この記事でわかること
- 養育費の相場の基準について理解できる
- 養育費の相場がいくらなのかわかる
- 高額な養育費の請求が可能かどうかわかる
離婚の話し合いをする際に、子どもがいる夫婦なら当然気になるのが「養育費」です。
相手の収入によって受け取れる金額が異なることは何となく理解している方も多いのではないでしょうか?
「いったい、もらえる最高額はいくらなの?」
「最低で、いくらもらえるの?」
「住宅ローンの支払いが旦那名義で残っている場合はどうなるの?」
「生活に困らないかな?」
など、考えはじめればキリがありません。
子どもの数や年齢で、かかるお金はまったく違います。
将来、子どもが苦労しないようにと思えば「養育費を受け取る側の親」としては不安が尽きないのではないでしょうか?
どのような基準があり、相場はいったいいくらなのかをここでは解説していきます。
相手方の収入や子どもの数、年齢と同じようなパターンに自分のケースを当てはめてご参考になさってください。
養育費の相場は収入・子供の人数で決定する
まず、養育費についておさらいをしておきましょう。
「養育費」とは、子どもが成人するまでの養育にかかる経費全般のことです。
たとえば、食費や被服費、医療費、教育費などが挙げられます。
また、原則は子どもが成人するまでですが、未成熟子(経済的に自立していない子ども)の間は支払われるものとされています。
たとえば、「子どもが大学卒業する年の3月までは支払う」などと離婚時に取り決めをしている場合です。
夫婦の話し合いですんなりと合意すれば「合意した金額」で解決することになります。
ですが、揉めてしまったり、目安となる金額がわからなかったりする場合などは、家庭裁判所が養育費を決める際に参考とする基準を参考にされてはいかがでしょうか。
養育費には「養育費算定表」という相場の基準となるものが存在します。
一度は耳にしたことがある方も多いかもしれません。
いったいどのようなものなのでしょうか。
養育費の算定は、以下に挙げられる要素を考慮して金額が異なります。
- ・子どもの数
- ・子どもの年齢
- ・義務者(支払う側)と権利者(支払いを受ける側)の年収のバランス
- ・親の働いている形態(自営業もしくはサラリーマン)
「養育費算定表」と呼ばれる表の基準に基づき、さまざまなパターンにより計算されます。
(参考)2022年4月に成人年齢が18歳に引き下げられた場合、養育費はどうなるの?
現行民法では、成人年齢は20歳とされていますが、2022年に18歳に引き下げられます。
ですが、実際問題として18歳で自立している人はあまり多くはないのではないでしょうか。
その場合に備えて、離婚時の取り決めでは「20歳まで支払う」「22歳大学卒業まで支払う」のように支払いの終期について明確にしておくことをおすすめします。
※すでに取り決めがされた養育費については「支払いの終期」は変わりません。
養育費は2万円~5万円が一般的
子どもが成人するまでにかかる費用は、およそ3,000万円かかるといわれています。
3,000万円という数字を目にしただけで気が遠くなると思われる方も多いでしょう。
「何にそんなにかかるの?」と思われるのも無理もありません。
一般的には大学卒業までの教育費や生活費が必要となります。
この3,000万円という金額は、幼稚園から大学まですべて公立の学校に通った場合のものです。
私立の学校に通うとなると、当然のことながらかなりのお金がかかることとなります。
いったい養育費はどのくらいもらえるのでしょうか?
結論からいえば、およそ2~5万円といえます。
※子どもの数別養育費(1世帯平均月額)の状況
1人 2人 3人 4人 総数 母子世帯 35,438円 50,331円 54,357円 96,111円 43,482円 父子世帯 28,125円 31,200円 46,667円 ― 32,238円
母子家庭と父子家庭では1万円以上の開きがあることが表からもおわかりいただけるかと思います。
多くのケースでは、夫(父親)から妻(母親)へと養育費が支払われています。
前述のとおり、子どもの数や年収など家庭の事情にもよるので、一概にいくらが相場であるといい切ることはできません。
女性の社会進出がめざましい昨今ですが、結婚や出産でキャリアを中断せざるを得ない女性がまだまだ
多くいるのが現実ではないでしょうか。
このことから、男性の方が女性よりも年収が高いので、より多くの養育費を支払うこととなります。
手取り25万(年収300万)の場合の養育費相場
今までの養育費の算定基準では「養育費が少なすぎる」という声が少なくありませんでした。
2019年12月に改定され、養育費が1.5倍になりました。
「新養育費算定表」により、今までより各年収帯で平均1~2万円ほど養育費が増額されることとなったのです。
下記で、ケース別に具体的な養育費の相場を挙げていきます。
ご参考になさってください。
例:「義務者(支払う側)手取り25万円(年収300万円)」
「権利者(受け取る側)年収200万円」の場合
子どもの数 | 子どもの年齢 | 養育費 |
---|---|---|
1人 | 0~14歳 | 会社員2~4万円 自営業者2~4万円 |
1人 | 15~19歳 | 会社員2~4万円 自営業者4~6万円 |
2人 | 0~14歳 | 会社員2~4万円 自営業者4~6万円 |
2人 | 15~19歳 | 会社員2~4万円 自営業者4~6万円 |
2人 | 0~14歳1人・15~19歳1人 | 会社員2~4万円 自営業者4~6万円 |
3人 | 0~14歳が3人 | 会社員4~6万円 自営業者6~8万円 |
3人 | 15~19歳1人、0~14歳2人 | 会社員4~6万円 自営業者6~8万円 |
3人 | 15~19歳2人、0~14歳1人 | 会社員4~6万円 自営業者6~8万円 |
