この記事でわかること
- 養育費の定義や決定方法がわかる
- 養育費算定表の見方が理解できる
- 養育費算定表を使用した計算がわかる
離婚しても子育ては続きます。
離婚する人にとって子育ての資金である養育費の額は離婚後の子育てに関わる重要事ではないでしょうか。
この記事では養育費の定義から計算例、養育費を決めるときの注意点まで、離婚して養育費を受け取るときに知っておきたい知識をまとめました。
養育費とは
離婚後に養育費の支払いを受けるためにも、まずは養育費の基礎知識から確認しましょう。
養育費の「定義」「もらえる期間」のふたつのポイントを説明します。
養育費の定義
「養育費」とは子供の養育と生活保持のための費用です。
離婚によって夫婦は別々の道を歩みますが、子供の親であることは変わりません。
離婚はあくまで夫婦関係の解消手続きであり、子供の親をやめるための手続きではないのです。
離婚後も父母として子供を養育しなければいけません。
父母は子供の生活保持義務を負っています。
子供が親と同水準の生活を維持できるように努めなければならないという義務です。
養育費はそのための大切な費用になります。
「払いたくないから」などの理由で支払いを免れることはできません。
離婚後は一般的に片方の親が親権を取って子供を養育し、もう片方の親が養育費の支払いなどを通じて子供の養育を行います。
養育費がもらえる期間
養育費がもらえる期間は「子供が成人するまで(20歳になるまで)」です。
養育費は子供の養育と生活保持のための費用になります。
子供が経済的に自立し、ひとりの大人として生活できる状況になれば、もはや親が養育する必要はありません。
ただ、家庭の事情はそれぞれです。
養育費がもらえる期間は父母の話し合いで短縮したり、伸ばしたりすることもできます。
子供が大学に進学したとします。
親に仕送りをもらったり、学費を出してもらったりする大学生もいます。
生活費を親の援助に頼っているケースもあることでしょう。
大学進学などの事情を考えて、父母の間で大学卒業まで養育費の支払い期間を伸ばすことも可能です。
障害や持病により経済的な自立が難しい子供の場合も、養育費の支払い期間を伸ばすことがあります。
反対に子供が就業などにより自立した場合は、20歳に満たなくても養育費の支払いを終了することがあるのです。
養育費算定表の見方
養育費を決めるときは金額で迷うのではないでしょうか。
養育費を払ってもらう側としては、いくら養育費を請求したらよいかわからない、養育費を払う側としては、自分の収入での養育費目安額がわからない、というようなときは養育費の目安にできる養育費算定表が役に立ちます。
「養育費算定表」は裁判所が公開している養育費の目安をまとめた表のことです。
養育費算定表を見れば、養育費を支払う側(義務者)と払ってもらう側(権利者)の年収から養育費の目安額を算出できるようになっています。
養育費の目安額を確認するためにも、養育費算定表の見方を知っておきましょう。
養育費算定表は子供の数と年齢によって使う表が異なります。
子供の数と年齢(0~5歳、6~14歳、15~19歳)から状況に当てはまる表を選んでください。
参考:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について 裁判所
養育費算定表では権利者と義務者の年収を使って養育費を算定します。
権利者と義務者の年収を確認し、利用する表の中から権利者と義務者の年収が重なるマスを見つけてください。
マスに金額が書いてありますので、その金額が権利者と義務者の年収における養育費額になります。
養育費算定表を使用した計算例
養育費算定表を実際に使って養育費のシミュレーションをしてみましょう。
計算例を見て表を確認すれば、養育費算定表の使い方がわかってくるはずです。
シミュレーションで使う義務者の年収は給与500万円、権利者の年収は給与100万円に設定します。
計算例(1)
養育費の権利者と義務者が離婚し、権利者が3歳の子供を引き取り育てることになりました。
ふたりの間の子供は3歳の子供だけです。
この場合は「算定表1養育費・子1人表(子0~5歳)」の表を使います。
表で義務者の年収500万円と権利者の年収100万円が重なるマスには9万円という金額が書かれています。
よって、計算例(1)の養育費額は9万円です。
計算例(2)
権利者が18歳の子供を養育することになりました。
子供は1人です。
この場合は「算定表3養育費・子1人表(子15~19歳)」を使います。
義務者と権利者の年収が重なるマスには11万円と書かれています。
このケースでは11万円が養育費の額です。
計算例(3)
権利者と義務者の間にはふたりの子供がいます。
兄が17歳で、弟が13歳です。
このケースの養育費算出は「算定表8養育費・子2人表(第1子15~19歳,第2子6~14歳)」を使います。
権利者と義務者の年収が重なるマスを確認すると、13万円と書かれています。
養育費額は13万円です。
養育費決定に際しての注意点
養育費を決めるときや養育費算定表を利用するときは、注意したいポイントが3つあります。
養育費は基本的に夫婦の話し合いで決める
養育費は基本的に父母の話し合いで決めることができます。
家庭によって収入状況や事情が異なります。
よって、収入や家庭の事情などにあわせて決めることができるのです。
父母の年収から養育費額を算出可能ですが、必ず表通りの額にする必要はありません。
父母の話し合いで養育費算定表と異なった養育費額を定めることも可能です。
また、必ず表通りの養育費額を払ってもらえるわけではない点にも注意が必要になります。
養育費算定表の結果はあくまで養育費額の目安です。
養育費算定表は個別事情を考慮していない
養育費算定表を使う上で特に注意したいのは、算定表には個別事情が反映されていないことです。
たとえば、年収500万円の義務者がふたりいたとします。
片方の義務者は健康でしたが、もう片方の義務者は持病を持っており、頻繁な通院を要する状態でした。
このふたりを年収500万円という同じ枠に当てはめて養育費を決めてしまうと、通院を要する義務者の生活に不都合が出る可能性もあります。
このように、養育費を払う側にも個別の事情があります。
養育費を受け取る側である子供と権利者も同じです。
たとえば同じ年収の義務者から養育費10万円ずつ受け取っているAとBふたりの子供がいたとします。
Aは健康そのものでしたが、Bは生まれつき持病を持っており、頻繁な入院が必要でした。
AとBふたりの子供の個別事情は養育費を算定する上で考える必要があるのではないでしょうか。
養育費算定表では各家庭の個別事情は考慮していません。
養育費を決めるときは、考慮すべき事情も検討した上で、金額をよく考えてみましょう。
養育費が話し合いで決まらないときは調停や裁判で決める
養育費が父母の話し合いでまとまらなかった場合は裁判所の手続きを利用して決めることになります。
裁判所の手続きには調停と裁判があります。
調停は当事者や調停委員による話し合いといった性質の強い手続きです。
裁判は証拠や主張を出し合い、最終的に裁判官の判決で養育費を決めることになります。
なお、揉めそうなときや双方の主張が上手くまとまらないときは、父母の話し合いの段階で弁護士に入ってもらうことも可能です。
専門家が介入することで、養育費の話し合いがよりスムーズに進むことがあります。
まとめ
離婚後は共同で子育てや養育の費用分担ができなくなるため、子供と離れて暮らす側の親は養育費の支払いというかたちで子育てに参加します。
養育費は権利者と義務者の年収から養育費算定表で算出可能です。
ただし、養育費算定表で算出した額が養育費額として決まるわけではありません。
基本は父母の話し合いで決めることになります。
養育費のことで困りごとがあれば、早めに弁護士に相談して解決することをおすすめします。