【慰謝料減額や分割払い】慰謝料の支払い期限が決まる前に話し合うべきこと | 離婚弁護士マップ
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【慰謝料減額や分割払い】慰謝料の支払い期限が決まる前に話し合うべきこと

この記事でわかること

  • 慰謝料の支払い期限を決める方法がわかる
  • 慰謝料の分割払いの可否や方法がわかる
  • 慰謝料が一括払いできない場合の減額の可否や借金で支払うメリットデメリットがわかる
  • 慰謝料の支払いを時効によって免れる方法やその場合の制裁があるかがわかる

不貞行為などを原因として慰謝料請求をされるケースがあります。

慰謝料の金額や支払い方法は当事者間で話し合って決めることになりますが、場合によっては一括払いが難しいケースもあるでしょう。

ここでは、慰謝料の支払い期限や分割払いの可否、減額することや時効で支払いを免れることの可否などについて説明します。

慰謝料の支払い期限はどう決まるか

不貞行為などにより慰謝料の支払い請求をされ、慰謝料を支払うことになった場合には、金額だけでなく支払い方法についての取り決めも大切です。

慰謝料の示談をする際に、支払い期日をいつにするか、支払い方法は一括払いなのか分割払いなのかを話し合って決めることになります。

支払い期日

支払い期日については、示談をする当日とすることもありますが、後日とすることもあります。

請求する側にとっては当日の支払いが望ましいですが、支払う側にもお金を用意するための準備が必要な場合もあるため、後日と定めることもあります。

支払いを後日とする場合には、支払いが実行されない可能性を想定して、相手の財産を差し押さえられるように示談書を公正証書で作成するなどの対策をすることが多いでしょう。

一括払いか分割払いか

一括払いか分割払いかについては、支払いを請求する側は、一括払いを求めることがほとんどです。

分割払いは支払いが長期にわたるため、途中で不払いになるリスクがあり、避けたいと思うのが通常です。

請求する側にとっては、分割払いを認めるのは、やむを得ない場合に妥協した結果ということが多いでしょう。

支払う側が一括払いできるだけの資金がないと主張する場合に、それでも慰謝料を減額したくない場合には分割払いにすることで双方が合意するというケースがあります。

分割払いにする場合には、途中で不払いになるリスクを避けるため、公正証書による慰謝料の合意書を作ることが想定されます。

慰謝料を分割で支払うことはできるのか

慰謝料についての示談をする際に、分割払いをすることに双方が合意をすれば分割払いとすることは可能です。

慰謝料は数百万円といった高額になることもあり、一括払いをすることが困難な場合も多いものです。

一括払いで支払うことができないと請求された側が主張した場合、請求する側も現実的に支払い可能な条件で合意をすることを考えざるを得ないため、分割払いに応じたり、減額に応じたりする可能性があります。

分割払いの申し出をするときは、必ず最後まできちんと支払うことや、どれくらいの期間で支払えるのかを伝えるのが重要なポイントです。

最初の支払いで支払えるだけの分は支払うこととして、残りの金額についてはやむを得ず分割となることを伝えましょう。

たとえば慰謝料が200万円という場合に、初回に100万円を支払い、残額については10万円の10回払いといった方法が考えられます。

初回にある程度まとまった金額を支払うことを伝えれば、相手からも信用してもらえる可能性があり、交渉に応じてもらえる可能性が高くなります。

後から分割払いの申し出をする場合

一括払いとすることを合意した後に、何らかの理由で一括払いをすることが困難となってしまった場合、分割払いに変更することは可能でしょうか。

このような場合、相手に分割払いへの変更の申し入れをすることは可能ですが、相手が応じてくれるかどうかはわかりません。

一度合意が成立して支払い期日が確定しているので、相手が応じてくれない限り一方的に支払い方法を変更することは認められません

慰謝料について公正証書を作成して取り決めている場合には、期日を過ぎれば相手から財産の差し押さえをされる可能性もあります。

また、支払い期日を過ぎれば遅延損害金が発生するので注意が必要です。

やむを得ず一括払いが不可能になった場合には、できるだけ早く、誠意ある態度で相手に支払い方法の変更を申し入れるようにしましょう。

支払う意思がきちんとあることが伝われば、変更に応じてくれる可能性もあるでしょう。

相手にとっても、財産がないという人に差し押さえなどをしても無駄になる可能性が高いため、現実的に支払い可能な方法への変更を認めざるを得ないと考えるかもしれません。

ただし、後から合意内容を変更したいと申し出ることはトラブルのもととなりますので、話し合いの時点で一括払いが難しい場合はその事情をきちんと説明し、現実的に支払いが可能な方法を提示するようにしましょう。

