慰謝料の分割払いの時効は最終支払い日から3年【取り決め時と支払いが滞ったときの対処法】 | 離婚弁護士マップ
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慰謝料の分割払いの時効は最終支払い日から3年【取り決め時と支払いが滞ったときの対処法】

この記事でわかること

  • 慰謝料を分割払いにした場合の時効がわかる
  • 慰謝料の分割払いを避ける方法や取り決めの際にすることがわかる
  • 慰謝料の分割払いが滞ったときの対処法を理解できる

慰謝料はまとまった金額になることも多く、慰謝料支払いの債務者が「一括で払えない」と主張するケースがあります。

慰謝料支払いの債務者が、一括で払えない場合の対処法として利用されるのが慰謝料の分割払いです。

分割払いで慰謝料を受け取る場合、支払いに時効があるのか不安ではないでしょうか。

慰謝料分割払いの時効はどうなっているのでしょう。

そして、慰謝料の分割払いを決めたときにしておくべきことや、分割払いの滞納への対処はどうすればいいのでしょう。

時効を中心に、慰謝料の分割払いについて知っておきたい知識を説明します。

慰謝料の分割払いの時効は最終支払日から3年

浮気の慰謝料の相場は50~300万円になっています。

浮気のケースによって慰謝料額が相場より高額になることもあります。

浮気の慰謝料を請求された場合、浮気をした配偶者などは、まとまったお金を支払いのために準備しなければいけません。

預金などのまとまったお金が配偶者などの浮気の慰謝料の債務者にあればいいのですが、高額になれば預金などでは足りないケースや、一括で支払うことが難しいケースも考えられます。

