この記事でわかること
- 離婚率とは何かがわかる
- 「3組に1組が離婚する」は本当なのかがわかる
- 日本の離婚率は海外と比べてどうなのかがわかる
- 離婚が増えた年代や原因がわかる
日本では「夫婦の3組に1組が離婚している」という話をよく耳にしますが、本当でしょうか?
令和元年に結婚した夫婦は59万組、離婚した夫婦は20万組にのぼり、この数字から見ると、結婚しても1/3の割合で離婚すると思うかもしれませんが、実はそうとは言えないのです。
「離婚率」の正確な意味と計算方法を知っておこう!
「離婚率」とはどういう意味でしょうか?
まずは、離婚率の正しい定義を確認してみましょう。
離婚率の計算方法
「離婚率」は、離婚が多いか少ないかを比較するときに統計学上使われる数値で、人口1,000人あたりの離婚件数のことです。
離婚率は、次の計算式で算出します。
離婚率はパーセンテージではない
「離婚率」と聞くと、結婚した夫婦のうち何パーセントの夫婦が離婚するかという「割合や確率」を想像する方が多いかもしれませんが、統計学上使われている「離婚率」は、結婚している夫婦に対するパーセンテージ(百分率)ではありません。
たとえば、離婚率1.00の場合、離婚率1パーセントということではないので、100組中1組が離婚しているという意味ではなく、人口1000人あたり1組が離婚しているということになります。
日本の離婚率は1.69
我が国では、厚生労働省が毎年行っている「人口動態調査」にもとづく統計(人口動態統計)で、離婚率が集計されています。
令和元年の人口動態統計で明らかにされている日本の離婚率は 1.69で、前年の平成30年の1.68 よりわずかに上昇しています。
ちなみに、平成28年度の離婚率は1.73、平成29年度では日本の離婚率は、1.70でした。
(参考)厚生労働省 平成29年人口動態統計 結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei17/dl/02_kek.pdf
日本の離婚率は他国に比べて低め
「日本の離婚率は1.69」と聞いても、多いのか少ないのかピンとこないと思いますので、我が国の離婚率が高いのか低いのかを考えるために、他国の離婚率と比較してみましょう。
「令和元年人口動態統計の年間推計 人口動態総覧(率)の国際比較」によると、日本、韓国、シンガポール、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、イギリスの9か国のうち、最も離婚率が高いのはアメリカの2.9、続いてスウェーデンの2.47となっており、日本は9か国中8位です。
国際的にみると、日本の離婚率はかなり低いことがわかります。
国 名 離婚率(人口千対) 日 本 1.69 韓 国 2.1 シ ン ガ ポ ー ル 1.8 ア メ リ カ 2.9 フ ラ ン ス 1.93 ド イ ツ 1.79 イ タ リ ア 1.51 ス ウ ェ ー デ ン 2.47 イ ギ リ ス 1.80
なお、結婚については各国で制度や慣習がかなり異なるため、離婚率のデータだけを見て離婚が多い国かどうかを単純に比較することはできません。
たとえば、ヨーロッパ圏では事実婚が多い傾向がありますが、事実婚は婚姻にカウントされないので、事実婚を解消しても離婚率のデータには反映されません。
離婚率の国際比較から夫婦が離婚しやすい国かどうかを判断するのは、実際には難しいと思われます。
日本の離婚率の推移
厚生労働省の人口動態統計における「人口動態総覧の年次推移」によると、1950年以降、10年ごとの離婚率の推移は次のようになっています。
離婚は増加の一途をたどっていると思っている方もいるかもしれませんが、2000年代(2000~2009年)においては、2008年こそ離婚率1.99となっているものの、それ以外の年は2.0を超えています。
2010年以降は2.0を切っていますので、近年はむしろ離婚は減少傾向です。
「3組に1組が離婚」の根拠は?
