この記事でわかること
- 面会交流のやり方や決め方などの基本的なことがわかる
- 面会交流の調停を起こすときの書類や具体的な流れがわかる
- どのようなときに一度決めた面会交流のルールを変更するかがわかる
- 決められた面会交流を拒否した場合の流れがわかる
- 面会交流の決め方や再考の可否、守られなかったときの一連の流れがわかる
離婚をして、子どもと離れて暮らす親が、子どもと会うことを求めることを面会交流といいます。
しかし、面会交流は、当事者が希望する通りに行われないことも少なくなく、面会交流を希望する親が、強引に子どもを連れ去ったりするトラブルもあります。
そこで、今回は、面会交流の基礎知識と、実現の仕方、面会交流を拒否した場合について解説します。
面会交流とは何か?概要を解説
離婚する夫婦の間に、未成年の子ども(2022年4月からは民法改正により18歳未満)がいる場合、父親もしくは母親のどちらかを親権者として定め、離婚届に記載しなければ離婚は成立しません。
離婚するということは、よほどの事情がない限り、父親と母親は別々に暮らすことになります。
つまり、子どもは父親か母親のどちらかとは離れて暮らすことになります。
この際に、子どもと別々に暮らすことになった側の親が、子どもと会うことを求めることを面会交流(面会交流権)といいます。
一つ勘違いしがちなのは、面会交流は離婚時に限った話ではありません。
何らかの事情で父親と母親が別居している場合も、子どもはどちらかの親としか暮らしていませんから、離婚が成立していない段階の別居時も面会交流はあるということです。
面会交流が法律で規定された経緯
面会交流で忘れてはならないのは、親のために行うのではなく、子どものために行うものということです。
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父または母と子との面会およびその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
よく、面会交流の現場で子どもの奪い合いのような状況になることもありますが、子どもにとって決して良いこととはいえません。
面会交流は、親の都合で離婚した子どもにとって、不利益があってはならないという考えから行われます。
離婚して別々に暮らすことになるとはいえ、できるだけ両方の親の愛情を受けて育つのが、心理上・教育上、健全な発育になるという考えの元、制度化されました。
面会交流は原則、拒否することはできません。
拒否をし続けると、後で説明いたしますが、裁判を起こされたり、罰金を科せられたりすることもあります。
よく、「養育費が支払われないから」と、面会交流を拒否する親もいます。
しかし、養育費の支払いと面会交流の実施は別々に考えるべきです。
養育費の未払い、面会交流の不誠実な拒否、いずれについても法律できちんと対策が制度化されていますから、面会交流は、子どもの利益を最優先に考え、誠実に行うようにしましょう。
もちろん、面会交流を求める側の親が、子どもの発育にとって不適切な場合は、面会交流を拒否することもありえます。
たとえば、犯罪者だったり、長期間正当な理由もなく無職で休職活動すら行っていなかったりする場合などです。
面会交流で決めるべきルールのポイント
では、具体的に面会交流とはどのようなことをしていくのかを見ていきましょう。
これをしなければならないという決まりはありませんが、一般的に下記の感じで行われることが多いようです。
- ・頻度:月1~2回もしくは不定期、子どもが会いたいと主張したとき
- ・誰が:離れて暮らしている側の親と子どもの1対1。
一緒に暮らしている側の親や子供の希望で、家族全員が揃うこともあります。 - ・どうやって:直接会ってプレゼントやおもちゃを買う、遊園地や公園に遊びにいくなどして一定の一緒の時間を過ごす
なお、最近、新型コロナウィルスの感染拡大防止を理由に、子どもと一緒に暮らしている側の親が、もう片方の親からの面会交流を拒否するケースが多発しているようです。
この問題に対して法務省は、直接会えない場合でも、ラインやチャットなどのアプリを利用した電話やビデオ通話を使用して、できるだけ面会交流を実現するように注意喚起を行っています。
これらの面会交流の方法は、当事者同士、両親や子どもが自由に話し合って決めればいいのですが、具体的な決め方、そして話し合いがこじれた場合、どうやって面会交流を決めるのか見てみましょう。
面会交流のルールは必ず文章化を
まずは、当事者で話し合いが可能ならば、面会交流の頻度や方法など様々な条件を出し合って、実現が可能な範囲での面会交流について話し合います。
話し合いについて合意ができた場合には、後で揉め事とならないために、文章化しておきましょう。
弁護士や行政書士などの専門家に書面の作成を依頼するのも構いませんし、公正証書を作成する方法もあります。
なお、離婚届にも面会交流に関する記載欄がありますが、この欄は空欄でも離婚届は受理されます。
当事者が合意すれば、「このように決めなければならない」といったルールはありません。
しかし、話し合いがスムーズに行くようでしたら、そもそも離婚をすることもなかったでしょうし、最低限、離婚時や別居時は、
- ・頻度
