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新型コロナウイルスの流行で離婚は増えたのか…その理由と離婚への条件を解説

 

北浜法律事務所・外国法共同事業_川原 大輝 弁護士
監修弁護士:川原 大輝 弁護士(北浜法律事務所・外国法共同事業)

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■所属弁護士会:大阪弁護士会
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この記事でわかること

  • 新型コロナウイルスの流行と離婚についての関係を知ることができる
  • 新型コロナウイルスの流行が原因で離婚したいときの方法がわかる
  • 新型コロナウイルスで裁判離婚できるのかがわかる

新型コロナウイルスは、日本国内だけでなく世界的に大流行しました。

現在(2023年3月)では、病気の実態がつかめてきたり、有効なワクチンが開発されたりして、流行当初の得体のしれない病気ではなくなりつつあります。

しかし、依然として新型コロナウイルスの流行は、まだみなさんの生活に大きな影響を与える可能性がある病気です。

影響とは、身体への負担だけではなく、状況によって夫婦関係にも関わり、離婚に至ってしまうケースも少なくないです。

病気と離婚、一見するとまったく関係性がないようにも思えますが、どのような関わりがあるのでしょうか。

 

コロナショックによって生活スタイルが変わり離婚を考えるひとが多くなった

新型コロナウイルスによって、2020年4月に緊急事態宣言が発令され、医療従事者や福祉関係の方、公共交通機関で働いている方等、実際に職場に行って仕事をしなければならない方以外は、テレワークによる勤務を推奨されていました。

また、当時政府が要請する中には、「外出自粛」「学校や保育園等の休校措置」もありました。

自由に外出することがなかなかできず、家族全員が家の中にいる生活環境は、住宅事情等によって、大きな負担が伴います。

急激な生活スタイルの変化によって、負担が大きくなった結果、家庭内での「ズレ」が大きくなり、離婚を考えるひとが増えたのではないかと考えられます。

 

新型コロナウイルスで離婚のきっかけとなる7つの理由

新型コロナウイルスの影響によって、離婚を意識するきっかけになる理由とは具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

主に考えられる理由として、次の7つがあります。

 

①常に一緒にいることでストレスを感じる

新型コロナウイルスによって離婚を考える理由のひとつとして、「常に一緒にいることでストレスを感じる」ことが挙げられます。

2年間に及ぶコロナ禍によって、企業によっては、社員の出社率等を下げたり、効率化を図ったりするために、テレワークに切り替えたケースもあります。

テレワークへの切り替えの結果、住宅事情にもよりますが、夫婦が常に一緒にいなければならないならないケースが増えました。

特に都市部は家賃等が高いため、地方部に比べて狭い間取りの住宅に住む傾向が高いです。

気心の知れた相手であっても、常に一緒に過ごして自分一人の時間がなくなると、誰もがストレスを感じます。

お互いが心の余裕を無くした結果、相手への不満が募り、離婚を考えるまでに至ってしまうケースがあるのです。

 

②危機管理意識の相違

ひとの性格が異なるように、危機管理意識もまた人によって異なります。

新型コロナウイルスは流行当初、「未知のウイルス」の扱いでした。

未知のウイルスに対する危機回避の対応として、「マスクの装着」だったり、「外出を控える」だったり、「飲み会にはいかない」等の手段があります。

感染防止対策を意識して、自制をかける度合いはそれぞれの持つ危機管理意識によって違います。

夫婦双方が、共通認識を持って、自制することができればよいのですが、必ずしもうまくいくとは限りません。

危機管理意識は流行り病だけでなく、災害等への対応にも繋がるところがあるので、「このままこのひとといて万が一のことがあった場合大丈夫なのだろうか」という不安を覚え、離婚のトラブルに発展することもあるのです。

 

③神経質が加速する

心理学上、ひとは危機回避のために、ネガティブな情報に強く影響を受ける傾向にあります。

新型コロナウイルスに関しても当初は、インターネットやテレビ等のメディアを通し、ネガティブな情報が多く発信されていました。

2022年の出来事でいうと、ロシアによるウクライナ侵攻があげられます。

正確な情報が何なのかわからないままでいると、それぞれが考えた最悪の想定が前提事実となってしまい、バイアスがかかることは少なくありません。

結果、物事に関して過敏に反応してしまったり、ポジティブなニュースや他のひとの意見を自分の中に落とし込めなくなってしまったりすることがあります。

不安感が強く、神経をとがらせている状態が続くと、感情の発露の先が周囲のひとに向くことになります。

感情を自分で制御できれば良いのですが、不安感が強い場合、「怒り」として自身の感情を周囲にぶつけ、精神のバランスを取ろうとすることは少なくありません。

その結果、配偶者や子どもに対し攻撃的な態度をとり、離婚問題になることもあります。

 