浮気の慰謝料を、一括で払うことが難しい場合に使われる方法のひとつが分割払いです。

慰謝料を分割払いにすると、一括で支払う資力のない債務者も慰謝料の支払いに応じやすくなります。

その反面、慰謝料を受け取る債権者側にはリスクがあるのです。

一括払いの場合はまとまった金額を一括で受け取って終了ですが、分割払いは少しずつ支払われるため、支払いの途中で「時効が完了する」というリスクが考えられます。

慰謝料の分割払いには時効があります。

慰謝料の分割払いの時効は「分割払いの最終支払い日から3年」です。

分割払いの途中で支払いが止まってしまって放置していると、3年で時効になってしまいます。

なお、浮気の慰謝料請求では他にも時効があるため、分割払いの時効について混同しがちです。

時効の混同を避けるためにも、浮気の慰謝料請求のその他の時効についても解説します。

浮気の慰謝料請求の時効も3年である

浮気の慰謝料請求の時効は、浮気相手と浮気をした配偶者で考え方が異なります。

浮気相手に対しての慰謝料請求は「浮気の事実と浮気相手を知ってから3年」です。

つまり、浮気相手に慰謝料請求できる情報を知ってから、3年間慰謝料請求せずに放置してしまうと、浮気の慰謝料請求ができなくなってしまいます。

浮気をした配偶者に対しての慰謝料請求の時効は「浮気を知ってから3年」になっています。

配偶者の場合は「浮気相手を知ってから」という条件が抜けています。

浮気相手の場合は見ず知らずの人の可能性もあるため、時効は浮気相手の情報と浮気の事実の両方を知った時点から進行します。

しかし配偶者の場合は浮気相手と異なり、情報を知らないことがあり得ません。

よって、浮気を知った時点から3年が慰謝料請求の時効になっているのです。

配偶者に対しては「浮気が原因で離婚してから3年」も慰謝料請求の時効になっています。

この他に、浮気による慰謝料請求には、除斥期間(権利が存続する期間)も定められているため注意が必要です。

浮気の慰謝料請求の除斥期間は「浮気から20年」になっています。

浮気から20年経過すると、浮気の慰謝料請求ができなくなってしまいます。

たとえば、浮気相手を知らないまま配偶者の浮気から20年経過しました。

浮気相手の情報を知らないため、慰謝料請求の時効は進行しないと思いがちですが、この場合は除斥期間である20年が経っているため、慰謝料請求はできないという結論です。

浮気の慰謝料請求の時効は、誰に慰謝料請求するかによって考え方が変わってきます。

法的な知識がないと計算が難しいため、時効を確認したいときは弁護士に相談することをおすすめします。

また、慰謝料の分割払いの時効も「最後の支払いから3年」なので、浮気の慰謝料請求の時効と慰謝料分割払いの時効を混同しないように注意しましょう。

慰謝料の分割払いは全額支払われないケースも多い

慰謝料の分割払いには時効の他に「支払いの滞納」というリスクも考えられます。

一括払いは、慰謝料を一括で受け取ることで受け取りと支払いが完了しますが、分割払いの場合は支払いが長期あるいは一定期間続くのです。

この方法だと、慰謝料を受け取る側にとってリスクがあります。

時効以外の慰謝料を分割払いで受け取るリスクについて見ていきましょう。

慰謝料を支払う側の支払い能力が続かない

慰謝料を支払う側の支払い能力が分割払いの途中で変わってしまうリスクがあります。

たとえば、慰謝料の分割払いを決めたときに慰謝料の債務者は月40万円の収入を得ていました。

毎月10万円の分割払いを約束しても、生活しながら十分に払える収入を得ていたのです。

しかし慰謝料を分割払いしている間に会社のリストラにあい、収入が40万円から17万円になりました。

17万円の収入では月10万円の慰謝料分割払いは難しいと、慰謝料の減額と分割払いの額の変更を申し入れてきました。

このように、分割払いは一括と違って支払いが長期になることから、途中で慰謝料を支払う債務者の資力や収入が変わってしまうリスクがあるのです。

最悪のケースでは、収入状況の悪化から債務者側が分割払いをする気があっても分割払いできない、という状況に陥るリスクがあります。

慰謝料は一括払いで払ってもらえるはずなのに、債務者の状況に応じて分割払いを許すことで、慰謝料を受け取る側が一方的にリスクを背負う結果になるのです。

慰謝料の分割払いを踏み倒されることがある

浮気の慰謝料の分割払いを決めても、真面目に払ってくれる人だけではありません。

中には最初から分割払いをしなかったり、分割払いを踏み倒したりする人もいます。

分割払いの途中で行方をくらますこともあるのです。

最初のうちだけ払っておいて、その後に計画的に踏み倒すなど、色々なケースが考えられます。

慰謝料の分割払いに応じると、慰謝料を全額払ってもらえず踏み倒されるリスクがあるのです。

そのリスクは受け取る側が負うことになるため、一括払いで慰謝料を受け取るより不利になります。

慰謝料の分割払い管理が面倒である

慰謝料を一括で受け取れば、受取金額の管理はそれで終了です。

しかし、分割払いは定期的に慰謝料が分割で支払われるため、慰謝料の管理が面倒だというデメリットがあります。

分割払いの場合、振り込まれる度に記帳などで分割払い分の慰謝料を確認しなければいけません。

慰謝料の振込確認を忘れて、しばらく記帳していなかった。

記帳していない間に慰謝料の振り込みが止まっていて、分割払いの時効の進行が始まっていた。

このようなリスクもあります。

分割払い分の確認や時効の管理、滞納の際の対策など、慰謝料の受け取り手側にリスクがあり、慰謝料の支払い状況の管理負担が生じるのです。

分割払い慰謝料滞納の督促や回収という手間がある

慰謝料の分割払いの場合、振り込みがないと督促をしたり分割払い分の回収手段を講じたりするなど、受け取り手側にとっては非常に面倒です。

慰謝料の一括払いなら、仮に支払われないとしても、督促は一回で済みます。

しかし、分割払いは滞納がある度に督促しなければいけません。

滞納が何度もあると、遅れて入金されたとしても、督促だけで手間になります。

さらに、分割払いの慰謝料が途中で支払われなくなると、裁判や強制執行などの方法を使い、自分から回収に動かなければいけません。

支払い回数が多くなるということは、それだけ督促や回収に労力や手間がかかるということなのです。

しかも、手間を惜しんで滞納を許していると、時効のリスクもあります。

分割払いの最中は、常に慰謝料支払い相手の動向や分割払いの状況などをチェックして、必要な行動を起こさなければいけません。

このように、慰謝料受け取り側にとって分割払いは負担が大きいのです。

慰謝料の分割払いを避ける方法

慰謝料を受け取る側にとって、分割払いはデメリットが多いと言えます。

慰謝料を受け取る側には、分割払いは避けたいのが本音ではないでしょうか。

では、どのように分割払いを避けたらよいでしょう?

