この記事でわかること
- 離婚慰謝料を高額請求されるケースについて理解できる
- 離婚慰謝料が決まるまでの流れについてわかる
- 慰謝料を払わないとどうなるかがわかる
- 慰謝料減額や分割の方法がわかる
- 離婚慰謝料と自己破産について理解できる
ある日突然「離婚の慰謝料請求」に関する内容証明が送られてきた。
弁護士から連絡がきて慌ててしまい、いわれるがままに合意してしまった。
という話は少なからずあります。
ですが、
- ・相手の請求してきた金額が果たして妥当なものなのか?
- ・そもそも法的な根拠があるのかどうか・悪いのは自分だけなのか?
など、その場ではすぐにはわかりませんし判断できません。
仮に、自分に非があるとしても、金額について交渉をする余地は十分にあるといえます。
いずれにしても、「放置」するとかえって不利益を招いてしまう結果となります。
そのため、早めに対応することが求められます。
以下で、詳しくみていきましょう。
少しでもご参考になれば幸いです。
離婚慰謝料が払えない!高額請求されるケースとは
一般的な離婚慰謝料の相場は、50〜300万円ほどといわれています。
離婚慰謝料が平均以上になるケースは、いったいどのようなケースが該当するのでしょうか。
- ・婚姻期間、不貞期間が長期間に及ぶ
- ・不倫相手が妊娠、出産をした
- ・DVの被害(怪我の程度)が深刻
- ・扶養するべき子の数が多い
- ・請求相手の支払い能力が高い、社会的地位が高い
- ・請求する側が専業主婦である
- ・請求する側が病気で働けない状況
- など
このようなケースでは慰謝料が高額となる可能性があります。
しかし、高額な慰謝料を受け取るためには、これらを裏付ける証拠が必要です。
裁判所に認めてもらうための証拠は、客観的に証拠能力の高いものが求められます。
- ・探偵事務所が作成した報告書
- ・ラブホテルに入っていく様子を撮った写真や動画
- ・肉体関係(=性交渉)があったことを裏付けるようなLINEなどメッセージのやりとり
- ・DV原因で負った怪我やうつ病に罹患してしまった場合は、怪我の写真や診断書
- など
離婚慰謝料が決まるまでの流れ
離婚慰謝料が決まるまでの流れを確認しておきましょう。
離婚慰謝料を請求される
↓
話し合いをする(増額・減額などを交渉する)
↓
合意(書面にしておくことをおすすめします)
↓
支払い開始
冒頭でも述べたように、ある日突然「慰謝料請求」に関する内容証明が送られてきたり、弁護士から連絡がくれば慌ててしまうものです。
強気な弁護士にいわれたら思わず「はい、わかりました」といってしまうのではないでしょうか。
ですが、本当にあなただけの責任なのでしょうか?
そもそも、請求してきた相手のいい分には、法的な根拠があるのでしょうか?法律のプロでもない限り、その場で落ち着いて対応することは至難の技です。
肝心なのは、すぐに合意しないこと。
場合によっては、「減額もしくは免除」が可能となります。
弁護士に依頼するメリット
減額や免除などの際に弁護士に依頼するメリット・デメリットについてもおさえておきたいところです。
- ・相手が冷静になり減額や分割払いに応じてくれやすくなる
- ・相手を粘り強く説得してくれる
- ・アドバイスを受けながら適切な選択ができる
- ・精神的な負担が軽減される
弁護士に依頼するメリット具体的には?!
当事者同士の話し合いでは、お互いの主張がぶつかり合いなかなか合意することができないものです。
一度取り決められた約束を破ることになるわけですから、いきなり減額や分割を要求された方としてはたまったものではありません。
そこに第三者でかつ法的な根拠をもった弁護士が交渉を行うことにより、相手も納得しやすく、交渉に応じてもらいやすくなります。
また交渉中は、さまざまな場面で選択・決断をしていかなければなりません。
弁護士に依頼すれば、妥当なラインはどこなのか、不利益を回避できる方法などのアドバイスを受けながら、安心して交渉を進めることができます。
また、自分1人ですべてのことを進めていくには、多大な労力を要します。
相手からひどいいわれ方をするかもしれませんし、責められることで強いストレスを感じることも多いものです。
弁護士に依頼すれば相手とも話さなくて済むので、精神的な負担からも解放されます。
弁護士に依頼するデメリット
弁護士に依頼するデメリットは、費用がかかることです。
一般的な費用をみていきましょう。
- ・相談料 〜30分5,000円ほど(初回無料の事務所もあり)
- ・着手金 10〜20万円ほど
- ・報酬金 減額できた金額の10〜20%ほど
弁護士費用を少しでもおさえたい場合は、複数の事務所の費用を比較してみることをおすすめします。
コールセンターを併設している事務所に費用面を聞くほか、およその金額をメールで教えてくれる事務所もあります。
弁護士費用の支払い方法の相談に乗ってくれる事務所もありますので、躊躇せずにコンタクトをとることをおすすめします。
特に、初回無料相談の機会を最大限利用してみましょう。
話をよく聞いてくれるか、難しい法律用語ばかり使わないか、解決への方向性を示してくれるかなど、ある程度参考になるはずです。
信頼できる弁護士を選びましょう。
慰謝料を払わずにいるリスク
慰謝料を払わずに放置しているとリスクを伴います。
しっかりと確認しておきましょう。
- ・差し押さえをされる可能性がある
- ・慰謝料請求訴訟を起こされる可能性がある
まず、離婚慰謝料の支払いについて「公正証書」を作成していた場合、面倒な裁判手続きを経ずに資産や給料などを差し押さえされてしまいます。