離婚率と言えばよく耳にするのが、「3組に1組が離婚しているのでは?」といううわさです。このうわさが本当なのかどうか検証してみましょう。
3組のうち1組が離婚になってしまうわけではない
「3組に1組が離婚している」と聞くと、結婚しても3組に1組は離婚するようなイメージがあるかもしれませんが、実はそうではないのです。
令和元年人口動態統計によると、令和元年の年間の婚姻件数は59万9007件で、離婚件数は20万8496件です。ざっくりですが、離婚件数が婚姻件数の約3分の1となっていることがわかります。
ここで注意しておきたいのは、令和元年に結婚した夫婦が令和元年に離婚するわけではなく、令和元年に離婚した夫婦の中には、さまざまな年度に結婚した夫婦が含まれるということです。そのため、結婚した夫婦のなかで何組が離婚したかという数字とは異なります。
「3組に1組が離婚」という説は、単純に同じ年の婚姻件数と離婚件数を比較したもので、実際に離婚した割合ではありません。
離婚する夫婦の割合を算出するのは困難
では、実際に「結婚した夫婦のうち離婚する夫婦の割合」を計算するにはどうしたらいいのでしょうか?
実は、分母である「結婚した夫婦」を確定できるようなデータがないため、離婚する夫婦の割合を計算するのは事実上困難なのです。
年代によって離婚率は違う?
夫婦が離婚する割合としての正確な離婚率を導き出すのは難しいですが、厚生労働省のデータから離婚する割合が高い年代を推測することはできます。
過去50年の離婚件数の推移
厚生労働省の人口動態統計によると、離婚件数は昭和39年以降毎年増加を続けていましたが、昭和59年からは減少しています。
平成に入ってからは再び増加傾向にありましたが、平成14年の28万9,836組をピークに減少傾向となっています。
同居期間が長い夫婦の離婚が増えている
同居期間別の離婚件数では、特に、同居期間が20年以上の夫婦の離婚件数が増加しているのが顕著になっています。
全体の離婚件数は、昭和60年度が16万6,640件、令和元年が20万8496組で、約1.25倍の増加となっており、同居期間20年以上の夫婦の離婚件数は、昭和60年度は2万434件、令和元年は4万395件と1.97倍になっています。
そのうち、婚姻期間35年以上の夫婦に限っては、昭和60年度には1,108件だったのが、令和元年には6,361件と5.74倍となっています。
参考:厚生労働省 令和元年 人口動態統計月報年計(概数)の概況
熟年離婚が増加している理由
同居期間が長い夫婦の離婚件数が増加しているということは、熟年離婚が増えたということです。
熟年離婚が増えている原因の1つには、高齢化が考えられます。夫婦のどちらかが早くに亡くなってしまえば当然離婚はできないため、高齢化によって離婚できる期間自体が長くなったと思われます。
また、平成20年に始まった年金分割の制度も、熟年離婚を増やすきっかけになったと言われています。
特に、女性は中高年になってから離婚すると老後の生活費が心配という人が多いと思いますが、年金分割により年金をある程度確保できるようになったので、安心して離婚を選ぶ人が増えたと言えます。
まとめ
離婚率について説明してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?
離婚率の意味を誤解していた方も多いかもしれませんが、離婚率とは、結婚した夫婦のうち離婚する夫婦の割合ではなく、人口1,000人あたりの年間離婚件数のことです。
また、離婚率としてよく言われている「夫婦の3組に1組が離婚している」というデータは、その年に結婚した夫婦と離婚した夫婦を比較したもので、実際の離婚率や統計上の離婚率とは違います。
我が国の離婚件数は、近年特に増えているわけではないですが、熟年離婚は増加しています。熟年離婚では、財産分与などで動くお金も大きくなるので、弁護士に相談して慎重に手続きをするのがおすすめです。
相談したほうがいい離婚の具体的な事例については「離婚問題で弁護士に相談するのがおすすめの相談内容(事例)」をご参照ください。