【原則は非課税】離婚慰謝料で課税される例外や税金の計算方法と節税・控除の知識 | 離婚弁護士マップ
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【原則は非課税】離婚慰謝料で課税される例外や税金の計算方法と節税・控除の知識

この記事でわかること

  • 離婚慰謝料は原則として非課税である理由がわかる
  • 慰謝料に贈与税がかかるケースと計算方法がわかる
  • 離婚慰謝料を非課税、節税する方法がわかる
  • 養育費に対する税金や注意点がわかる

離婚慰謝料を受け取る場合に、税金がかかるのか心配されるのではないでしょうか。

慰謝料の性質上、原則として税金はかかりませんが、例外もあります。

ここでは、離婚慰謝料で課税されるケースやその場合の税額計算、節税するためのポイントなどについて説明します。

離婚慰謝料は原則非課税

離婚慰謝料を受け取っても、原則として課税されることはありません

離婚慰謝料は、不貞行為やDVといった原因により離婚することになった場合に、精神的苦痛を受けた損害に対する賠償金として受け取るものです。

損害を埋め合わせるために受け取るお金であり、受け取ることによって利益を受けるものではないので、基本的に課税すべき対象ではないのです。

ただし、損害賠償金として過大すぎる金額や財産である場合には、税務当局から利益を受けたものと判断され、課税される可能性があるので注意が必要です。

慰謝料に贈与税がかかるケースと贈与税計算方法

離婚慰謝料を受け取っても基本的には税金はかかりませんが、例外的に贈与税等の税金が課税される場合があります。

課税される可能性のあるケースや贈与税の計算方法を説明します。

慰謝料が過大すぎる場合

受け取った慰謝料が、損害賠償金として明らかに高額過ぎる場合には、贈与税が課税されるケースがあります。

これは、慰謝料が非課税であることを利用して、意図的に財産を隠す目的であったり、脱税行為であると税務当局が判断することがあるからです。

離婚慰謝料については、それぞれの夫婦の個別の事情によって内容が異なり、算定方法に決まりがあるわけではありません。

そのため、いくらであれば過大な慰謝料であるかを一律で判断するのは難しいのですが、一応の目安としては、不貞行為による慰謝料の相場は100~300万円程度と考えられます。

不貞行為の期間や悪質性、結婚期間の長さや子供の有無、不貞をした配偶者の資産状況などによりこの相場以上になるケースもあります。

相場以上に慰謝料を受け取ったら必ず贈与税が課税されるわけではありませんが、様々な事情を考慮しても慰謝料が社会通念上明らかに高すぎると判断されれば、贈与税を課税される可能性があります。

金銭ではなく不動産等によって慰謝料を支払った場合

慰謝料は金銭で支払わなければならないものではありません。

慰謝料として不動産や自動車、株などを譲渡する場合もあります。

そのような場合には、所得税法上、これらの財産を時価で相手に譲渡したものとみなされます(所得税法33条1項)。

財産を取得した金額(不動産であれば、不動産を購入した金額)よりも、譲渡したときの時価金額が上回っている場合は「譲渡益」があると判断されます。

譲渡益があると判断される場合、財産を譲渡した人(慰謝料を支払った側)に譲渡所得税が課税されます

たとえば、不動産を購入したときの金額が3,000万円で、譲渡するときの不動産の時価が4,000万円であれば、1,000万円の譲渡益があると判断され、この1,000万円に対して譲渡所得税がかかります。

また、不動産を慰謝料として受け取った人には不動産取得税がかかります。

他に、不動産の登記名義を自分に変更するためには所有権移転登記の登録免許税もかかります。

不動産を自分の名義にすれば、翌年以降は毎年固定資産税もかかりますので、その点も注意が必要です。

ただし、税金については各種の控除や減税措置などが受けられる可能性があります。

居住している家を慰謝料として譲渡する場合には、譲渡所得税の特別控除を受けたり、5年以上保有していた家を譲渡したりした場合には、軽減税率があります。

これらの税金の優遇措置を受けるためには条件があるため、税理士や弁護士に相談することをおすすめします。

偽装離婚である場合

偽装離婚の場合には、慰謝料や財産分与として財産を配偶者に移転すると、贈与税を課税される可能性があります

時々あるのが、夫に借金があり返済することが難しくなったため、自宅や財産が差し押さえられたりすることを避けるために、偽装離婚をして奥さんに財産を移すケースです。

住民票上の住所だけ異動させて、実際には一緒に生活を続けているような場合もあり、そのような場合は偽装離婚と判断されるでしょう。

このような場合、贈与税を課税されるというだけにとどまらず、悪質なケースでは犯罪となる可能性もあります。

また、偽装離婚をして母子手当などを受給していれば、不正受給となりこれも犯罪となります。

第三者の立替えで慰謝料を支払った場合

自分で慰謝料を支払うことができずに、両親などの第三者にお金を立て替えてもらったままにしている場合、贈与税が課税される可能性があります。

両親など身内に立て替えてもらった場合でも、きちんと金銭消費貸借契約書などを作り、少しずつでも返済していくようにしましょう。

贈与税の計算方法

贈与税を支払うのは、慰謝料を受け取った側です。

贈与税は、年間110万円までは非課税です。

受け取った慰謝料から110万円の基礎控除を差し引いた残りの金額に対して贈与税が課税されます。

贈与税の税率は、基礎控除額を差し引いた金額ごとに異なり、金額が高くなるほど税率が高くなります。

課税対象となる価格(基礎控除後)税率控除額
200万円以下0.1
300万円以下0.1510万円
400万円以下0.225万円
600万円以下0.365万円
1,000万円以下0.4125万円
1,500万円以下0.45175万円
3,000万円以下0.5250万円
3,000万円超0.55400万円

