この記事でわかること
- 性格の不一致で離婚できるケースがわかる
- 性格の不一致による慰謝料の相場がわかる
- 性格の不一致による離婚をする前に確認すべきことがわかる
- 性格の不一致による離婚をする手順がわかる
離婚原因としてよく聞かれる「性格の不一致」とは、いったいどのようなケースがあるのでしょうか。
実は、どちらか一方だけが離婚原因を作ったわけではない場合、大半が性格の不一致による離婚といっても過言ではありません。
ここでは、性格の不一致で離婚できるケースや性格の不一致による離婚の慰謝料、性格の不一致による離婚の手順などについて紹介します。
性格の不一致で離婚できるケース
離婚の原因として一番多いのが、性格の不一致です。
性格の不一致というのはやや抽象的な表現で、実際には様々な理由が含まれていると考えられます。
たとえば以下のようなものがあります。
- ・相手の性格にどうしても受け入れられないところがある
- ・金銭感覚が合わない
- ・子育ての方針が合わない
これらのような性格の不一致を理由として常に離婚ができるかというと、そうではありません。
では、どのような場合には離婚が可能でしょうか。
お互いが合意すれば理由を問わず離婚は可能
離婚をする方法には、大きく分けて、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがあります。
このうち協議離婚と調停離婚は、当事者同士の合意が成立することで離婚をすることができる方法です。
調停離婚は家庭裁判所で行われますが、合意によって離婚するという点は協議離婚と同様です。
当事者同士の合意ができるのであれば、離婚の原因は問われません。
どのような些細な理由であっても離婚することができます。
たとえば、お互いの食の好みが合わない、笑いのツボが合わないといったような理由でも構いません。
これらも、広義の性格の不一致による離婚に含まれるでしょう。
裁判離婚の場合には法定離婚事由が必要
性格の不一致による離婚を望むときに、調停をしても相手が離婚に合意してくれない場合には、最終的に裁判離婚を目指すことになります。
そして、裁判離婚が認められるためには、法律で定められた離婚原因に該当する必要があります。
離婚が認められる法定離婚事由は、以下の5つです。
配偶者の不貞行為
配偶者が不貞行為を行った場合には、離婚請求ができます。
不貞行為とは、配偶者以外の異性との性行為を行ったことが必要で、性行為はなく単に親密な関係だっただけでは不貞行為とはなりません。
ただし、実際に性行為をしたことまでを証明することは困難なので、ラブホテルに二人で滞在していたことなどを証明することができれば、実務上、不貞行為があったことが推認される扱いとなっています。
配偶者による悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、夫婦の義務である協力、扶助、同居を守らないことです。
具体的には、生活費を払わなかったり、一方的に別居をするといったケースがあります。
配偶者の生死が3年以上不明
配偶者が行方不明となり、3年以上生死が明らかでない場合には離婚請求ができます。
ただし、生死不明であることを立証するためには、捜索願を出していることなどが必要で、単に連絡がつかない程度では認められません。
配偶者が強度の精神病にかかり回復不能
配偶者が強度の精神病にかかり、回復する見込みがない場合には離婚請求ができます。
ただし、離婚した場合に配偶者が生活できなくなるようなケースもあるため、夫婦の状況を総合的に考慮したうえで離婚が認められるか判断されます。
その他婚姻を継続しがたい重大な事由
上記4つの離婚事由が具体的なのに対して、最後の離婚事由は幅広い内容が想定されます。
たとえば、DVやモラハラ、ギャンブルによる浪費、宗教活動にのめり込む、異常な性行為の強要などといったケースが考えられます。
性格の不一致による離婚を目指す場合には、この「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると認められる必要があります。
性格の不一致で裁判離婚できるケース
性格の不一致が「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められ、裁判で離婚することができるのはどのようなケースでしょうか。
裁判所は離婚裁判において、基本的に「破たん主義」を採用しています。
破たん主義とは、実質的に夫婦関係が破たんしていて修復不可能な場合には、離婚を認めるという考え方です。
そのため、実質的に夫婦関係が破たんしていて、修復する可能性がないことを立証することができれば、離婚が認められる可能性が高くなります。
そのためには、破たんが認められるための様々な事実を積み重ねて立証していくことが大切です。
長期間の別居
夫婦関係の破たんを立証するときに有力なので、長期間別居しているという事実です。
