この記事でわかること
- 性格の不一致が原因の離婚で財産分与できるかわかる
- 性格の不一致で離婚するときの財産分与の方法や注意点がわかる
- 性格の不一致による離婚で高額の財産分与を獲得する方法を理解できる
さまざまある離婚原因のひとつが「性格の不一致」です。
性格の不一致が原因で離婚するときは、財産分与はできるのでしょうか。
離婚のときは財産分与できるという話を耳にし「性格の不一致による離婚でもできるのだろうか」と疑問に思う方もいるのでしょう。
この記事では、性格の不一致による離婚時の財産分与の可否や財産分与の流れ、財産分与で財産を多く獲得する方法や注意点などを解説します。
離婚原因性格の不一致とは
離婚原因の「性格の不一致」を一言で説明すると「配偶者と考え方や意見、嗜好、性格、価値観などがあわない」ということです。
性格の不一致は非常に広い意味で使われています。
たとえば、配偶者とお金の使い方に対する考え方があいませんでした。
これもひとつの性格の不一致です。
テレビ番組を見て、夫は妻が好まないようなシーンで笑います。
対して夫は妻が感動するシーンを「つまらない」と言います。
これも一種の性格の不一致です。
子育てに対する方針が妻と夫ではまるでかみ合わない。
これも性格の不一致になります。
金銭から食べ物、日常生活、正義などの価値観など、ちょっとしたことから深刻なことまで「あわないな」と感じることが性格の不一致なのです。
とても広い意味で使われていることがわかっていただけたのではないでしょうか。
この「あわないな」である性格の不一致が離婚原因になることがあります。
性格の不一致で離婚すると、離婚原因は性格の不一致になるのです。
性格の不一致による離婚は、DVや不貞行為のように夫婦の片方に違法な原因があるわけではないという点が特徴になります。
性格の不一致は夫婦のどちらかに責任があるわけではない離婚原因です。
性格の不一致が原因で離婚できるのか
性格の不一致が原因でも夫婦が納得していれば問題なく離婚できます。
夫婦が話し合って双方が納得のうえで離婚届を提出すれば、原因が何であれ問題なく離婚可能です。
夫婦の話し合いによる離婚を協議離婚といいます。
夫と妻が納得して離婚届を提出したなら、性格の不一致が原因でも離婚は成立するのです。
しかし、夫婦の話し合いで決着がつかなければ話は別になります。
協議離婚できないときは調停離婚を目指しますが、調停はあくまで話し合いによって離婚問題の解決をはかるため、夫婦の意見が一致しないときは難航するのです。
たとえば夫婦が「離婚する」と意見が一致している場合は、スムーズに離婚できるかもしれません。
しかし夫婦の片方が「離婚したい」と言い、もう片方が「離婚したくない」と強固な姿勢を見せている場合は、調停でも決着がつかない可能性があります。
調停離婚が難しい場合は裁判離婚を目指します。
性格の不一致だと裁判での離婚は難しい
裁判離婚では法律の定めた離婚事由(民法770条)に合致しているかどうかが重要です。
法律の離婚事由には不貞行為や悪意の遺棄などの記載はありますが、性格の不一致という記述はありません。
性格の不一致で離婚したい場合は、離婚事由の中の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが問題になります。
その他婚姻を継続し難い重大な事由に性格の不一致が該当するかどうかは、不一致の程度や事情などを考慮して判断されるため、離婚が認められるケースと認められないケースがあるのです。
性格の不一致が離婚原因の場合、裁判で離婚が認められるかどうかは、婚姻関係が破綻しているかなどを総合的に考慮して、ケースバイケースで判断されます。
基本的に「性格がちょっとあわない」「嗜好があわない」「テレビ番組や好きなお店の好みが違う」くらいの性格の不一致では、離婚を認めてもらうのは難しいのが現実です。
なお、性格の不一致以外にも不貞行為などの離婚事由が重なっており、他の事由もあわせて離婚を請求している場合などは、話が変わってきます。
性格の不一致だけでは認められなくても、他の離婚事由も考慮して離婚が認められる可能性があるのです。
財産分与は基本的に2分の1ずつ
離婚原因が性格の不一致だった場合に財産分与はどうなるのかが問題です。
結論からいうと、性格の不一致で離婚しても財産分与は問題なくできます。
