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自分や元配偶者が再婚すると養育費の計算方法はどう変わる?減額請求の流れも解説

この記事でわかること

  • 離婚した両親が再婚したときに養育費が減額されるかどうか
  • 再婚したときの養育費の再計算方法
  • 養育費の計算に使えるシミュレーションツール
  • 養育費の減額請求の流れ
  • 元配偶者が養育費の支払いを打ち切ったときの対処法

つらい離婚を乗り越えて、新たに再婚しようとしたとき、養育費の金額が変更になる可能性があるのをご存じでしょうか。

子どものためのお金なのに、親が再婚したからといって変更になるのも不思議ですが、実務上はそうなっています。

子どもと再婚相手の関係性、元配偶者と再婚相手の関係性によっても金額が変わりますので、こちらの記事でわかりやすく解説していきます。

自分や元配偶者が再婚したとき養育費は減額されてしまう?

日本には、離婚した者たちが子どもを育てるにあたって、名称が変わることになっています。

一つは「親権者」であり、子どもの利益のために、監護・教育を行ったり、子どもの財産を管理したりする権限であり、義務を行使する者です。

もう一つは「監護者」で、子どもの親権者ではないけれども子どもを監護し養育する者のことです。

このうち、監護者になるのは母親の場合が多くなっています。

下記に養育費受給者を自分、養育費支払い者を元配偶者として、自分もしくは元配偶者が再婚するとなったとき養育費はどのようになるのかを説明していきます。

養育費受給者(自分)が再婚した場合

養育費は子どもが親と同等の生活を送り教育を受けるためのものですから、親権者が再婚したからといっても基本的には影響は受けません

再婚する相手が資産家などで親権者と子どもの生活水準がかなり上がるような場合は、養育費支払者が「養育費減額請求調停」などを起こすと養育費の減額が認められる可能性はあります。

再婚相手と子どもが養子縁組しない場合

養育費受給者の再婚相手と子どもが養子縁組しない場合は、子どもは再婚相手および再婚して姓が変わることになる養育費受給者(自分)と同じ姓を名乗ることができません。

一方で、再婚相手との養子縁組をしなければ元配偶者の扶養義務にはなんら変化は与えませんので、養育費の減額の可能性はあっても、受け取れなくなることはありません。

再婚相手と子どもが養子縁組をする場合

子どもと再婚相手が「養子縁組(法的な親子関係になること。

実親との親子関係もなくならない)」をすると、子どもの扶養については養親である再婚相手が扶養義務を負うことになります。

しかし、元配偶者の子どもへの扶養義務が当然になくなるわけではありません。

ただし、養子縁組をした再婚相手は子どもと同居し実際に子どもと生活を共にするわけですから、元配偶者よりも扶養の義務は重くなるわけです。

元配偶者が養育費減額を求めれば、認められることになるでしょう。

しかし、再婚相手の収入がとても少なく子どもとの生活を維持することが難しい場合は、例外として養育費の支払いが続くこともあります。

再婚相手と子どもが特別養子縁組をする場合

一方で、子どもと再婚相手が「特別養子縁組(生みの親との親子関係を解消し、養親の実の子と同じ親子関係を結ぶ制度)」をすると、子どもと元配偶者の親子関係がなくなります。

それに伴って元配偶者の養育費の支払い義務はなくなり、再婚相手が養育費を負担することになります。

養育費支払者(元配偶者)が再婚した場合

元配偶者が再婚した場合でも、養育費の負担義務がなくなるわけではないのですが、もし再婚相手や、再婚相手との間に生まれた子どもいる場合は、元配偶者の経済的な状況が養育費を取り決めた時点から変化することもあります

そのような場合は、もし元配偶者から養育費減額請求の調停などが起こされれば、減額が認められる可能性もあります。

元配偶者の再婚相手が専業主婦で、子どもなしの場合

元配偶者の再婚相手が専業主婦であるときは、元配偶者に再婚相手の扶養義務が生じます。

元配偶者の扶養対象が増えることは養育費の減額事由にあたりますが、元配偶者側から養育費の減額について申し出がない限り、養育費の金額・支払いになんら変更はありません

もし元配偶者が養育費の減額を養育費受給者に対して請求した場合は、その再婚相手の潜在的稼働能力(病気や育児など働けないような事情がない場合、仮に働いたらどのくらいの報酬が得られるかという力)も加味して、養育費を減額するべきかどうかを判断されます。

潜在的稼働能力まで検討されるのは、養育費支払義務に重要な責任があるからです。

元配偶者の再婚相手が子連れでその子どもと養子縁組した場合・しない場合

元配偶者の再婚相手が子連れで、養育費支払い義務者がその子どもと養子縁組をした場合は、元配偶者の扶養義務の対象が養育費を従前支払ってきた実子に、新たに養子縁組をした再婚相手の子どもが加わります。