長期間というのが具体的にどれくらいかというと、結婚年数とのバランスによっても異なりますが、5年以上別居している場合には離婚が認められる可能性が高くなります。
同じ家に住みながら全く会話をしないような「家庭内別居」というケースもありますが、そのような場合は立証が難しいのが実情です。
一時的な不貞行為
不貞行為を原因とした離婚請求をする場合には、ある程度の期間、回数不貞行為が継続していなければ認められない可能性が高い傾向があります。
ただし、婚姻を継続しがたい重大な事由を主張する場合には、一時的な不貞行為も夫婦関係破たんを裏付ける材料の一つとなりえます。
軽度のDVやモラハラ
DVやモラハラを原因とした離婚請求をするには、ある程度深刻なレベルの被害に遭っていることを立証しなければ離婚が認められない可能性があります。
ただし、軽度のDVやモラハラという場合でも、婚姻を継続しがたい重大な事由を主張する場合の原因の一部としては認められる可能性があります。
性格の不一致による離婚の慰謝料相場
性格の不一致により離婚する場合に、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。
慰謝料というのは、離婚する場合に必ず請求できるものではありません。
相手が離婚の原因となる不法行為を行って、それにより損害を受けた場合の償いとして支払うことを請求するのが慰謝料です。
離婚の際に慰謝料が請求できるのは、不貞行為や悪意の遺棄、DV・モラハラといった不法行為があった場合です。
慰謝料を請求するためには、不法行為によって損害を受けたことを証明する必要があります。
性格の不一致による離婚の場合、どちらか一方が離婚原因を作ったわけではないため、基本的に慰謝料を請求することはできません。
性格の不一致で慰謝料が発生するケース
性格の不一致による離婚の場合に絶対に慰謝料が発生しないかというと、そういうわけではありません。
性格の不一致による離婚といっても、実際には様々なケースが含まれており、その内容によっては不貞行為やDVと同様に不法行為として扱われる可能性もあります。
たとえば、夫婦げんかが度を越えて物を壊されたり、暴言を吐かれ続けたりすると、DVに近い状態となり、慰謝料請求が認められる可能性もあります。
ただし、性格の不一致による離婚の場合、慰謝料が発生するとしても50万円以内となるケースがほとんどでしょう。
また、性格の不一致による離婚を夫婦の一方が望む場合に、相手が離婚に合意しない時、慰謝料を支払うことを条件として離婚するケースもあります。
この場合は、慰謝料ではなく解決金などということもあり、どうしても離婚したい場合には高額の解決金を支払うことを条件として離婚に合意してもらうというケースもあります。
慰謝料が欲しいなら証拠を集めておく
慰謝料は、精神的な苦痛に対して支払われる賠償金です。
相手の離婚の責任がある場合は「自分が精神的な苦痛を感じた」として慰謝料請求ができます。
性格の不一致で離婚をすると、相手の明確な責任がないため慰謝料請求が難しくなります。
どうしても慰謝料がほしいなら、相手の責任を証明できるような証拠を集めておきましょう。
例えば暴言の証拠を音声で残しておければ、DVとして慰謝料請求できるかもしれません。
ただし証拠はやみくもに集めても意味がなく、ポイントを抑えておかなければ意味がないです。
事前に弁護士などに相談して、どうすれば慰謝料を取れるのか確認しておくのがおすすめです。
性格の不一致で離婚する前に確認しておくべきこと
性格の不一致を理由に離婚しようと思ったとき、まずは一旦冷静になって確認しておくべきことがあります。
確認すべきポイントについて紹介します。
本当に離婚しても後悔しないか
性格の不一致による離婚の場合、相手に決定的な落ち度があるわけではないことがほとんどです。
結婚して共に生活をすれば、どんな相手であっても合わない面や不満を感じることがあるのが普通です。
もうこんな人とはやっていけない、と感じることは誰にでも起こりうることですが、それで実際に離婚をしてしまい後悔する場合もあります。
本当に離婚しなければならないほどの状況なのか、今一度冷静に考え直してみることも大切です。
相手が合意しない場合、長期戦になる覚悟があるか
性格の不一致による離婚は、相手が合意しない場合には長期戦になる覚悟が必要です。
性格の不一致は、基本的に法定離婚事由には該当しないので、裁判まで進めても離婚が認められる可能性は低いのが実情です。
そのため、長期間別居を続けるなどの事実を積み重ねていかなければ、離婚が成立しない可能性があります。
別居をして様子を見ることはできないか
性格の不一致には様々なケースがありますが、まだ相手との関係を修復できる可能性が少しでも残っているのであれば、すぐに離婚するのが得策とは限りません。
まずは別居をしてみて、一旦距離を置くことでお互いの関係性を見つめなおすという選択肢もあります。
