この記事でわかること
- キスが不貞行為にあたるのかわかる
- 不貞行為で慰謝料請求できるケースがわかる
- 不貞行為の慰謝料相場を理解できる
浮気の基準は人それぞれです。
配偶者が自分とは別の異性とキスした事実が判明したり、実際に現場を目撃したりすると「浮気だ」「慰謝料を請求する」と思うかもしれません。
しかし、キスで不貞行為の慰謝料を請求できるかが問題です。
キスで慰謝料請求できるのでしょうか。
不貞行為の基準から慰謝料請求できるケース、慰謝料相場について解説します。
そもそも不貞行為の基準とは
浮気のことを、慰謝料請求の場や法律では「不貞行為」といいます。
慰謝料を請求するためには、不貞行為に該当するかどうかが問題になるのです。
キスが不貞行為にあたるか説明する前に、まずは不貞行為の基準について説明します。
配偶者が自分以外の異性を親密になることは、色々な言葉で表現されています。
「不倫」も配偶者が別の異性に走ることですし、「浮気」も同じ意味で使うはずです。
しかし、不倫や浮気はあくまで一般的な言葉です。
慰謝料を請求するケースや法的な場面では、浮気や不倫という言葉は基本的に使いません。
「不貞行為」という言葉を使うのです。
不貞行為の基準は、浮気や不倫より限定的です。
浮気や不倫は、配偶者が自分以外の異性と親密になること全般を指します。
また、個人の価値観によって定義の変わる言葉でもあるのです。
浮気や不倫の基準は人により様々なので、人によってはキスをすれば浮気に該当するという人もいますし、異性とデートすれば不倫だと判断する人もいます。
このように、浮気や不倫は人によって判断基準が異なっているのです。
不貞行為の場合は「配偶者以外の異性と肉体関係を持ったこと」が判断基準になります。
不貞行為を理由に慰謝料請求する場合も、基本的な基準は肉体関係の有無です。
キスは不貞行為と認められるのか
不貞行為の基本的な基準は肉体関係です。
よって、キスは不貞行為とは認められません。
不貞行為は、慰謝料請求の基準でもあります。
配偶者が異性と親密になった場合、浮気や不倫だと判断するかもしれません。
しかし慰謝料請求の基本となる不貞行為が肉体関係の有無になるため、キスだけを理由に法的な場で慰謝料請求することは難しいという結論です。
不貞行為で慰謝料請求となるケースならないケース
慰謝料請求の基準は不貞行為に該当するかどうかですが、不貞行為にあたるからといってすべてのケースで慰謝料請求できるわけではありません。
慰謝料請求できるケースとできないケースがあるのです。
不貞行為で慰謝料請求するためには、前提としてふたつの条件を満たす必要があります。
- ・婚姻や内縁(事実婚)が成立する
- ・配偶者以外の異性と肉体関係を持つ
以上の条件を満たしている場合は、不貞行為をした配偶者と不貞行為の相手のどちらにも慰謝料請求が可能です。
不貞行為で慰謝料請求できるケースと、できないケースの具体例について順番に見ていきましょう。
不貞行為で慰謝料請求となるケース
不貞行為で慰謝料請求となる代表的なケースは5つあります。
(1)肉体関係があるケース
配偶者と不倫関係の相手に肉体関係があった場合は、慰謝料請求の対象になります。
具体的な肉体関係がなくても、オーラルセックスのような性交類似行為があっても慰謝料請求の対象です。
キスについてはすでに説明しましたが、慰謝料請求の対象外になります。
肉体関係とは言えないからです。
(2)不貞行為の相手と同棲しているケース
配偶者が不貞行為の相手と同棲している場合は、配偶者と不貞行為の相手に慰謝料請求が可能です。
同棲しているということは、肉体関係や性交類似行為があると予想できるはずです。
仮に明確な肉体関係の場面をおさえることができなくても、配偶者以外の異性と同棲することはルール違反なので、不貞行為に走った配偶者と不貞行為の相手に慰謝料請求できます。
(3)ラブホテルなどに長時間滞在していたケース
ラブホテルや旅館などに、異性と配偶者が長い時間滞在していた場合は慰謝料請求できます。
宿泊施設に長時間ふたりきりで滞在していた時点で、不貞行為があっただろうと疑うに足りるからです。
肉体関係を明確に証明する証拠自体がなくても慰謝料請求できますが、この場合は長時間ふたりきりで滞在していたことを証明する必要があります。
(4)婚約中に婚約者が不貞行為に走ったケース
婚姻届を提出していない婚約状態でも、不貞行為に走ったケースでは慰謝料請求できる可能性があります。
婚約はすでにパートナーを決めて結婚を約束している段階です。
結婚自体はまだでも、婚約の段階ですでに他の異性と肉体関係を結ばないという義務を負っていると考えられます。
婚約中に婚約者が不貞行為をした場合は、婚約の成立などを証明して慰謝料請求が可能です。
佐賀地裁の平成25年2月14日判決では、婚約者の不貞行為に対して慰謝料請求が認められています。
(5)配偶者が人工授精に応じたケース
配偶者が別の異性の人工授精に応じたケースでも,不貞行為が認められる可能性があります。
人工授精は肉体関係を結ぶわけではありませんが、自分の子どもを儲けるための行為です。
東京地裁の平成24年11月12日判決では、不貞行為が成立すると判断されました。
