この記事でわかること
- 不倫相手に慰謝料できるケースとできないケースがわかる
- 不倫慰謝料の相場が理解できる
- 不倫慰謝料の請求の流れや必要なものがわかる
不倫は配偶者一人の意思ではできません。
不倫した配偶者に怒りや悲しみを覚えると同時に、不倫相手にも同様の感情を覚えるのではないでしょうか。
不倫の怒りや苦しみの賠償として不倫相手に慰謝料請求しようと考える人もいるはずです。
慰謝料請求のときに問題になるのが、慰謝料請求の可否や必要なもの、実際の慰謝料請求の流れなどです。
この記事では、不倫慰謝料請求の可否や流れ、請求のために必要なものなど、不倫相手に対する慰謝料請求の基礎知識を解説します。
不倫相手に慰謝料が請求できる場合・できない場合
「不倫の慰謝料」とは、不倫による心の苦痛に対して支払われる金銭です。
心の痛みは人それぞれで、心という見えないものを金額に換算することは、本来できません。
しかしながら、他に心の苦痛を補填する術がないため、仮に金額換算して不倫した配偶者や不倫相手に請求することになります。
不倫の慰謝料は不倫した配偶者と不倫相手に請求可能です。
ただし、すべての不倫ケースで慰謝料請求が認められるわけではありません。
不倫相手への慰謝料請求できる場合とできない場合を説明します。
不倫相手に慰謝料請求できる場合
不倫相手に慰謝料請求するためには、不倫相手がふたつの条件を満たしている必要があります。
条件は以下の通りです。
- ・不倫相手に故意・過失があった
- ・不倫によって権利侵害を受けた
逆に考えると、不倫によって権利侵害もなく、不倫相手には故意や過失がなかったと認められるケースでは、不倫相手への慰謝料請求は難しくなります。
不倫相手の故意や過失、権利侵害について詳しくみていきましょう。
不倫相手や不倫の故意・過失とは
不倫相手の「故意」とは「既婚者だと知っていながら不倫したこと」を指します。
故意を「知っていた」と解釈すればわかりやすいのではないでしょうか。
不倫相手の「過失」とは「うっかり」「注意不足」を指すのです。
不倫相手に慰謝料請求するためには、不倫相手に故意や過失があることが前提になります。
以下のようなケースでは、不倫相手の故意や過失が認められる可能性があります。
- ・不倫した配偶者が既婚であると知っていたが不倫した
- ・不倫している相手が既婚であると注意すればすぐに気づける状態だった
- ・不倫の相手が家庭を持っていることは知っていたが、家庭や夫婦関係が破綻していると誤解しており、注意深く見れば破綻していないことに気づくはずだった。
対して、不倫相手が自分の意思で肉体関係を持っていなかった場合(脅しや脅迫などで無理やり肉体関係を持ったなど)やお互いのことをほぼ知らず、注意しても既婚者だと気づくことが難しかった場合などは、不倫相手の故意や過失が認められない可能性があるのです。
不倫による権利侵害とは
不倫相手に慰謝料請求するためには、不倫相手が権利侵害しているかどうかも判断のポイントになります。
たとえば、不倫前は夫婦仲が良好だったはずの夫婦が、不倫が原因で夫婦関係に亀裂が生じてしまい、別居したとします。
夫婦仲がよかったはずの夫婦は、不倫のせいで最終的に離婚しました。
この場合は不倫相手による権利侵害があったと解釈される可能性があります。
実際に不倫によって家庭を壊しているからです。
この他に、不倫相手と肉体関係がなくても、不倫相手と配偶者があまりに親密で家庭を壊したなどのケースでは権利侵害が認められる可能性があります。
対して、最初から夫婦仲が悪く長年別居し、ほぼ夫婦としての実態がない場合は権利侵害が認められない可能性があるのです。
不倫前にすでに家庭が壊れていたわけですから、不倫によって壊されたわけではありません。
よって、守るべき権利自体がなく権利侵害もなかったと判断されること可能性があります。
不倫相手に慰謝料請求できない場合
不倫相手に慰謝料請求が難しいかどうかは、権利侵害や過失、故意などの観点からも判断されますが、他にも請求の可否に関わるポイントがあります。
不倫相手に慰謝料の請求が難しいのは次のようなケースです。
- ・損害に対して十分な慰謝料を受け取っている
- ・不倫慰謝料請求の時効
