この記事でわかること
- 面会交流とは何か
- 面会交流は子供が何歳まで続けるべきなのか
- 面会交流を子供が嫌がったらどうすれば良いのか
- 10歳後半からの面会交流はどのようにすべきか
離婚にあたっては、慰謝料や財産分与などお金の問題以外にも、子供がいれば、親権はどちらが持つのか、監護者はどちらにするのかなど決定すべきことがたくさんあります。
なかでも、「面会交流」は離婚後の元夫婦にとって悩ましい事項の1つであり、争いのもとにもなりかねないものです。
しかし面会交流は離れて暮らすことになった親にとっても、子にとっても、大切なものであることに間違いありません。
特別な事情がある場合を除いて、同居する親にとっても、親の責任をもう一人の親である別居親に分担してもらえるならば、ひいては、同居する親自身の心の平穏につながるはずです。
この記事では、「面会交流」についてわかりやすく解説していきます。
面会交流の基礎知識
面会交流とは、子供と離れて暮らす側の親が子供と会うことです。
親権がない親であっても、親であることには変わりありませんので、子供に面会交流する権利があります(民法766条1項)。
また子供にとっても、健全な心の成長のためには離れて暮らすことになった親との交流は必要だと考えられています。
つまり面会交流は、親の権利であると同時に、子供が親に会う権利でもあるということです。
面会交流のあった子供は、面会交流のなかった子供に比べて、自己肯定感が高くなることもわかっています(参考文献/青木聡『アメリカにおける面会交流の支援制度』大正大学カウンセリング研究所紀要3535-49(2012年))。
ちなみに、面会交流は、離婚が成立しておらず、たとえば離婚協議中に両親が別居している場合などにも行うことができます。
面会交流はなぜ行うのか
親権を持った親は、離婚した相手である別居親にできるだけ子供を会わせたくないという気持ちを抱くことが少なくありません。
しかし、面会交流を行うことによって関係性を築けていれば、養育費を払い続けてもらうことができたり、いざ親権を持つ親に何かあった場合に子供が離れて暮らす親を頼ることができたりと、子供の金銭面、精神面にもメリットがあります。
面会交流を行う前にルールの取り決めが必要
法律では面会交流の具体的な内容までは定められていません。
面会交流の内容は両親の話し合いによって決定する必要があります。
子供にとって何がいいのかを考えて面会交流についてルールを定めるようにしましょう。
<面会交流のルールとして話し合うべき事項>
- ・面会交流を行う日時
- ・面会交流を行う頻度
- ・1回の面会交流の時間
- ・面会交流を行う場所
- ・子の引き渡し方法
- ・面会する以外の交流方法(電話・メール・手紙など)
- ・元夫婦間の連絡方法
面会交流のルールの取り決めは、離婚時のマイナス感情が高まったままで行うと非常にストレスに感じる場合もあるでしょう。
そのような場合は、弁護士に相談したり、家庭裁判所の調停やADR(Alternative Dispute Resolution=裁判外紛争解決)を利用したりすることも検討してみましょう。
ADRは数千円~数万円程度で、行政書士、弁護士などが、話し合いの手伝いをしてくれます。
話し合いでルールがまとまった場合は、口頭の約束だけでは、合意内容について証拠が残らず、後からトラブルになりやすいため、合意内容を、離婚の際なら離婚協議書に、または公正証書など、書面にしておくことをおすすめしたいと思います。
この他にも、面会交流を進めていく上でいろいろな問題が出てくると思います。
たとえば、過剰なプレゼントや同居する親の悪口を言う場合、子供が面会に行きたくないと言い出す場合などです。
子供にとって良くない影響がありそうな事情が起きたときはもちろん、面会を最適な状況にするためにその都度、ルールの見直しをしていく必要があります。
面会交流は何歳まで認められる?
