離婚を考えはじめてから実際に離婚が成立まで、時間を要する場合も多々あります。
そのようなときに、離婚を考えている相手とひとつ屋根の下で生活を続けるのは、精神的に難しいこともあるでしょう。
そうなると、まずは別居をすることが考えられます。
実際、別居期間を経てから離婚する夫婦は多いです。
ここでは離婚前の別居について説明していきます。
離婚の前に【別居】という選択肢もありです
離婚をする前に、まずは別居をしてみるという選択肢があります。
別居することのメリットは、次のようなことが考えられます。
離婚が認められる可能性が高くなる
自分が離婚を望んでいて相手がそれに同意しない場合には、別居することで離婚が認められる可能性が高くなるというメリットがあります。
「別居」そのものは法律上離婚が認められる原因ではありませんが、長期の別居は、夫婦関係が修復不可能なほど破たんしている、とみなされることがあります。
そうすると、別居の事実がほかの離婚原因を補足することで、離婚が認められることがあるのです。
別居期間は長いほうが離婚は認められやすくなります。
ただし、ほかに離婚原因がなく単に別居しているだけでは離婚が認aめられることは難しくなります。
離婚が認められる期間の目安としては、ケースにより異なりますが5年程度とされることが多いです。
子供への影響を考えた対応ができる
すぐに離婚に踏み切れない理由として多いのが、子供への影響です。
まだ未成熟な子供がいる場合、子供の環境や精神面、経済面への影響を考えて、離婚を躊躇することも多いでしょう。
そのような場合、たとえば子供が現在の学校を卒業するまでは、離婚せずに別居を続けるといった選択肢もあります。
特に子供の姓が変わる場合などは、学校卒業のタイミングまで離婚を待つといったケースもよく見られます。
冷却期間ができ、冷静に夫婦関係を見つめられる
離婚を考えるほどの状況であれば、夫婦関係には亀裂が入っており、毎日顔を合わせるのは苦痛になることが多いでしょう。
そのような状況で同居していると、強いストレスを感じて日常生活に支障をきたしたり、相手と激しい喧嘩を繰り返すような事態にもなりやすく、冷静な判断をすることが難しくなります。
離婚するかどうかの判断や、離婚する場合の条件については、冷静に判断することが何よりも大切です。
突発的に離婚してしまうと、後悔するケースが多いものです。
離婚の前に別居をしてワンクッションおくことで、お互いにクールダウンすることができ、自分たちの状況を冷静に、客観的に判断できる可能性があります。
冷静になると自分の落ち度にも気が付き、夫婦関係の修復を目指せる場合もあります。
DV被害などから身を守って離婚準備ができる
離婚を考える原因として、DVやモラハラの被害を受けているという場合もあります。
そのようなとき何より大切なのは、自分や子供の心身の安全を確保することです。
DVやモラハラはエスカレートすることも多く、同居を続けることは危険です。
長期のDVやモラハラを受け続けると、回復するまでに長い時間を要するほどダメージを受けてしまう可能性があります。
別居することにより、これ以上配偶者からのDVやモラハラ被害を受けることなく落ち着いた環境で離婚の準備を進めることができます。
別居中に仕事を探したり、専門家に相談するなどの離婚の準備を行いましょう。
なお、DV被害を受けて別居する場合には、相手に連絡先や新居などを教えないようにしましょう。
別居前の準備と注意点
別居をするのはメリットがある一方、注意しなければならないことがあります。
一方的な別居は避ける
夫婦には同居する義務があります。
そのため、一方的に別居をしてしまうと「同居義務違反」となり、場合によっては「悪意の遺棄」を行った有責者(離婚の原因を作った人)ということになってしまいます。
悪意の遺棄というのは、法定離婚事由(法律上離婚が認められる原因)の一つで、夫婦の義務である、「同居、協力、扶助」の義務を怠ることです。
悪意の遺棄をすると、慰謝料を請求されたり、離婚の際に不利になってしまうことがあります。
また、一方的に別居をしてしまうと、相手に「婚姻費用」という生活費の分担を請求することも難しくなってしまうことがあります。
別居をしたい場合には、相手に別居の意思とその理由をきちんと伝え、後から「一方的に別居された」と言われないようにしましょう。
ただし、DVやモラハラの被害を受けていて身の危険がある場合には、相手の了承を得ることよりも身の安全を優先し、速やかに別居しましょう。
プライバシーの守られるDV被害者向けのシェルターなどもありますので、自治体の相談窓口などを利用しましょう。
子供の親権への影響
子供と別居すると、子供の親権を争うときに不利になります。
