この記事でわかること
- 慰謝料請求を自分でおこなう方法がわかる
- 自分で慰謝料請求するときに準備すべきものがわかる
- 自分で慰謝料請求するときの注意点やリスクを理解できる
慰謝料請求は、必ず裁判所を通して行わなければならないというルールはありません。
自分で慰謝料請求することも可能です。
この記事では、自分で慰謝料請求するときの方法や必要な準備について解説します。
あわせて、自分で慰謝料請求するときの注意点やリスクについても説明します。
慰謝料請求を自分で行う方法について
自分で慰謝料請求する方法は3つあります。
慰謝料の請求は弁護士に依頼しても、自分で行っても、基本的な流れは変わりません。
話し合いで直接慰謝料請求する方法
相手と話し合いや交渉を行い、慰謝料を請求する方法になります。
電話や場所を設定しての話し合いなど、相手と直接交渉しながら慰謝料について決めます。
慰謝料を請求する側と支払う側である相手が話し合いの内容に同意・納得すれば、この方法でも慰謝料請求が可能なのです。
話し合いで直接請求する方法のメリットは、請求の簡単さにあります。
書面を準備する必要もありませんし、裁判所に申し立てるための準備も必要ありません。
直接口頭で話すわけですから、慰謝料請求が簡単なのです。
もちろん、裁判の申し立て費用なども必要ありませんから、金銭面での負担も軽くなる可能性があります。
ただ、話し合いによる慰謝料請求にはデメリットもあります。
話し合いによる慰謝料請求は当事者が直接話し合うため、感情的になりがちです。
感情的になった結果、ケンカ沙汰になってしまったり、交渉が決裂してしまったりする可能性があります。
慰謝料の請求相手が言い逃れする可能性や、話し合い後に慰謝料の約束を反故にする可能性もあるため、自分で慰謝料請求するときには注意が必要です。
内容証明など書面で慰謝料請求する方法
もう一つは、内容証明郵便などの書面で請求するという方法があります。
書面を受け取った相手が内容を承諾して慰謝料請求に応じれば完了です。
内容証明などの書面による慰謝料請求のメリットは、感情的になることを避けられることと、相手と直接言葉を交わす必要がないことにあります。
直接話し合えば感情的になるケースでも、書面であれば淡々とやり取りできるはずです。
慰謝料請求の相手方と直接会う必要も、言葉を交わす必要もないため、相手に会いたくないというケースにもメリットがあります。
内容証明などの書面で慰謝料請求するデメリットは、相手に無視される可能性があるという点です。
慰謝料請求の書面には、必ず内容証明郵便を使わなければならないというルールはありません。
普通郵便による請求も可能ですが、普通郵便で慰謝料請求した場合は送付の証拠が残りませんから、「郵便は見ていない」「知らない」と言われてしまうことがあるのです。
内容証明郵便の場合は郵便局に内容と送付の記録が残るのですが、慰謝料支払いの強制力まではありません。
内容証明郵便を受け取ったからといって、相手は慰謝料の支払いを強制されるわけではないため、無視されることも考えられます。
自分で裁判により慰謝料請求する方法
裁判は弁護士に起こしてもらうものという印象があるかもしれません。
慰謝料請求の場合は、弁護士に必ず依頼する必要はなく、自分で裁判を起こすことも可能です。
自分で裁判による慰謝料請求をする場合は、裁判の準備も自分で行います。
慰謝料請求の裁判には次のようなものが必要になります。
- ・訴状
- ・証拠と証拠説明書
- ・印紙や切手
訴状には特に決まった形式はありません。
裁判所などのホームページに、テンプレートや記載例の準備があれば使って差し支えありません。
印紙は裁判の費用で、切手は書類の送付に使います。
裁判ケースによって異なるため、事前に準備するものについてはしっかり確認しておくことが重要です。
自分で裁判による慰謝料請求をするメリットは、判決という強力な公文書を入手できる点です。
判決は債務名義という強制執行の材料になりますので、仮に相手が判決に従わない場合でも強制執行で慰謝料を回収できます。