3人 | 15~19歳3人 | 会社員4~6万円 自営業者6~8万円 |
子どもが2人いるからといって、養育費の相場が単純に2倍になるわけではありません。
子どもの人数が多くなれば金額は上がりますが、そもそも年収に限りがあることから、養育費にはある程度の幅があります。
進学のタイミングなどでは学費がかかりますし、多額の医療費がかかるケースなどでは通常の養育費とは別に請求できる可能性もあります。
年収600万で子ども3人の場合との比較
では、義務者(支払う側)の年収が600万円で子どもが3人いる場合ではどうでしょうか。
受け取れる金額は上がるのでしょうか。
下記の表で見ていきましょう。
例:「義務者(支払う側)手取り50万円(年収600万円)」
「権利者(受け取る側)年収200万円」の場合
子どもの年齢 | 養育費 |
---|---|
0~14歳が3人 | 会社員10~12万円 自営業者12~14万円 |
15~19歳1人、0~14歳2人 | 会社員10~12万円 自営業者14~16万円 |
15~19歳2人、0~14歳1人 | 会社員10~12万円 自営業者14~16万円 |
15~19歳3人 | 会社員10~12万円 自営業者14~16万円 |
手取り25万円(年収300万円)のケースと比べると、子ども1人当たりの養育費は上がっていることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
手取り25万円(年収300万円)の場合では、子どもの人数が3人以上となると「合計受取額」、すなわち「子ども1人当たりの金額」が増加していました。
手取り50万円(年収600万円)で子どもが3人のケースでは、子どもの数や年齢によりあまり差がないことがわかります。
このように、義務者(支払う側)の年収により受け取ることのできる金額は大きく異なることがわかりました。
当然のことながら、どちらか一方の親が全てをまかなうわけではありませんので、権利者(受け取る側)の年収が上がれば、両者のバランスを見て義務者の支払う金額を減額することができるでしょう。
手取り25万円でも月10万円の養育費請求は可能か
権利者(受け取る側)と義務者(支払う側)の年収のバランスにより、養育費の受け取ることのできる金額が変わることはおわかりいただけたかと思います。
ただ、あくまでも養育費算定表は参考的な基準として存在しているものなので法的な拘束力はありません。
(調停や審判、裁判などでは指標とされているため金額があまり上下することはありません)
ゆえに、夫婦2人で話し合い「自由な金額」を決めることができます。
では、たとえば手取り25万円でも月10万円の養育費の請求は可能なのでしょうか?
(ケース1)
義務者(支払う側)が光熱費の負担は電気代のみしか負担しなくてよい、普段の食事も完備されている、お昼は会社からお弁当が提供されているなど、お金があまりかかっていない。
(ケース2)
義務者(支払う側)に住宅ローンや車のローンの支払いがある。
(ケース3)
離婚後に子どもを連れて実家に戻ったが、両親が公務員で収入が高い。
このような高額な養育費を請求するケースでも、当事者同士が合意していれば可能です。
逆にいえば、請求する金額が、たとえ2万円だろうが5万円だろうが可能ということになります。
ただし、無理な金額で合意したとしても数年経って支払いが滞ってしまうことも十分考えられますので注意が必要です。
養育費を少しでも多くもらうために準備しておくべきこととは?
中学校受験や高校受験、大学受験とかなりのお金が必要となることが予想できます。
塾などは、小学校4年生や5年生もしくはもっと早い段階から塾に通わせて対策をしている家庭も多いものです。
1万円でもよいから増額して受け取りたいと思われる方も多いのではないでしょうか。
(例)子どもの年齢3歳 20歳まで養育費を受け取ることを合意した場合
1万円×12ヶ月=12万円
12万円×17年=204万円
このように、子どもが成人するまでにこれだけ金額が変わってきてしまいます。
しっかりと子どもの進路などを考慮した上で話し合いをし、後になって困ることのないように対策をしておくべきです。
- ・相手の収入をきちんと把握しておく
- ・子どもの学習計画(進路)などをできるだけ明確にして話し合いを進める
養育費を決める際に具体的に考えておきたいこと
前述のとおり、「養育費算定表」の基準に沿って養育費の請求額を算出するのなら、収入が高ければ高いほど養育費の受取額も高額になります。
ですが、稀に「養育費を払いたくない」と思う人も残念ながらいます。
そのため、相手と養育費の金額について主張の食い違いがあったときに、適正な金額で交渉できるように常日頃から相手の収入を把握しておくことが大切です。
また、子どもがまだ小さい場合は将来の学習計画や進路など具体的なことが決められない方も多いでしょう。
そのようなときに、後悔しないためにも、離婚時の養育費の話し合いの段階でしっかりと話し合いをした上で金額を確定させておくことをおすすめします。
まとめ
どちらか一方の親がすべての養育費をまかなっていくことはとても大変なことです。
別れた相手に、潤沢な養育費をもらうことができ離婚後も十分な経済力が維持できれば問題ありません。
ですが、多くの家庭では必ずしもそうとはいえないのが現状です。
たとえば、結婚・妊娠をきっかけに会社を辞めた女性なら、離婚後は、子どもと自分のために自身も自立し働いていかなければなりません。
今や「養育費不払い問題」は社会問題となっており、受け取ることができない家庭は8割程度といわれています。
離婚時の話し合いでは、お互いに感情が高ぶってしまい、なかなか養育費のことも将来を見据えて具体的に考えられないことも多いものです。
ここは頑張りどころです。
子どもが将来さまざまな選択肢の中から、自分の進みたい道を決めることができるような環境を作ってあげたいものです。