新たに追加で扶養義務が生じるわけですから、養育費の減額を請求すれば認められる可能性があります。

再婚相手の子どもと養子縁組しなかった場合でも、子どもが小さく再婚相手が働けないなど、潜在的稼働能力が低いと判断されれば、再婚相手に扶養義務が生じますので養育費減額の可能性はあります

その一方で再婚相手の子どもと養子縁組をしなければ扶養義務は生じませんので、その養育費の支払いに変化はありません。

再婚相手との間に新たに子どもをもうけた場合

元配偶者と再婚相手の間に子どもが生まれた場合は、元配偶者の扶養義務の対象が、養育費を従前支払ってきた実子に、新たに生まれた再婚相手の子どもが加わるのですから、養育費の減額を請求すれば認められる可能性があります。

自分や元配偶者が再婚したときの養育費の再計算方法

自分(養育費受給者)や元配偶者(養育費支払義務者)が再婚したときは、養育費支払い義務者に扶養義務者が何人いるかということに着目して計算します

つまり、子どもが養育費支払義務者と同居していると仮定して子どもの生活費を算出し、さらにその生活費を養育費支払義務者と養育費受給者の基礎収入の割合で按分し、養育費支払義務者が支払うべき養育費の額を計算します。

その計算はとても難しいものなので、ここでは割愛しますが、家庭裁判所のホームページで見ることができる養育費算定表はこの考え方を使って計算した目安の金額の表になります。

たとえば、再婚相手(元配偶者に扶養義務がないものとします)との間に子どもが1人2歳、養育費受給者との間に子どもが1人10歳の場合は、(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳を使用して、目安の金額を出すことができます。

養育費のシミュレーションに使えるツール

養育費の計算は諸々の事情を考慮し複雑なものになっていますが、養育費算定表を見れば養育費の金額を決めるときの基準となる金額をすぐに確認することができます。

従来使用されてきた養育費算定表は、2019年末に社会状況を踏まえた新しいものに改定されました。

その新養育費算定表の内容を踏まえて、養育費を簡易に計算できるツールがありますのでご紹介いたします。

養育費の減額請求の流れ

養育費が減額されるような事情があり、養育費支払い義務者から減額が請求される場合は次のような流れになるでしょう。

まずは減額の交渉から始まる

養育費の減額請求は、まずは養育費支払い者から養育費受給者に対し養育費を減額してもらえないかという連絡が入ることから始まります。

養育費減額請求の申し入れにしろ調停にしろ、手続きをするのは支払者側です。

まずは穏便にメールや手紙が届いたり、直接話ができるような関係性であれば電話などの方法で、再婚したり再婚相手との間に子どもが生まれたなどの現在の状況を伝えられ、養育費の減額について申し入れがなされるでしょう。

なお、もし減額の交渉に応じるつもりがないのであれば、その旨養育費受給者がはっきりと断ればその時点では養育費は減額されません

交渉が成立しなかったとき

養育費の減額について養育費受給者が交渉に応じなかった場合、もしくは明確に拒否した場合に、なお減額について支払者側が要求したいという時は、支払者は管轄の家庭裁判所に「養育費減額調停」を申し立てることができます。

先ほども述べたように、養育費受給者側から調停を申し立てる必要はまったくなく、支払者側が申し立てるべき調停なので、受給者はそういう可能性もあるという心づもりをしておくだけでよいです。

養育費減額調停の申立において、支払者側が裁判所に納めている書類は下記の通りです(さいたま家庭裁判所の場合)。

  • ・申立書原本とその申立書のコピー(裁判所では写しとも言います) 各1部
  • ・申立人の連絡先等の届出書(書類の送付先や昼間の連絡先を記します。代理人の弁護士を依頼していれば弁護士の連絡先を書きます) 1通
  • ・もし代理人の弁護士などがいれば委任状 1通
  • ・事情説明書 1通
  • ・進行に関する照会回答書 1通
  • ・未成年者(子どもの記載のある)の戸籍全部事項証明書 1通
  • ・申立人の収入関係の資料(源泉徴収票、確定申告書の写し等直近のものを準備します)
  • ・収入印紙 1200円
  • ・郵便切手(内訳は管轄の裁判所によりますので電話等して必ず確認してください)

