この記事でわかること
- 離婚の財産分与に税金がかかるかわかる
- 離婚の財産分与で税金が必要になるケースを理解できる
- 財産分与で税金を節約する方法がわかる
離婚のときは、夫婦が婚姻関係中に培った財産を夫婦でわける作業があります。
これを財産分与といいます。
離婚によって別々の家計になり、それぞれの人生を歩むようになると、夫婦の財産として所持することは難しいからです。
離婚に際して婚姻中の財産を分与・清算することになります。
財産分与のときは、財産分与で受け取った財産に税金がかかるか不安に思うのではないでしょうか。
財産分与での分与財産は、離婚後の生活の基盤にもなります。
税金がかかると離婚後の生活に使える財産が減るわけですから、財産分与への課税は重要な問題です。
この記事では、財産分与に税金がかかるか解説します。
あわせて、財産分与に税金がかかるケースや税金対策などについても説明します。
離婚の財産分与で税金は基本的に不要
離婚の財産分与では、基本的に税金はかかりません。
なぜなら、離婚の財産分与で分割する財産は夫婦が新しく得た財産ではなく、もともと夫婦が持っていた財産だからです。
もともと持っていた財産を離婚に際して夫婦でわけるだけですから、新しい利益が発生するわけでもありません。
だからこそ財産分与で財産を受け取っても税金はかからないのです。
ただし、すべての財産分与ケースで税金がかからないわけではありません。
例外的に財産分与で税金がかかるケースがあるため注意が必要になります。
財産分与において税金が必要となるケース
財産分与で例外的に税金がかかるケースとは、以下の5つのケースです。
分与された財産が一般的な基準より高額なケース
財産分与で受け取った財産が、一般的な基準より高額だった場合は税金がかかる可能性があります。
一般的な基準より分与された財産が多かった場合は、基準を上回っている分について課税されるのです。
たとえば、夫が高額の給与を得ていて、妻が浪費家でお金をどんどん使っていたとします。
離婚に際して財産分与するときに、妻が預金から不動産まですべて分与を受けるとすると、夫婦の事情や客観的な基準から考えると「妻はもらいすぎではないか」と判断されることがあります。
このような離婚の財産分与ケースでは、財産分与でもらいすぎた部分について課税の対象になる可能性があります。
財産分与という名目で贈与を行ったケース
財産を贈与すると贈与税の対象になります。
しかし、離婚時の財産分与では税金はかかりません。
本当は贈与なのに、税金逃れのために財産分与という名目で財産を贈与すると税金の対象になります。
悪質だと判断されると、ペナルティの対象になる可能性もあるのです。
有価証券を現金化せず財産分与したケース
有価証券は売却などで現金化して財産分与することもありますが、中には現金化せずに離婚時の財産分与を行うケースもあります。
離婚のときは有価証券を必ず現金化しなければいけないというルールはないため、有価証券そのものを財産分与しても特に問題ありません。
しかし、有価証券そのものの財産分与は、税金という点でリスクがあります。
有価証券を売却して現金に換えず離婚時に財産分与すると、譲渡した側に譲渡所得税がかかる可能性があるのです。
譲渡した側が払う税金のついては「財産を譲渡した側が支払う税金」の見出しで説明します。
高額な美術品を財産分与したケース
高額な美術品なども換金せずに離婚時に財産分与すると、譲渡所得税がかかる可能性があります。
有価証券と同様です。
譲渡した側が払う税金については「財産を譲渡した側が支払う税金」を参考にしてください。
財産分与として不動産の分与を受けたケース
離婚時の財産分与として不動産を受け取ったケースでは、譲渡所得税や不動産取得税、登録免許税、固定資産税などがかかる可能性があります。
離婚時の財産分与では、不動産取得税は基本的にかからないのですが、例外的に課税されるケースがあるため注意してください。
慰謝料を不動産で払うケースや、離婚後に夫婦の片方が生活に困窮するため、扶養分も考えて離婚のときに財産分与する場合(扶養的財産分与の場合)などは不動産取得税がかかる可能性があります。
また、不動産を取得する場合は固定資産税や登録免許税にも注意が必要です。
固定資産税は、不動産を所有しているとかかる税金になります。
離婚の財産分与で不動産を取得したなどの理由に関わらず、不動産を持っていれば毎年かかる税金です。
この場合は、不動産を所有する限り固定資産税がかかることを考えておく必要があります。
登録免許税は、不動産の名義変更登記のときに支払いが必要になる、手続きの手数料的な税金です。
離婚時の財産分与の登録免許税は、固定資産税評価額の2%になります。
6,000万円の評価の不動産の場合は120万円です。
名義変更登記を司法書士に依頼する場合は、登録免許税とは別に司法書士への報酬も必要になります。
譲渡所得税については次の見出しで説明します。
財産を譲渡した側が支払う税金
離婚のときの財産分与の税金の中には、財産を譲渡した側が支払う税金もあります。
有価証券や美術品、不動産などの財産分与で登場した「譲渡所得税」です。
譲渡所得税とは、不動産などを「購入時より高く売却し、利益が発生したとき」などにかかる税金になります。
譲渡する側の収入を前提にした税金なのです。
不動産などを離婚時に財産分与するときは、譲渡所得税にも注意する必要があります。
離婚のときの財産分与により予想外の課税が発生しないためにも、離婚の財産分与前に税理士へと相談することをおすすめします。
財産分与にかかる税金を節税するには?
