この記事でわかること
- 養育費の決め方について理解できる
- 年収1,000万円の場合の養育費の相場がわかる
- 離婚後に養育費が減額される場合がわかる
離婚する際に子供がいる場合には親権を両親の一方に決める必要があります。
そして、親権を持たない親は、親権を持つ親に対して子供の生活に必要となる養育費を支払うことになります。
この養育費については離婚後も継続して支払うことになるため、特にもめることが多いといえます。
養育費を支払う側の親が年収1,000万円である場合、一般的に収入が多い部類といえますので養育費は平均より高額になることが多いといえます。
そこで、この記事では、2019年12月に公表された養育費の改訂標準算定表(令和元年版)をもとに、養育費を支払う親が年収1,000万円である場合の養育費の相場について、パターン別に説明します。
養育費はどのように定められるか
養育費については、本来は両親がお互いに話し合って自由に決めることができます。
例えば、両親の双方が子供に十分な教育を受けさせることを望んでいるような場合には相場を大きく上回る養育費を定めることも可能です。
反対に、親権を持つ側の親に十分な年収がある場合や離婚相手と早く縁を切りたい場合などには、双方が合意しているのであれば養育費を受け取らないとすることもできます。
争いがある場合には養育費算定表をもとに判断
しかし、離婚においては当事者双方が感情的になりやすく養育費の金額について譲歩しないことも多いといえます。
このため、お互いに納得する解決はなかなか難しいのが実情です。
このような場合に、話し合いをスムーズに進めるため裁判所が養育費算定表を公表しています。
裁判や調停で解決する場合には、この養育費算定表に基づき妥当な養育費の金額が決められることになります。
このため、この養育費算定表の金額が一応の相場として実務上広く参考にされています。
養育費算定方法の見直しについて
近年の社会状況の変化に伴い、従来利用されてきた養育費算定表では金額が少なすぎるという声が大きくなっていました。
このような声を受けて裁判所は従来の算定方法の見直しを進め、2019年12月23日に新しい養育費算定表を公表しました。
新たな算定表で計算すると従来の算定表で計算されるものより養育費が増えることが多いといえます。
新しい算定表は「裁判所のHP」に掲載されていますので、今後養育費について交渉する場合には新しい養育費算定表を確認するようにしましょう。
年収1,000万円の場合の養育費
養育費算定表では、両親の年収や、子供の年齢および人数によって養育費の金額が決められるようになっています。
それでは、養育費を支払う側の親が年収1,000万円の場合、養育費はどの程度になるのでしょうか。
ここでは、2019年12月23日に公表された新しい養育費算定表に従い、パターン別に養育費の金額例を示します。
なお、養育費は未成年の子供について支払われるものですので、子供が20歳以上である場合には原則として養育費の請求はできないこととなります。
また、以下の例は両親ともに給与所得者である場合の金額であり、両親のいずれかまたは双方が自営業の場合には金額が異なりますので注意が必要です。
子供が一人の場合
子供の年齢が0~14歳の場合には以下のとおりです。
養育費の支払いを受ける側の親の年収 | 養育費(月額) |
---|---|
0円 | 約12~14万円 |
300万円 | 約8~10万円 |
500万円 | 約8~10万円 |
800万円 | 約6~8万円 |
子供の年齢が15歳~19歳の場合には以下のとおりです。
養育費の支払いを受ける側の親の年収 | 養育費(月額) |
---|---|
0円 | 約14~16万円 |
300万円 | 約10~12万円 |
500万円 | 約10~12万円 |
800万円 | 約8~10万円 |
子供が二人の場合
子供の年齢が両方とも0~14歳の場合には以下のとおりです。
養育費の支払いを受ける側の親の年収 | 養育費(月額) |
---|---|
0円 | 約18~20万円 |
300万円 | 約14~16万円 |
500万円 | 約12~14万円 |
800万円 | 約10~12万円 |
子供の年齢が両方とも15歳~19歳の場合には以下のとおりです。
養育費の支払いを受ける側の親の年収 | 養育費(月額) |
---|---|
0円 | 約20~22万円 |
300万円 | 約16~18万円 |
500万円 | 約12~14万円 |
800万円 | 約10~12万円 |
子供の年齢が一人は0歳~14歳、もう一人は15歳~19歳の場合には以下のとおりです。
養育費の支払いを受ける側の親の年収 | 養育費(月額) |
---|---|
0円 | 約18~20万円 |
300万円 | 約14~16万円 |
500万円 | 約12~14万円 |
800万円 | 約10~12万円 |
離婚事由によって養育費の額は変わらない
