この記事でわかること
- 離婚調停にはどれくらいの期間がかかるのかがわかる
- 離婚調停が長期化するケースがわかる
- 離婚調停を短期間で、しかも優位に終わらせる方法がわかる
離婚調停とは?
離婚調停は、当事者間での話し合いで離婚できない場合に、家庭裁判所に申し立てをして行われる離婚の方法です。
当事者が家庭裁判所の調停委員を交えて話し合いをして、お互いが合意すれば調停が成立となります。
調停委員は裁判官ではないので、当事者の意思に反した結論をくだすことはなく、あくまでも助言や提案をする中立的な立場です。
離婚調停の手続きでは、離婚の可否だけではなく、離婚の条件(親権者をどちらにするか、養育費をどうするか、財産分与をどうするか等)についても話し合うことができます。
離婚調停の流れ
離婚調停のおおまかな流れは、上記のようになります。
ただし、家庭裁判所ごとに運用が異なる場合がありますので、ご注意ください。
1.家庭裁判所に夫または妻が調停を申し立てる
まずは離婚調停を家庭裁判所に申し立てます。
申し立ての際には、以下の書類が必要となります。
申し立てに必要な書類
- 1.申立書
裁判所のホームページに記載例が載っているので、参考にするとよいでしょう。 - 2.夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
本籍地の市区町村役場で取得できます。遠方の場合、郵送で取り寄せることも可能です。 - 3.年金分割のための情報通知書(年金分割の申し立てをする場合のみ)
年金事務所に情報提供請求書等を提出すること、郵送で通知書が届きます。
2.家庭裁判所から夫婦それぞれに呼出状が届く
第1回目の調停の日時を知らせる呼出状が届きます。
3.第1回調停期日
1回目の調停が開催され、当事者双方が家庭裁判所に出廷します。
待合室で調停室に呼ばれるのを待ちますが、待合室は配偶者とは別室の場合が多いです。
通常、申立てをした当事者が先に呼ばれ、調停委員が調停の流れなどについて説明した後、離婚の申し立てについて質問をしたり意見を聞いたりします。
その後、もう一人の当事者が呼ばれ、同じように説明を受けて質問をされたりします。
このように、順番に調停室に呼ばれることを2回くらい繰り返し、調停委員を通じて相手の意見などを聞くことにより、妥協点を探っていきます。
1回目の調停で解決しない場合には、2回目の期日について日程調整を行うことになります。
1回の調停でかかる時間は、2時間程度が目安です。
4.第2回目以降の調停期日
1回目で調停が成立しなかった場合、2回目以降の調停が開催されます。
2回目以降も、基本的には初回と同じように当事者が交互に調停室に呼ばれ、意見の調整を図っていきます。
5.離婚調停終結
調停成立の場合
調停が成立すると、裁判官が調停調書を作成します。
その調停調書と離婚届を役所に持参して手続きをすると、離婚の手続きが終了します。
調停不成立の場合
調停が不成立の場合、当事者のどちらかが離婚裁判を申し立てれば「裁判」に移行します。
申し立てをしなければ、離婚は白紙に戻り、また当事者間で協議することになります。
例外的に、裁判官の判断により、「審判」の手続きに移行することもあります。
審判では、裁判官の判断で離婚条件の決定が下されます。
離婚調停期間はどのように決まるのか?