子供は、できるだけ生活環境が変わらない方がいいという考え方があるため、同居している親との暮らしに問題がなければ、そのまま同居している親が離婚後も親権を持つのが好ましいと考えられているからです。
子供の親権を取りたい場合は、別居の際に子供を連れていくようにしましょう。
家を出る場合には、子供の通学などの利便性も考えたうえで、転居先を慎重に選びましょう。
別居すると生活費が余分にかかる
別居をすると住居費等が倍かかることになり、これまでより余分な生活費が発生します。
別居中も夫婦は生活費を分担する義務がありますが、相手の収入などに応じた金額しか分担を請求することはできませんので、これまでより生活が苦しくなることが考えられます。
金銭面については、事前にしっかりシミュレーションしておくことが大切です。
別居に踏み切る前に仕事を確保しておく、子供を預ける保育所を探しておくといった準備をしておくことが大切です。
実家を頼ることができるのであれば、実家に住まわせてもらうことも検討しましょう。
婚姻費用について決めておく
別居していても、夫婦には相互に扶助義務があります。
生活費は、別居中も夫婦で分担する必要があるのです。
そのため、夫婦の収入差などに応じて、婚姻費用を請求することができます。
別居する場合には、婚姻費用の金額や支払い方法などをあらかじめ話し合っておきましょう。
別居をすると、一緒に暮らしていない相手に生活費を払いたくない、という心理になる配偶者は多いので、後日のトラブルを避けるために、書面で取り決めておくことをお勧めします。
相手が婚姻費用を支払ってくれない場合には、婚姻費用分担調停を家庭裁判所に申し立てることになります。
婚姻費用をどれくらい請求できるかは、裁判所でも採用されている「算定表」を使って計算することができます。
夫婦それぞれの収入、子供の年齢、人数によって算定できるようになっています。
離婚に必要な証拠の収集
離婚の際には、財産などについて揉めることも多くなります。
財産分与などに備えて、夫婦の財産状況はきちんと確認し、その資料もできるだけそろえておきましょう。
別居してしまうと、相手が財産隠しをしたり、勝手に財産を処分してしまったり、浪費もしやすくなります。
結婚期間中に築いた財産は、名義が夫婦のどちらかのものであっても、原則として夫婦の共有財産となります。
共有財産は離婚時に分け合うものなので、勝手な処分などをされないように気を付けましょう。
別居すると、時には自宅などを勝手に売却してしまう配偶者もいますので、注意が必要です。
配偶者との関係性や性格なども踏まえ、場合によっては、家庭裁判所に処分禁止の仮処分の申し立てをすることなども検討しましょう。
処分禁止の仮処分の申し立てが認められると、勝手に財産の処分をすることができなくなります。
また、たとえば相手が不貞行為をした場合に、相手に不利となる証拠なども別居前に集めておいた方がよいでしょう。
念のため離婚届不受理申し出を
離婚についての話し合いがまとまっていないのに、別居した配偶者が勝手に離婚届を出してしまう可能性もあります。
離婚自体には合意していても、まだ条件がまとまっていない場合など、勝手に離婚届を出されて受理されてしまうと、それを翻すのは非常に手間がかかります。
慰謝料請求などをされる可能性のある配偶者の場合、それを避けるために離婚届を無断で出すこともあるようです。
念のため、役所に離婚届不受理の申し出をしておくと安心です。
別居しても離婚しない夫婦も多い?
別居をした夫婦が、その後必ず離婚するとは限りません。
別居をした結果、思いのほか夫婦関係が円満になり、離婚を回避して再び同居する夫婦もいます。
自分や相手のことを冷静に見つめなおすことで、修復を目指せるケースもあるのです。
また、夫婦円満とはいかないまでも、別居であればお互いストレスもないから離婚する必要もない、と世間体等を考えて離婚はしないという夫婦もいます。
夫婦の考え方はそれぞれであり、お互いが納得しているのであればどのような形で夫婦を続けても問題ありません。
子供にも配慮を
別居したまま夫婦を続けても当事者間では問題ありませんが、子供の気持ちや立場についてもよく配慮しましょう。
子供は両親の別居で混乱し、不安になってしまうことがほとんどです。
子供が状況を理解できる年齢であれば、両親の考えや別居の事情をきちんと伝えたほうがよいでしょう。
また、別居している親にも子供と面会交流する権利があります。
DVなどで子供に害が及ばない限りは、別居している配偶者にも子供と交流させる機会を与えましょう。
まとめ
離婚前の別居には、メリットがある一方、注意しなければならないこともあります。
それらを踏まえた上で、離婚前にまずは別居してみるという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
離婚前の別居は衝動的でなく、計画的に行うことが大切です。