再婚したら養育費はどうなる?減額・支払い停止となる条件とは | 離婚弁護士マップ
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再婚したら養育費はどうなる?減額・支払い停止となる条件とは

離婚後に元夫婦のどちらか一方、あるいは双方が再婚をすることはよくあります。

その場合、子どもの養育費の支払いに関する状況にどのような影響が出るのか、ご説明します。

再婚以外の減免が可能なケースについても触れますので、あわせてご確認ください。

養育費の減額または免除が認められる場合とは

大前提として、一度取り決めた養育費の金額の減額はそれなりの合理的な理由がないと難しいということ、そして、養育費支払の全てを免除されるというケースは稀であると認識しておいてください。

なぜ養育費の支払がそこまで厳しく義務づけられているのかということは、養育費がどういう性質のものだと法律で規定されているのかを見れば、納得していただけると思います。

養育費の法的な性質を理解する

義務や権利には、必ず法的な根拠があります。

もちろん養育費の支払い義務も例外ではなく、民法の中に根拠となる条文があります。

養育費支払義務に関する条文

養育費支払義務について規定しているのは、民法第877条第1項です。

民法第877条第1項
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

この「扶養をする義務」というのが養育費の支払いの根拠です。

また、平成24年に行われた民法改正では第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)に、協議離婚する時には「子の監護に要する費用の分担」について定めるべきであると明記されました。

さらに、聞き慣れない法律ですが、母子及び父子並びに寡婦福祉法の第5条にも、養育費支払いの責務について記載されています。

扶養の程度

前項の扶養義務にはが「生活保持義務」と「生活扶助義務」の2種類があり、それぞれ扶養の程度が異なります。

・生活保持義務
扶養義務者は、扶養権利者の生活を自分と同程度に維持する義務です。

この義務は、親と未成熟子の間、また夫婦の間に生じます。

・生活扶助義務
扶養義務者が自分自身の生活に余裕がある場合にのみ、扶養権利者を扶養するという義務です。

こちらは、成年の子と老親との間、また兄弟姉妹間に生じます。

つまり、養育費を支払う義務親と未成熟子の間に生じているので、生活保持義務ということになります。

自分の生活に余裕があるかないかは関係なく、子どもの生活を自分と同程度に維持する必要があるということです。

そのため、養育費の免除というのはなかなか認められません。

再婚による養育費減免の可否

民法には、養育費に関して次のような条文があります。

第880条
扶養にかかる協議または審判があった後事情の変更が生じた時は、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることが出来る。

つまり、養育費の支払に関して影響を与えるような事情の変更があれば、養育費の取り決めについても変更は可能であるということです。

問題は、再婚がこの「事情の変更」に該当するのかどうかです。

この点について、養育費を受け取る方が再婚した場合と、養育費を支払う方が再婚した場合に分けてご説明します。

以下では、多くの場合がそうであるように、養育費を支払う方を元夫、養育費を受け取る方を元妻として話を進めます。

元妻が再婚した場合

離婚時に養育費の取り決めをし、元夫がそのとおりに養育費を支払ったところ、元妻が再婚したというケースです。

元夫が「子どもの養育費はもう支払わなくて良いのではないか?」と考えるかもしれません。

免除とまではいかなくても、ある程度減額できるのではないかと思うのは当然でしょう。

この場合、確かに減額できる可能性はあります。

それは、元妻の再婚相手が子どもと養子縁組をした場合です。

念のため確認しておきますが、シングルマザーの女性と結婚したとしても、それだけで連れ子が再婚相手の子どもになるわけではなく、再婚相手と子どもの間に親子関係を発生させるには養子縁組が必要です。

元妻の再婚相手と子どもが養子縁組すると、再婚相手は子どもの父親になりますから、当然扶養義務が発生します。

これによって元夫の扶養義務が消滅するわけではありませんが、再婚相手が第一次的な扶養義務者、元夫は第二次的な扶養義務者となるため、元夫が支払う養育費の減額が認められる可能性が出てきます。

再婚相手の経済力によっては、免除されることもあり得るかもしれません。

逆に言うと、元妻が再婚したとしても、再婚相手が子どもと養子縁組をしなければ、再婚相手と子どもの間には何の法的関係も生まれないため扶養義務もなく、元夫はこれまでどおり養育費を支払う必要があります。

元夫が再婚した場合

養育費を支払い続けてきた元夫が再婚したというケースです。

元夫としては新しい家庭ができたわけですから、その分支出が増え、養育費の支払いが難しくなるのが一般的です。

「少し減額してもらいたい」と思ったとしても不思議ではありません。

この場合も減額できる可能性はありますが、ただ再婚したというだけでは難しいでしょう。

なぜなら、再婚相手の女性が高収入で、再婚前よりも経済的に余裕が出るということもあるからです。

元夫が負担する養育費を減額できるのは、再婚によって実質的な扶養家族が増えた場合です。

例えば、再婚相手が専業主婦またはパート従業員等で、この相手が元夫の扶養に入ると元夫は経済的な負担が増えますので、養育費を減額する合理性が出てきます。

ただし養育費算定の場面では、専業主婦だからといってその生活費が全て元夫の負担になると考えるわけではありません。

たとえ再婚相手が働いていなかったとしても、働ける状態であるなら稼働能力があるものとして、推定される収入を考慮に入れたうえで養育費減額の可否を判断することになります。

一方、再婚相手に連れ子がいて、その子と養子縁組をしたり再婚相手との間に子どもが生まれたりした場合には、確実に扶養家族が増えますので、減額が認められる可能性が高くなります。

ただ、元妻からすると元夫の再婚による養育費の減額請求というのは、元夫の個人的な都合によるものですから、そのような事情で養育費を減額されるのは不条理である、という不満がよくあります。

