監修弁護士:大橋 正崇 先生(弁護士法人AO)
この記事でわかること
- 医者と離婚した場合の慰謝料相場がわかる
- 医者との離婚でトラブルになる原因や慰謝料事例がわかる
- 医者と離婚したときの財産分与について理解できる
医者は所得の高い職業として知られています。
医者と、相手の浮気が原因で離婚した場合の慰謝料相場や財産分与はどうなっているのでしょう。
医者と離婚するときの慰謝料や金銭トラブルの原因、財産分与などについて解説します。
医者と離婚した場合の慰謝料相場はどのくらいか
浮気が原因で離婚する場合の慰謝料相場は100~300万円ほどになっています。
しかし、この慰謝料相場はあくまで一般的な相場です。
医者という所得の高い職業に就いている配偶者と離婚する場合は、同じ浮気という原因でも医者の所得に応じて慰謝料相場も高くなるのではないかと思うかもしれません。
結論から言うと、高くなるケースもあれば、一般的な慰謝料相場とさほど変わらないケースもあります。
配偶者が医者だからといって、必ず慰謝料相場が高額になるわけではありません。
医者と離婚するときの慰謝料額は慰謝料の対象となる要素を考慮し、ケースバイケースで決まります。
医者と浮気で離婚するときの慰謝料に関係する要素
慰謝料は、原因が浮気である場合や、家庭の事情によって金額が増減します。
医者であっても、一般家庭の場合と同じく慰謝料の金額はケースバイケースになるという理屈です。
医者と相手の浮気が原因で離婚するときの慰謝料には、次のような要素が関係します。
- ・浮気の程度や期間、頻度
- ・婚姻期間の長さ
- ・医者と浮気相手の年齢
- ・子どもの有無
- ・夫婦の関係や協力の程度
- ・夫婦それぞれの社会的地位や収入状況
- ・医者の支払い能力
- ・配偶者の浮気による精神的苦痛の程度
医者は確かに一般的には高収入とされる職業ですが、すべての医者が高収入を得ているとは限りません。
支払い能力も医者によって異なります。
収入状況や支払い状況自体が医者によって異なりますから、一概に「医者が浮気をしたら慰謝料の相場が高額になる」と断定はできません。
また、医者という地位の他に、どのような社会的地位にあるかも人によって異なります。
浮気の慰謝料には社会的地位も要素として関わるため、浮気をした医者の社会的地位によっても変わってくるのです。
医者の浮気による一般的な慰謝料相場も100~300万円。
ただし要素により増減がされるため、医者の収入や社会的地位などによってケースバイケースという結論です。
医者の離婚が金銭面でトラブルになる原因とは
医者との離婚が、金銭面でトラブルになることがあります。
なぜ金銭面でのトラブルになるのでしょう。
3つのトラブルと原因について説明します。
医者と浮気で離婚するときは養育費の算定が難しい
子どもがいる場合、離婚時に養育費を決めることになります。
養育費は夫や妻の年収を要素のひとつとして、裁判所の養育費算定表で養育費の目安を算出可能です。
ただし、夫婦の片方が高収入の場合は、裁判所の養育費算定表を使った算出が難しくなっています。
結果、養育費の相場を確認できず、養育費で揉めるケースがあるのです。
浮気で離婚する医者の収入が勤務医は2,000万円以上開業医は1,567万円以上の場合、裁判所の養育費算定表で養育費相場を算出できません。
裁判所の養育費算定表が資料として使えないため、離婚の際に養育費という金銭で揉めることがあるのです。
子どもの学費のことで医者と離婚時の金銭トラブルになる
医学部への進学を予定している場合や、子どもが私立の学校に進学を予定している場合は、子どもの将来的な学費のことも考えなければいけません。
大学は学部によって学費にばらつきがあるのです。
医学部は学費の高い学部として知られており、学費の年間平均は500万円を超えるといわれています。
また、私立の中学や高校に進学する場合も、公立の学校より学費が多くかかるのが基本です。
離婚後の子どもの学費から、金銭トラブルになるケースがあります。
医者の収入が多いために適正金額がわからない
すでにお話ししましたが、収入や社会的地位は浮気で離婚するときの慰謝料の計算に関係します。
社会的地位と収入の高い医者が浮気をして配偶者と離婚する場合、一般的なサラリーマンの年収などと収入状況がかけ離れているため、慰謝料などの適正額が問題になることがあるのです。