損害に対して十分な不倫慰謝料を受け取っている
すでに十分な額の不倫慰謝料を受け取っているケースでは、不倫の相手に慰謝料請求は基本的にできません。
たとえば、不倫の慰謝料として不倫した配偶者から300万円ほどの金額を受け取っていました。
不倫慰謝料は不倫した配偶者と不倫相手の双方に請求可能です。
このケースでは不倫した配偶者から不倫慰謝料を受け取っているわけですから、不倫相手に対してさらに慰謝料請求できるのではないかと思うかもしれません。
実は、このケースでは不倫慰謝料の請求が難しいのです。
なぜなら、不倫した配偶者からすでに不倫慰謝料としては妥当な金額の慰謝料を受け取っているからです。
十分な慰謝料を受け取っているのにさらに不倫相手に慰謝料を請求すると、慰謝料の二重取りに等しいかたちになってしまいます。
よって、すでに不倫慰謝料として十分な額を不倫した配偶者から受け取っている場合は、さらに不倫相手に慰謝料請求はできないのです。
ただし、不倫慰謝料の額が十分ではない場合や暴力など不倫慰謝料とは別の慰謝料請求原因がある場合はこの限りではありません。
十分な慰謝料か、さらに慰謝料請求が可能かなどは、弁護士に相談して判断することをおすすめします。
不倫の慰謝料請求の時効になった
不倫の慰謝料請求は何時までもできるわけではありません。
時効を迎えると慰謝料請求ができなくなってしまうのです。
不倫の慰謝料請求の時効は「不倫の事実および不倫相手を知ってから3年」になります。
不倫を知っていて、かつ不倫相手も知っていたのに、不倫の慰謝料請求をせず静観すると、時効によって慰謝料請求できない可能性があるのです。
不倫慰謝料請求の時効を算定するためには、法的な知識が必要になります。
自分では時効が経過していると思っていたのに、法律の専門家が見れば時効が完成していないこともあるのです。
不倫の事実や不倫相手を知って時間が経っている場合は、弁護士に相談して時効を確認してもらうことをおすすめします。
不倫による慰謝料の相場
心の痛みは人それぞれです。
よって、心の苦痛に対して支払われる金銭である慰謝料に明確な金額基準はなく、基本的にはケースバイケースです。
ただ、不倫の慰謝料にも過去の判例などをもとにした相場があります。
不倫慰謝料の大よその相場は次の通りです。
(1)不倫後に夫婦関係を継続する場合の慰謝料相場
不倫後も夫婦関係を継続する場合の慰謝料相場は50~100万円です。
不倫後も夫婦関係を継続する場合は、不倫の慰謝料相場が別居や離婚と比較してやや低くなります。
夫婦関係を継続できるということは、不倫による夫婦へのダメージが解決的なものではなかったと解釈することが可能です。
別居や離婚に至ったケースより夫婦関係へのダメージが小さいという点で、慰謝料相場も低めになっています。
(2)不倫が原因で別居に至った場合の慰謝料相場
不倫が原因で別居に至ったケースの慰謝料相場は100~200万円です。
夫婦関係を継続しても、別居という亀裂が生じています。
そのため、不倫後に別居せず夫婦関係を継続する場合より慰謝料相場が高くなっているのです。
(3)不倫が原因で離婚した場合の慰謝料相場
不倫が原因で離婚した場合の慰謝料相場は200~300万円になります。
離婚は夫婦関係の終了です。
不倫が原因で夫婦に決定的な亀裂が生じたことに他なりません。
よって、夫婦関係を継続するケースや別居のみで離婚していないケースよりも不倫慰謝料の相場は高くなっています。
不倫慰謝料は事情により増減することもある
不倫慰謝料の相場はあくまで相場です。
不倫によって離婚したからといって確実に相場金額を慰謝料として受け取れるわけではありません。
また、不倫慰謝料は事情に増減することがあります。
配偶者の年齢や婚姻期間、子供の有無、不倫相手や不倫した配偶者の謝罪などは不倫のケースにより違うはずです。
事情によって不倫慰謝料は増減することがあります。
不倫ケースによっては不倫の慰謝料相場より低くなることや、高くなることもあるのです。
不倫慰謝料の請求に必要なもの
不倫相手への慰謝料請求に必要なのは「不倫の証拠」です。
不倫相手に慰謝料請求しても、不倫相手が不倫自体を否定したり、証拠がないからと請求を一蹴したりする可能性があります。
