応じなければいけなくなり、さらに慰謝料まで取られるかもしれません。
そのような事態を避けるために、早い段階で弁護士へ相談してみましょう。
初回の相談は無料で対応してくれる弁護士も多いので、最初は費用のことを考えなくても大丈夫です。
離婚問題はひとりで抱えてしまうと大変なので、まずは、無料相談を利用して弁護士に相談してみるのがオススメです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
配偶者に離婚を切り出されたものの離婚したくない方のために、やるべきこと、やってはならないことについて解説しました。
離婚を切り出された時は、感情的にならず、冷静に今後のことを考えてみましょう。