離婚調停にかかる期間は、ケースによって違ってきます。
どのようなことが期間に影響するのかを説明していきます。
日程調整がうまくいくか
調停は平日の日中に行われますが、当事者は仕事をしていることが多いので、日程調整が難しい場合があります。
弁護士を代理人としている場合でも、調停は原則的に本人の出席も必要ですが、実際には弁護士のみが出席することも認められているケースが多いです。
いずれにせよ、夫側、妻側、裁判所それぞれの都合があう日程を調整できなければ、調停期日を開くことができません。
離婚争点がどの程度あるか
離婚で合意していない項目がどれだけあるかによって、調停の期間は変わってきます。
離婚そのものを合意していないケースと、離婚には合意しているが条件面(親権、養育費など)で一部合意できない点があるという場合では、後者の方が争点が少なく、調停期間は短く済むことが多いでしょう。
資料の準備ができているか
特に金銭面での条件(養育費、財産分与など)について話し合いをする場合、資料が準備できているかどうかが調停の進行に影響します。
調停委員は資料がなければ判断することができませんので、できるだけ申し立てまでに資料を揃えておくことが大切です。
平均期間や回数はどのくらい?
調停終了までの平均的な期間や回数はどれくらいかかるのでしょうか。
司法統計のデータを見ると、実際にどれくらいの期間、回数で調停が終了しているのかのおおまかな目安がわかります。
(ただし、この統計の婚姻関係事件のうち、離婚調停の割合は約67%なので、離婚以外の事件も含めた結果となります。)
期間について
平成27年の司法統計によると、婚姻関係事件の調停、審判の件数が65,683件ありました。
そのうち、終了までの期間1ヶ月以内が6.4%(4,205件)、1ヶ月超3ヶ月以内が30.8%(20,259件)、3ヶ月超6ヶ月以内が35.8%(23,535件)、6ヶ月超1年以内が22.1%(14,493件)、1年超2年以内が4.7%(3,068件)、2年超が0.2%(123件)となっています。
大半のケースは、1ヶ月超~1年以内で、9割弱がこの範囲に入っています。
ざっくりとではありますが、半年くらいはかかると考えておきましょう。
回数について
平成27年の司法統計によると、婚姻関係事件の調停、審判の実施回数は、以下のようになっています。
0回が7%、1回が15%、2回が22%、3回が20%、4回が13%、5回が9%、6~10回が13%、11回以上が1%です。
4回までの期日で8割弱が終了しています。
長期化するケース
大半の方が1年以内、回数的には4回までに終わるのにもかかわらず、長期化している方もいます。
そこで、どのような場合に離婚調停が長期化してしまうのかについて説明していきます。
財産分与が争点となる場合
財産分与が争点となっている場合、財産分与の対象となる財産の内容を明らかにする必要があります。
財産分与の対象となる財産は、「結婚期間中に夫婦で協力して築いた財産」です。
財産分与を請求する側はできるだけ多くの財産を主張し、請求される側はできるだけ財産を少なく主張します。
当事者双方が主張する共有財産の内容の食い違いが大きくなるほど、意見の調整が難しくなり、調停は長期化する可能性が高くなります。
慰謝料が争点となる場合
慰謝料は、どちらか片方に離婚の原因がある場合に、離婚原因を作った相手にその損害を金銭に換算し賠償請求するものです。
代表的なものが、夫婦のどちらかが不貞行為をしたケースですが、これを本人が素直に認めるとは限りません。
請求する側は証拠を出す必要がありますが、決定的な証拠がなかったり、不貞した当事者がすでに夫婦関係が破たんしていたことを主張するなど、双方の言い分が食い違う場合には、調停が長期化する原因になります。
養育費が争点となる場合
養育費は、請求する側はできるだけ高い金額を請求し、請求される側は低い金額を主張します。
この金額の差が大きいほど、調整が難しくなり調停が長期化する原因となります。
また、養育費は当事者双方の収入などを基に判断することになるため、双方が主張する収入が食い違う場合も調整が難しくなります。
短期間でしかも有利に終わらせるためにやるべきこと