離婚時の財産分与は原則的に非課税ですが、すべてのケースにおいて非課税というわけではなく、譲渡所得税や贈与税などのリスクがあります。
税金のことを考えずに財産分与してしまうと、思わぬ課税により困ってしまうかもしれません。
また、離婚後の生活の基盤になるはずの財産も目減りするリスクがあるのです。
財産分与では、節税などの税金対策をしながら進めることが重要になります。
離婚のときの財産分与でかかる税金を節税する方法は4つです。
税金のかかりそうな不動産などは売却して財産分与する
不動産や有価証券には、譲渡所得税のリスクがあることをお話ししました。
不動産や高額の美術品、有価証券などはそのまま離婚時の財産分与をしてしまうと、譲渡所得税などの税金リスクがあります。
不動産や有価証券などをそのまま財産分与するのではなく、現金に換金、つまり売却して財産分与するという方法が考えられます。
不動産を売却する場合は、名義変更に必要な登録免許税や、不動産を所有している限り発生する固定資産税などの負担も回避できるのです。
ただし、購入時より価値が上がっている不動産を売却する場合は、金額により譲渡所得税の支払いが必要になる可能性があります。
相場の高い立地の不動産や、高額売却できる可能性が高い不動産などを財産分与のために売却する場合は、税理士などに相談のうえで進めた方が安心です。
不動産の控除などを使い税金負担を軽減する
税金には、条件を満たした場合に使える控除や特例などがあります。
税金の控除や特例の中には、財産分与のときに使えるものもあるのです。
代表的なものとしては、不動産の配偶者控除があります。
不動産の配偶者控除では、贈与の対象が居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であることなどを条件に、2,000万円の控除枠を使うことが可能です。
贈与税の基礎控除と合わせると2,110万円になります。
不動産の配偶者控除には婚姻期間20年などの条件があり、条件を満たしている場合のみ使えます。
税理士に条件を満たしているか、他に使える控除はないかなど、税金負担を軽減する特例や控除についてチェックしてもらうといいでしょう。
なお、控除を受けるためには申告が必要です。
申告などの税金手続きについても、税理士に確認しておくこともポイントです。
マイホーム売却時の3,000万円特別控除を使う
この方法も税金の控除や特例を使う方法です。
マイホームの売却時は3,000万円の特別控除で税金負担を軽減できます。
自分の住んでいる家などを売却したときは、住んでいた期間の長短に関わらず、譲渡所得から最大で3,000万円控除できます。
離婚時の財産分与でマイホームを不動産売却する場合は、この3,000万円特別控除を使えば節税になるのです。
マイホーム売却時の3,000万円特別控除も、利用の条件があります。
財産分与でマイホームを売却するときは、税理士などの専門家に確認しておきましょう。
離婚する日を節税に有利な日にする
離婚時の節税を考えた場合、離婚日は重要です。
なぜなら、離婚日によって配偶者控除が使えるかどうかが変わってくるからです。
配偶者控除は、12月31日時点で配偶者だったかどうかで判断します。
つまり、年末の配偶者控除を判断する12月31日の時点で離婚している場合は、配偶者控除が使えなくなるのです。
年末の場合は離婚を急がず、12月31日まで我慢して、翌1月1日に離婚すれば、その年は配偶者控除が使えるという理屈になります。
このように、年末の離婚では離婚日をずらした方が節税になるのです。
年始に離婚するのもどうかと思うかもしれません。
ですが、年末に急いで離婚するより、年明けまで待った方が税金負担の軽減という点では有利です。
財産分与でトラブルにならないための事前準備
離婚時の財産分与でトラブルにならないためには、離婚協議書で財産分与の証拠を残しておくことが重要です。
財産分与について決めても、証拠として残しておかないと、後から「言った」「言わない」「話と違う」などのトラブルになる可能性があります。
また、支払い(分与)の約束を反故にされ、分与されるはずだった財産を受け取れないリスクもあるのです。
財産分与について決めたら、離婚協議書に決めた内容をまとめておきましょう。
離婚協議書は私的に作成してもいいのですが、私文書だと後から「勝手に作成された」などの言いがかりをつけられ、トラブルになる可能性があります。
離婚協議書は公正証書で作成すると安心です。
公正証書は、公証人という法律のプロが作成に関与する公文書です。
強制執行認諾文言の記載がある公正証書の離婚協議書を作成しておけば、配偶者が財産分与の約束違反をしたときに、その離婚協議書を使って強制執行も可能です。
公正証書は公証役場が作成に関与するという点で、証拠としての力も強い文書になります。
離婚協議書を作成するなら、後のトラブル対策のためにも、公正証書で作成するといいでしょう。
財産分与のときに揉めそうな場合は、財産分与の前の段階で弁護士に相談し、財産分与をサポートしてもらうことでトラブル対策になります。
まとめ
離婚による財産分与は、基本的に税金がかかりません。
しかし、絶対に税金がかからないわけではなく、ケースによっては贈与税などの税金の対象になる可能性があるのです。
離婚のときの財産分与で税金がかかりそうな場合は、税金対策をすることがポイントになります。
財産分与で税金がかかるか不安な場合は、財産分与や離婚の前に税理士などの専門家に相談しましょう。
財産分与でトラブルにならないためにも、離婚協議書を作成するなど、対策をとっておくことが重要です。
不安なことや困ったことがあれば、弁護士にもアドバイスを受けておくことをおすすめします。