申立の書類に不備がなく受理されると、その日から1か月から1か月半後くらいに第1回の調停期日が設定されます。

受給者側には調停期日のお知らせが届きますので、その指示に従ってください。

調停は平日の昼間に設定されますから、仕事や家事、育児を調整して出席することになります。

基本的に調停は本人が出席するべきものですから、弁護士などの代理人に付き添ってもらうことは可能ですが、任せきりにはできないので注意しましょう。

調停では、家庭裁判所の調停委員2名と申立人、相手方それぞれが別々に事情を話し合います。

裁判と違い、調停はあくまでも話し合いの場所なので、主張を準備書面などにする必要はなく、調停委員は口頭で双方の事情を聞いたうえで、合意ができる金額等について話し合いを進めます。

受給者側は自身の収入や再婚相手の収入、生活状況を証明する資料を求められますので、指示に従って提出しましょう。

指示された資料を提出しなかったりすると、自分に不利になることがありますので、注意してください。

調停委員と話すときは、申立人、相手方が一緒の部屋になることはなく別室で待機し、交代でそれぞれ話し合います。

そのため、お互いが顔を合わせることもなく言い合いにもなりにくいのが調停の利点の一つです。

話し合いがまとまると調停調書が作成されますが、まとまらない場合で減額をあきらめる場合は申立人である支払者が調停を取り下げ、減額をあきらめない場合はこれまで調停で話し合ったことをもとに、審判手続きに進んで裁判官による減額の可否の判断を仰ぐことになります。

裁判官は新たに決定した養育費の金額で審判書を作成することになります。

元配偶者が養育費の支払いを打ち切ったときの対処法

元配偶者が養育費受給者への連絡をしないで、勝手に養育費の支払いを止めてしまうことがあります。

そのような時はどのように対処したらよいのでしょうか。

まずは交渉してみましょう

元配偶者が突然に養育費の支払いを止めてしまった場合、養育費受給者としてはどのような対策がとれるでしょうか。

このような場合は一刻も早く支払いの請求をしないとなりません。

養育費の請求は放置しておくと支払期限がきてからの消滅時効にかかることも考えられ、いずれ請求できなくなってしまいます。

消滅時効は、養育費は通常支払期限が来てから5年、調停・審判書があれば10年ですが、そのような長い時間が経ってしまうと子どもが成人してしまいますし、さかのぼって養育費を請求することも難しくなるでしょう。

養育費が支払われなくなったら、まずは万が一の間違いということもありますので、簡単な手紙やメール等(送ったことの記録が残るもの)で支払いが滞っているので支払ってほしい旨請求してみましょう。

それに返答がないもしくは支払わない旨回答がある場合は、すぐに下記に記載する次の段階に進みましょう。

履行勧告をする

養育費の支払いについて調停調書や審判書に記載があれば、家庭裁判所の履行勧告を利用することができます

履行勧告とは、家庭裁判所から書面や電話で養育費支払義務者に支払いを勧告してもらえる制度です。

費用は無料ですし、依頼についても申立書等を提出することなく、家庭裁判所の事件受付もしくは調停・審判の担当部に電話をするだけで依頼することができます。

裁判所から書面や電話が来ると、養育費支払い義務者も次は執行を実行されるだろうと察しがつく場合が多いです。

給与債権に執行(差押え)がなされると、養育費を支払っていないことが職場にもばれてしまいます。

多くの人はそのようなことは体裁が良くないと考え、養育費が支払われるようになることも少なくありませんので試してみる価値はあります。

強制執行をかける

養育費の支払いについて、強制執行認諾文付公正証書で文書に残っていたり、調停調書や審判書が手元にある場合は強制執行の手続きを検討しましょう

養育費支払義務者の勤務先、住所がわかっている場合は給与債権、支払い義務者が所有権のある不動産があればそのものを差し押さえることもできますし、賃貸物件でも敷金債権を差し押さえることができます。

強制執行の手続きはご自分でもできますので、一刻も早く手続きを進めてください。

調停を起こす

強制執行をかけることができない場合は、調停を起こすことが必要です。

養育費の支払いに関する強制執行認諾文付公正証書や、調停調書・審判書がない場合、養育費請求調停を改めて起こし、調停調書、審判書を取得しましょう。

無事に取得できたら、強制執行の手続きを行います。

まとめ

自分や元配偶者が再婚した場合、養育費の問題は離婚時よりもさらに複雑になり、問題点が多くなります。

養育費支払義務者は、ご自身が生活に困窮することがないように適正な養育費の算定をして、養育費受給者に金額を再提案する必要がありますし、養育費受給者は、養育費は子どもの権利ですから子どもが損をすることがないように、養育費について知識の準備をしておく必要があるでしょう。

養育費はいくらが適正であるのか、計算することはとても難しいものです。

上記をご参考にしていただき、迷われたり悩んだりされるときには弁護士にご相談いただくことが大切です。

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