話し合いの際には、この点を必ず念頭に置いておきましょう。

なお、同棲相手や内縁の妻、またその子どもについては、たとえ扶養していたとしても入籍していないと原則として扶養義務が生じないため、養育費の減額は認められません。

再婚以外の事情による養育費の減免の可否

再婚によって養育費がどうなるか、だいたいご理解いただけたと思います。

次に、再婚以外に養育費に影響を与えそうな事情について、減免ができる場合とできない場合に分けてご紹介します。

養育費の減免が可能な場合

以下のような事実があると、「事情の変更」があったものとして、養育費の減免が認められる可能性が出てきます。

・予測できない事情による元夫の減収

離婚時には予想できなかった事情により、元夫の収入が減少した場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。

例えば、会社の倒産やリストラ、元夫の怪我や病気などです。

・元妻の増収

養育費を決める資料として、養育費算定表というものがあります。

参考:東京家庭裁判所 「養育費・婚姻費用算定表」

これは養育費の金額を決める際に裁判所で利用されているもので、ここに示される値が相場ということになります。

養育費算定表では、元夫と元妻の年収から養育費が決まります。

元夫の年収が高ければ高いほど養育費額も高くなり、元妻の年収が高ければ高いほど、養育費額は低くなるのです。

したがって、元妻の収入が増えると自動的に元夫が支払う養育費の金額は低くなるということですから、減額が認められる可能性があります。

養育費の減免が難しい場合

以下のような事実があったとしても「事情の変更」には該当せず、養育費の減免は難しいというのが一般的な考え方です。

・予測できる事情による元夫の減収

同じ元夫の減収でも、予測できない事情による場合は養育費の減免が可能であることがありますが、例えば自己都合による退職など、元夫の自主的な行動によって収入が減少した場合、養育費の減額を認めてもらうのは難しくなります。

・面会交流を拒否された

元夫の主張としては、実務上非常に多くあるもののひとつです。

子どもに会わせてもらえないのになぜ養育費を支払わないといけないのかという思いはよく理解できますが、残念ながら、養育費の支払いと、子どもとの面会は全く別のものです。

したがって、養育費の減免を求める理由とはなりません。

養育費の支払義務が復活する場合

条件次第で養育費の支払が減額または免除されるケースもあるわけですが、反対に、一旦なくなった支払い義務が復活するということがあります。

元妻側の事情

元妻が再婚相手と離婚した場合、通常は、再婚相手と子どもとの養子縁組は解除されます。

そうなると再婚相手は子どもの父親ではなくなりますので、再び元夫が大一時的扶養義務者という立場になり、養育費の支払義務が復活するというわけです。

また、元妻の再婚相手が高収入であるため、元夫の養育費が必要なくなり、養育費の支払が免除されたとしても、再婚相手の収入が減少し、子どもを養育する費用が不足する場合には、元夫の養育費支払い義務が復活します。

この場合、第一次的扶養義務者は再婚相手ですが、元夫も第二次的扶養義務者として不足する養育費を支払う必要が出てきます。

元夫側の事情

元妻側の事情と同様、元夫が離婚した場合も、新しい家族に対して負っていた扶養義務がなくなるのであれば、減額または免除されていた養育費支払い義務が復活することになります。

また、元夫の収入が増えて経済的な余裕が出てきた場合にも、減額または免除前の養育費額に戻すべきだということになります。

養育費は支払わないという取り決めがあった場合

離婚時の協議で、養育費は支払わないという取り決めがなされることがあります。

そのため、元夫が全く養育費を支払っていなかったところ、元妻から、やはり養育費が必要になったから支払ってほしいと請求された場合、子どもの病気や予想外の収入減など、合理的な理由があれば支払い義務が生じる可能性があります。

なお、養育費の請求権は子どもの権利であるため、親の一存でそれを放棄できるのかという問題があり、子ども自身から請求された場合には養育費を支払わなければならないこともあります。

減額請求はいつから認められるか

養育費の減免を求める際、払いすぎた養育費を返還してもらえるのかという点も問題になります。

例えば、元夫は協議で決めたとおり離婚後5年間毎月5万円の養育費を支払っていたところ、2年も前に元妻が再婚していたことを知ったという場合を考えてみます。

元夫は、「元妻の再婚直後にそのことを知っていればすぐに養育費の減額を申し出ていたのに」と主張するわけです。

もしそれが認められて毎月の養育費が2万円まで減額されたとすると、元夫は、差額の3万円について、本来支払う必要がないのに2年間支払い続けてきたということになります。

そこで、2年前に遡って支払いすぎた分を返還してほしいと元夫が求めた場合、この請求は認められるのかというと、結論はNOです。

養育費の減免については、過去に遡って支払いすぎた分の返還を求めることはできません。

もちろん、元妻がそれを認めて自主的に返還することは自由ですが、養育費減額調停では、調停を申し立てたときを基準とします。

このような事態を防止するには、離婚時の協議で、再婚をはじめとして養育費の支払いに影響がありそうな事情の変更があった場合には、互いにすぐg連絡するといった取り決めをしておくことが重要です。

まとめ

元夫が養育費を支払わない場合、元妻としては最終的に強制執行という手段をとることになります。

強制執行の対象としては不動産や動産もありますが、最も簡単で効果的なのは、給料の差し押さえです。

給料差し押さえの優れているところは、一度差し押さえると、その後の養育費も自動的に給料から支払われるようになるということです。

元夫としては、給料を差し押さえられるのは経済面だけではなく、勤務先内での問題もあるでしょうから、デメリットは相当大きいはずです。

そういったことにならないためにも、養育費を減免したい場合は一方的に支払い額を減額したり、支払いをストップしたりするのではなく、きちんと話し合って対応するようにしましょう。

監修弁護士
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