監修弁護士:渡邊 良隆 先生(法律事務所リヴェルタ再生)
■所属弁護士会:第二東京弁護士会
離婚の問題は「とにかく早く終わらせたい!」という気持ちから取り決めをしないで離婚届を出してしまいたくなる方もいらっしゃるかと思います。
しかし、取り決めをしないで離婚してしまうと、後になって「早まったかなあ」と後悔することはすくなくありません。
現在離婚に悩んでいる方、お困りの方、誰にも相談できないと感じている方が問題を解決し前に進めるよう尽力いたしますので、まずはご相談ください。
この記事でわかること
- 協議離婚で弁護士に依頼する理由がわかる
- 協議離婚で弁護士なしのデメリットが理解できる
- 協議離婚で弁護士に依頼するときの費用相場がわかる
協議離婚する場合、基本的には夫婦がふたりで離婚条件等を話し合い、双方の合意があれば成立します。
必ず夫婦でふたりの話し合いで行わなければいけないという決まりはなく、信頼できる親族や友人に協力してもらって話し合いを進める場合もあります。
また弁護士に依頼して、自分の代理人として相手方と離婚条件等の交渉してもらうこともできます。
今回は、協議離婚を目指したとき弁護士に依頼するメリットや、夫婦だけで離婚協議を行うデメリットや注意点について解説したいと思います。
協議離婚が成立する条件とは?
協議離婚とは夫婦の話し合いによって離婚を成立させることをいいます。
協議離婚のメリットとして、夫婦双方が合意すればすぐに離婚することができる点です。
夫婦の話し合いによって決める具体的な離婚条件は、夫婦の状況によって異なりますが、主なものとして財産分与・親権・養育費・慰謝料等が考えられます。
離婚協議は、あくまで夫婦二人の話し合いなので、「裁判所に行って手続きをしなければならない」や「離婚協議書を公正証書にしなければならない」ということはありません。
夫婦が話し合い、お互い納得したうえで離婚届を役所に提出すれば、離婚が成立します。
夫婦が冷静に話し合い、きちんと離婚条件を取り決めることができれば、弁護士に依頼しなくても円満に離婚することができます。
協議離婚したいときに弁護士へ依頼する理由
協議離婚する場合、「必ず弁護士に相談しなければならない」というわけではありません。
しかし、養育費のような離婚後継続して相手に金銭の支払いをもとめたり、当事者同士の話し合いがうまくいかない場合には、弁護士に依頼した方が良いでしょう。
弁護士に依頼をすると具体的にどんなことをしてくれるのでしょうか。
協議離婚したいときに弁護士へ依頼する理由として次のようなものが考えられます。
- ・依頼者が望む条件で離婚が成立するよう尽力してくれる
- ・依頼者の代理人となって相手方と交渉を行ってくれる
- ・離婚協議書等の書面の作成等をしてくれる
それぞれ解説したいと思います。
依頼者が望む条件で離婚が成立するよう尽力してくれる
協議離婚を目指したときに、弁護士へ依頼する理由として、依頼者が望む条件で離婚が成立するよう尽力してくれる点です。
弁護士は、依頼者の利益を最大限に実現できるよう弁護活動を行ってくれます。
離婚を切り出した当事者が具体的な離婚条件を考えているとは限りません。
「一刻も早く相手と離れたい」という気持ちが強く、夫婦で離婚条件の話し合いをせずに最低限子どもの親権だけを決めて離婚届を出してしまうケースも少なからずあります。
しかし、具体的な離婚条件を取り決めずに離婚すると、後になって「養育費を決めておけばよかった」、「財産分与をすればよかった」、「慰謝料を請求すればよかった」と後悔することがあります。
養育費や財産分与、慰謝料等は離婚後でも請求することは可能ですが、相手が話し合いに応じてくれず、諦めてしまう人もいます。
そのため、可能であれば離婚前に夫婦ふたりの離婚条件をすり合わせ、お互いが納得した内容を書面に残した方が良いのです。
弁護士に依頼した場合、話を聞いて依頼者がどんな状況にあるのか把握します。
そのうえで、依頼者の本当に望む離婚条件とはどういうものなのかを引き出し、それを実現するために行動してくれます。
また、場合によって希望する条件が、依頼者にとって不利益になることもあります。
そのようなときには、依頼者に対して不利益になる理由をしっかり説明し、代替案等をアドバイスしてくれます。
依頼者の代理人となって相手方と交渉を行ってくれる
弁護士に協議離婚の依頼をした場合、依頼者の代理人となって相手方と離婚交渉を行ってくれたり、話し合いに同席してくれたりして依頼者の主張を代弁してくれます。
離婚の話し合いを当事者のみで行うと、離婚に至った経緯や夫婦の関係性、意見の食い違い等によって感情的になり話し合いが進まない可能性があります。