養育費についても医者の収入が多いと裁判所の養育費算定表が使えないため、適正額が分からないという状況になります。
適正額が分からず、離婚する夫婦の主張がかみ合わないため、金銭面でトラブルになることがあるのです。
医者の浮気で慰謝料を獲得した事例について
医者への慰謝料請求の参考に、医者の浮気が原因で離婚し、実際に慰謝料を獲得した事例をご紹介します。
この慰謝料の獲得事例では、職場で医者と看護師が浮気しました。
同じ職場の医者と看護師という立場を利用した浮気です。
医者や看護師という立場があるため、社会的立場などを考慮した慰謝料を請求し、結果的に浮気慰謝料250万円の支払いになりました。
慰謝料の支払いが決まるまでの期間は1カ月以内。
慰謝料の他に条件として「不倫の事実を口にしないこと」「求償権を放棄すること」「職務上必要なケース以外では接見を禁止すること」「約束を破った場合は違約金を支払うこと」を取り決めた事例です。
浮気の慰謝料額は一般的な相場の範囲内ですが、医者という病院や社会での立場があったため、慰謝料の支払い決定まで迅速に行われたケースになります。
医者との離婚で財産分与はどうなる
医者が浮気して離婚に至る場合、慰謝料だけが問題になるわけではありません。
離婚の際の財産分与をどのように行うかも問題になるのです。
医者は一般的に収入の多い職業ですから、財産分与の際の財産も高額になりがちな傾向にあります。
医者が浮気して離婚する場合の財産分与と、財産分与以外でトラブルになりがちな養育費や慰謝料についてもあわせて説明します。
医者の浮気で離婚する際の財産分与
医者の浮気で離婚する場合の財産分与は、基本的に夫と妻で2分の1ずつです。
財産分与は婚姻中の財産を離婚に際して分配することを意味します。
たとえ妻が専業主婦でも、夫が医者として働けていたのは妻の尽力があってこそではないでしょうか。
よって、医者が浮気をして離婚する場合も基本は夫と妻で2分の1ずつになるのです。
ただし、あくまでこの割合は基本になります。
専業主婦の妻の離婚後の生活を考えて妻に多く財産を渡すなど、事情に合わせて財産分与することも可能です。
夫が家や車を取り、妻が預金を取るなどの形で財産分与することも、夫婦が話し合って柔軟に決められます。
医者の浮気で離婚する際の養育費や慰謝料
養育費は、子どもの養育のための費用ですから、財産分与とは性質が異なります。
慰謝料も浮気による心の痛みを賠償する金銭ですから、財産分与とは基本的に違った性質の金銭です。
医者の浮気が原因で離婚するときは、浮気による慰謝料と養育費についても決めることになります。
養育費や慰謝料も夫婦で話し合って決めることが可能です。
医者の浮気による離婚では、子どもが医学部や私立の学校に進学するなどの事情から、養育費が高額になるケースもあります。
医者の財産分与において注意する点とは
医者の浮気で離婚するときに行う財産分与では注意したいポイントが2つあります。
補足程度に、医者の財産分与での注意点について解説します。
開業医と勤務医では財産分与が変わる
勤務医は勤め人なので、財産分与での扱いは高所得のサラリーマンと特に変わりません。
対して開業医は勤務医と異なる点に注意が必要です。
開業医の財産には注意が必要である
開業医の財産には、難しい問題がつきまといます。
配偶者である開業医の病院は法人化しているかどうかや、出資持分があるか出資持分があれば、名義は誰になっているかも財産分与に関係してきます。
また、開業医は国内外に財産を分散して持っているケースがあります。
開業医が所有している不動産の評価や、海外財産の在り処も問題になるのです。
医者の場合は預金や不動産以外の財産を所持していることもあるため、注意してください。
たとえば絵画や貴金属、ワインなどの価値のある財産をどのように評価して財産分与を進めるかが問題になります。
まとめ
浮気した医者への慰謝料請求相場は100~300万円になります。
ただ、医者の所得や社会的地位も慰謝料金額設定で考慮される可能性があります。
医者と浮気で離婚するときは、慰謝料の他に財産分与や養育費も問題になるため注意してください。
財産分与や養育費で揉めそうな場合は、弁護士に相談するのも方法のひとつです。
医者との離婚で金銭トラブルを深刻化させないよう、スムーズに取り決めをおこないましょう。