なぜなら、財産分与は婚姻中に培った夫婦の財産を分割する作業だからです。
離婚原因が財産分与でも、婚姻中の財産を離婚のときに夫婦で分けなければならないことは変わりません。
よって、離婚原因が性格の不一致でも財産分与できるという結論です。
財産分与の基本的な分割割合は2分の1になります。
夫婦で半分ずつです。
たとえば預金が1,000万円あり、他に分割すべき財産がなかったとします。
財産分与の対象になる財産は1,000万円なので、夫婦で500万円ずつ分けるのが基本です。
ただし、財産分与は夫婦の話し合いで自由に決められますので、2分の1は絶対ではなくあくまで基本事項になります。
夫婦で話し合って双方が納得したら「9対1で分ける」「夫は収入が多いので妻がすべてもらう」などでもよいのです。
不一致が離婚原因でも財産分与でき、原則は2分の1 である。
ただし夫婦の話し合いで好きに決めてよい。
以上が性格の不一致が原因で離婚するときの財産分与になります。
性格の不一致による離婚は多く財産を請求される可能性がある
性格の不一致による離婚の財産分与も、他の事情による離婚の財産分与と基本は同じです。
ただ、離婚原因が性格の不一致という点で財産分与をおこなうときに、分与する財産を多く請求されるケースがあります。
性格の不一致による離婚を夫婦の片方が認めており、もう片方が認めていない(渋々承諾した)などのケースでは「離婚する代わりに財産を多くもらいたい」と言われることがあります。
あるいは、「離婚を承諾する代わりに財産はすべて欲しい」と主張される可能性もあるのです。
財産分与で多く渡せばスムーズに離婚できる、渡すことを承諾しなければ離婚が難航するというケースになります。
すでにお話ししましたが、性格の不一致が離婚原因の場合、裁判での離婚は難しいのが現実です。
つまり、相手の「財産分与を多くして欲しい(財産を全部欲しい)」という要求に応じなければ、離婚すらできない可能性があるわけです。
このようなケースでは、離婚を渋っている(あるいは承諾していない)配偶者の要求に応じるか、それとも離婚を諦めるかという二択になることも珍しくありません。
前述のように、性格の不一致による離婚でも財産分与でき、基本的には夫と妻の分割割合は2分の1です。
ただ、性格の不一致による離婚では「離婚の承諾代わりに財産分与を有利にして欲しい」と要求される可能性もあるため、財産分与の割合が変わってくる可能性があります。
また、財産分与に対する要求が原因で離婚トラブルに発展するリスクもあるのです。
財産分与の金額を決める方法・流れ
性格の不一致による離婚で財産分与するときは、以下の流れで決めます。
- ・話し合い
- ・調停
- ・裁判
財産分与の流れと方法をより具体的に見ていきましょう。
財産分与はまず話し合いで決める
財産分与は離婚する夫婦の話し合いで自由に決められることになっています。
離婚も話し合いで自由に決められるわけですから、財産分与も話し合いで決められないと大変です。
離婚は協議で決めたのに、財産分与のことで裁判所を使わなければならなくなります。
だからこそ、財産分与も基本的に夫婦の話し合いで決められるようになっているのです。
財産分与の割合は夫婦2分の1ずつになります。
ただ、離婚する夫婦によって財産状況や収入状況はさまざまです。
夫婦の財産状況や収入状況にあわせて、財産分与の割合も夫婦で自由に決めてよいことになっています。
財産分与の対象になる財産は預金や不動産、有価証券などです。
住宅ローンなどがあれば、返済をどうするかなどもあわせて決める必要があります。
なお、婚姻中に発生した財産でも、その財産が婚姻関係と無関係の場合は、性格の不一致による離婚の財産分与対象外になります。
相続により取得した財産などがこれにあたります。
性格の不一致による離婚の財産分与を話し合いで決めるときは、決まった流れは存在しません。
最終的に話し合いで双方が財産分与の内容に納得すれば問題ないのです。
ただ、分与し忘れた財産を出さないためにも、財産分与の対象になる財産はリストアップしておきましょう。
話し合いで財産分与が決まらなければ調停
性格の不一致による離婚で財産分与を話し合いでまとめることができなかった場合は、裁判所の調停手続きを使います。
性格の不一致で財産分与を決める場合は、2通りの調停が考えられます。
ひとつは「離婚調停(夫婦関係調停調整)」を提起して、離婚と財産分与をあわせて話し合う場合です。
