この記事でわかること
- 不倫の慰謝料の相場はどのようにして決まるのかについて理解できる
- 慰謝料が少なくなるのはどのようなケースが該当するかがわかる
- 慰謝料が相場より安い場合の対処法がわかる
- 不倫を「示談金」で解決する方法がわかる
テレビドラマや映画の題材にもされることも多い「不倫」ですが、不倫をされた方(被害者)の妻(夫)にとってはたまったものではありません。
「一時的な感情に流されてしまった」
「本当に愛しているのは君だけだよ」
などといわれても、許せないものは許せません。
もし、ご自分がその立場に立たされたらどうしますか?
「不倫相手に慰謝料をたっぷり請求してやります!」
「もう信じられないから、離婚してやる!」
と思われる方は多いかと思います。
果たして、不倫相手に希望通りの慰謝料が請求できるのでしょうか?
悪いのは不倫相手だけなのでしょうか?
受け取ることのできる慰謝料の相場を知った上で、離婚をするかどうかを検討された方が賢明といえます。
不倫の慰謝料の相場はどう決まる?
浮気・不倫をされた側としては、慰謝料をどのくらい受け取れるのかを知ってから「離婚」を検討したいと思われる方も多いのではないでしょうか?
心に大きなダメージを受けたのですから適正な金額でしっかりと償ってもらうべきです。
では、いったい慰謝料の相場はどのように決められるのでしょうか。
個々のケースにより一概にはいえませんが、一般的には以下のようなポイントが考慮されます。
- ・不貞行為の回数
- ・夫婦の婚姻期間の長さ
- ・浮気・不倫期間の長さ
- ・夫婦の間に幼い子どもがいるか否か
- ・不倫がバレた後に不倫をやめたか否か
- ・反省を(姿勢)しているか否か
- ・慰謝料請求される側(加害者)の年齢や社会的立場、資産状況
- など
一般的な相場はいくらなのか?!
結論としては50~300万円 の間がおよその相場といえるでしょう。
ですが、前述のとおり支払う側(加害者)の資産状況などにより左右することがあります。
いったいなぜなのでしょうか?
それは、慰謝料が決められるのは個々の事情(要因)により総合的に判断されるからです。
その要因が積み重なっていけば行くほど高額になる可能性が高まります。
※ただし、近時の裁判例では支払う側の年齢や社会的立場、資産状況を慰謝料金額の算定に含めない事例も増えてきています。
詳しく知りたい方は、一度弁護士に相談されてみることをおすすめします。
「不貞行為」の定義を確認しておきましょう
浮気・不倫の話題になると必ず耳にするであろう「不貞行為」について正しく理解しておきましょう。
そもそもこの「不貞行為」に該当しなければ話が前に進みませんし、当然のことながら慰謝料請求はできません。
不貞行為・・・夫婦または婚約、内縁関係にある人が、パートナー以外の人と肉体関係(いわゆる性交渉や性交渉類似のものも含む)を持つこと。
1回限りの肉体関係であっても不貞行為に当たる。
法律上では、浮気・不倫のことを「不貞行為」といいます。
「信じられない!それってもう浮気じゃん!!」
と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
残念ながらというのも少しおかしな話かもしれませんが、キスやハグをしただけでは不貞行為には該当しません。
故に、慰謝料を請求することができるのは「不貞行為」のみとなります。
浮気が原因で離婚した場合の離婚慰謝料の相場
では、浮気・不倫(=不貞行為)の定義をしっかりと理解したところで「離婚慰謝料」の相場をみていきましょう。
配偶者の浮気・不倫(不貞行為)が原因で離婚に至ったケースです。
有責配偶者(浮気、不倫をした配偶者)に対して請求していきます。
以下で、ケース別の慰謝料相場をみてみましょう。
離婚・別居をするケース | およそ200〜300万円 |
---|---|
離婚・別居をしないケース | およそ50〜100万円 |
※離婚慰謝料の中に不倫慰謝料(不貞行為に対する慰謝料)が含まれていることが多い。
かなりの差が生じていることがわかります。
いったいなぜなのでしょうか?
これは、「今まで良好だった夫婦関係が、浮気・不倫(不貞行為)が原因で破綻したかどうか」 という視点で判断されるからです。
夫(妻)の浮気・不倫が発覚すると、関係を修復していくことはなかなか難しいものです。
およその慰謝料の額を知っておくことで、今後どうしていくかの判断要素とすることができるかもしれません。
浮気・不倫相手にも請求できる不倫慰謝料の相場
結論からいえば50〜300万円 が相場といえるでしょう。
(前述のとおり個々の事情により異なりますので一概にはいえません。)
「不貞行為」を行うと、浮気・不倫をした夫(妻)と浮気・不倫相手との共同不法行為が成立します。
例:被害者(妻)、加害者(夫)+ 浮気・不倫相手
つまり、上記の例でいえば浮気・不倫をした者(夫+相手)は被害者(妻)に対して法的な責任を負うこととなります。
一方で、被害者である妻は相手方2名(夫+相手)に対して慰謝料を請求することができる権利を持つことになるのです。
慰謝料支払い義務は加害者である「浮気・不倫をした2人」にあるので、被害者はどちらに対しても請求することができます。
また、どちらか一方に対しても請求することも可能です。
(※いわゆる慰謝料の二重取りはできませんので注意が必要です。)
不倫相手だけに請求することが一般的?!
慰謝料を加害者側2名に請求できることはおわかりいただけたかと思います。
しかしながら、現実的には夫婦間で慰謝料を請求することはあまりありません。
なぜなら、夫婦は経済的な面から一体となり生活しているケースが多いからです。
つまり、夫婦間で慰謝料の請求をしても結局のところ「自分の財布からの支出」と感じることが多いことが理由として挙げられるためです。
よって、一般的に多くのケースでは、被害者である妻が離婚を回避し自身の気持ちに区切りをつけていくことが多いです。
不倫相手から求償されることがある!「求償」とは?!