人工授精での判例ができたため、今後も慰謝料請求が認められる可能性があります。
不貞行為で慰謝料請求とならないケース
不貞行為で慰謝料請求とならない代表的なケースは4つです。
なお、説明するこれらのケースで、絶対に慰謝料請求できないというわけではありません。
あくまで慰謝料請求が難しいという話です。
ケースにとっては慰謝料請求できる可能性があるため、ご自分の場合で慰謝料請求できるか判断したい場合は、弁護士に相談したうえで判断することをおすすめします。
(1)不貞行為の相手が誰だかわからないケース
不貞行為の相手の素性が分からなければ、慰謝料請求したくてもできません。
裁判で慰謝料請求をするためにも、相手の住所や氏名は必要になります。
不貞行為の相手に交渉で慰謝料請求するためにも、連絡先が分からなければ請求のしようがないからです。
ただし、不貞行為の相手の素性や連絡先などは、探偵や興信所に依頼すれば突き止めることも可能です。
素性さえ分かれば慰謝料請求できます。
(2)不貞行為がなかったケース
そもそも不貞行為自体がなければ慰謝料請求できません。
たとえば不貞行為があったと誤解していて、実際はなかったケースなどがこれに該当します。
勘違いしただけで不貞行為の事実が存在しなかったケースです。
この他に、キスやデートはあったが肉体関係がなかったケースも該当します。
不貞行為の慰謝料請求の基本的なラインが肉体関係になっているからです。
肉体関係がなかった場合は、不貞行為による慰謝料請求が難しくなります。
(3)不貞行為の証拠がないケース
不貞行為の証拠がなくても、配偶者や不貞行為の相手が慰謝料請求に応じれば払ってもらうことは可能です。
ただ、証拠がなければ「不貞行為などしていない」と言い逃れされる可能性があるため、慰謝料請求が困難になります。
裁判などの裁判所手続きで慰謝料請求をする際に、不貞行為の証拠がないケースは致命的です。
裁判などでは裁判官という第三者が慰謝料請求について判断を下します。
裁判官などの第三者の目から見て「不貞行為があったのだ」と判断できるような証拠がなければ、慰謝料請求が認められにくくなるのです。
ただ、証拠は慰謝料請求を決めてから集めることもできます。
慰謝料請求の際に証拠で困ったら、証拠になりそうなものを収集してみましょう。
弁護士や探偵などに、証拠や証拠の集め方について相談してみるのもよい方法です。
(4)慰謝料請求の時効が過ぎているケース
不貞行為の慰謝料請求には、時効があります。
不貞行為の慰謝料請求の時効は基本的に3年です。
慰謝料請求の時効が過ぎたら、基本的に慰謝料請求は難しくなります。
ただし、時効はケースによって起算点が異なる可能性があるのです。
離婚したかどうかや、慰謝料請求の相手が分かっているかどうかによっても、起算点が変わってきます。
時効が心配な場合は弁護士に相談して、時効についてチェックしてもらうとよいでしょう。
なお、時効が過ぎていても配偶者や不貞行為の相手が慰謝料請求に応じれば、払ってもらうこと自体は可能です。
不貞行為における慰謝料の相場とは
不貞行為の慰謝料相場は50~300万円です。
不貞行為があったが夫婦関係を続ける場合の慰謝料相場は50~100万円。
不貞行為が原因で別居する場合は100~200万円。
不倫が原因で離婚に至った場合は200~300万円が慰謝料相場になります。
ただし、不貞行為のケースによっても慰謝料相場は変わってきます。
ケースによって慰謝料の増減が行われる可能性もあるため、慰謝料額はケースバイケースです。
慰謝料相場はあくまで目安になります。
離婚をするために不貞行為を証明する方法
不貞行為の慰謝料請求は、基本的に肉体関係の有無が基準になりますが、肉体関係がないケースにおいて、一切慰謝料請求が認められないわけではありません。
肉体関係がなくても慰謝料請求が認められるケースがあるのです。
たとえば、夫が妻以外の異性と不倫行為に走りました。
夫は不倫行為の相手である女性に自分が稼いだお金を貢いでおり、家庭にお金を入れません。
子どもや妻を顧みることもなくなりました。
このようなケースでは、肉体関係がなくても不貞行為と評価され、慰謝料請求が認められる可能性があります。
ただ、慰謝料請求をするためには、不貞行為の証拠が重要です。
不貞行為の証拠には、以下のようなものがあります。
- ・メールやSNS
- ・電話などの音声を録音したもの
- ・浮気現場の写真や動画
- ・帰宅が遅い(密会していたと思われる)日付や帰宅時間の記録
- など
この他にも不貞行為の証拠になるものは存在します。
証拠で困ったら、弁護士などに証拠になりそうなものや見つけ方について相談してみましょう。
まとめ
不貞行為の基準になるのは、肉体関係の有無です。
慰謝料請求の基準も肉体関係になります。
よって、キスだけでは不貞行為に該当せず、慰謝料請求の対象にもなりません。
ただし、肉体関係のない浮気や不倫で慰謝料請求が一切認められないわけではありません。
ケースによっては慰謝料請求できる可能性があるのです。
慰謝料請求の可否で迷ったら、まずは弁護士に相談して慰謝料請求できるかどうか確認してみるとよいでしょう。