養育費を受け取る側の不倫が原因で離婚となったような場合においては、養育費を支払いたくない気持ちになるかもしれません。
しかし、離婚事由によって養育費の金額は変わらない点に注意が必要です。
なぜなら、離婚事由がどうであるかはあくまでも両親同士の問題であり、親が子供を養育する責任を負うこととは別の問題であるためです。
養育費の交渉を弁護士に依頼するメリット
離婚について大きくもめていないような場合には、養育費についても両親同士の話し合いで決めようと考えることも多いといえます。
それでは、養育費の交渉を弁護士に依頼するメリットはどのような点にあるのでしょうか。
算定表の相場にとらわれず養育費を決められる
養育費については裁判所の養育費算定表をもとに一応の相場を算出することはできます。
しかし、どの程度の養育費が必要であるかは本来その家庭ごとに異なるはずです。
例えば、住んでいる地域や親の教育に対する価値観などによっても左右されるものです。
弁護士に養育費の交渉を依頼すれば、このような家庭ごとの個別の事情を考慮したうえで本当に必要な養育費を主張してもらえるのです。
間違いのない公正証書で強制執行を容易に
養育費は離婚後も長い期間にわたり支払われるものであることから、支払いが滞るケースが残念ながら後をたちません。
このような場合には、相手の財産や給与に対して強制執行をすることにより強制的に支払いを受けることができます。
強制執行をするためには、本来であれば裁判を起こして判決を得なければなりませんが、養育費に関する合意を公正証書とした場合には、判決を得なくても強制執行をすることができます。
公正証書は公証役場で作成する合意書です。
公正証書を作成する際には、強制執行を確実にできるようにするため法的に間違いのない内容とする必要があります。
そこで、弁護士に公正証書の内容を確認してもらうことが安心です。
養育費が減額となるケース
養育費は継続的に支払うものであるため、離婚後の双方の事情の変化によって養育費の減額が必要となる場合があります。
このとき、双方の同意があれば特に問題なく養育費を減額することができます。
これに対し、両親のうち一方が変更に同意しない場合には、裁判や調停を利用して養育費の減額を求めることになります。
裁判や調停となる場合には、養育費を減額すべきといえる合理的な理由が必要となります。
両親の経済的事情の変化により減額となることも
養育費の減額が認められるのは、基本的に両親に経済的事情の変化があった場合です。
例えば、養育費を支払う親の側の事情としては、失職などによって収入が大きく減少したような場合や、親の介護のために継続的に大きな支出を余儀なくされるような場合が挙げられます。
養育費を受け取る親の側の事情としては、収入が増加した場合などが挙げられます。
これらの事情がある場合には、裁判や調停において養育費の減額が認められることがあります。
ただし、養育費については子供の生活に直結するものであることから、単純に事情の変化だけで判断されるわけではなく家庭ごとの個別の事情も考慮されます。
したがって、上で挙げたような経済的事情の変化が生じれば必ず減額できるわけではない点に注意しましょう。
面会交流の有無は減額理由とならない
離婚時に子供との面会交流を定めたにもかかわらず、合意した通りに実現されないケースがあります。
このような場合に養育費の支払いを拒否したいと考える親も多いのですが、面会交流をしていないことは養育費の減額理由とはなりません。
なぜなら、面会交流をしてもしなくても、親が子供を養育する責任を負っていることには変わりがないからです。
面会交流を実現したい場合には、養育費の支払い拒否という手段ではなく裁判所に面会交流調停を起こすことで解決しましょう。
減額を避けたい場合には交渉に応じる前に弁護士に相談
養育費を受け取る側の親としては、養育費の減額は避けたいと考えることが通常です。
養育費の減額を安易に受け入れれば子供に苦労をかけることにもなりかねないため、慎重に判断することが大切です。
相手から養育費の減額を持ち掛けられた場合には、交渉に応じる前に弁護士に相談することが良いといえます。
養育費の減額を受け入れたくない場合には調停の申し立てをされる可能性が高いため、養育費の減額に応じざるを得ない事情があるといえるのかを早い段階で検討しておく必要があるためです。
まとめ
養育費については支払う側の親としては必要以上に支払いたくない一方で、養育費をもらう側の親としては子供との生活に不足することとなれば離婚後の生活がおびやかされることになります。
したがって、両方の親にとって慎重に交渉にのぞむ必要があります。
また、養育費については支払う期間が長期間となるため、離婚後に減額を求められることや支払いが滞ることをあらかじめ想定しておく必要もあります。
このため、養育費の交渉にあたっては、できるだけ早い段階で養育費の問題について経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。