例えば、離婚を切り出すきっかけが相手方の不貞行為の場合、「裏切られた」という気持ちでいっぱいになり感情的になってしまう可能性があります。
このようなとき離婚協議の場に弁護士が代理すると、依頼者の有利な条件を提示し相手方を説得してくれるので、感情的な言い合いのリスクを低くすることができます。
また、離婚の原因が相手方の暴言や暴力等の場合、当事者だけで話し合うと、相手方が暴力をふるったり、高圧的な態度であなたの言い分を聞かず、自分の主張だけ通そうとすることもあります。
相手方との直接交渉を避けたければ、弁護士を代理人にして相手方に「直接交渉をしないでください」と通知し、相手方とのやりとりをあなたの代わりに弁護士がしてくれます。
また、直接交渉を禁止したのにも関わらず相手方があなたに連絡を取ってきたり、脅迫ともとれるような言動をしたりする場合には、相手方との接触を拒否し、弁護士から抗議してもらったり、悪質な場合には警察に通報したりといったアドバイスをしてくれます。
離婚協議書等の書面の作成等のサポートをしてくれる
相手方と離婚条件がまとまった場合、必ず作成すべきなのは離婚協議書です。
離婚協議書とは契約書の一種で書面に残しておくと、後々離婚条件で相手方とトラブルになったときに、「離婚協議書に記載された離婚条件をお互いが納得したうえで約束した」ということを証明することができます。
ただし、離婚協議書は作成すればどんな内容であっても認められるわけではありません。
例えば、離婚協議書に「離婚後夫は、妻の許しがあるまで再婚してはいけない」という条項があったとしましょう。
再婚を禁止するような条項はたとえ、夫婦が合意して盛り込んだものであっても無効になります。
無効になる理由としては公序良俗に反する内容だからです。
離婚した後、元夫の再婚を制限する内容は、憲法で定められている、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」という条項に反します。
元妻であっても、人として保障されている婚姻の権利を制限することは社会通念上許されません。
このほかにも、「年収300万円の配偶者に対して10億円の慰謝料を支払ってもらう」といった過大な要求についても公序良俗に反する内容とみなされ、その契約条項は無効になります。
知らず知らずのうち、無効になるような契約を結ばないよう、「この内容は法的に有効なのかどうか」に注意しながら離婚協議書を作成する必要があります。
法的に有効かどうかの確認は、専門的な法知識が必要なので、一般の方は簡単にできません。
法的に有効な離婚協議書を作成したいと考えるのならば、弁護士に作成を依頼した方がよいです。
弁護士は、内容が法律的に認められるかだけではなく、取り決めた離婚条件がきちんと守られるかを提案してくれます。
例えば離婚する夫婦に8歳の子どもがいたとしましょう。
「親権は妻が持ち、夫は月々8万円の養育費を子どもが20歳になるまで支払う」といった取り決めをした場合、妻は離婚後12年間、元夫から養育費をもらうことになります。
しかし、残念ながら日本の養育費の支払い率は非常に低く、厚生労働省が行った調査によると定期的に支払ってもらっている割合は全体の3割未満(※)です。
また同調査では、離婚から時間が経過すると支払い率が低くなる傾向にあります。
養育費が不払いになったときに備えて、強制的に給料を差し押さえできるような手立てを考える必要があります。
養育費が不払いになったとき法的に給料差し押さえ等をするには、夫婦が作成した離婚協議書ではできません。
弁護士に離婚協議書の作成等をサポートしてもらった場合、ご自身の取り決めが強制執行できる公正証書として残す必要があるのかアドバイスをしてくれます。
また、離婚協議書を強制執行のできる公正証書にするときには、公証役場で公証人と離婚協議書の内容について話し合う必要があります。
このような場合でも弁護士が代理人として公証人との打ち合わせ等をしてくれます。
※平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要について(https://www.moj.go.jp/content/001345686.pdf)
弁護士なしの場合のデメリットと注意点
協議離婚したい場合、弁護士に依頼すると離婚に関するさまざまなことをサポートしてくれます。
とはいえ、「弁護士に依頼したら安心だけど弁護士費用って高い」と感じ自力で離婚成立を目指す方もいるでしょう。
しかし、弁護士に依頼せず自力で協議離婚を目指した場合、次のようなデメリットは発生する可能性があります。
- ・相手の有利な条件で離婚が成立してしまうリスクがある
- ・離婚条件で争いになり離婚が成立するまでに時間がかかる