※「強制執行認諾条項」を盛り込んでいる場合に限ります。
差し押さえの対象は以下のとおりです。
- ・給料、退職金、ボーナスなど
- ・預貯金類
- ・不動産
- ・車
- ・生命保険
- ・高価なアクセサリー
- など
また慰謝料請求訴訟を提起されるリスクがあることも頭に入れておきたいところです。
慰謝料請求について公正証書を作成していなかった場合は、慰謝料を法的に回収する手段として「慰謝料請求訴訟」を提起する可能性が高まります。
「慰謝料を支払え」と判決が確定すれば、強制執行手続きへ移行し、上記のとおり差し押さえをされてしまいます。
結局のところ、放置することにより大変なリスクが生じてしまうこととなります。
払えないなら早めに法的手続きをとるべき
すでに決められた離婚慰謝料を減額もしくは免除してもらうためには、相手との話し合いにより合意してもらう必要があります。
自分の都合だけでは一方的に減額・免除はできません。
話し合いがどうしても合意に至らない場合は、離婚調停や離婚裁判にした方が、適正な慰謝料額に至るまで減額できる可能性があります。
ただし、調停や裁判では費用がかかりますので、費用対効果を考慮する必要があります。
離婚慰謝料「減額」のためにできること
減額してもらうためにはどうすればよいのでしょうか。
- ・慰謝料が発生しない根拠を指摘する
- ・証拠がないことを指摘する
- ・自己破産する
当事者同士での話し合いの際には、上記で挙げたような減額・免除が必要である相当な理由が必要となります。
また、これらを踏まえた上で説得にあたります。
例えば「今のままの慰謝料額では支払いができず自己破産するしかない。
自己破産すると、あなたに入る慰謝料がなくなってしまう。
だから、減額して現実的に支払える金額にしてもらいたい」旨を相手に伝え、苦しい金銭事情について理解してもらう必要があります。
また、自分1人での交渉がどうしても難しい場合には弁護士に依頼することも検討していく必要があります。
法定な視点で、なぜ減額する必要があるかなどの根拠を説明されると、相手も納得して減額に応じてくれやすくなります。
どうしても話し合いが合意に至らない場合、最終的には「自己破産」するしかありません。
離婚慰謝料が発生しない根拠や証拠について
相手から離婚慰謝料を請求されてもすべて鵜呑みにしてはいけません。
交渉の余地はあると思って、請求相手に離婚慰謝料が発生しない根拠を指摘してみましょう。
- ・性格の不一致
- ・お互いの親族との不和
- など
が原因で離婚に至った場合は、それだけの理由では離婚慰謝料の請求は困難でしょう。
そのような主張をされたら「その理由では離婚慰謝料請求はできない」といって拒否しましょう。
また、請求相手の主張していることの証拠能力が低い、もしくは証拠がない場合があります。
例えば、不倫(不貞行為)に関する証拠がないのに「直感でわかる」とか人から伝え聞いた噂話などでの有力な証拠が存在しない場合です。
このような場合は当然のことながら慰謝料請求はできません。
言い替えれば、不倫の証拠を集めることは簡単ではないということです。
離婚慰謝料「分割」のためにできること
基本的には、減額のケースと変わりありません。
粘り強く相手と交渉を重ねて、合意が得られるようにするしかありません。
「一括で支払うことが難しい」旨を相手に理解してもらうことができるように現状を説明し説得します。
また、分割払いの方法で合意することができたら「合意書」を作成することを忘れないようにしましょう。
「自己破産」できる場合と注意点
自己破産をすれば、通常、自己破産した人の借金や何かを購入した代金の支払いなどはチャラとなってしまい、これを免責といいます。
破産法253条1項2号によると「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」については非免責とされています。
慰謝料を請求する権利は「不法行為に基づく損害賠償請求権」です。
問題は「悪意」がどのようなケースに該当するのかという点ですが、裁判上では「積極的に他人に対して害を与える意思」が必要であると考えられています。
不貞行為(浮気・不倫)は悪意が認められる可能性が高いです。
したがって、不貞行為が原因で離婚したケースの離婚慰謝料も非免責となる可能性があります。
また、慰謝料発生の原因が悪質なDVなどのケースでは自己破産をしても非免責となる可能性もあります。
これは、破産法253条1項2号によると「故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」についても非免責とされているからです。
※「故意」・・・意図的に、わざと。
「重大な過失」・・・ほとんど意図的に行ったと言えるような不注意
まとめ
お金の問題が絡むと、どうしても感情的になってしまいます。
慰謝料減額を請求された方は感情的になってしまうことがほとんどです。
離婚慰謝料の減額は簡単なことではありません。
粘り強く、適切な対応をすることが求められ、法的な知識も備えておく必要がありません。
どのような根拠があれば相手に対して請求を拒否できるのか、減額の交渉をするにはどのようなことを相手に理解してもらえばよいのか、相場はどのくらいなのかなどをおさえておくべきです。
訴訟になれば、手続きは煩雑となり、書類などに不備があれば再提出をしなければならないなど手間と時間がかかります。
そればかりか、プライベートなことを裁判所内で開示していくことになるので精神的な疲労が蓄積され疲弊してしまいます。
早期解決のためには弁護士の力を借りてみるのもよいかもしれません。