- ・面会交流の詳細を決めるときの連絡方法
は決めておくべきでしょう。
その他、「面会交流は、チャットや通話だけではなく、直接会って行わなければならない」とか、「面会交流は(別に暮らしている側の)親と子どもが2人きりで行わなければならない」といった厳格なルールを決めても問題はありません。
しかし、実際に面会交流が行われるときの子どもの状況や社会状況などもあるでしょうから、最初からあまり厳格・詳細なルールを決めてしまうのではなく、頻度や連絡方法といった最低限のルールだけを決め、より詳細なルールは、実際に面会交流を行う直前に決める方がスムーズな面会交流の実現になります。
当事者での話し合いがこじれた場合は裁判手続きへ
とはいうものの、夫婦での話し合いで結論が出ず、それでもなお、父親あるいは母親が子どもに対して面会交流を求める場合も少なくありません。
そのような場合は、離婚などのときと同様、家庭裁判所に調停を申し立てて、裁判所に間に入ってもらいながら面会交流について話し合っていくことになります。
裁判所への書類の出し方と流れについては、下記の通りになります。
離婚をする際に、調停を申し立てた方は、それと類似したイメージです。
申し立てをする人と相手
申し立てをする人:
面会交流を求める父親あるいは母親
通常、子どもと離れて暮らす側の親です。
相手方:
離婚あるいは別居している配偶者(例:申立人が父親の場合は、母親)
通常、子どもと一緒に暮らしており、面会交流を拒否した親です。
提出する場所
相手方の住所地にある家庭裁判所
※具体的な場所や住所は、裁判所の公式ホームページでご確認ください。
※その他、当事者、つまり父親と母親が同意していれば、他の場所にある家庭裁判所で行うことも可能です。
費用
子ども1人につき収入印紙1,200円が必要になります。
その他、裁判所から書類を送る際の郵便費用が必要になりますが、裁判所により異なりますので、書 類を提出する裁判所にお問い合わせください。
東京家庭裁判所の場合:
100円切手✕2枚、84円切手✕8枚、10円切手✕14枚、1円切手✕10枚
合計1,022円
提出する書類
- ・申立書とそのコピー 各1通
- ・事情説明書(子どもの面会交流の調停を申し立てるに至った経緯を時系列に説明した書類)
- ・面会交流を求める未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
※申立書の書式や記載例は、裁判所のホームページに用意してありますのでダウンロードしてお使いください。
※裁判所や、その他の事情により、追加で書類を出す必要がある場合もあります、
調停の流れ
調停では、子どもの利益を最優先に、調停委員と呼ばれる裁判所の職員2人および裁判官1人の計3人の主導の元で、面会交流の実施の可否や、面会交流を行う場合は回数や日時、場所、連絡方法といった具体的な内容・方法が話し合われます。
裁判というと、テレビのニュースやドラマのような厳格なイメージを想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、家庭裁判所が行う調停は、原則、非公開です。
少人数で行われる会議のようなイメージを想像してください。
調停の現場では、父親と母親が対面する場合もありますし、双方が感情的になっている場合は、交互に調停室に呼ばれることもあります。
調停では、裁判官および調停委員が、当事者双方の主張を聞き、説得や交渉をし、調停の成立を目指します。
また、調停の段階で、家事調査官と呼ばれる裁判所の職員による調査が行われることもあります。
これは、心理学や教育学など、子どもの教育・福祉の専門家の立ち合いの元、試験的に子どもの面会交流を行うものです。
家事調査官は、試験的に行われた面会交流で、子どもの様子を細かく観察し、今後どのように面会交流を行うのが、子どもにとって幸せになるかを観察し、その結果を裁判官に提出します。
たとえば、父親が子どもとの面会交流を求めている場合、父親と子どもの試験的面会交流が行われている際、子どもが楽しくなさそうであったり、子どもの健全な発達にとってふさわしくない状況が行われていたりすると家事調査官が判断した場合、上記例でいえば父親にとっての面会交流の結論は大変厳しいものになると予想されます。
実は、この家事調査官の報告書は、調停でとても重要視されます。
なぜならば、子どもの面会交流は、法律問題はもちろんのこと、子どもの利益を最優先にして検討すべきだからです。
子どもの専門家の意見は、大変貴重かつ有意義といえます。
そして、当事者が同意せず調停が不成立になった場合は、審判手続きへと移行します。
調停と審判の大きな違いは、調停は、当事者、つまり父親と母親の双方が、家庭裁判所が出した結論に合意をしなければ成立しません。
一方、審判は、これまでの調停の経緯を踏まえて、面会交流の可否や具体的な内容を、裁判所が決定します。
当事者の意思は必要ありません。
なお、審判で出た内容に当事者の双方あるいはどちらからが不満がある場合は、審判が出てから2週間以内に異議を申し立てることができます。
その場合には、審判は成立しません。
それでもなお、面会交流を求める場合は、裁判を起こして、面会交流を求めていくことになります。
ルールを決め直すときにはどうする?