自分で裁判によって慰謝料請求するデメリットはふたつあります。
ひとつは、裁判は法的な知識がないと難しいため、困る可能性があることです。
もうひとつは、必ず自分の望む結果になるわけではない点です。
裁判は裁判官という第三者が判決を下します。
判決の内容が自分の望む結果ではない可能性もあります。
慰謝料請求をするときに準備しておくもの
慰謝料請求をするときは、方法に応じた準備が必要になります。
たとえば内容証明郵便を使って慰謝料請求する場合は、書面の準備が必要です。
裁判で慰謝料請求する場合には、裁判の申し立て書面や印紙といった準備が必要になります。
この他に自分で慰謝料を請求する際には「証拠」が必要になります。
証拠はラブホテルへの出入りや肉体関係があったと分かるような、不貞行為の証拠が必要です。
自分で浮気の慰謝料請求をするためにも、どのようなものを証拠として準備すればいいのか知っておきましょう。
浮気の証拠になるのは次のようなものです。
写真
ラブホテルに配偶者や浮気相手が一緒に入って行くシーンの写真や、出てくるときの写真などは、浮気慰謝料の証拠として使えます。
この他に、配偶者や浮気相手が性的な関係であると分かる写真(性行為の写真)なども自分で慰謝料請求するときの証拠になるのです。
動画や映像
動画や映像も写真と基本的に同じです。
配偶者と浮気相手がラブホテルに出入りしている動画や映像、性的な関係であると分かる動画や映像は、自分で慰謝料請求するときの証拠になります。
音声
配偶者と浮気相手が通話しているときの音声などが、証拠になる可能性があります。
浮気していると分かるようなやり取りを電話などでしている場合は、録音しておくといいでしょう。
浮気相手や配偶者が、不貞行為を認めた音声も自分で慰謝料請求するときの証拠になります。
メールやSNSなど
メールやLINEなどのSNSも、内容によっては自分で慰謝料請求するときの証拠として使えます。
メールやSNSなどのやり取りの中でも性的な関係が分かるものがあれば、チェックしておきましょう。
この他に証拠になるもの
音声や写真以外にも証拠になるものはあります。
たとえばラブホテルの領収書やクレジットカード明細、着信履歴などが証拠になる可能性があります。
単独では証拠として弱くても、いくつか組み合わせることで浮気の証拠になることもあるのです。
証拠になりそうなものは保存しておくことをおすすめします。
話し合いで慰謝料請求を成功させるための注意点とは
自分で慰謝料請求するときに、話し合いによる請求を成功させるためにはどのようなことに注意すればいいのでしょうか。
裁判は可能な限り避けたい。
話し合いで穏便に慰謝料請求したい。
話し合いの段階で迅速に慰謝料の支払いを受けたい。
このようなケースでは、3つのポイントに注意することが重要です。
慰謝料請求相手に過度の謝罪などを要求しない
浮気をされた被害者としては、慰謝料請求の相手に対して怒りや悲しみ、失望を感じているのではないでしょうか。
自分への裏切りに対して、自分が納得するまで謝罪して欲しいと思うかもしれません。
しかし、慰謝料請求を話し合いでまとめたいときに、過度の謝罪を求めるのはマイナスです。
仮に相手が浮気に対して罪悪感を持っていたとしても、土下座させたり、人の目のある場所で謝罪を求めたりすれば、反感を持たれかねません。
要求や言葉によっては、法律にふれる可能性もあります。
慰謝料請求を自分で話し合いによりまとめたい場合は過度な要求をせず、慰謝料請求相手の立場にも配慮することが重要です。
慰謝料請求の相手に過度な慰謝料を請求しない
慰謝料は浮気による心の痛みへの賠償です。
心の痛みは金額換算できないからこそ、慰謝料としていくら請求すればいいか迷うのではないでしょうか。
浮気により傷ついたからといって、あまりに過度な金額を慰謝料請求してしまうと、相手の反感を買ってしまう可能性があります。
たとえば、自分の心の痛みは3億円だと主張して、実際にその金額を請求したらどうでしょう。
大学または大学院を卒業した男性が、60歳までサラリーマンとして働いたときの生涯年収は2億7,000万円ほどだといわれています。
