この記事でわかること
- 離婚慰謝料と浮気慰謝料の違いについて理解できる
- 不倫相手が既婚者だったケースの注意点についてわかる
- 不倫相手に慰謝料を請求する際のリスクについてわかる
- 不倫相手から取れる慰謝料の相場についてわかる
夫(妻)の浮気が発覚したらすぐに離婚しますか?
「やっぱり離婚したら後悔するかも」と思いとどまり、不倫相手に対する慰謝料請求をもって解決する方法で気持ちに区切りをつける方は多くいらっしゃいます。
「夫(妻)が浮気・不倫相手にそそのかされたのでは」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
では、そのようなケースに直面したときはどのように対処していけばよいのでしょうか?
2人で時間をかけて結婚生活を積み上げてきたのですから、まずはじっくりと話し合いをすることが大切です。
離婚せずに、「慰謝料」で解決できればそれに越したことはありません。
浮気・不倫相手との縁を切って「慰謝料」というかたちで清算(示談)し、新たな第一歩として結婚生活を継続していければベター(=メリット)といえるのではないでしょうか。
ここでは、浮気・不倫相手に慰謝料請求をするためにおさえておきたい大切なことを解説していきます。
浮気された場合の「離婚慰謝料」と「不倫慰謝料」とは
離婚慰謝料 | 夫婦どちらか一方が行った浮気・不倫が原因となり離婚に至ったケース。 被害者となる妻(夫)に対して、「離婚慰謝料」を支払う義務がある。 ※離婚慰謝料の中に不貞行為に対する慰謝料が含まれていることが多い。 |
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不倫慰謝料 | 浮気・不倫をした当事者(加害者)が被害者である妻(夫)に対して支払う義務がある。 不貞行為をしたことによって受けた精神的損害に対する慰謝料。 |
離婚慰謝料は複合的であり、離婚するに至ったさまざまな要素が絡み合っています。
例えば、配偶者の不貞行為やDV、モラハラ、借金問題などが原因で離婚に至ったケースではそれらの加害行為を含んだ合計額が「離婚慰謝料」となります。
※「有責配偶者」・・・浮気、不倫をした配偶者(加害者)
※2019年の最高裁判決では、特段の事情がない限り「不倫相手」には「離婚にかかる慰謝料」の支払い義務を負わないとすることが示されました。
離婚慰謝料と不倫慰謝料の両方を請求することができるかどうか、また、離婚慰謝料を不倫相手に請求する際の「特段の事情」に該当するか否かは個々の事情により異なりますので、専門家にご相談されることをおすすめします。
「不倫慰謝料」は不倫相手にも請求できる慰謝料
浮気・不倫をすれば、法律上では「不貞行為」といい、浮気・不倫をした夫(妻)と浮気・不倫相手との共同不法行為が成立します。
つまり、浮気・不倫をした者は被害者に対して法的な責任を負うこととなります。
一方で、被害者である妻(夫)は相手方(加害者)に対して慰謝料を請求することができる権利を持つことになるのです。
加害者は「浮気・不倫をした2人」にあるので、被害者はどちらに対しても請求することができます。
また、どちらか一方に対しても請求することが可能となります(いわゆる慰謝料の二重取りはできません)。
現実的には、夫婦間での慰謝料請求はあまり行われません。
なぜなら、夫婦は経済的な面で一体的に生活しているケースが多く、夫婦間で慰謝料請求をしても結局は「自分の財布からの出費」と感じられる方も多いことが理由として挙げられるためです。
したがって、被害者である妻(夫)は、自身の気持ちに区切りをつけて離婚を回避し新たな生活をスタートさせるために「浮気・不倫相手」だけに慰謝料を請求するパターンが多くなります。
不倫相手が既婚者だった場合に気をつけること
不倫相手が既婚者であった、いわゆる「ダブル不倫」のケースでは、双方の家庭に、不倫の加害者と被害者が同時に存在することとなりとても複雑なトラブルとなります。
結果的には、双方の家庭の被害者から加害者に対して「慰謝料請求」が行われることとなれば、プラスマイナス0ということになります。
不倫の事実を全く知らなかった一方の家庭ではまさに「寝耳に水」の状態となり、離婚に発展するケースもあります。
その責任はとても大きなものです。
浮気・不倫が原因で離婚に発展すれば、慰謝料額は高額になり訴訟沙汰になることもあります。
さらに、個々の家庭の事情などにより慰謝料額は左右されますので、「ダブル不倫」のケースでは、より慎重な対応が求められます。
訴訟となる可能性とリスクについて
ダブル不倫のケースでは、双方で折り合いがつかず訴訟となることも珍しくありません。
双方の家庭に加害者と被害者が混在しているのですから無理もありません。
不倫相手への慰謝料請求は以下の2通りがあります。
- ・訴訟で解決
- ・当事者同士で話し合い(合意)
当事者同士の話し合いで解決できればよいのですがなかなか難しいのが現実ではないでしょうか。