こちらは、離婚するかどうかで揉めているケースや、財産分与と離婚の両方で揉めている場合などに使います。
もうひとつは、財産分与で揉めているときに使える調停「財産分与請求調停」を使うかです。
事情にあわせて調停を使い分けましょう。
調停を申し立てる場合は、調停の申し立てに必要な書類を準備し、裁判所で手続きをおこないます。
必要書類は調停の申し立て書や夫婦の戸籍謄本、財産目録、財産に関する書類などです。
調停を申し立てる裁判所は、離婚を申し立てる相手の住所地を管轄する裁判所になります。
調停では調停委員という第三者が話し合いに関与します。
調停委員はどちらかの味方になるのではなく、当事者の話し合いが上手くまとまるようにサポートする存在です。
また、調停は裁判所での手続きですが、話し合いによって解決を目指します。
裁判のような判決はありません。
話し合いがまとまれば成立、まとまらなければ不成立になるのです。
調停で財産分与が決まらなければ裁判
調停は裁判官による判決がありません。
よって、調停で当事者が性格の不一致による離婚や財産分与について話しても、解決にいたらず不成立になることがあるのです。
調停で性格の不一致による離婚や財産分与が決まらなければ、最終的に裁判で決着をつけることになります。
裁判も調停と同じく申し立てによりスタートします。
裁判所で裁判の申し立てをするときに必要な書類は訴状などです。
訴状提出後に相手方にも訴状が送られ、第一回口頭弁論が開かれます。
以降も口頭弁論を繰り返し、最終的に判決という流れです。
この他に、離婚事由の証明に必要な証拠が重要になります。
裁判による離婚が認められるかどうかは離婚事由に該当するかどうかがポイントです。
不貞行為や悪意の遺棄などが法律に定められた離婚事由になります。
性格の不一致は法律の離婚事由の一覧に記載がないため、婚姻を継続しがたい重大な事由に該当するかが問題になるという話はすでにしました。
性格の不一致による離婚が認められるかはケースバイケースなので、認めてもらうためにも証拠が重要になるのです。
裁判は法的な知識を要する手続きになります。
証拠も重要になることから、離婚問題に強い弁護士に相談して対策を取ることをおすすめします。
高額の財産分与を獲得するための方法
財産分与は財産を分けるという点で離婚後の生活にも関係します。
財産分与を有利に進められれば、離婚後の生活基盤も安定することでしょう。
性格の不一致による離婚の場合に財産分与を有利に進めたいときは、どのような方法を取ればよいのでしょう。
高額の財産分与を獲得する方法は3つあります。
自分の貢献度をしっかり主張する
夫婦で培った財産は夫婦双方の貢献があってこそ。
ただ、自分が特に貢献した場合は、その点についてしっかりと配偶者に主張すべきです。
たとえば、自分の親が亡くなり遺産を相続しました。
相続した財産で夫婦の住居である不動産を大修繕したとします。
このようなケースでは財産分与の対象にならない遺産から夫婦のためにお金を払ったわけですから、その点について主張することが重要です。
また、配偶者が生活のためにお金を入れてくれなかったり、一方的に家を出て行ってしまったりした場合は、その分だけ生活費を負担していたなどの事情があるのではないでしょうか。
性格の不一致による離婚の財産分与の際は、夫婦の財産への特別な貢献があればしっかり主張し、財産分与について配慮してもらえるよう伝えましょう。
財産はしっかり調べておく
性格の不一致による離婚の財産分与のときは、あらかじめ財産を確認しておくことが重要です。
財産を確認しておかないと、財産分与の対象のなる財産を見逃した結果、分与される財産が減ってしまう可能性があります。
財産分与の対象を漏らさないためにも、財産の確認はしっかりおこなうことが必要です。
確認しておきたいのは、以下のような財産です。
付記しているのは、それぞれの財産の調査に使える書面などになります。
- ・配偶者の預金 / 配偶者の預金通帳など
- ・配偶者の収入状況 / 確定申告書や給与明細など
- ・株などの有価証券 / 証券会社の口座の明細など
- ・不動産 / 不動産登記簿など
- ・保険 / 生命保険の契約書など
配偶者が財産隠しをしているときは証拠探しをおこなう
配偶者が財産隠しなどをおこなった結果、不平等な財産分与がされてしまうかもしれません。