調停をできるだけ短期間で、自身が有利になるように終わらせるためには、どのようなことに気をつければよいでしょうか。
財産分与について
財産分与を求める場合、共有財産の存在を立証しなければいけません。
相手は離婚の話がでれば財産隠しをする可能性があるため、できるだけ離婚の話をする前から財産調査をしておくことが大切です。
預貯金、有価証券、保険、不動産などの財産の状況を確認しておき、証書などを手元に置いておきましょう。
特に別居してしまうと財産の把握は難しくなりますので、それまでにどのような財産があるのか把握し、それを隠されたり処分されたりしないように対策が必要です。
財産が多い場合には、弁護士に依頼するなどして、勝手に財産が処分されないよう「処分禁止の仮処分」の申し立てなども検討する必要があります。
慰謝料について
慰謝料を請求したい場合、離婚が決まる前から証拠を揃えておくことが大切です。
証拠がなければ慰謝料請求は認められません。
相手が調停前は自分の有責(離婚原因を作ったこと)を認めていても、調停になると否定するケースもあります。
相手が認めている場合には、それを録音したり念書を書かせるなどして、証拠として残るようにしておきましょう。
また、慰謝料の金額には明確な基準がありませんが、あまりに現実離れした金額を請求しても実現性が低く、調停成立が難しくなってしまいます。
あまり欲張らず、どの程度の金額で妥協できるかについても検討しておきましょう。
養育費について
養育費については、調停委員は家庭裁判所で採用している「算定表」を基準に判断することがほとんどです。
そのため、自分と相手の収入がわかる資料をしっかり揃え、この算定表と整合性のとれる金額を提示すると調停委員の理解を得やすくなります。
また、たとえば、「養育費の月額を妥協する代わりに、期間を20歳ではなく大学卒業までにしてほしい」など、相手と交渉するための妥協案を提示することも検討しましょう。
お互いに歩み寄りの姿勢を示すことが大切です。
全体的な姿勢
調停では、当事者の言い分を調停委員が聞き、助言や提案をして妥協点を見つけていくことになります。
調停委員もやはり人間ですので、調停委員にできるだけ好印象を持ってもらえるような姿勢で臨むことが大切です。
たとえば、自分の主張ばかりで相手の意見を全く聞き入れない態度であったり、相手に対して相場とかけ離れた無茶な要求をしたり、社会人として非常識な態度をとると、調停委員の印象は悪くなってしまうでしょう。
そうなると、自分の主張の信ぴょう性が疑われてしまうことになりかねません。
調停の場では、感情的になったり頑なな態度をとったりすることなく、冷静な態度で臨むことが大切です。
自分には相手に歩み寄る姿勢があることを示すことも、調停委員の印象をよくするでしょう。
調停は、裁判と違って白か黒かを決める場ではなく、お互いの妥協点を見つけるための場です。
自分の主張がすべて認められることはないということを前提に、妥協案についても事前に考えておくとよいでしょう。
【参考】離婚調停にかかわる費用
離婚調停にかかる費用には、どのようなものがあるでしょうか。
申し立てに必要な実費は、以下の通りです。
申し立てに必要な実費
- 1.申立書に貼付する収入印紙 1,200円
- 2.戸籍謄本(全部事項証明書) 450円
- 3.予納する郵便切手 約1,000円
申立てから出頭まで自分だけでする場合には、この程度の出費で済みます。
あとは、弁護士に依頼するかどうかですが、弁護士に依頼すれば、当然弁護士費用が発生します。
弁護士費用は、事案の内容や弁護士によってまちまちですが、着手金として30万円程度をはじめに払うケースが多いです。
弁護士に依頼すべきかどうかは、事案の複雑さや相手のタイプにもよりますし、相手が弁護士を立てているかどうかにもよります。
自身で対応できるのか、弁護士を依頼したほうがよいのかは慎重に検討しましょう。
まとめ
離婚調停は当事者間での話し合いが成立しない場合に行うものなので、相手との主張が対立している状態でのスタートです。
調停の流れを理解し、事前にしっかりと準備と対策をしたうえで臨むことで、自分にとってよい結果を得られる可能性が高くなります。
できるだけ時間をかけずによい結果を得られるために、準備を怠らないようにしましょう。