- ・協議離婚がまとまらず調停や訴訟に発展するリスクがある
具体的なデメリットについて確認していきましょう。
相手の有利な条件で離婚が成立してしまうリスクがある
弁護士なしで協議離婚を進めると、相手の有利な条件で離婚してしまう可能性があります。
相手の主張に対して、自分の希望する離婚条件をはっきり伝えられれば良いのですが、うまく話ができなかったり、相手のペースに乗せられてしまったりして自分が望まぬ方向で条件がまとまり離婚が成立してしまうケースは少なくありません。
また、離婚を急ぐあまり、自分が望む離婚条件があやふやなままで、結局離婚が成立してから相手に有利な離婚条件だったと気づく場合もあるでしょう。
更にいえば、相手の圧力に負けてしまい、しぶしぶ相手に有利な条件で離婚することも考えられます。
このように自分ひとりで離婚協議に臨むリスクがたくさんあるのです。
相手方に有利な条件で離婚した場合、「やっぱりその条件はおかしい」と不満を伝えても、離婚協議書の中に清算条項が入っていると、相手方の同意がなければ内容を変更できません。
清算条項とは、「夫婦のあいだには離婚協議書で定めた内容以外に債権債務はありませんよ」ということを示すものです。
つまり、離婚協議書に記載されている内容以外に金銭を請求することができません。
離婚条件で争いになり離婚が成立するまでに時間がかかる
協議離婚が成立するには、夫婦双方が納得することが前提です。
そのため、夫婦の意見が対立している場合には、話し合いが一向に進まず離婚成立までに時間がかかってしまいます。
離婚するための条件は、離婚後のことを考えると「妥協したくない」と強く感じるかもしれません。
しかし、実際はお互い妥協できる点は妥協して、早く離婚を成立させた方が良い場合もあります。
ご自身が思う離婚条件のなかで、最低限妥協したくない点をしっかり把握しつつ話し合いを進められれば良いのですが、妥協しすぎると不利な条件で離婚が成立することになるので、非常に難しい部分があります。
離婚協議まとまらず調停や訴訟に発展するリスクがある
離婚協議で離婚が成立しない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、調停委員の仲介をもとに話し合うことになります。
更に、離婚調停でも妥協点が見いだせなかったときには、裁判で離婚の可否を争うことになります。
離婚調停は、1回で終わるケースはあまりなく調停が成立するまでに1年以上かかる可能性が充分あります。
そこから離婚訴訟に発展した場合には更に離婚が成立するまでに時間がかかるでしょう。
離婚調停や離婚裁判は法的な知識が必要となります。
そのため、自力で対応すると、希望する条件で離婚が成立する可能性はかなり低くなってしまいます。
相手方に弁護士がついた場合は弁護士に依頼すべき
離婚問題で困っているときに、「弁護士に依頼しよう」と考えるのは相手も同じです。
相手方の弁護士は、あなたの味方にはなりません。
相手方の利益を最大限実現しようと弁護活動をします。
「お金をかけたくないから自分だけでやろう」と考えて相手方の弁護士と話をしても、交渉術のプロである弁護士から自分に有利な離婚条件を引き出すことは至難の業です。
相手方が弁護士をつけたときには、迷わずこちらも弁護士に依頼した方が良いでしょう。
弁護士をつける場合にかかる費用
弁護士に離婚問題を依頼したいと考えた場合、最も心配なもののひとつが費用面だと思います。
離婚問題を弁護士に依頼したいと思ったとき、実際どのくらいの費用が必要なのでしょうか。
弁護士費用は依頼する内容や弁護士や法律事務所、経済利益等によって異なりますが、トータルで40万円から100万円かかると考えて良いと思います。
なお相手方に経済力があるといった事情があるような場合には、慰謝料や財産分与請求が成功した場合、別途成功報酬を支払うこともあります。
詳細の費用については、相談時や受任契約を結ぶ前に弁護士から説明してくれます。
費用面が心配な方は、まずは相談して具体的にどれくらいの費用がかかるのか聞いてみるのも大切です。
弁護士に依頼したいけれど経済的な余裕がないというときには、法テラスを利用して弁護士を依頼し、費用の立替制度と分割払いの制度の利用を検討してください。
まとめ
夫婦双方が納得すれば弁護士に依頼しなくても協議離婚を成立することができます。
しかし、夫婦の状況によっては弁護士なしで離婚協議を進めると、後々トラブルに発展したり後悔したりするリスクがあります。
「夫婦ふたりでは話し合いがうまくいかない」、「離婚したいけど具体的にどのような条件を取り決めるべきなのかわからない」等、悩んだときには一度弁護士への相談をおすすめします。