一括で払えない場合減額は可能?借金で払うべきか

慰謝料の請求を受け、請求金額を一括で支払うことができない場合には、減額することができるでしょうか。

慰謝料の金額には決まったルールがあるわけではなく、ある程度の相場はあるものの絶対的な基準はありません

自分が納得できなければ、請求された金額をそのまま受け入れなければいけないわけではありません。

請求金額が妥当な金額であるかは検討する必要があります。

相場から見て高額過ぎると感じる場合などには、減額の申し入れをしましょう。

実際、請求する側も、はじめはやや相場よりも高めの金額を請求するケースが実は多いものです。

相手から減額の申し入れがあることも想定したうえで慰謝料を高めに請求することは、一般的な交渉のテクニックだからです。

相場よりも高額の慰謝料を請求された場合

相場よりも高額の慰謝料を請求された場合には、減額交渉をするのが一般的です。

たとえ訴訟を起こしても相手の請求額が認められる可能性は低いため、相手も応じる可能性があります。

相手に対しては、慰謝料の相場よりも高額であることを説明し、妥当と思われる自分に支払い可能な金額を提示しましょう。

ただし、相場というのは簡単に算定できるものではないため、自分が考える慰謝料の相場の根拠を説明できるようにしておく必要があるでしょう。

内容次第では、相手を刺激してより態度を硬化させてしまう可能性もあるため、できるだけ冷静に事実を伝えるようにしましょう。

相場から見て妥当な慰謝料を請求された場合

相場から見て慰謝料が妥当だという場合には、減額の申し入れをしても相手が応じてくれない可能性もありますが、自分の懐具合では支払い困難だということを伝えて減額のお願いをしてみるしかありません。

なぜ支払いが困難なのかをきちんと説明して、納得してもらえるように努めましょう。

相手にとっても、実際に支払ってもらえない金額を請求しても意味がありませんので、伝え方次第で減額の話し合いに応じてくれる可能性があるでしょう。

相手も早期に慰謝料については決着したいという気持ちがある場合がほとんどなので、多少減額してでも一括払いを望むことも多いでしょう。

一括払いであればどの程度まで支払うことができるのかを伝え、交渉してみてもよいでしょう。

その際、自分が加害者であることを自覚したうえで、相手を刺激しないように低姿勢でお願いするようにした方がよいでしょう。

相手の気分を害してしまうと、ますます問題がこじれてしまう可能性があります。

慰謝料の支払いのために借金をするという選択肢

慰謝料を支払うための資金がない場合、借金をしてでも支払うべきでしょうか。

借金をして支払うことには、以下のようなメリットデメリットがあります。

借金で慰謝料を支払うメリット

借金をして一括で慰謝料を支払うことにより、短期間で問題を解決できるのが最大のメリットです。

お互いに早く問題を解決して関わりをなくしたいと思うことが通常なので、一度の支払いで相手とのかかわりをなくすことができれば、精神的なストレスを引きずらなくて済むでしょう。

また、相手が分割払いにも減額にも応じてくれない場合には、いずれ相手が訴訟を起こす可能性もあります。

訴訟により慰謝料の支払いが確定した場合、財産の差し押さえを受ける可能性もあります。

たとえば、給与債権の差し押さえを受けた場合には、勤務先に慰謝料請求の事実が知られてしまいます。

このような事態を避けるためには、借金をしてでも慰謝料を一度で返済することも選択肢の一つです。

借金して慰謝料を支払うデメリット

借金をして慰謝料を支払うと、借金には利息が発生しますので、実際の慰謝料以上の金額を返済しなければいけないというデメリットがあります。

返済期間が長ければ長いほど、支払う利息の金額は高額になります。

また、万一返済を滞納してしまった場合には、遅延損害金が発生することに加え、信用情報機関のブラックリストに登録されてしまう可能性があります。

慰謝料のための利用に限る話ではありませんが、借金をする場合には、無理のない返済計画を立てて利用することが大切です。

時効で慰謝料支払い義務は回避できる?未払いの場合は?