高額な慰謝料で合意しても、相手に支払い能力がなければ絵に描いた餅となり、無意味となってしまいます。
訴訟では、裁判官が最終的に慰謝料額を決定します。
ですが、訴訟にはリスクも伴いますので、以下の事項をしっかりと確認しておきたいものです。
- ・解決までに時間がかかる
- ・裁判手続きには弁護士費用がかかる
- ・必ずしも希望通りの慰謝料が受け取れるとは限らない
不倫相手に慰謝料を請求する際のリスク
慰謝料請求をする前に心得ておいてほしいことがあります。
慰謝料をもって気持ちに区切りをつけていくことはとても大切なことです。
精神的なダメージを受けたのですから償ってもらうことは当然のことといえます。
ですが、不倫相手に慰謝料を請求する際のリスクもしっかりと理解した上で進めていかなければなりません。
以下の3つのリスクについて、詳しくみていきましょう。
- ・当事者同士で話し合う際に揉める恐れがある
- ・相手から求償される恐れがある
- ・証拠が必要である
当事者同士で話し合うことのリスクとは
「はい、そうですかわかりました」
といって素直に支払いに応じてくれる相手とは限らないのです。
不倫相手だけに慰謝料を請求する際に、共同不法行為者である夫(妻)の同意を得る必要はありません。
ですが、必ずといっていいほど不倫相手を介して伝わるものです。
「私だけが悪いわけじゃないのに、なんで私だけが慰謝料を払わなきゃいけないんだ」と思うことがむしろ普通といえ、トラブルとなることが多いからです。
よって、慰謝料請求をする過程において「不倫の事実」に関して知りたくないことまで明るみとなり、夫婦関係がギクシャクしてしまうことも多々あります。
結果的に、夫婦関係を修復していこうとする際の妨げになる恐れがあります。
相手から求償される
また、不倫相手から、共同不法行為者に対して「求償」をされるケースもあります。
「2人でやったことなんだから、責任を分担してよ」と主張されることになります。
例:被害者(妻)、加害者(夫)のケース
求償い、不倫をした加害者同士で公平な責任の分担を実現するための手段です。
実際に行われるかどうかは相手次第ですので、必ずしも求償されるとは限りません。
ですが、法的には慰謝料を支払う側は、共同不法行為者であるもう一方の加害者に対して「慰謝料の支払いを分担しろ」と求償する権利を持っています。
結局、夫婦の財布から慰謝料を支払うことになり、遠回りしたあげく意味を成さない結果となることがあります。
証拠が必要
慰謝料を請求するには、有力な証拠を集めることが重要です。
当事者同士の話し合い(示談交渉)をスムーズに進めるためにも必要ですが、示談交渉が合意に至らずに決裂し、裁判へ移行したときに不倫を証明するために必要な証拠は以下の通りです。
- ・写真や動画
- ・メール、SNSメッセージなどのやりとり(写メでも可)
- ・ボイスレコーダーのデータ
- ・クレジットカードの利用履歴(ホテルの領収書など)
- など
これらの証拠を掴んでおけば慰謝料請求の交渉を有利に進めることができます。
逆に、証拠が不十分だと相手から「根拠のない名誉毀損だ」などと訴訟を起こされることも考えられますので注意が必要です。
不倫相手から取れる慰謝料の相場
法的には、慰謝料の金額には明確な基準はありません。
そのため、似たような過去の裁判例を参考にしていくこととなります。
およその額としては50~300万円が一般的な相場ですが、以下のようなケースでは慰謝料額が高額となる可能性があります。
- ・婚姻期間、不貞期間が長期間
- ・浮気が原因で離婚に至った
- ・浮気前の夫婦関係は良好だった(浮気がなければ関係がこじれなかった)
- ・約束反故(誓約書などの約束を破った)、有責配偶者の態度が悪質
- ・浮気相手が妊娠してしまった
- ・有力な証拠がある(SNSや写真、ラブホテルの領収書など)
- ・支払い能力が高い(経済力がある)
- ・浮気による被害が甚大
不倫相手(加害者側)に支払い能力があれば、交渉次第では高額な慰謝料を請求することができることも珍しくありません。
まとめ
残念なことに、浮気・不倫をされた被害者である側が、解決に向けてストレスを抱えながら動き回らなければなリません。
とても理不尽に感じてしまうものです。
これは、浮気・不倫問題の特徴の一つといえることかもしれません。
ただでさえ傷ついているのに、さらに傷口に塩を塗られたようなダメージを負うこととなります。
感情的になってしまい、スムーズに解決できないケースも多々あります。
慰謝料請求には時効も存在しますので、あまり悩んでいる時間はありません。
被害者であるのならば、誰しも少しでも多くの慰謝料を受け取りたいと思われるのではないでしょうか。
これには相手方の出方をみながら柔軟かつ適切に、交渉を粘り強く進めていくことが求められます。
自分1人ですべてを行うことは非常にストレスがかかりますので、弁護士に相談されることもご検討されてみてはいかがでしょうか。
法律のプロである弁護士が間に入ることでスムーズに解決できることも多いものです。