慰謝料の分割払いのリスクやデメリットを避けるための方法は3つです。

ケースに合わせて3つの方法を使い分けましょう。

慰謝料を一括払いしてもらうようにする

浮気相手などが慰謝料の分割払いを申し入れても、そもそも分割払いに応じないという方法があります。

中には支払い能力の関係で、どうしても分割払いにするしか慰謝料の支払いができない浮気相手などもいることでしょう。

しかしながら、支払い能力がありながら分割払いを申し出るケースもあります。

支払い能力がありながら分割払いを申し入れるケースでは、慰謝料を受け取る側が分割払いに応じる義務などありません。

慰謝料の分割払いは受け取る側のリスクとデメリットがあるので、断ってしまっても問題ないのです。

浮気相手によっては、少し減額してもらえれば一括払いできるというケースもあります。

慰謝料を少し減額して、一括払いにしてもらうことも方法のひとつです

慰謝料の代わりに財産分与で多く受け取る

配偶者から浮気の慰謝料を受け取る場合は、分割払いで受け取るのではなく、財産分与で多く受け取るという方法があります。

財産分与は基本的に夫婦で2分の1ずつですが、慰謝料分として浮気された側の配偶者に多く分与することも可能です。

慰謝料相当分を財産分与で受け取るわけです。

なお、この方法は夫婦の財産分与だからこそできる方法なので、浮気相手の慰謝料には使えません。

夫婦で財産分与する場合も、分与する財産自体が乏しい場合は使えない方法です。

第三者に立て替えてもらうことを提案する

浮気の慰謝料を、浮気相手や浮気した配偶者の両親などに立て替えてもらう方法です。

立て替えで慰謝料を払ってもらい、浮気相手は浮気した配偶者には親などの立て替えた第三者に返済してもらう形になります。

ただ、この方法は第三者が承諾しなければ使えません。

親は浮気の当事者ではありませんから、本来、浮気の慰謝料を立て替える義務などありません。

友人や親族に立て替えをお願いする場合も、これは同じです。

無理にお願いすると恐喝罪などに該当する可能性があります。

あくまでも、親などの第三者が応じてくれるケースに使える方法です。

慰謝料の分割払いが決まったときにしておくべきこと

慰謝料の分割払いを避けようとしても、浮気相手などの支払能力からどうしても分割払いにならざるを得ないケースがあります。

慰謝料の分割払いが決まった場合は、慰謝料の滞納や踏み倒しなどのリスクを回避するために4つのことをしておきましょう。

慰謝料分割払いの細かなルールを決めておく

まず重要なのは、慰謝料の分割払いの詳細なルールを決めておくことです。

支払い額や振込先だけでなく、分割払いの支払いが遅れたときのルールも決めておきましょう

ルールとしては以下のようなものが考えられます。

  • ・振り込みを1週間確認できなければ強制執行する
  • ・支払いが遅れたら遅延損害金を払う
  • ・支払いが遅れたら期限の利益を喪失する

慰謝料分割払いのルール作りについては、弁護士に手伝ってもらうことをおすすめします。

慰謝料分割払いについて公正証書を作成する

慰謝料の分割払いを決めたら、内容を公正証書にしておきましょう

公正証書に執行認諾文言を入れておけば、分割払いが遅れたときに即座に強制執行で慰謝料の回収が可能です。

自分たちで文書を作った場合は、文書に強制執行の力はないので注意してください。

浮気が原因で配偶者と離婚する場合は、養育費や財産分与などの取り決めも盛り込んだ離婚協議書を公正証書で作成することをおすすめします。

浮気相手や離婚した配偶者の住所と連絡先を把握しておく

浮気相手や離婚した配偶者の住所や連絡先を常に把握しておくことが重要です。

慰謝料の分割払いが滞って督促する場合や強制執行で慰謝料を回収する場合は、浮気相手や離婚した配偶者の住所などの情報が必要になります。