慰謝料の支払いについて、時効を主張して支払いを免れることはできるのでしょうか。

時効が完成している場合には、時効を援用(時効の完成を主張)することで、支払いを免れることは可能です。

不法行為による慰謝料請求の時効は3年

慰謝料の時効は、損害の事実や加害者を知った時点から3年です。

不貞行為による慰謝料請求の場合には、不貞行為の事実と不貞相手を知ってから3年が経過すると時効が完成します。

3年経過した後で、慰謝料請求をされた場合には、「時効を援用します」という回答をすれば支払い義務はありません。

時効を主張する方法には特に決まりはありませんが、口頭よりも後日証拠となるように書面で伝える方がよいでしょう。

また、時効には中断の可能性があるため注意が必要です。

たとえば、慰謝料の支払い義務があることを相手に対して認めた場合には、「債務の承認」をしたこととなり、時効が中断します。

たとえば、時効の3年が経過する直前に自分の慰謝料の支払い義務を認めた場合には、認めた時点からさらに3年を経過しなければ時効は成立しません。

慰謝料支払いに合意した後の慰謝料請求の時効は10年

慰謝料の支払いについて、すでに当事者間で合意をした場合には、慰謝料請求の権利は通常の金銭債権ということになり、合意をしてから10年間経過すると時効が完成します。

ただし、合意をしてから途中まで支払いをしていた場合などは、時効が中断します。

支払いをしたときに債務を承認したこととなり、最後の支払いからさらに10年が経過しなければ時効は成立しません。

一切未払いのままであれば、慰謝料の合意をしたり、裁判で慰謝料の支払いが確定してから10年が過ぎると時効を主張したりすることによって支払いを免れることはできます。

時効を主張する場合の制裁はあるのか

時効の制度は、長期にわたって権利関係が不安定になることを避けるために、一定期間行使されない権利を消滅させるという趣旨のものです。

時効を援用(主張)することは、法律上の権利であり、責められるべきものではありません。

時効を援用しても何らかの制裁やペナルティを受けるということもありません

ただし、相手からの信頼を失うことは間違いありません。

慰謝料は、被害者の精神的苦痛を償うために支払うべきものです。

慰謝料が約束通り支払われなければ、被害者の精神的苦痛が埋め合わせられることはなく、さらなる苦痛を与えることとなるでしょう。

そのようなことは覚悟したうえで、時効を援用する必要はあるでしょう。

支払い期限後に追加請求されることはあるのか

慰謝料を約束通り支払った後で、さらに追加で慰謝料を請求されることはあるのでしょうか。

通常、慰謝料についての取り決めをするときには、今回の支払いが完了すれば、今後一切の追加の支払いを請求しないという条項をつけます。

このような条項があれば、同じ件でさらなる追加の請求をすることは認められません。

ただし、慰謝料の合意をした後に不貞行為が継続した場合には、示談の対象となっていない不法行為が新たに行なわれたことになるので、それに対し慰謝料請求ができることになります。

なお、慰謝料の合意をした後に再度不貞行為が行われた場合に支払う慰謝料の予定額を、示談するときの条件の一つとして事前に定めておくこともあります。

このような事情がなければ、相手から追加の慰謝料請求をされてもそれに応じる必要はありません。

相手の請求方法などによっては、強要罪などの犯罪になる可能性もあります。

約束通りの支払いが済んだ場合には、毅然とした態度で請求を拒否することが大切です。

執拗な請求を受けた場合には、弁護士への相談等も検討しましょう。

慰謝料の支払いが済んだ場合には、領収書などの支払いが完了したことを証明できる書面を作成してもらいましょう。

完済したことを証明する「完済証明書」の作成を求めることもできますが、相手が応じるかは自由であり、普通の領収書があれば十分です。

通常は銀行振り込みによる支払いをすることが多いですが、現金で支払う場合には必ず領収書を受け取らなければ支払ったことを後で証明することができません。

必ず受領者本人の署名捺印のある領収書を受け取りましょう。

領収書には、但し書きで、何月何日に合意した何々に関する慰謝料として、などと何に対する金銭であるかを記載してもらうようにしましょう。

銀行振り込みの場合、必ず本人名義の口座に支払うようにしましょう。

後から相手から受け取っていないなどと主張される可能性のある方法は、避けなければなりません。

まとめ

慰謝料の支払いについて話し合うときは、どのような方法で支払えばトラブルがないかを考慮することが大切です。

実現できない約束をしても意味がなく、トラブルのもととなるだけです。

被害者である相手の気持ちを考え、誠意をもって実現可能な慰謝料の支払い方法について話し合うように努めましょう。

監修弁護士
中野 和馬

東京弁護士会

中野 和馬
石木 貴治

東京弁護士会

石木 貴治
山谷 千洋

東京弁護士会

山谷 千洋
堀 翔志

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堀 翔志
水流 恭平

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水流 恭平
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