日本では「夫婦の3組に1組が離婚している」という話をよく耳にしますが、本当でしょうか。
2024年に結婚した夫婦は48万組、離婚した夫婦は18万組にのぼります。
この数字から見ると、結婚しても1/3以上の割合で離婚すると思うかもしれませんが、実はそうとはいえません。
「3組に1組が離婚」は本当なのか?
離婚率と言えばよく耳にするのが、「3組に1組が離婚している」といううわさです。
このうわさが本当なのかどうか検証してみましょう。
3組のうち1組が離婚になってしまうわけではない
「3組に1組が離婚している」と聞くと、結婚しても3組に1組は離婚するようなイメージがあるかもしれませんが、実はそうではないのです。
2024年人口動態統計によると、2024年の年間の婚姻件数は48万5063件で、離婚件数は18万5895件です。
ざっくりですが、離婚件数が婚姻件数の約3分の1となっていることがわかります。
ここで注意しておきたいのは、2024年に結婚した夫婦が2024年に離婚するわけではなく、2024年に離婚した夫婦の中には、さまざまな年度に結婚した夫婦が含まれるということです。
そのため、結婚した夫婦のなかで何組が離婚したかという数字とは異なります。
「3組に1組が離婚」という説は、単純に同じ年の婚姻件数と離婚件数を比較したもので、実際に離婚した割合ではありません。
離婚する夫婦の割合を算出するのは困難
では、実際に「結婚した夫婦のうち離婚する夫婦の割合」を計算するにはどうしたらいいのでしょうか。
実は、分母である「結婚した夫婦」を確定できるようなデータがないため、離婚する夫婦の割合を計算するのは事実上困難なのです。
「離婚率」の正確な意味と計算方法を知っておこう!
「離婚率」とはどういう意味でしょうか?
まずは、離婚率の正しい定義を確認してみましょう。
離婚率の計算方法
「離婚率」は、離婚が多いか少ないかを比較するときに使われる数値で、人口1000人あたりの離婚件数のことです。
離婚率は、次の計算式で算出します。
離婚率はパーセンテージではない
「離婚率」と聞くと、結婚した夫婦のうち何パーセントの夫婦が離婚するかという「割合や確率」を想像する方が多いかもしれません。
しかし、政府の統計で使われている「離婚率」は、結婚している夫婦に対するパーセンテージ(百分率)ではありません。
たとえば、離婚率1.00の場合、離婚率1パーセントということではないので、100組中1組が離婚しているという意味にはなりません。
離婚率1.00とは、先ほどの計算式から考えると、人口1000人あたり1組が離婚しているという意味になります。
日本の離婚率は1.69
我が国では、厚生労働省が毎年行っている「人口動態調査」にもとづく統計(人口動態統計)で、離婚率が集計されています。
2024年の人口動態統計で明らかにされている日本の離婚率は 1.55で、前年の2023年の1.52 よりわずかに上昇しています。
日本の離婚率は他国に比べて低め
「日本の離婚率は1.55」と聞いても、多いのか少ないのかピンとこないと思います。
そこで、我が国の離婚率が高いのか低いのかを考えるために、他国の離婚率と比較してみましょう。
「令和6年人口動態統計の年間推計 人口動態総覧(率)の国際比較」によると、日本、韓国、シンガポール、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、イギリスの9か国のうち、最も離婚率が高いのはアメリカの2.4、続いてスウェーデンの2.02となっており、日本は9か国中6位です。
国際的にみると、日本の離婚率は比較的低いことがわかります。
国 名 離婚率(人口千対) 日 本 1.55 韓 国 1.8 シ ン ガ ポ ー ル 1.7 ア メ リ カ 2.4 フ ラ ン ス 1.93 ド イ ツ 1.53 イ タ リ ア 1.40 ス ウ ェ ー デ ン 2.02 イ ギ リ ス 1.33
なお、結婚については各国で制度や慣習がかなり異なるため、離婚率のデータだけを見て離婚が多い国かどうかを単純に比較することはできません。
たとえば、ヨーロッパ圏では事実婚が多い傾向がありますが、事実婚は婚姻にカウントされないので、事実婚の夫婦が離婚しても離婚率のデータには反映されません。
離婚率の国際比較から夫婦が離婚しやすい国かどうかを判断するのは、実際には難しいと思われます。
日本の離婚率の推移
厚生労働省の人口動態統計における「人口動態総覧の年次推移」によると、1950年以降、10年ごとの離婚率の推移は次のようになっています。
離婚は増加の一途をたどっていると思っている方もいるかもしれませんが、2000年代(2000~2009年)においては、2008年こそ離婚率1.99となっているものの、それ以外の年は2.0を超えています。
2010年以降は2.0を切っていますので、近年はむしろ離婚は減少傾向です。
年代によって離婚率は違う?
夫婦が離婚する割合としての正確な離婚率を導き出すのは難しいですが、厚生労働省のデータから離婚する割合が高い年代を推測することはできます。
過去50年の離婚件数の推移
厚生労働省の人口動態統計によると、離婚件数は1964年以降毎年増加を続けていましたが、1984年からは減少しています。
平成に入ってからは再び増加傾向にありましたが、2002年の28万9836組をピークに減少傾向となっています。
同居期間が長い夫婦の離婚が増えている
同居期間別の離婚件数では、特に、同居期間が20年以上の夫婦の離婚件数が増加しているのが顕著になっています。
全体の離婚件数は、1985年度が16万6640件、2019年度が20万8496組で、約1.25倍の増加となっており、同居期間20年以上の夫婦の離婚件数は、1985年度は2万434件、2019年度は4万395件と1.97倍になっています。
そのうち、婚姻期間35年以上の夫婦に限っては、1985年度には1108件だったのが、2019年度には6361件と5.74倍となっています。
参考:厚生労働省 令和元年 人口動態統計月報年計(概数)の概況
熟年離婚が増加している理由
同居期間が長い夫婦の離婚件数が増加しているということは、熟年離婚が増えたということです。
熟年離婚が増えている原因の1つには、高齢化が考えられます。
夫婦のどちらかが早くに亡くなってしまえば当然離婚はできないため、高齢化によって離婚できる期間自体が長くなったと思われます。
また、2008年に始まった年金分割の制度も、熟年離婚を増やすきっかけになったと言われています。
特に、女性は中高年になってから離婚すると老後の生活費が心配という人が多いと思いますが、年金分割により年金をある程度確保できるようになったので、安心して離婚を選ぶ人が増えたと言えます。
まとめ
離婚率について説明してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか。
離婚率の意味を誤解していた方も多いかもしれませんが、離婚率とは、結婚した夫婦のうち離婚する夫婦の割合ではなく、人口1000人あたりの年間離婚件数のことです。
また、離婚率としてよく言われている「夫婦の3組に1組が離婚している」というデータは、その年に結婚した夫婦と離婚した夫婦の数を単純比較したもので、実際の離婚率や統計上の離婚率とは違います。
我が国の離婚件数は、近年特に増えているわけではないですが、熟年離婚は増加しています。
熟年離婚では、財産分与などで動くお金も大きくなるので、弁護士に相談して慎重に手続きをするのがおすすめです。
相談したほうがいい離婚の具体的な事例については「離婚問題で弁護士に相談するのがおすすめの相談内容(事例)」をご参照ください。