漏れなく財産分与をするためにも、財産の調査はしておきましょう。
性格の不一致による離婚での財産分与では、前の見出しで挙げた財産の情報になる証拠を集めることが第一です。
ただし、中には容易に財産に関する情報を集められない場合もあります。
たとえば配偶者が給与明細や預金通帳などを隠しているケースです。
このようなケースでは配偶者も警戒していますので、思うように財産調査が進まないことがあります。
配偶者が財産隠しなどをしている可能性があり、自分で財産調査することが難しい場合は、離婚問題に強い弁護士に相談して財産調査してもらうことをおすすめします。
配偶者が預金の情報を開示しない場合は、弁護士の弁護士照会制度で預金を確認できる可能性があるのです。
また、有価証券や預金の情報を配偶者が秘匿している場合は、裁判所に調査嘱託を申し立てることによって所在や情報が明らかになる可能性があります。
自分で財産調査をすることが難しく、配偶者が財産分与に際して財産隠しなどをしている場合は、高額の財産分与を受けるためにも弁護士を頼りましょう。
性格の不一致で離婚するときの注意点
性格の不一致で離婚するときは注意したいポイントが3つあります。
性格の不一致による離婚では財産分与以外に、以下の3つのポイントにも注意して離婚を進めましょう。
親権が決まらないと性格の不一致による離婚はできない
性格不一致が原因で協議離婚するときは特に注意したいポイントです。
子供がいる場合は、子供の親権者が決まらないと離婚できません。
なぜなら、離婚届には親権者の記載欄があるからです。
離婚届の親権者の記載欄が空白だと、離婚届が受理されません。
よって、性格の不一致を理由に協議で離婚を決めても、親権者が決まらないと離婚できないのです。
性格の不一致が原因で離婚する場合は、忘れずに親権者を決めてください。
性格の不一致で離婚するときは養育費なども決める
性格の不一致で離婚するときは、財産分与だけでなく養育費なども決めることが重要です。
養育費とは子供を養育するための費用になります。
養育が必要な子供がいれば、離婚後も父母として子育てしなければいけません。
性格の不一致により夫婦は離婚するかもしれませんが、子供にとっては離婚後も変わらず父母なのです。
養育費は基本的に非親権者(子供の別居する側の親、親権を持たなかった側の親)が支払います。
養育費については父母の話し合いで額を決めることが可能なので、忘れずに話し合っておくことが大切になります。
養育費の相場については、裁判所で公開している「養育費算定表」が参考になります。
なお、養育費算定表はあくまで相場の参考なので、算定表以上の額を養育費額に定めても差し支えありません。
性格の不一致による離婚や財産分与で揉めたら弁護士に相談する
性格の不一致による離婚を切り出しても、離婚に応じてもらえない場合があります。
性格の不一致による離婚はケースにもよりますが、裁判で認めてもらうことが難しいのも実情です。
配偶者が離婚に応じず、裁判も難しい。
このようなケースでは一人で悩まず弁護士に相談してみてはいかがでしょう。
弁護士に離婚のアドバイスを受けることが可能です。
この他に、性格の不一致による離婚自体には夫婦で合意できても、財産分与や養育費、親権などで揉めてしまうこともあります。
特に揉めていなくても、財産分与で多く請求されて困ったり、配偶者に財産隠しをされてしまい難航したりする可能性もあるのです。
性格の不一致により離婚や財産分与で揉めたり困ったりした場合には、早めに弁護士に相談して適切な対処をすることが重要になります。
その方が離婚もスムーズです。
まとめ
性格の不一致が原因でも、夫婦で離婚の合意が取れていれば協議離婚が可能です。
また、離婚理由が性格の不一致でも、財産分与は問題なくできます。
ただし、性格の不一致の場合は財産分与などでトラブルになりやすい傾向になるため注意が必要です。
性格の不一致による離婚に配偶者が難色を示していた場合は、財産分与で財産を多く請求する代わりに離婚を承諾するなど、財産分与に条件をつけることがあるのです。
性格の不一致による離婚は裁判で認められにくいため、財産を多く渡すか、あるいは離婚を諦めるかという選択肢を迫られる可能性があります。
性格の不一致による離婚で困ったことがあれば、早めに弁護士へと相談してアドバイスを受けておきましょう。
そして、スムーズな離婚を目指してはいかがでしょう。