不倫相手に慰謝料を払ってもらうためには、不倫の確固たる証拠が必要です。
不倫の確かな証拠があれば、不倫相手が慰謝料請求に応じやすくなります。
言い逃れが難しくなるからです。
不倫相手が慰謝料請求に応じない場合は、裁判などで不倫の慰謝料を請求することになります。
裁判などの裁判所手続きで慰謝料請求する場合、裁判官などの第三者にも「不倫があった」と確証を抱かせる証拠が必要です。
裁判の場合、最終的に慰謝料請求を認めるかどうかは第三者である裁判官の判断になります。
証拠もなく「不倫があった」と主張しても、まず慰謝料請求を認めてもらえません。
よって、第三者の視点から見ても不倫があったとわかるような不倫の証拠が必要なのです。
不倫の慰謝料請求に使える証拠としては、次のようなものがあります。
- ・肉体関係があったと推測できる写真やメール、動画
- ・肉体関係があったと推測できるホテルの領収書
- ・配偶者や不倫相手の不倫の自白の録音
- ・不倫関係が推測できる電話の通話記録
- など
不倫に関係しているものは保存しておき、後から証拠として使えるか精査してはいかがでしょう。
不倫の慰謝料請求に使える証拠かわからない場合や、証拠収集が難しい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
不倫慰謝料の請求に使える証拠や保存しておきたい証拠、証拠収集について適切なアドバイスを受けられるはずです。
不倫慰謝料請求の流れ
不倫の慰謝料請求には大きく分けて3つの方法があります。
口頭で不倫慰謝料を請求する方法と書面で請求する方法、裁判で請求する方法です。
それぞれの方法で請求の流れが変わってきます。
不倫慰謝料を口頭で請求する流れ
慰謝料は不倫相手に口頭で請求することも可能です。
口頭で請求する方法は、電話などで不倫相手に慰謝料を請求する旨と金額を伝え、不倫相手に支払いを受けるというシンプルな流れで完結します。
ただ、口頭で慰謝料を請求する方法にはメリットとデメリット、リスクがあります。
よく考えて使う必要があるのです。
メリットは、不倫相手への慰謝料請求が簡単でシンプルなところです。
電話などで慰謝料請求を伝えればいいわけですから、特別な手続きも必要ありません。
不倫相手が熟考する時間を与えないという点でもメリットがあります。
しかし、不倫相手に言い逃れされたり、口頭のため証拠が残らず「言った」「言わない」などのトラブルに発展したりするデメリットがあるのです。
不倫相手に直接会って慰謝料請求をする場合は、「脅された」などの言いがかりをつけられるリスクもあります。
不倫慰謝料を書面で請求する流れ
不倫慰謝料は書面で不倫相手に請求することもできます。
書面は自分で作成することもできますし、弁護士に作ってもらうことも可能です。
不倫慰謝料を書面で請求する流れもシンプルになっています。
書面を作成し、この書面を不倫相手に郵送などで送付する。
後は不倫相手から慰謝料の支払いを受けるだけです。
口頭の場合は直接不倫相手と話すこともあり、お互いが感情的になってしまう可能性もあります。
書面で請求する場合は感情的になることを避けられ、言い分を明確に不倫相手へと使えることができるはずです。
内容証明郵便を使えば郵便局に送付の事実と送付した内容が記録として残りますので、不倫相手に確かに慰謝料を請求したという証拠になります。
不倫慰謝料を裁判で請求する流れ
書面や口頭での請求に不倫相手が応じなかった場合は、裁判で慰謝料を請求することになります。
裁判の流れとしては、まずは訴状を裁判所に提出します。
期日に双方の主張や証拠を出し合い、最終的に裁判官の判決をもらうという流れです。
まとめ
不倫の慰謝料は不倫相手に請求することが可能です。
ただし、すでに十分な慰謝料を不倫した配偶者から受け取っている場合や時効が過ぎている場合などは、基本的に請求できません。
不倫慰謝料を請求できるケースと難しいケースがあるのです。
不倫慰謝料を請求したいが、自分はできるのだろうか、と迷った場合は、不倫問題を得意としている弁護士に相談し、不倫慰謝料請求の可否や請求可能な金額の目安などをアドバイスしてもらうことをおすすめします。