④育児のストレスが増える

新型コロナウイルスが流行した初期は、子どもの保育園や幼稚園、学校が休校措置になることが多くありました。

休校措置が数か月にわたることもあり、育児をしながらリモートで仕事をしなければならないというケースは少なくありませんでした。

休校措置が解除された以降であっても、新型コロナウイルスの家庭内感染によって、2週間から1か月程度、育児と仕事を自宅でしなければならない状況も考えられます。

ご自身と配偶者が協力し合って育児に当たることができればいいですが、一方に偏ってしまうと、「同じ状況なのになぜ多く負担しなければならないのか」という不満が生まれます。

不満が小さいうちに解消することができず、不満が積み重なって大きくなると離婚に発展してしまう可能性が高くなります。

 

⑤生活に対する不安

解決する手立てのない問題を抱えたままでいると、次第にその問題は「生活に対する不安」に変化することがあります。

新型コロナウイルスが流行した当初、これまでにないイレギュラーな状況になり、出口の見えない不安で、精神が安定しない方も少なくなかったでしょう。

特に、自分や配偶者が影響を受けやすい業種に就いている場合には、失業や減給などの不安が大きくなります。

経済的に不安定であることによって、配偶者と言い争いになり離婚を考える方も少なくないでしょう。

 

⑥夫婦間のコミュニケーション不足

生活や家族関係に関する不満や不安の解消には、夫婦間の話し合いが重要です。

夫婦が良好な状態とは、必ずしも双方に恋愛感情が必要になるわけではありません。

新婚当初のような恋愛関係ではなく、一緒に長く過ごすにつれて友情や連帯感、親愛関係等その夫婦にあったかたちで結ばれていきます。

どんな夫婦のかたちであれ、大切なことは会話をすることです。

そのため夫婦双方がコミュニケーションをとろうと努力している場合、「コロナ禍前よりも家族関係が良好になった」と感じる方も少なくありません。

一方で、コミュニケーションがうまく図れずにいると、夫婦で協力体制をとることができず、関係が悪化する可能性が高いです。

 

⑦DVやモラハラの被害に遭うようになった

新型コロナウイルスで外出自粛等の措置が行われた結果、DV被害やモラハラ被害が増加したとされています。

自分の思うとおりに行動できないということは、かなりの精神的負荷がかかります。

ストレス発散の手立てとして、配偶者や子どもに対しDVを行ったり、暴言や高圧的な態度等、モラハラめいた行動をとったりすることがあります。

もともとDVやモラハラは、家庭という小さな世界で行われているため、なかなか露見しにくい傾向にありました。

新型コロナウイルスの流行によって、家庭が更に閉鎖的になって、周囲がDVやモラハラに気づきにくくなりました。

ストレスを溜め込むと、普段は温厚な人でも暴力的、攻撃的になることがあります。

DVを受けていた場合、ご自身やお子さんの安全を第一に、別居を考えてください。

2022年9月現在、政府の方針で今後外出自粛等の行動制限が撤廃されつつあります。

とはいえ、2020年4月以降の外出自粛をきっかけにDVが日常化していることも否めません。

暴力が日常化するとどんどん過激になり、最悪命を失う危険もあるのです。

そんなときは、公的機関でも親族の方でもいいので、事情を話してまずは別居できるようにしましょう。

また、モラハラに関してもいつ身体的な暴力に発展するか限りません。

限界まで我慢するとうつ病等の精神疾患になってしまうこともありますので、できるだけ早く加害者と物理的に距離をとることが大切です。

 

新型コロナウイルスを理由に離婚ができるのか

新型コロナウイルスの感染拡大による生活の変化をきっかけに、夫婦関係が悪化した場合、離婚することができるのでしょうか。

さっそく離婚できる条件について詳しく解説していきたいと思います。

 

夫婦双方の合意があれば離婚できる

結論から言うと、夫婦双方の合意があれば、離婚の原因や理由がどうであれ、離婚することが可能です。

例えば、テレワークの長期化による夫婦関係の悪化や、新型コロナウイルスの感染防止をめぐる価値観の違いを理由に離婚することができます。

ただし、夫婦の話し合いで離婚を成立させるためには、ご自身が夫婦関係を続けられないと判断した理由はもちろんのこと、修復することが可能なのか等をしっかり説明して納得してもらう必要があります。

また、夫婦の共有財産をどう分けるのか、子どもの親権はどちらが持つのか、養育費はどうするのか等、話し合うべきことをきちん決めてから離婚すべきです。

離婚後でも調停等を申し立てれば話し合えることもありますが、夫婦で話し合いできる状況ならば、極力離婚前に話し合いをすべきです。

というのも、何も決めないで離婚してしまうと、後になって「財産分与したい」「養育費を取りたい」と思っても、相手方と連絡がつかなくなってしまうリスクもあるからです。

夫婦の話し合いでは、解決が難しいと感じたときには、早めの段階で離婚調停を家庭裁判所に申し立てて、調停委員を交えて話し合うことも検討してください。

 

