この記事でわかること
- 子なし夫婦が離婚を考える理由
- 離婚の前に準備しておきたいこと
- 慰謝料を請求できるケースと慰謝料の相場
子なしだと、離婚しやすい?
子供がいない夫婦は、子供がいる夫婦より離婚しやすいのでしょうか?
厚生労働省の「親権を行わなければならない子の有無別及び夫妻の国籍別にみた届出月別離婚件数及び構成割合 -平成20年-」の調査によると、子供あり・子供なしの夫婦の離婚件数は以下のようになっています。
離婚件数は子供のいる夫婦の方が多いですが、国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」(2015年)によると、子供のいない夫婦は全体の6.2%しかいません。
子供のいない夫婦の数から考えると、子供のいる夫婦よりもかなり高い割合で離婚していることがわかります。
参考:厚生労働省 「親権を行わなければならない子の有無別及び夫妻の国籍別にみた届出月別離婚件数及び構成割合 -平成20年-」
参考:国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」(2015年)
子なし夫婦が離婚を考えるときとは?
子供のいない夫婦は、どのようなときに離婚を考えるのでしょうか?
よくある離婚の理由を見てみましょう。
性格、価値観の不一致
離婚理由で一番多いのが、性格や価値観の不一致です。
一言で性格や価値観の不一致といっても、様々なケースがあります。
子供を持つかどうかの価値観
離婚の大きな理由となりうるのが、子供を持つかどうかについての価値観の相違です。
子供を持つかどうかは人生において重要な問題で、自分の人生に大きく関わるため、相手と意見が合わない場合は双方の幸せのために離婚する、というケースも多くあります。
結婚前は子供はいらないと二人で決めていた場合でも、結婚後にどちらかの気持ちが変わることがあり、また、逆に子供が欲しかったけれどいらないと思うようになった、ということもあります。
そうなったときに、簡単に離婚できるかというとそうとは限りません。
「子供を持つかどうかの意見が合わなくなった」という事実だけでは、法律上の離婚原因があるとは言えないのです。
そのため、相手とよく話し合って離婚に応じてもらうように説得するか、相手と長期間別居するなどして、夫婦関係が破たんしている状況を認めてもらう必要があります。
その他の性格の不一致
その他の性格の不一致としては、「相手と金銭感覚が合わない」「生活習慣が合わない」「性生活が合わない」など、いろいろな理由があります。
些細なものから深刻なものまで様々ですが、子供がいなければ我慢してまで結婚生活を続ける必要がないと判断する人も多いかもしれません。
相手と歩み寄りができないか、修復する方法がないかを模索して努力したうえで、それでも難しい場合には、たとえ他人から見たら些細な理由であっても離婚を考えることは間違いではないでしょう。
ただし、相手が同意してくれない場合には、些細な性格の不一致で離婚することは非常に難しくなります。
相手に有責性がある
相手に離婚理由となる有責性があって離婚したい、というケースも多いでしょう。
「有責性がある」とは、以下のような行為があった場合のことを言います。
不貞行為
不貞行為とは「配偶者以外の異性と性的関係を持つこと」です。
配偶者以外とデートしたりキスしたりするだけでは、不貞行為とは言えません。
相手が不貞行為をしている場合でも、子供がいると子供のために離婚を躊躇するケースもみられますが、子供がいない場合には迷わず離婚するという人も多いです。
ただし、一度きりの不貞行為の場合には、相手の意思に反する離婚は難しくなります。
不貞行為を理由として離婚したい場合には、証拠を確保することが大切です。
DVやモラハラ
DVやモラハラは、エスカレートすることも多いため、子供の有無にかかわらず心身の安全を最優先することが大切です。
通常は、一方的な別居は同居義務違反となるのですべきものではありませんが、DVで身の危険を感じる場合などは、離婚成立前に家を出たほうがよいケースが多いでしょう。
悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、夫婦の義務である「同居して、相互に扶助、協力して生活する」ことを怠ることで、一方的に家を出て別居したり、生活費を負担しないなどが考えられます。
生活費や家事の分担は、夫婦間で納得していれば、どちらがどれだけの負担をしても問題はありませんし、別居についても夫婦間で納得していれば構いませんが、相手の意思に反してこれらの義務を放棄することは法律上の離婚理由となりうるのです。
離婚を切り出す前に。子なし離婚で大事な経済的な準備
離婚したいという気持ちが固まっても、相手に切り出す前に準備したほうが良いことがあります。
経済的自立の準備
まずは、離婚後の生活設計を考えておく必要があります。
自分一人の収入で生計を立てることができるのか、事前にしっかりシミュレーションしておきましょう。
離婚時に財産分与や慰謝料が発生する可能性はありますが、離婚後に継続的に相手から金銭を受け取ることはありません。
離婚した後、自分の財産がどの程度になるのか、新生活にどれくらい支出がかかるのか、月々の収支はどうなるかなどを計算しておくことが大切です。
現在の収入では自立できない場合は、仕事を探すなどの準備もしておきましょう。
財産分与する財産の確認
離婚の際には、結婚期間中に夫婦で築いた財産は二人で分け合うという決まりがあり、このことを「財産分与」と言います。
相手に離婚を切り出すと、財産分与に備えて財産を隠そうとしたりすることがあります。
そのため、夫婦にどのような財産があるのか、名義がどうなっているかなどは事前にしっかり確認しておきましょう。
たとえ名義が夫婦のどちらかのものとなっていても、結婚期間中にできた財産は基本的に財産分与の対象となります。
離婚を切り出した後から離婚決定までに注意したいこと
では、次は離婚を切り出した後から離婚決定までに注意したいことについてみていきましょう。
離婚成立まで別居する場合の婚姻費用
離婚成立までに別居をする夫婦も多いでしょう。
修復を目指すための別居というケースもあれば、離婚条件の話し合いが終わるまでの別居というケースもあります。
別居中であっても夫婦はお互いに扶助義務があるので、相手の収入と自分の収入の差額によっては婚姻費用を請求できます。
婚姻費用の算定は、家庭裁判所でも採用している「婚姻費用算定表」で計算できます。
相手が支払いに応じない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
ただし、一方的な別居は同居義務違反になりますので、別居する場合は相手と話をしたうえで行動に移しましょう。
相手が有責である場合には、証拠の確保
相手に有責性がある場合は、慰謝料を請求することができ、相手が離婚に同意しなくても裁判所の手続きで離婚が認められる可能性が高くなります。
ただし、慰謝料や離婚が認められるためには証拠が必要なため、できる限り証拠を確保しておくことが大切です。
不貞行為の場合には、不貞相手とラブホテルに出入りする写真や、相手が不貞の事実を認めた音声データなどが有力な証拠となりえます。
また、DVの場合には、DV被害を受けた際に受診した医師の診断書、DV被害の傷跡の写真などが証拠となりえます。
子なし離婚の慰謝料の相場
相手の不貞行為やDV・モラハラ、悪意の遺棄などが原因で離婚に至った場合は、慰謝料を請求することができます。
相手が慰謝料の請求にそのまま応じてくれる場合は、請求した金額をもらえますが、相手が拒否した場合や裁判となった場合には、請求した金額を全額もらえるとは限りません。
慰謝料の金額はそれぞれのケースで違ってきますが、子供がいない夫婦の慰謝料は50万円~300万円程度となることが多く、100万円程度が相場と言われています。
まとめ
子なし夫婦の場合、子供を理由に離婚を躊躇することはないため、子供のいる夫婦以上に夫婦間の愛情や結びつきが大切になります。
それらを失ってしまい、修復する見込みがない場合には、離婚をしたあとに後悔しないようにしっかりと準備をしたうえで、離婚の話し合いをしていきましょう。