浮気・不倫相手だけに慰謝料を請求するケースでは、共同不法行為者である有責配偶者(夫または妻)に対して「求償」をされることがあります。
これは、浮気・不倫をした加害者同士で公平な責任の分担を実現するための方法です。
必ず行われるとはいえません。
実際に行われるかどうかは、相手次第といえます。
しかしながら、法的には「共同不法行為者」であるもう一方の加害者に対して「慰謝料の支払いを分担しろ!」と求償する権利が発生しています。
「2人でやったことだから、責任を分担するべき!」
と主張されてしまいます。
例えば、妻(被害者)・夫(加害者)のケースでみていきましょう。
結局、夫婦の財布から慰謝料100万円を支払うことになり、200万円を請求したけれど半分しか受け取れない結果となります。
後になって求償されないためにどうすればよい?!
慰謝料金額について、以下のように交渉を行うことがあります。
当事者間で合意に至れば、慰謝料請求額は減額されます。
不倫の状況で慰謝料が少なくなるケース
不倫の状況により慰謝料が左右されることはおわかりいただけたかと思います。
ご自身のケースに当てはまるものがあるでしょうか?
いま一度おさらいをしておきましょう。
以下をご参考になさってください。
不倫(不貞行為)の慰謝料を左右するポイント
減額 | 増額 | |
不貞行為の回数 | 少ない | 多い |
夫婦の婚姻期間の長さ | 短い | 長い |
浮気・不倫期間の長さ | 短い | 長い |
夫婦の間に幼い子どもがいるか否か | いる | いない |
不倫がバレた後に不倫をやめたか否か | やめた | やめない |
反省を(姿勢)しているか否か | している | していない |
慰謝料請求される側(加害者)の年齢や社会的立場、資産状況 | 低い・少ない | 高い・多い |
慰謝料が相場より安い場合にはどうするか
被害者側から妥当だと思われる慰謝料額を請求したけれど、減額を求められることがあります。
このようなケースでは、相手方は弁護士を立てていることが多いので、そのようなケースでは弁護士に相談されることをおすすめします。
上記の表のとおり、慰謝料が高額になる要素があれば、交渉により上乗せできることが期待できます。
- ・できるだけ多くの有力な証拠を集める
- ・不倫問題に強い弁護士に依頼する
証拠集めに漏れがないかどうかを再度見直して、慰謝料額が増額できないかを検討していきます。
これには法的なテクニックや交渉が重要ですので、自分1人で行うことは相当ハードルが高くなります。
弁護士に依頼する前に気をつけることとは?!
一方で、弁護士に依頼するときに躊躇してしまう原因となるのは「高額な弁護士費用」です。
「着手金」や「成功報酬」など事務所により異なります。
また、解決に向けてさまざまなプランがあります。
「調停プラン」「訴訟プラン」など事務所により異なり、数十万円に及びます。
自分のケースが最終的に相手方から慰謝料を回収できる見込みが高ければ弁護士費用をかける意味があるといえますが、見込みが低いケースでは慎重に検討する必要があります。
また、離婚する際には、「財産分与」や「子どもの養育費」についてなどたくさんのことを決めていかなければなりません。
焦って離婚を決断することは控えて、一度冷静になって考えてみてください。
「初回無料相談」などを実施している事務所も多いので、離婚に伴うリスクなども含めて相談されることも検討されてみてはいかがでしょうか。
不倫を「示談金」で解決するという方法と相場
示談金は当事者の合意で成立するものなので、社会的に相当な範囲内の金額で自由に決めることができます。
支払う側に支払い能力があれば、高額な示談金を得ることが可能となります。
一方で、年収300万円ほどの相手に対して法外な金額、例えば1億円の慰謝料を請求することはやめましょう。
「公序良俗」に反するとして裁判では認められないこともあります。
一般的な相場は、離婚や別居をしないで復縁するケースでは、およそ数10万円〜100万円 です。
示談金の効果を発揮させるためにするべきこととは?!
敢えて被害者である側からお金を払うことになるわけですから、最大限の効果を発揮させたいものです。
- ・禁止事項を盛り込み書面化する(不倫関係を精算させる)
- ・違反行為のペナルティを明確にして書面化する
「××(不倫相手)は△△(不倫をした有責配偶者)との関係を連絡先(携帯電話、メールアドレス、SNSアカウントなどの一切を含む)をすべて削除したうえで完全に解消し、如何なる理由があっても連絡(電話、SNS、電子メール、第三者を介した連絡などの一切を含む)を取る、不貞行為をするなど本示談書に記載された事項に違反した場合は、●月●日に受領した示談金●●円を〇〇(不倫された配偶者)に返還することとし、加えて●●円を支払うことを約束する」
などと書面化しておくことをおすすめします。
示談金で解決するためには、事前の準備や妥当性が功を奏します。
不備により後々取り返しのつかない事態とならないようにするためにも、法律のプロなどに依頼することが賢明ともいえます。
まとめ
離婚は、紙切れ一枚で済む話ですが、現実問題として離婚には大変な労力を要するものです。
特に、経済面での不安が大きく、お子さんがいる家庭であれば、なおさら感情にまかせて離婚するべきではありません。
離婚に伴うリスクや、適正な慰謝料の相場を理解した上で手続きを進めていくことが大切です。
自分1人での解決が難しいときには、あまり時間をかけずに思い切って専門家の扉を叩いてみてください。
きっと、被害者であるご自身に寄り添い解決へと導いてくれることでしょう。