3億円という金額はひとりの人間の生涯年収より高い計算になるのです。
心の痛みは確かに金額換算が難しいものですが、それでも、請求する金額によっては慰謝料請求の相手から「高すぎる」と反論される可能性があります。
これはあくまで極端な例です。
ですが、慰謝料請求を話し合いでスムーズにまとめたい場合は、過度な金額を慰謝料として請求するのはマイナスになります。
現実的に支払い可能かという問題もあるはずです。
自分で慰謝料請求する場合は、慰謝料額が過大にならないよう注意する必要があります。
自分で慰謝料請求するときの相場を知っておく
過大な慰謝料請求を避けようと思っても、相場が分からなければ過大なのか過少なのか、判断のしようがありません。
弁護士に依頼して請求する場合は、弁護士に慰謝料相場の相談をした上で慰謝料の請求額を決められますが、自分で慰謝料請求する場合は慰謝料額も基本的に自分で判断するのです。
慰謝料相場はどのくらいなのか。
浮気をされたとき、世間の人はどのくらいの額を請求しているものなのか。
自分で慰謝料請求する人は気になることでしょう。
慰謝料には判例などから算出した相場があるのです。
浮気の慰謝料相場は以下のようになっています。
- ・浮気はあったが離婚には至らなかった場合 50~150万円
- ・浮気によって離婚した場合 100~300万円
浮気の慰謝料には一応の相場はありますが、相場はあくまでひとつの目安に過ぎません。
浮気のケースに合わせて慰謝料の増減が行われることもあるのです。
慰謝料相場より低い金額になることもあれば、高い金額になることもあります。
話し合いで慰謝料を決めるときは、金額も話し合って決めて差し支えありません。
相場を参考に、慰謝料請求相手と話し合いましょう。
慰謝料請求を自分で行う場合のリスクについて
自分で慰謝料請求すれば、弁護士費用はかかりません。
費用面を節約できることから、自分で慰謝料請求した方がいいと考える人もいることでしょう。
しかし、自分で慰謝料請求することにはリスクもつきまといます。
リスクも理解したうえで、慰謝料請求を自分でするかどうかを決めましょう。
知っておきたい自分で慰謝料請求する際のリスクは5つです。
- ・裁判などの手続きに時間がかかる可能性がある
- ・慰謝料請求相手が弁護士を立てたときの対応が困難
- ・慰謝料請求の合意内容を書面化するなど、証拠を残すことが難しい
- ・慰謝料請求相手から「約束していない」など言い逃れされる可能性がある
- ・慰謝料請求の相手の家族から請求されることがある
自分で慰謝料請求する場合、裁判などに慣れていないため手続きに手間取ってしまう可能性があります。
手続きに時間がかかると、その分だけ慰謝料を受け取るまでに時間を要するというリスクがあるのです。
また、慰謝料請求の際に相手方が法律と交渉に強い弁護士を立てた場合は、自分で交渉することが困難になるというリスクもあります。
この他に、文書作成に慣れていないために、話し合いの結論を文書として残すことが困難なこともあります。
仮に文書を残したとしても、個人で作成した文書であることから、慰謝料請求の相手から「約束していない」「慰謝料額を捏造している」などと言われてトラブルになるリスクもあるのです。
加えて気をつけたいのが相手方から慰謝料請求されるリスクです。
浮気相手に配偶者がいた場合、その配偶者から見れば浮気をした自分の配偶者は浮気相手になります。
浮気相手の配偶者から、自分の配偶者に慰謝料請求されてしまうリスクがあります。
自分で慰謝料請求することには、このようにリスクがともなうのです。
リスク対策をしたい場合や不安な場合は、弁護士にアドバイスを求めたうえで慰謝料請求をしてはいかがでしょう。
まとめ
配偶者に浮気された場合に、話し合いや内容証明などの書面の送付、裁判などを使って自分で慰謝料請求することも可能です。
ただし、自分で行う慰謝料請求にはリスクもあります。
自分で慰謝料請求するときは注意点やリスクをおさえておくことが重要です。
不安なことがあれば慰謝料問題に強い弁護士に相談し、不安を解消しておきましょう。