面会交流は一般的に「月に1回程度、日中数時間」という頻度が一般的です。
面会交流を積み重ねて、慣れてきたら、月2回にしたり、1回は日中、1回は泊り、としたりしても良いかもしれません。
そのようにして、子供の成長に合わせてルールに変化を加えながら、理論的に考えるならば、原則的には子供が成人(20歳※)になるまで続けていくことになります。
※ただし、この成人という定義が2022年4月1日施行の「民法の一部を改正する法律」により18歳に引き下げられます。
2022年4月1日の時点で、18歳以上20歳未満の方(2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの方)は、その日に成年に達することになります。
参考:法務省HP:民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について
実務上は、面会交流を何歳まで行うか、ということは定めないことが多いと思います。
子供は成人に近づくにつれて、自分の意志で面会をするかどうかを判断するようになるからです。
逆に別居する親は、子供が成長してきたからといって、面会交流のルールに縛られず自由に会いに行けるようになるというわけではありません。
別居する親も面会交流のルールを取り決めた当事者でありますから、積極的にそのルールを破るわけにはいきません。
ただ、子供が別居する親に会いたい、と言っているのに面会交流のルールがあるからと、同居する親などがそれを妨げるものでもありません。
子供が面会を拒否するケース
面会交流は、上記で述べた通り、基本的に子供の権利でもあるので、特別な事情がない限り親は拒否することはできません。
特別な事情とは、別居する親が子供に暴力をふるったり、子供に不相応な場所に連れて行ったりするなど、子供の福祉にかなわない行動がある場合です。
このような特別な事情による正当な理由がないまま同居の親が面会交流を拒否していると、別居する親に面会交流の調停や審判を申し立てられて、裁判所から面会交流の「間接強制」を命じられることもあります。
※「間接強制」とは……裁判所が一定頻度の面接交渉を認めるという審判を出したのにも関わらず、それに同居の親が従わない場合には、従わなかった回数1回あたり3~10万円の支払いを命じ、お金で面会交流を強制すること
しかし、子供が別居する親に会いたくないと言った場合はどうでしょうか。
一般的に、小さい子供は一緒に住んでいる親の影響を受けるので、子供が会いたいと思っていたとしても、親の気持ちを汲んで言えない場合があります。
裁判所はそのように判断することも多いので、小さい子供が別居する親と会いたくないと言っていることを理由としての面会交流の拒否を認めないこともあります。
小さい子供の面会交流の場合、同居する親から離れることを不安に思って面会交流を拒否する場合もあります。
しかし同居する親が面会交流に立ち会えないという時、FPIC(家庭問題情報センター)という面会交流の支援団体の支援員が、有料ではありますが、小さい子供に配慮した付き添いを行ってくれます。
このような団体はいくつかあるので、合いそうなところを探してみると良いでしょう。
小学生以上になってくると、両親の離婚により家の中の状況が変わったり、引っ越しや転校などでストレスがかかってきたりする状況で、別居する親とのコミュニケーションがもともと不足しているような場合に、面会交流に前向きではなくなることがあります。
そのような場合は子供の気持ちを尊重してあげましょう。
なぜ行きたくないと思ったのかをしっかりと聞いてあげることが大切です。
もし子どもが理由を言いたがらない時には問い詰めたりしないで、しばらく見守ることも必要です。
その際、同居する親は別居する親に対して、「少し混乱しているみたいだから●●くらい様子を見たい」など、面会交流までの目安の期間を伝えておくと良いでしょう。
もし別居する親が納得してくれない時には、家庭裁判所の調停を利用して話し合いをするという方法も検討してみてください。
10歳後半からは子供との関係性によって決めていく
子供が10歳後半、中学生くらいになると、親権者の意思によってのみで面会交流をすることはできなくなってくるので、子供が「会いたくない」と言えば、会うことを親が強制するのは難しくなります。
子供自身が部活や友達関係で忙しくなり、会う回数は減っていくかもしれません。
ですので、10歳後半からの面会交流は、子供の意思を尊重しつつ行っていくことになります。
直接に面会することができなくても、入学式、卒業式、運動会など行事に参加したり、部活動や習い事等の様子を見学したりするなどで面会交流していくことを検討してもよいでしょう。
子供と手紙のやりとりをしたり、誕生日等にプレゼントを贈ったり、最近では、携帯電話を子供が持っていることも多いので、LINEやメールで交流するという方法も考えられます。
まとめ
以上のように、面会交流は、親だけでなく子の権利でもあることを念頭において、両親がよく話し合い、時には子供の意見を聞いて、面会交流の可否やその方法を決定していく必要があります。
同居する親も別居する親も、そのたびに話し合いや手続きに時間をとられることになりますが、子供の成長のためですから、頑張りましょう。
子供を健やかに育てていくためには、特に、同居する親が楽しく過ごしていることが必要です。
別居する親との話し合いがストレスであったり、多忙であったりして難しい場合には、無理にご自身でなさろうとはせずに、弁護士などの専門家に任せた方が同居する親も心が楽になる場合もあります。
もし当事者間の話し合いによる解決が難しい場合には、適宜、弁護士やADR、家庭裁判所の調停などを用いて解決を検討しましょう。
調停がまとまらなかった場合には、審判に移行し、裁判官に判断してもらうことになります。
そのようにして、裁判官が審判を出しても、それがずっと続くというわけではありません。
子供は成長し、だんだんと親とは違う意見を持つようになるものです。
たとえ審判が出ていたとしても、それが子供の意見と齟齬があるようになってくれば、お互いの生活状況の変化や、子供の成長に合わせて見直すことが必要です。