裁判になると法定離婚事由が必要

新型コロナウイルスの流行がきっかけで夫婦関係が悪化し、離婚問題に発展した場合、裁判で離婚の可否を問えるのでしょうか。

離婚の場合、家族の身分関係のことはできるだけ話し合いで解決するべきという考えから調停前置主義が採用されています。

そのため離婚訴訟で争う前には、原則として離婚調停で話し合うことになります。

離婚調停でも話し合いがまとまらず、法律で定められている裁判ができる離婚事由に当てはまる場合に離婚裁判をすることができます。

法律で定められている裁判できる離婚事由のことを法定離婚事由ともいい、次のようなものがあります。

 

■法定離婚事由

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 配偶者が強度の精神病で回復が見込めない場合
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

 

①から⑤にあてはまるような離婚事由としては、次のような物が考えられます。

 

  • 出社すると嘘をついて不貞行為をしていた
  • テレワークのストレスを配偶者に暴力をふるうことで発散していた
  • テレワーク中に休校中の子どもがうるさいので殴ることを繰り返した

 

これらのような理由の場合、離婚訴訟で離婚の可否を問うことができます。

離婚訴訟で離婚が認められるかどうかは、夫婦の婚姻関係が修復できないくらい破綻しているかどうかがひとつの基準となります。

離婚訴訟を起こした場合には、ご自身が「婚姻関係が破綻している」ということを裁判官が納得できるような、客観的な証拠を用いて立証する必要があります。

相手の同意を得ず離婚することというのは、離婚訴訟で勝訴することなので入念な裁判の準備が必要となります。

 

コロナ離婚を回避する方法はあるのか

新型コロナウイルスによって夫婦関係が悪化した場合、離婚を回避する手立てはあるのでしょうか。

離婚の回避が可能かどうかは、夫婦関係が悪化した原因に大きく左右されます。

例えば、不貞行為や、DV、子どもへの虐待等で離婚を切り出された場合、「もうしないから」と真摯に反省し、謝罪したとしても「許すことができない」と考える方もいらっしゃるでしょう。

一方で、「夫婦喧嘩が多発して夫婦関係が悪化した」、「育児や家事の分担に不満がある」等の場合、長年の不満が積もっている状態でなければ、話し合いで改善する余地があります。

夫婦の一方に不満がある場合には、率直に不満を伝えることを考えてください。

「これくらい察してよ」、「リモートなんだしこれくらいやってよ」と思うこともあるかもしれませんが、「これくらい」が具体的にどの程度なのかはひとによって異なります。

またひとによっては、察することが苦手なひともいます。

したがって、家事や育児の分担等に不満があるのであれば、「どんな家事や育児」を「具体的にどれくらい」負担してほしいのかを伝えてみてください。

更に付け加えるのであれば、けんか腰で伝えるのではなく、冷静に伝えることが大切です。

夫婦であっても、価値観や考え方がすべて同じではありません。

価値観や考え方を共有して、ご自身が譲歩したり、相手に妥協してもらったりすることで、認識をすり合わせることが重要なのです。

 

コロナ離婚の場合慰謝料はどれくらいもらえるのか

新型コロナウイルスがきっかけで離婚が成立した場合、慰謝料はどれくらいもらえるのでしょうか。

 

双方に原因がない場合には慰謝料は発生しない

離婚の慰謝料とは、配偶者が婚姻関係を破綻するような行為をして、ご自身の権利を侵害された場合に請求できるものです。

そのため、「お互いストレスが溜まっていて夫婦喧嘩が多発した」、「一緒に過ごす時間が長くなって性格が合わないことに気づいた」等、双方に離婚原因がないときには慰謝料を請求することができません。

 

相手方に離婚原因となる有責行為があれば慰謝料を請求できる

ご自身の配偶者に法律上の離婚事由となりえる行動がある場合には慰謝料を請求することができます。

離婚原因を作った配偶者のことを有責配偶者といいます。

有責行為に当たるような行動として、不貞行為やDV、モラルハラスメント等が挙げられます。

慰謝料の相場については、証拠の有無や悪質性、配偶者の経済状況にもよりますが、大体50万円から300万円程度とされています。

 

まとめ

今回は新型コロナウイルスと離婚の問題について解説していきました。

急激に生活が変化すると、精神的な負荷がかかる可能性が高くなります。

精神的な負荷、つまりストレスがたまると、心に余裕がなくなってそれまで許せていた配偶者の行動が許容できなくなってしまうことがあります。

新型コロナウイルスをきっかけとして、離婚を意識したときには、すぐに離婚を切り出すのではなく、夫婦のコミュニケーションのあり方を見直すことによって問題が解消されることもあります。

夫婦関係が悪化したが新型コロナウイルスの影響による一時的なものなのか、もしくは根本的に抱えた問題なのかを冷静に考える必要があります。

そのうえで離婚を望む場合には、ご自身に不利な離婚とならないように準備を進めていきましょう。

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