別居生活をしてみた結果、それでも離婚することがベストだと思ったら、その時に改めて離婚を考えてもよいのではないでしょうか。
子供への影響を考える
離婚をすると、子供に大きな影響を与えます。
両親の離婚により、子供の心は深く傷ついてしまうケースがあります。
また、父と母のどちらかと離れて暮らすこととなり、生活環境も大きく変わります。
経済的な面でも離婚後の方が苦しくなるケースが多く、子供の生活や進学にも影響を与える可能性があります。
そのような子供への影響をよく考えたうえで、本当に離婚した方がよいのかを冷静に判断しましょう。
ただし、毎日両親がけんかを繰り返していたり、一緒に暮らしていても一切会話がない状況などの場合、離婚をする方が子供の精神面への悪影響がないという可能性もあります。
自分が歩み寄る余地はないか
自分が相手に対して不満を持っているのと同じように、相手も自分に対して不満を持っている場合があります。
人間関係は鏡のようなもので、自分が相手に対する思いやりを持てば、相手も同じように応えてくれることもあります。
相手がすべて悪いと責めるだけではなく、自分自身が相手に歩み寄ることはできないのか考えてみることも大切です。
離婚すると財産分与をしなければならない
夫婦が離婚をすると、財産分与が発生します。
財産分与とは、婚姻中に築いた財産を均等に分けることです。
具体的には、下記のような財産が対象になります。
- ・預貯金
- ・不動産
- ・家具/家財
- ・車
- ・退職金 など
片方の収入・稼ぎであったとしても、夫婦の共有財産として扱います。
そのため「会社員の夫・専業主婦」の組み合わせであったとしても、離婚時にはきっちり半分で財産分与を行います。
ただし例外として、結婚前から持っている資産・相続で引き継いだ資産に関しては、財産分与の対象になりません。
離婚時には、お互いにどれぐらいの資産を持っているのか?を把握しておいた方がいいでしょう。
離婚後の生活に支障はないか
離婚すると、生活が大きく変わります。
特に住居・収入に関しては、変わりやすいので注意しましょう。
もし自分が働いておらず、家で家事だけをしているなら、離婚後の生活費を確保しなければいけません。
また賃貸物件で同居をしている場合は、離婚で物件を手放す可能性もあります。
次に住む場所を確保する必要もあるため、離婚前からの準備をおすすめします。
離婚を検討するなら、離婚後の生活が困らないように収入・住居を考えておきましょう。
性格の不一致で離婚するときの手続きの流れ
性格の不一致による離婚をするためには、どのように手続きを進めていけばよいでしょうか。
大まかな流れを説明します。
まずは協議による離婚を目指す
まずは当事者同士で話し合いを行い、協議離婚を目指しましょう。
性格の不一致による離婚の場合、相手が離婚することに合意してくれるかが重要です。
離婚条件についても話し合う必要があり、財産分与や子供がいる場合は親権、養育費などについても決める必要があります。
協議が成立した場合、離婚協議書を作成しましょう。
協議が成立しなければ、離婚調停を申し立てる
離婚の合意ができなかったり、離婚条件で折り合いがつかない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
調停では、調停委員2名と裁判官を介して当事者双方の意見の調整を行っていきます。
調停委員は様々な助言をしますが、最終的に結論を出すのは当事者です。
最終的に合意ができれば離婚が成立しますが、合意できなければ調停不成立となり、調停は終了します。
調停不成立の場合、裁判離婚を目指す
調停不成立となった場合には、離婚訴訟を提起して裁判による離婚を目指します。
訴訟による離婚が認められるためには、法律で定められた離婚事由があることが必要です。
性格の不一致による離婚の場合、基本的には法律で定められた離婚事由ではないので、長期間の別居などにより実質的に夫婦関係が破たんしていることを証明できなければ、離婚が認められません。
どうしても離婚したいものの、夫婦関係の破たんが認められるような状況ではない場合には、相手が納得するような条件を提示するなどして、協議で離婚することを目指すのが現実的です。
離婚で悩んだら弁護士相談がおすすめ
離婚について悩んだら、ひとりで考えずに弁護士への相談がおすすめです。
なぜなら離婚は法的な手続きになるため、専門家のアドバイスがあった方がいいからです。
むしろ知識のない状態で判断すると、損をするかもしれません。
多くの弁護士事務所では、初回の相談を無料で受け付けているため、気軽に相談してみましょう。
電話などで簡単に相談もできるので、とりあえず利用してみるのがおすすめです。
まとめ
性格の不一致による離婚をする場合、基本的には協議による離婚を目指すことになります。
どうしても離婚したい場合には、相手の納得するような条件を提示することなどにより、相手の合意を得る方法を考える必要があります。
自分のケースで離婚できるか不安な場合には、弁護士への相談も検討しましょう。