具体例で計算方法を説明します。

慰謝料500万円を受け取った場合の贈与税の計算方法です。

慰謝料500万円-基礎控除額110万円=390万円
390万円が課税対象となる金額です。

390万円の税率は、上記の表の「400万円以下」の欄の税率のとおり20%です。

390万円×20%(税率)=78万円
この78万円から、上記の表の「400万円以下」の欄の控除額のとおり25万円を差し引きます。

78万円-25万円=53万円
したがって、慰謝料500万円を受け取った場合の贈与税は、53万円となります。

離婚慰謝料を非課税・節税するためのポイント

できることなら慰謝料に課税されることは避けたいものでしょう。

離婚慰謝料に課税されずに済むためのポイントについて紹介します。

慰謝料は金銭で受け取る

慰謝料を不動産などで受け取る場合、ケースによっては様々な税金が発生する可能性があります。

想定外の課税をされることを避けるためには、金銭で慰謝料を受け取るのが安心です

金銭で慰謝料を受け取った場合には、万一贈与税等がかかった場合でも、受け取った慰謝料から税金を支払えばよいですが、金銭以外で慰謝料を受け取って税金がかかった場合、自分の手持ちのお金から税金を払わなければならないので大変です。

税金を期限内に払うことができないと、延滞税なども発生してしまいますので注意が必要です。

相手が金銭で支払うことが難しいと言う場合には、分割払いの方法なども検討するとよいでしょう。

不動産や株式などは時価を確認する

不動産や株式などは、取得したときの金額と慰謝料として譲渡するときの時価を確認しておきましょう。

時価の方が高い場合は、慰謝料を支払う側の人に譲渡所得税がかかる可能性があるため、事前に確認しておくことが大切です。

また、不動産や株式などの時価が慰謝料としては高額過ぎる場合にも贈与税がかかるケースがあるため、慰謝料を受け取る側にとっても時価を確認することは重要です。

慰謝料や財産分与の内容は文書を残す

慰謝料や財産分与の内容は、離婚協議書などを作成して文書で残すようにしましょう。

慰謝料を金銭で受け取った場合、基本的には非課税なので基礎控除額の110万円を超えている場合でも、確定申告をする必要はありません。

ただし、後から万が一税務署の調査が入る可能性などに備えて、離婚協議書を残しておく必要があります。

税務署からの問い合わせなどがあった場合、離婚協議書等の文書があれば慰謝料や財産分与として受け取った金銭であることを説明、証明しやすくなります。

慰謝料や財産分与を不動産で受け取った場合には、確定申告を行いましょう。

申告しておくことで、各種控除を受けられる場合もありますので、詳しくは税理士などに相談しましょう。

調停で慰謝料を取り決める

調停により離婚をした場合、調停調書が作成され、慰謝料や財産分与の内容が記載された調停調書の正本を交付してもらえます。

調停調書の正本があれば、離婚協議書以上に慰謝料や財産分与が脱税ではないことを証明しやすくなります。

また、調停で慰謝料を取り決める場合、相場からかけ離れた慰謝料を取り決める可能性自体が低いため、税務当局から贈与税を課税される可能性は低いでしょう。

【参考】養育費に対する税金や注意点

養育費についても、課税されるかどうか心配という方もいるかもしれません。

養育費についての税金や注意点を紹介します。

所得税について

養育費について所得税はかかりません。

その根拠として、所得税法に「学資に充てるため給付される金品及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」について、所得税を課さないと規定されています。

(所得税法9条1項15号)

贈与税について

贈与税についても、基本的に課税されません。

その根拠として、相続税法に「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものについては贈与税の課税価格に参入しない」と規定されています。(相続税法21の3条1項2号)

そのため、「通常必要と認められるもの」の範囲内であれば、贈与税を課税されることはありません。

ただし、養育費についても慰謝料の場合と同様、社会通念上明らかに高額過ぎるような場合には、贈与とみなされて贈与税が課税される可能性もあります。

養育費の一括払いは要注意

養育費については、途中で不払いになることを避けるため、一括払いを希望するケースもあるでしょう。

ただし、贈与税の課税の可能性という観点では、あまり得策とはいえません。

将来の分まで含めて養育費を一括払いで受け取った場合、「通常必要と認められるもの」として認められず、贈与税を課税される可能性が高くなります。

ただし、たとえ贈与税を課税されるとしても、相手の収入が不安定で不払いのリスクが高いなどの事情により一括払いの方が望ましいという場合もあるでしょう。

不払いになるリスクと課税される可能性を比較検討の上、どのような形で養育費を受け取るのがベストであるか考えましょう。

自分一人で判断することが難しい場合には、弁護士等への相談をおすすめします。

まとめ

慰謝料や養育費については、基本的には課税されませんが、ケースによっては課税対象となる場合もあります。

特に金銭ではなく不動産等で財産を受け取る場合には、様々な税金について検討しておく必要があります。

後から思わぬ税金がかかって「こんなはずじゃなかった」という事態にならないためにも、事前に弁護士等へ相談することをお勧めします。

監修弁護士
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