いざというときに慰謝料の督促や回収をおこなうためにも、住所などの情報はしっかりチェックしておくことが重要です。

住所などがわからなくなった場合は、早めに弁護士に相談してみましょう。

慰謝料の分割払いに連帯保証人をつける

分割払いに連帯保証人をつけ、連帯保証人にも請求できるようにしておくことで、未払いや滞納の対策になります。

慰謝料の分割払いにも連帯保証人をつけることが可能です。

連帯保証人になる人には範囲がないため、浮気の当事者の親族以外が連帯保証人になっても差し支えありません。

ただし、連帯保証人になる人の同意が必要なので承諾していないのに無理やり第三者を連帯保証人にすることはできません。

弁護士などに連帯保証人への交渉を手伝ってもらうといいでしょう。

分割払いの慰謝料の支払いが滞ったときの対処法

分割払いの慰謝料の支払いは、あらかじめ対策を取っていても滞ることがあります。

分割払いの慰謝料の支払いが滞った場合は3つの対処法があります。

浮気相手や浮気した配偶者に督促する

浮気慰謝料の分割払いがなかった場合、単に日付を間違えているケースや振り込みを忘れているケースもあります。

強制執行や連帯保証人への請求を行う前に、まずは慰謝料を支払うべき浮気相手や浮気した配偶者に督促してみてはいかがでしょう。

支払いを忘れているのではないかと声かけをすれば、うっかり忘れていただけの場合は払ってもらえるはずです。

慰謝料の分割払い債務者に督促してみましょう。

財産の差し押さえと強制執行を行う

分割払いの慰謝料の支払いが滞ったら、作成しておいた公正証書などを使って財産の差し押さえや強制執行を行うという対処法があります。

差し押さえ・強制執行とは、不動産や預金、給与、動産などの慰謝料の債務者の財産を強制的に押さえてしまうことです。

そのうえで債務者の財産を競売などで換金し、売却代金から慰謝料を回収する流れになります。

強制執行には債務名義という公文書が必要です。

執行認諾文言のある公正証書は債務名義になるので、あらかじめ作成しておくといざというときに強制執行で対処できます。

慰謝料分割払いの連帯保証人に払ってもらう

慰謝料の分割払いに連帯保証人がいれば、連帯保証人に慰謝料を請求することも可能です。

慰謝料の分割払いのときに連帯保証人を決めていれば、連帯保証人から慰謝料を回収することも対処法として検討してみましょう。

弁護士に相談して必要な対処をおこなう

慰謝料の分割払いが途切れたら、弁護士に相談して対処する方法があります。

公正証書があっても、強制執行や差し押さえのためには手続きが必要です。

連帯保証人に請求できるとしても、具体的にどのように請求すればいいのでしょう。

手続きや請求は法的な知識や実務経験がないと難しいため、自分だけで対処しようとしてもできない可能性があるのです。

弁護士に相談して必要な手続きや対処を行えば、慰謝料の回収もスムーズです。

まとめ

慰謝料は分割払いで受け取ることも可能です。

たとえば慰謝料を一括で支払う資力が浮気相手などにない場合は、分割払いでの支払いを相談されることがあります。

分割払いで慰謝料を受け取る場合、分割払い分の時効は最後の支払いから3年です。

時効に注意してください。

慰謝料の分割払いの申し入れがあっても、必ず応じる必要はありません。

分割払いは慰謝料を受け取る側にリスクとデメリットがあるからです。

浮気相手などの支払い能力の関係で、どうしても分割払いになってしまう場合は、公正証書を作成するなどの対策を取っておきましょう。

そして、慰謝料分割払いで滞納があった場合は強制執行や弁護士に相談するなど、迅速に回収するために動くことをおすすめします。

監修弁護士
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