もちろん、一度決めたルールを変えることも可能です。
なぜならば、繰り返しになりますが、子どもの面会交流は、子どもの健全な成長を最優先すべきといえますから、様々な事情で、最初に決めたときと事情が異なった場合は、一度決めた面会交流のルールを変更することも可能です。
では、具体的にどのようなときにルールを変更すべきで、どのように変更すべきかを見ていきましょう。
ルールを決め直すとき
子どもが明確な意思表示を行うようになった
たとえば、最初に面会交流のルールを決めたときは、まだ子どもが幼く、しっかりとした意思表示ができない年齢だったが、成長して、「会いたい(もしくは会いたくない)」と意思表示をしたときは、面会交流のルールを見直すべきでしょう。
なぜならば、子どもの意思を無視して面会交流を行うのは、子どもの成長に悪影響を及ぼすからです。
なお、面会交流の調停において、子どもが15歳以上の場合、裁判所は子ども自身の意思を尊重する傾向にあります。
裁判所によっては、15歳未満の場合でも、子どもの意見を聴取する裁判所・裁判官もいるようです。
父親あるいは母親の環境が変わったとき
最初に面会交流を決めたときと、父親(あるいは母親)の環境が大きく変わり、しかもその状態が継続しているときも、一度決めたルールの見直しを検討すべきでしょう。
たとえば、無職状態が継続してしまった、薬物・アルコール依存症になってしまった、犯罪者になってしまった場合などです。
これらの状況の元で、面会交流が行われてしまうと、言われるまでもなく、子どもにとって悪い影響を及ぼす可能性があるからです。
適切な面会交流が行われていないと判明したとき
たとえば、実際に子どもと会っていたとはいえ、子どもの成長に必要な教育や指導、遊んだりしてあげることをせず、放置していた場合です。
他に、子どもに対して暴力をふるっていたり、暴言を吐いていたりした場合も、子どもの成長に悪影響を及ぼしますから、面会の見直しを検討すべきでしょう。
なお、これらの条件は、一度決めた面会交流のルールを決め直すときだけではなく、最初に面会 交流のルールを決めるべきにも検討すべき事柄です。
また、上記例は比較的ネガティブな例が多いですが、真逆の例、たとえば、当初面会交流が認められなかった親が、社会的に成功した場合には、面会交流の実施を再検討すべきともいえます。
最初に面会交流のルールを決めたときと同様、まずは当事者の話し合い、不調ならば裁判所の手続きといった順番です。
最初に裁判所で面会交流を決めたからといって、ルールを見直すときも裁判所の手続きを経なければならないという決まりはありません。
また、ルールの見直しに合意できたときも、最初と同様、きちんと書面化し、後でトラブルにならないように最善の注意を尽くしましょう。
面会交流が守られないとき
当事者で何度も話し合い、あるいは裁判手続きを経て決めた、あるいは変更した面会交流のルールが守られなかったときはどうなるのでしょうか。
当事者の話し合いのルールを守らなかったとき
相手方が調停をおこしてくることが考えられるでしょう。
裁判所からの呼出状を無視すると、審判あるいは訴えで一方的に面会交流のルールが決めらます。
裁判所で決めたルールをも無視したとき
調停や審判、判決で決められた面会交流のルールを正当な理由がなく、違反したときにはどうなるのでしょうか。
法律は、下記の2つの方法を定められています。
履行勧告
裁判所が、面会交流の拒否する親に対し、面会交流の実施の説得や、注意を行います。
間接強制
裁判所が、子どもを傍に置いて育てている側の親から無理やり子どもを引き離しして、面会交流を実現させる直接的な強制方法は定められていません。
その代わりに、間接強制といって、面会交流を拒否したら、金銭の支払い、つまり罰金を支払うように、裁判所に求めることができます。
定められた金銭の支払いを拒否すると、強制執行などの強制的な手続きを用いて、支払われなかった金銭の回収を行うことができます。
まとめ
面会交流は、子どもの利益や意思を最優先して、
- ・頻度
- ・日時
- ・場所
- ・方法
- ・参加者
などを当事者で話し合います。
しかし、それでもだめなら裁判手続きで決着することになります。
そして、一度決めた面会交流のルールについて、親や子どもを取り巻く環境に変化が起きたときは決めなおすことが可能です。
決め方については、最初に面会交流を決めたときと同様、当事者の話し合いで決め、それがだめなら裁判手続きという流れになりますのでしっかりと話し合うことが重要です。